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    『観覧車』柴田よしき

    観覧車 (祥伝社文庫)
    観覧車 (祥伝社文庫)
    柴田 よしき 2005/6/20文庫化 祥伝社文庫 P.317 ¥630
    ★★★★
    知らない方が幸せだなんて、そんなのは嘘だ。
    嘘だ。
    でも、知ってしまったらその先は、どうすればいい? 何ができる?

    私立探偵だった夫・貴之の突然の失踪後、探偵事務所を引き継ぎ、ひたすら夫を待ち続ける下澤唯、32歳。

    貴之の失踪から3年が経ち、ずぶの素人から始めた探偵業もすっかり板につき、意地で続けるという唯の元に舞い込んだ依頼は、単身赴任先の京都から戻ってこない夫を探してほしいという、妻からの捜索願い。

    無断欠勤を続ける男の愛人でもあった部下の女に目をつけ、張り込みを開始した唯。
    ところが女は、来る日も来る日も、ただ鄙びた遊園地の観覧車に乗り続けるだけの毎日を送るだけ…。

    何かに絶望し「普通に生きること」を放棄した女は、別れ話のもつれから不倫相手を殺害してしまったのか…表題作『観覧車』に始まり、

    男と女の哀しすぎる様々な依頼を引き受ける唯が、調査のために訪れた佐渡で、失踪中の夫、貴之にそっくりの男を発見し、調査を放棄してまで後を追おうとしたものの、見失ってしまい……。

    「めっちゃ、切ない…
    3年、5年、10年…失踪した夫を待ち続ける女探偵・下澤唯の物語。
    静かな感動を呼ぶ恋愛ミステリー。」だ、そうで。


    主人公、唯の夫、貴之の失踪の謎がベースとなって、一見バラバラな依頼も繋がって…と、独立した短編としても、事件の真相が憐れで読み応えがあって、夫を待ち続ける唯の心の揺れも、本当に哀しくて切なくて、大人の女性の心理が見事に描かれてるなぁと。

    「生きていたのだから、あたしを裏切っていないはずがない。」

    その現実と向き合うのは、辛すぎる…。
    それでも、

    「むちゃくちゃに、好き。
     まだ。」

    と、どんな結果が待ち受けていようとも、夫を探し続ける唯に、この先どんな真実がつきつけられるのか。
    続編の『回転木馬』、すぐにも読みたいけど、本当のことなんて知りたくないような気も…。

    そして、解説の新井素子さんの「男の嘘」の見解に「なるほどなぁ」と、ものすごく唸らされてしまった。「男は決してついてはならない嘘をつく生き物なのと同時に、“約束”と“希望的観測”の区別がつかない、単なる莫迦なんじゃないのか?」と…確かに思い当たるふしが。

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      『ジバク』山田宗樹

      ジバク
      ジバク
      山田 宗樹 2008/2/25発行 幻冬舎 P.399 ¥1,680
      ★★★★★
       すべてをお終いにしたかったのだ。
       それなのに、俺は生き延びてしまった。義足という異物を着けて、また歩かなくてはならなくなった。
       ………
       そこになにか意味はあるのか?
       価値はあるのか?
       そもそも、生きていくって、そんなにいいことか?
       俺は、生きてきたばかりに、若さを失い、職を失い、家族を失い、友人を失い、財産を失い、そして左脚まで失った。これからも失い続けていくだけの人生が待っている。
       そんな人生を生きて、なんになる?

      年収2千万、美しい妻、そしてもうすぐ1億4千万のマンションに移り住む予定の、外資系投資会社のファンドマネージャー、麻生貴志、42歳。

      自ら「人生の勝ち組」と自認する貴志は、郷里で行われた同窓会に出席し、過去に見向きもされなかった、かつての憧れの女性「ミチル」に再会し、現在の成功した自分の力を見せ付け、「ミチル」の気を惹きたいが為に、「みちる」に儲け話をもちかけることに。

      そうして手に入れた「ミチル」との情事に溺れる貴志に仕掛けられた、貴志を天国から地獄へと一気に引きずりおろそうとする巧妙な罠。

      職と家庭を一度に失ったものの、まだ自分自身を過信する貴志がかろうじて得た新しい仕事は、詐欺紛いの未公開株の電話でのセールス。

      上司の叱責にも堪え、ようやく厳しいノルマをこなせるようになった頃、貴志をまたもやどん底に突き落とすかのような、世間を騒がす事件が起き、身を隠すように行きずりの女の部屋に転がり込むことに。

      そして女のヒモ同然の生活に甘んじていた貴志は、今度は生命の危機にさらされてしまい……。

      「女は哀しくも怖ろしく、男はどこまでも愚かだった。
      押し寄せる衝撃と感動。
      残酷なまでに転落する人生を描く『嫌われ松子の一生』男性版!」だ、そうで。


      気分が滅入ってるときに読むと、ほんとに落ち込んでしまいそう…。
      どこまで主人公を不幸にすれば気が済むのか…というか、最初のつまづきで何でここまで…と、思わなくもないかな(男の人の、そこまで女にのめり込むスケベ心はよくわからないし)。

      松子もたいがいだったけど、そこは女の方が逞しくて、まだ救いがあったような。
      これは男がダメダメすぎて、ほんとうに救いがないというか…でも、そこが現実っぽくて余計に悲しくなるというか。

      主人公と年齢が近い分、この先生きていても、本当に失うことばかりだなと思えなくもないし。

      今は良くても、いつこうなるか解らないなと、ある意味ホラーよりも怖かったかも。
      でも、自分はもっと強くありたいなと。

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        『リセット』垣谷美雨

        リセット
        リセット
        垣谷 美雨 2008/2/20発行 双葉社 P.350 ¥1,680
        ★★★★
         いつ頃からだったろうか。人生をやり直せたら――そういう思いが強烈にこみ上げてきたのは。
         そう、確かあれは四十歳の誕生日を迎えた日のことだ。
         ――もう四十歳?
         ――もう人生の折り返し地点なの?
         そう思って、愕然としたのだ。
         なんという早さで月日は流れてしまったのだろう。これほどまでに人生が短いとは思わなかった。こんなことなら挑戦すればよかった。あのとき……。

        「もしも人生をやり直せれば、絶対に専業主婦なんかにならない」と強く決心し、47歳になった今も、高校生の頃に思い描いていた「女優になる」という夢を捨てきれずにいる平凡な専業主婦、知子。

        高校生の頃から容姿にコンプレックスを抱き、ひたすら勉学に励んできたお陰で今では会社の副部長にまで登りつめたものの、ごく普通の結婚をし、子供を持つ妹とことあるごとに比較され、母親からいつまでたっても認められないことに寂しさを感じる薫。

        不良グループにいた高校時代、ナンパされた男の子供を身ごもり、結婚するつもりで高校を中退したものの、あっけなく男に捨てられてしまい、まともな仕事にも就けないまま、故郷に帰ることも出来ず、昼夜働きづめに働くことで六畳一間の東京での生活をかろうじて維持する晴美。

        それぞれに人生をやり直したいという思いを強く抱きながら生きてきた、特別仲良しでもなかった同級生三人が、立ち寄ったデパートの地元の物産展で偶然に再会したことから、三人揃って30年前の、高校生から人生をやり直せることに。

        そして望みどおり人生をやり直し、それぞれが思い描いていた別の人生を歩み始めたものの……。

        「ぼんやりとした不安と不満を抱え、それでも平凡に暮らしていた三人が、突然、高校時代にタイムスリップ。“未来の思い出”がリプレイされる毎日は、彼女たちの意識を少しずつ変えていく。そしていま、再び新しい人生へ!人生は変えられることを、彼女たちは教えてくれた。「第27回小説推理」新人賞受賞の注目の大型新人待望の書き下ろし!」だ、そうで。


        一見、何不自由ない幸せそうな専業主婦、成功したキャリアウーマン、そしてまるで「嫌われ松子」のような、不遇な女性の、全くタイプの違う三人が、三人とも人生をやり直して、今度こそはと望みのままにやり直した人生もまた…というのが、きっと本当に人生ってこういうもんなんだろうなぁと痛感させられてしまったかも。

        高校生に戻ったときに(実際は47歳の気持ちのままの)彼女達それぞれが感じた、自分よりも若かりし頃の母親に対する思いが、すごくリアリティがあって面白いなと。

        実際問題として高校生の頃に、もっと「こうなりたい」という夢が明確にあったとしたら、それを叶えることができたんじゃないかなと最近思えるし、だとしても、それが今より幸せとは限らないというか。

        幸せな結婚を望んでいたのが、それを手に入れて、でも今度またやり直せたら二度と結婚したくないというのも、なんとなくわかるかな。

        なので、彼女たちの最後の選択には結構勇気付けられるし、やっぱり今の人生を頑張らないとなと、そして、人生はこれからでも、自分次第で如何様にも変えられるのかもなと思えてしまった。

        彼女たちのように「リセット」という幸運(?)な機会は、多分私には訪れないだろうから、これが一度こっきりの自分の人生と肝に銘じて、悔いのない生き方ができればいいかなと、なんだかものすごく前向きになれてしまった一冊。

        でも、もしも、こんな風に今の記憶を持ったまま、好きな時代に戻ってやり直せるとしたら…公務員になりたいとしか思えない、夢のない自分がものすごく悲しかったりするかも。

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          『さみしいうさぎ』飯田雪子

          さみしいうさぎ (ヴィレッジブックスedge (E-イ1-2))
          さみしいうさぎ (ヴィレッジブックスedge (E-イ1-2))
          飯田 雪子 2008/2/20発行 ヴィレッジブックス P.252 ¥672
          ★★★★
           うさぎは、淋しくても死なない。
           けれど人は、淋しいと死んでしまうのかもしれない。

          人とうまく関わることができず、周囲の人間からは「淋しそう」と言われるものの、一人でいることに安心感を覚えていた大学生の菜月。

          そんな菜月が、何も話さなくても一緒にいることが心地良いと感じていた恋人らしき存在、峻の突然の帰郷によって、ひとりぼっちの本当の意味を知ることに。

          故郷で実家を継ぐという峻の、菜月への気持ちが解らず、淋しくて堪らないのに、恋愛に不慣れなために、その気持ちを伝える術を知らず、一人思い悩む日々を送る菜月の前に現れたのは、お金を貰って女性をただ「抱きしめる」だけという奇妙なアルバイトをする青年、龍生。

          龍生のそれをバイトとは知らず、菜月の尊敬している大学の准教授、郷子の恋人だと勘違いしたことから、二人は最悪の形で出会ったものの、龍生はたびたび菜月を誘い出すように…。

          そして、菜月がひとりぼっちで迎えたクリスマスの日、峻との約束を思いがけず破ることになってしまった菜月につきつけられた、峻の冷たい言葉。
          峻に拒絶され、ようやく菜月は峻に会いに行く決心するのだが……。

          「あなたがそばにいないことが、こんなに苦しいなんて……
          『夏空に、きみと見た夢』の著者が贈る書き下ろしラブ・ストーリー、第2弾!」だ、そうで。


          恋愛ものはあんまりすすんでは読まないけど、飯田さんの『夏空に、きみと見た夢』の読後感が良かったのと、大好きだったドラマ「星の金貨」の主題歌のフレーズのようなタイトルに惹かれて読んでみたら、これまた意外とじんわりと心が温まってしまった。

          遠距離恋愛はしたことないし、会いたいときにすぐに会えないというのは、私には堪えられそうにないのできっと無理だと思うけど、菜月の不安はとても良くわかる。
          近くにいても、相手の気持ちが解らなくて不安なのは同じだし、遠ければ会えない分余計に辛いだろうなと。

          菜月の理想とする一人で生きる強い女性、郷子が龍生に、愛情でなく、抱きしめてもらうことだけを依頼する気持ちもものすごく良く解るし、女の人なら、きっと誰でもそうされたい願望ありそうな…、それとも歳のせいかな。

          「淋しいから、誰かを愛するのか。
           愛するから、淋しいのか。」
          菜月が、その答えは永遠に解らないかもしれないというこの言葉、私にははっきりと後者だと思えるかも。

          恋愛に臆病で、不器用、きっと自分でそう思ってる人は、意外と多いのではないかなと思えるし、こんな風に悩むのは、私だけじゃないんだとつくづく安心させられたような。

          そして、菜月のような本当の意味での心の強さが、私にもあれば、もっと恋が上手くできるのかもなとも。

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            『Re−born はじまりの一歩』伊坂幸太郎、瀬尾まいこ、豊島ミホ、中島京子、平山瑞穂、福田栄一、宮下奈都

            Re-born はじまりの一歩
            Re-born はじまりの一歩
            伊坂 幸太郎,瀬尾 まいこ,豊島 ミホ,中島 京子,平山 瑞穂,福田 栄一,宮下 奈都
            2008/3/25発行 実業之日本社 P.269 ¥1,470

            ★★★★★
             ほんとうは幸せだけで育つ子なんか居ないとわかっている。私たちみたいに、ここが世界の底だと思うような目も見るだろうし、他人をそういう目に遭わせることもあるだろう。まっさらのまま生きていくなんてありえない。……
             でも、私は目の前に居る子どもを見て、ただ、この子に育ってほしいと願った。背負っていく罪だとか傷だとかとりあえず関係なく、幸せになってほしいと能天気なまでに思った。  〜『瞬間、金色』より〜

            音大の附属高校への受験に失敗し、音楽科のない新設の女子校に滑り込んだ、音楽家の母を持つ「私」。期待しない学校で、期待されない日々を送り、クラスの中で常に浮いている存在の「私」が、合唱コンクールの指揮者に選ばれてしまい…『よろこびの歌』宮下奈都

            入学して間もなく、大学へ通う代わりに、屋内の市民プールに足を運ぶようになり、無気力な日々を送っていた大学生の「克彦」。プールで泳いだ後、休憩していた克彦は、ウォーキングの老人ばかりのプールで、熱心に泳ぎを覚えようとしていた一人の老人に強引にコーチを頼まれ…『あの日の二十メートル』福田栄一

            親の都合で転校を繰り返し、新しい学校に溶け込む術をすっかり会得していたはずの「シンジュ」は、危険を承知でクラスで浮いている「ナナミ」と仲良くなり、卒業までイジメられ続けることに。
            そんな中学生活に終わりを告げ、心機一転、新たな気分で入学したはずの高校でも「シンジュ」をイジメ続けた女子と再び同じクラスになってしまい…『瞬間、金色』豊島ミホ

            父親の浮気から「解散」することにした、家族で過ごす最後の日、父親の携帯に見ず知らずの男から「友達になってください」とのメールが入り、親子三人はメール相手と会うことに…『残り全部バケーション』伊坂幸太郎

            他、『ゴーストライター』瀬尾まいこ、『コワリョーフの鼻』中島京子、『会ったことがない女』平山瑞穂の、7人の人気作家さんによる「はじまり」がテーマのアンソロジー。

            「迷い、揺れ、苦しみながら選びとった、これがわたしの生きる道――。
            時代を鮮やかに切り取りつづける7人の作家が描く、新たな出会いと出発の物語。
            オール書き下ろし&オリジナルの珠玉アンソロジー。
            わたしの人生、もう一度ここから。」と、いうことで。


            瀬尾さん、伊坂さんのが読みたくて買ったけど、一番印象に残ったのは福田さんの『あの日の二十メートル』と、豊島さんの『瞬間、金色』。

            特に『瞬間、金色』の「シンジュ」と「ナナミ」のつかず離れず(?)の関係がとても良くて、でも二人の青春は厳しくて…「生まれてこなきゃよかった」と昔つぶやいた「ナナミ」が、出産して感じた思い、それがすごくほっとしたというか。
            そして、いじめっ子にいったい何をして、あんなに怯えさせたのか…も知りたいところ。

            瀬尾さんの『ゴーストライター』は、最近出た『戸村飯店青春100連発』の元となった話、ということでそれを読む前に読みたかったけど、相変わらず少し心に痛い話という感じ。家を出て行く兄の、家族への思いが辛いというか、本当の気持ちが知りたくなってしまった。

            伊坂さんの『残り全部バケーション』も、相変わらず全く接点のないはずの、ちょっと変わった家族と、犯罪の片棒を担ぐ男との二つの物語が繋がっていく様がさすがだなと思わせられるお話で…「レバーをドライブに入れれば勝手に前に進む」という台詞は、心に刻みたくなる良い言葉かも。
            に、しても「解散」て、そんな『ホームレス中学生』みたいな…。

            「はじまり」の物語。まさに今の季節にぴったりだなと。
            ただ、「はじまり」の前には、悲しい別れがいつもつきものだなと、つくづく感じる今日この頃。ううっ。

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              『流星の絆』東野圭吾

              流星の絆
              流星の絆
              東野 圭吾 2008/3/5発行 講談社 P.482 ¥1,785 
              ★★★★★
               彼等の信頼を裏切ることなどできないと思った。幼い日から、いつか三人で両親の仇を討とうと話し合ってきたのだ。その固い結束を、一時の淡い恋心などを理由に壊すことなどできない。
               この男は――行成の背中を睨みつけ、静奈は自分に言い聞かせた。
               この男は、自分たちの両親を殺した犯人の息子なのだ――。

              子ども達がこっそり家を抜け出し、流れ星を待っていた深夜、家に押し入った何者かによって両親は殺害され、幼い弟、泰輔だけが逃げていく男を目撃することに。

              残された三人の子ども達は施設で育ち、そこで両親の仇を討つことを誓う。

              そして大人になり「騙される側の人間より、騙す側の人間」に回ることに決め、長男、功一の明晰な頭脳、二男、泰輔の人当たりの良さ、末の妹、静奈の美貌をもって次々と「カモ」を陥れることに成功した三人が、次なるターゲットとして目をつけたのは、大手洋食チェーン店のオーナーの一人息子、行成。

              まんまと行成に近づくことに成功した静奈と泰輔の前に突如現れた行成の父は、両親が殺された夜、泰輔が見た、犯人かもしれない男。

              時効を目前に控え、ようやく容疑者を探し当てた三人は、男の周囲に仕掛けをし、確実に陥れることに成功していくものの、唯一の誤算、静奈の行成への恋心に気付いてしまい……。

              『息もつかせぬ展開、張り巡らされた伏線、驚きの真相、涙がとまらないラスト。
              「この小説は私が書いたのではない。登場人物たちが作りだしたのだ。」――東野圭吾
              すべての東野作品を超えた現代エンタメの最高峰』だ、そうで。


              無性にハヤシライスが食べたくなったというか、一から作りたくなってしまうようなお話で…。

              最近読んだ東野さんの中では、一番良かったかもだけど。
              うーん…、やっぱりもっと凄いの(『白夜行』以上のもの)を期待してしまうから、なんだかなぁと。

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                『有頂天家族』森見登美彦

                有頂天家族
                有頂天家族
                森見 登美彦 2007/9/25発行 幻冬舎 P.357 ¥1,575
                ★★★★★
                 平安遷都この方続く、人間と狸と天狗の三つ巴。
                 それがこの街の大きな車輪を廻している。
                 天狗は狸に説教を垂れ、狸は人間を化かし、人間は天狗を畏れ敬う。天狗は人間を拐かし、人間は狸を鍋にして、狸は天狗を罠にかける。
                 そうやってぐるぐる車輪は巡る。
                 廻る車輪を眺めているのが、どんなことより面白い。

                狸界を束ねる、洛中に名高い立派な狸であった父親の血を引き継いだ下鴨家の四匹の息子たち。

                責任感の強さだけを受け継いだ、かちかちに頭の堅い長男「矢一郎」、暢気さだけを受け継いだ引き篭もりの二男「矢二郎」、阿呆さだけを受け継いだオモシロ主義の三男「矢三郎」、そして純真さだけを受け継いだ、底抜けに繊細で化け下手の末の弟「矢四郎」。

                そんな四匹の「ダメ兄弟」のだめっぷりを温かく見守る偉大な母。

                大正時代から続く美食家たちの集まり、毎年行われる忘年会で「狸鍋」を喰らうのが習わしの「金曜倶楽部」。

                下鴨家と敵対する夷川家。

                そして下鴨一族の恩師でありながら、山を追われ、今は出町柳のアパートでつましく暮らす孤高の天狗「赤玉先生」と、「赤玉先生」が愛してやまない、人間でありながら天狗よりも天狗らしい「金曜倶楽部」の紅一点のメンバーである美貌の「弁天」。

                そんな個性溢れる面々と、立派すぎる父親を持つがゆえに「立派な父の血を引きそこねた阿呆たち」と、世間からは評される、堅い絆で結ばれたちょっぴり残念な四人の息子たちが、京都の街を縦横無尽に駆け巡る壮大なファンタジー(?)もしくはドタバタ劇。

                『偉大なる父、優しい母、かけがえのない兄と弟、こんなファミリーがまだ日本にあった。
                ……でも、これ、全部「狸」の話。
                かくも毛深き家族愛!! 』だ、そうで。


                これは、なんとも説明のしようがないオモシロさというか。
                完全にツボに嵌ってしまった。

                京都に住んでて良かったなぁと(出町の桝形商店街は馴染みの場所なだけに余計に…)つくづく思わせてくれるし、すれ違った人たちが実は狸だったりしないかなと期待してしまうし。

                誰もかれもものすごく愛すべきキャラクターで、物語の構成もなんとも素晴らしいし。徐々に徐々にきて、最後にドッカーンとはじけるのが堪らなく楽しい(そんなもんにまで化けられるのか…と、想像を絶する化け合戦もわくわくするし)。

                笑いあり、涙あり(母親狸の命の恩人の話や、矢二郎がカエルになってしまった話なんて、もう号泣してしまうぐらい)、そしてちょっぴりサスペンスというか、父親の死を巡る陰謀ありの盛りだくさんで。

                敵対する夷川家のアホ兄弟、四文字熟語好きな「金閣」「銀閣」も最高だし、その妹の矢三郎の元婚約者で姿を現さない「海星」も堪らなく可愛いし、矢四郎のしっぽもえも言われず可愛いし。

                まさに「面白きことは良きことなり!」の台詞を地でいく極上のエンターテイメント。

                そして「くたばれ」の台詞もまた最高(いつか誰かに使ってしまいそうな)。

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                  『阪急電車』有川浩

                  阪急電車
                  阪急電車
                  有川 浩 2008/1/25発行 幻冬舎 P.221 ¥1,470
                  ★★★★★ 
                   宝塚から出発し、乗客を乗せたり降ろしたりしながら西宮北口まで到着した電車は、また新たな乗客をその車内に招き入れた。
                   やがてルルルとホームの乗客を急かす発車のベルが鳴り、駆け込み乗車を一人二人受け入れる寛容さでドアが閉まる。
                   そして電車がホームを滑り出た。西宮北口から宝塚までを遡る車中、乗客たちがどんな物語を抱えているか――それは乗客たちそれぞれしか知らない。

                  それまで図書館で顔を見知っていただけの男女が、偶然(?)同じ電車で隣同士に座ったことから、恋が始まる『宝塚駅』から出発し、

                  真っ白なドレスで周囲の目を引く結婚式帰りの美人OLと、電車で乗り合わせた孫娘を連れた老婦人とのお話『宝塚南口駅』⇒『逆瀬川駅』⇒『小林駅』と電車は進んで、

                  一緒に暮らす部屋を探すために電車に乗ったはずのカップルが、男が途中下車してしまい一人取り残される女子大生、そして聞こえてくる車内の女子高生たちの他愛もない会話『仁川駅』⇒『甲東園駅』

                  さらに電車は進み、偶然同じ大学に通っていることが発覚したことから、言葉を交わすようになった、似たもの同士の初々しいカップルの話『門戸厄神駅』⇒『西宮北口駅』

                  そして、折り返し。
                  『西宮北口駅』⇒『門戸厄神駅』⇒『甲東園駅』⇒『仁川駅』⇒『小林駅』⇒『逆瀬川駅』⇒『宝塚南口駅』⇒『宝塚駅』の、電車は走り続けるものの、とりあえず物語は終わりを迎える16編の連作短篇集。

                  「電車は、人数分の人生を乗せて、どこまでもは続かない線路を走っていく――
                  片道わずか15分。
                  そのとき、物語が動き出す。
                  累計45万部突破!『図書館戦争』シリーズ著者による最新作!!」だ、そうで。


                  正直『図書館戦争』シリーズは、一冊目で挫折してしまった(ベタ甘はあんまり…今は読みたい気分でないので)けど、これは本当に面白くて、寝る前に読み始めたら止まらなくなって寝不足になってしまった…。

                  元彼の結婚式帰りの白いドレスのOLの話はすごく共感できる好みの話で、特に老婦人の一言で途中下車した『小林駅』の話が本当に暖かくて泣けてきて、私もここに住みたい!と思えるぐらい。

                  ほぼ実話という女子高生たちの恋バナも最高に面白いし、それぞれの話がリンクして、こうしてすれ違うだけの人たちに影響されたり、心が温かくなったり…その匙加減が絶妙。

                  高校生の頃、良く利用した「阪急電車」が舞台なだけによりいっそう愛着がわく一冊というか…中州の「生」の文字の意味も重くて、しんみりとしてしまった。

                  「生」といえば、私も「生ビール」派、なんで「ベタ甘」よりも、こっちの方が(少々「甘い」もあったけど)断然好きかな。
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                    『静かな爆弾』吉田修一

                    静かな爆弾
                    静かな爆弾
                    吉田 修一 2008/2/25発行 中央公論新社 P.199 ¥1,365
                    ★★★★★
                     何がどうなろうとしているのか分かっていたのに、楽観的な気持ちのほうを信じて、声を上げなかったのは誰か。
                     大丈夫だと思う気持ちはどこからくるのか。
                     大丈夫だと思いたい気持ちはどこからくるのか。
                     大丈夫だと思えない気持ちは、いったいどこへ行ってしまったのか。

                    公園での偶然の二度の出会いから、思い切って彼女をファーストフードの店に誘い、いつしか週末を一緒に過ごすようになった、テレビ局に勤める俊平と、耳の不自由な響子。

                    響子と一緒に暮らしたいと考え、実家の両親にも響子を紹介し、響子の気持ちをよそに、両親に温かく迎え入れられたことに安堵する俊平。

                    そして希望の部署から異動を命じられ、腐っていた俊平の身に、突然歴史的な事件を追うという仕事上でのチャンスが訪れ、多忙になったことから、二人の気持ちはすれ違ってしまうように…。

                    「出会いは突然で、言葉にならない緊張のなか、出会った彼女は彼の心へしっかりと刻まれた。過ぎ行く日々に翻弄されながら保たれる絆。恋愛小説の新境地を切り開く意欲作。」だ、そうで。


                    とにかく『悪人』に惚れこんでしまったもので、あの興奮をもう一度…と思ったら、ちょっと肩透かしをくってしまった感じ(決して悪くはないけど、期待しすぎてしまった分、ページ数の少なさに、がっかりしてしまったと言うか、そう言えば、もともとはこういうイメージだったなと)。

                    俊平の気持ちは『君の手がささやいている』の旦那さんも、そんなことしょっちゅう感じてたなぁと、あのドラマがとても好きだったので、懐かしくてしみじみしてしまった(『星の金貨』も好きだったし)。

                    「それまで知っていた世界では、交わす言葉がないということは、用がないということを意味していたし、用がないのに一緒にいるのは不自然だった。…」という俊平の言葉は、以前の私もそう思っていたし、まさに私も最近感じていたことで(私の場合は、以前の教訓を胸に余計なことをしゃべらんようにと自分を戒めて、敢えて話さないようにしてる部分もあるけど)。

                    なので、会話なんてなくても、用なんてなくても、側にいたいと思う気持ちは、今ならとても良くわかる(そもそも男の人と、話したい内容なんて、そうそう私にはなくて、無理に会話をしようと思うとしんどくなるので、話さなくていいなら、その方が楽チンだし…普通のカップルって、みんな何話してるんだろうとかえって不思議かも…)。

                    付き合って半年が過ぎて、彼女の何を知っているのか…と考える俊平の気持ちは良く分かるけど、すれ違い方が普通すぎるというか、この設定でなくても、そうなってしまうような。

                    駅での見送りのシーンは、痛いほどよく分かるし…。

                    途中、これが妻であれば仕事を休んでも探すのか、彼女だからこうして普通に出勤しているのか…みたいな文章があったけど、その違いって何だろう?とふと疑問に思えてしまったような(妻なら…というのは、体裁が大事ということなのかな?そこら辺はリアルというか、何というか)。

                    ラストはちょっと「あれれ?」という感じ(彼女の気持ちがわからなすぎて…)。

                    そして、俊平の追っかける歴史的事件の方の緊迫感が、私が無知すぎるせいで、あまりピンとこなかったのが若干読んでいて、なんだか申し訳ないなと思わされてしまった。

                    ただ、そんな私でも、冒頭の引用部分の言葉は、結構考えさせられてしまったかな。
                    「根拠なしポジティブ」というか…。

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                      『福袋』角田光代

                      福袋
                      福袋
                      角田光代 2008/2/29発行 河出書房新社 P.232 ¥1,365
                      ★★★★
                      ……ひょっとしたら私たちはだれも、福袋を持たされてこの世に出てくるのではないか。福袋には、生まれ落ちて以降味わうことになるすべてが入っている。希望も絶望も、よろこびも苦悩も、笑い声もおさえた泣き声も、愛する気持ちも憎む気持ちもぜんぶ入っている。福と袋に書いてあるからってすべてが福とはかぎらない。袋の中身はときに、期待していたものとぜんぜん違う。安っぽく、つまらなく見える。ほかの袋を選べばよかったと思ったりもする。それなのに私たちは袋の中身を捨てることができない。……

                      「やばそうな人」と「そうでない人」を見分けることのできる駅ビルの洋菓子屋で働く葛原さん。店に入ってきた一見「やばくなさそう」な見知らぬおばさんから「すぐに取りに来るから」と、中身の分からない大きな段ボール箱を無理矢理押し付けられてしまい、箱の中身を店のみんなでいろいろ想像してみたものの…『箱おばさん』

                      別々の部屋に引き込む、生活習慣の異なる夫婦。妻が毛嫌いする「拾いグセ」が治らない夫が今回拾ってきたのは、手書きでタイトルの記された数本のビデオテープ。早速自分の部屋でテープを1本ずつ見始めた夫は、ビデオの元の持ち主に自分たちの姿を重ね…『イギー・ポップを聴いていますか』

                      夫婦揃って離婚届を提出した帰り道、夫と別れ、ひとりぼっちになった妻は、公園で見知らぬ若い母親から、赤ん坊を押し付けられてしまい…『白っていうより銀』

                      社内で「フシギちゃん」と陰で呼ばれる年長の派遣社員、長谷川さんに彼氏の愚痴をこぼしたことから、一緒にご飯を食べることになった十歳年下の「私」。お酒が進むうち、長谷川さんの壮絶な過去の恋愛話を聞かされて…『フシギちゃん』

                      母親の四十九日の法要の後、母の遺言に従って遺産を分配することになった、四人兄妹。それぞれの使い道に思いを巡らせる兄妹たちが、遺言状を開けてみると…『母の遺言』

                      別の相手とやり直したいと家を出て行った夫宛てに届いた同窓会の案内状。代理で出席することにした妻は、夫の同窓生達から、自分の知らない大学時代の夫のエピソードを聞かされて…『カリソメ』

                      同棲生活をはじめることにした、恋愛経験の少ない似たもの同士の男女。引っ越してきた一軒家の玄関先から動かない一匹の犬を異様に気にする彼女の奇行に、彼女の意外な一面を見た彼氏は…『犬』

                      両親から縁を切られたろくでなしの兄の行方を捜すために、兄に逃げられた兄の結婚相手と称する面識のないケバイ女と、土地勘の全くない「大阪」へ遠路はるばるやってきた「私」。兄の行方などどうでもいいと考えていた「私」は、女のペースにすっかり嵌り…『福袋』の8編から成る短編集。

                      「私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…
                      人生に当たりハズレなんてない!?
                      直木賞作家が贈る8つの連作小説集」だ、そうで。


                      『母の遺言』の遺言の中身の意外さには驚かされたけど、母親って「女」だし…なんだかものすごく納得できるようなお話で、それ以前の兄妹たちのバトルというか、そういうのも結構面白くて好きなお話。

                      『犬』も、お互いのことをまだ良く知らないでいる恋愛馴れしていない男女が一緒に暮らし始めて、こんなことでこうなるのかと、何か身につまされるようなお話で。

                      もしも私が結婚したら、きっとこうなるだろうなぁと思える夫婦の関係というのが、なかなか絶妙で、相手のこと、どれだけ知っているのか、本当に知っているのか、知ってなくちゃいけないのか、知らないほうがいいのか、なんだかぐるぐると考えさせられてしまうようなお話が多かったような。

                      何が入っているのか分からないからそそらてしまう「福袋」。
                      期待しすぎて、開けてがっかりすることの方が多いけど、普段自分では買わないようなものでめっけものなんかがあったりするのも「福袋」ならではなのかもなと。
                      結局は自分の心の持ちよう次第と言うか。

                      そして、どれだけ相手が分からなくても『フシギちゃん』の、長谷川さんの真似だけは絶対にしたくないなと。こわすぎるし。

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