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    『悼む人』天童荒太

    悼む人
    悼む人
    天童 荒太 2008/11/30発行 文藝春秋 P.450 ¥1,700
    ★★★★★
     彼の名前は、聞きそびれました。だからわたしは、〈悼む人〉と呼んでいます。
     彼のことを知りたいです。あのときもですけど…時間が経つごとにいっそう、彼のことをどう考えればいいのか、わからなくなってきたのです。
     彼はいまどこですか。何をしていますか。なぜあんなことをしていたのでしょう。いまもああした行為をつづけていますか。
    〈悼む人〉は、誰ですか。

    大好きだった祖父や親友の死をきっかけに、この世で唯一の存在であったはずの人たちを忘れ去ってしまうことの罪悪感から、仕事を辞め、見ず知らずの死者を「悼む」ために全国を放浪する青年、坂築静人。

    そんな静人の「悼み」の現場を偶然目撃し、「そんなことをして一体何になるのか」と静人の偽善的とも取れる行為に疑問を抱き、彼が本物なのかどうなのか確かめるように目撃証言をネットで募りだしたのは、取材の強引さから陰では「エグノ」と呼ばれる週刊誌記者、父親との確執から、自らの家庭もうまく築けなかった薪野。

    夫を殺害し、罪を償って出所したものの居場所をなくした女は、殺害現場で、夫を「悼む」静人に出会い、彼の旅に同行することに。

    一方、静人の心情を理解しつつも、その身を案ずる母巡子は、末期の癌に侵され、家族に見守られながらの自宅での死を望み、静人の帰りを待ちわびる。

    母の病を知りもせず、ひたすら死者を「悼み」続け、時には、遺族から罵倒され、また、時には感謝されながら、さまざまな死者を心に刻みつけようとする静人。

    そして蒔野のHPには、日に日に「悼む人」静人の目撃証言の書き込みが増えていき、蒔野自身の取材の方向にも変化が訪れ、凄惨な事件の被害者の、あまりにも意外な「生前」の過去を知らされることに……。

    「聖者なのか、偽善者か?〈悼む人〉は誰ですか?七年の歳月を費やした著者の最高到達点!」…だ、そうで。


    大切な人や、大切な生き物たちが唯一の存在であったことを、忘れないように…というのは、ものすごく理解できるけど、見ず知らずの赤の他人のそれだけの膨大な数の死者のこと、本当に全部覚えていられるかなと、最近記憶力の全くなくなった私には、何だか「痛む」お話で。

    うーーーん……これは難しい。
    何だか『包帯クラブ』の大人版のようでもあり。
    テーマや、天童さんの「思い」はすごく伝わるけど、その分なんだかしんどくなって、読むのにものすごく時間がかかってしまった(正直、最初はつまらないと思えてしまったし)。

    ただ、静人に同行するようになる倖世が登場したあたりから、ちょこっと読み進めやすくなったかな(夫を殺害するに至った真相も、興味深くて)。

    何より、延命を望まず自宅でのケアを望む母親の、ひしひしと迫り来る癌との闘いは圧巻で、ものすごくリアルに感じられるし、でも、もし自分がそうなったら…多分こんなに強くなれないなと、そこは素直に感動してしまった。

    相変わらず、天童さんらしく、記者の薪野の父親との確執や、倖世の夫との関係とか、「家族」の難しさみたいなのも書かれているけれど…いったい天童さんはどこへ向かおうとしているのかなぁと。
    天童さん自身が、静人のようにノートをつけていると知って、なおさらに…。

    結構エグかった『家族狩り』や、『孤独の歌声』にはものすごく癒されたけど、そういうのがあまりなかったこれにはあまり癒されなかったのが、逆に不思議かも。

    JUGEMテーマ:読書


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      『チェーン・ポイズン』本多孝好

      チェーン・ポイズン
      チェーン・ポイズン
      本多 孝好 2008/11/1発行 講談社 P.332 ¥1,680
      ★★★★
       もう死にたい。
       それが思いつきの呟きではなく、積極的な願望にならなければ、私は死ねないのだ。死んでもいい、と、死にたい、とでは全然違うのだ。
       それでは、私は死にたいだろうか?

      誰からも愛されず、誰からも求められず…。

      恋愛も結婚も早々に諦め、心から打ち解けられる友人もなく、大したキャリアもないままに雑用同然の仕事を黙々と、ただこなすだけの日々を送る三十路過ぎの女。

      定年までの20余年、簡単に想像できる分、それは、彼女にとっては絶望的な未来――。
      最後の拠り所としていた唯一の他者との繋がり、「ブログ」でも悪意にさらされた女は、ある人物と出会い、その人物との約束である一年後の「安らかな死」だけを心待ちに生きることに…。

      一方、取材対象であった二人の人物に相次いで自殺された新聞記者は、その死の不自然さから同様のケースについて調査を開始する。

      そして、同時期に起きた一人の女性の自殺に着目し、彼女の周囲を徹底的に調べ上げた記者が辿り着いた、彼らの死に纏わる真実とは――。

      『あと1年。死ぬ日を待ち続ける。それだけが私の希望――。
      かりそめに生きることは、もうできない。選んだのは「死」。
      不思議な自殺の連鎖を調べる記者。そこに至るただひとつの繋がり。
      「生」の意味を現代に投げかける、文句なしの最高傑作!』だ、そうで。


      「一年後の安らかな死」を約束されたとしたら、自分ならと真剣に考えさせられてしまったかも。
      この主人公の一人である女性同様、私もキャリアとか関係なく、多分他人から見れば別に誰にでもできるような仕事をしているし(人間関係は全然違うと思えたけど)、定年までの日々も、安易に想像できてしまうし…。

      ただ、まだそこまでの「絶望感」は、感じてないかなと(「面倒臭い」というのは、ときどき感じることだけど)。

      一年後に楽に死ぬことだけを「生きがい」として、仕事を辞め、自分の存在価値を見出した彼女の変貌振りは目を見張るものがあって、「あれ、こんな言葉遣いのキャラだっけ?」とか、たかだか30過ぎなのに終始「おばちゃん」と呼ばれることには違和感を感じたけど、まあ、そういうことかと、納得。

      前に読んだ平安寿子さんの本で『誰かに何かをしてあげたいという思いは、エネルギーだ。その反対に、何かしてもらいたいという渇望は、何も生まない。 自分を救うのは、この「何かしてあげたい」という思いかもしれない。』という一節があって、つくづくその通りだと思えたけど、これもまた、そういう類の本なのかもしれないなと、つくづく(謎解き?裏切られ感?としてもなかなかのものかな)。

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        『聖女の救済』東野圭吾

        聖女の救済
        聖女の救済
        東野 圭吾 2008/10/25発行 文藝春秋 P.378 ¥1,700
        ★★★★
        私はあなたを心の底から愛しています。それだけに今のあなたの言葉は私の心を殺しました。だからあなたも死んでください――。

        妻、綾音の帰省中、自宅で変死体となって発見されたIT関連会社社長、真柴義孝。

        真っ先に疑われたのは、人気のパッチワーク教室を開く妻、綾音の愛弟子でもあり、義孝の不倫相手でもあった、遺体の第一発見者、宏美。

        夫との関係を知りながらも、必死に弟子の宏美を気遣い、かばおうとする綾音の様子に不信感を抱いたのは、警視庁捜査一課の若きホープ、女性ならではの鋭い視点を持つ内海薫。

        捜査が進むうち、綾音が犯人ではないと確信する先輩刑事、草薙をよそに、綾音の鉄壁のアリバイを解くために内海が訪れたのは、草薙の友人の物理学者、これまで数々の難解な事件の捜査に協力してきたガリレオ先生こと、湯川。

        あの事件(『容疑者xの献身』)以来、捜査に協力的でなくなっていた湯川を動かしたのは「草薙の恋心」?

        そして天才物理学者、湯川をもってしても「完全犯罪」と言わしめた、「理論的には考えられても、現実的にはありえない」虚数解のトリックとは――。

        『ガリレオが迎えた新たなる敵……それは女
        おそらく君たちは負ける。僕も勝てない。これは完全犯罪だ。
        「ガリレオ」シリーズ2冊同時刊行 情念の長篇』だ、そうで。


        2冊同時刊行とは、なんと強気な…(そして懐にやさしくない)。

        これまで文庫で読むものと思っていた短編集、ガリレオシリーズの新作、短編集のほうの『ガリレオの苦悩』で、初めて登場した内海刑事がこちらでも大活躍(結構男二人のコンビが気に入っていたので、最初はなんだか違和感を感じたけど…イメージもすっかり定着してしまってるし)。

        まあでも、草薙刑事がそういうことになったなら…こういう展開も致し方ないのか。
        ただ、最近は疎遠になっていたといっても、やっぱり友人は友人なので、草薙の真意を知る湯川が語る、草薙の大学生の頃のエピソードがなかなか良くて、「それがどうした」の台詞はかっこよかったなと。

        最近の東野さんの作品の中では、一番読み応えがあったし、トリックも、ただただ「すごいなぁ」と感心した(「虚数解」なんて言葉すら知らなかったし…)けど、ここに出てくる容疑者(のような)の女性たち、何だか皆おかしいような…。

        こんなことをのたまう男を好きになるのも、結婚したがるのも、こんな男のために人生を棒に振るのも…、まさか金目当てじゃあるまいし…て、もしかしてやっぱりお金なのかな。

        たぶん、トリック重視のシリーズ(『容疑者xの献身』は、そうでもなかったかな)なので、仕方ないんだろうけど、女性たちの性格が悪いというか(いったいどこに聖女がいるのか…)、動機的に、そこはそうでなくて、こうであってほしかった…みたいな、もやもや感が若干残ってしまったかも。

        そして、本文中に不自然に(たぶん)あの方の名前が二度も出てくるのは、東野さんのサービスなのか…映画の宣伝のための無理矢理なのか…(たぶん前者だとは思うけど)。

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          『平等ゲーム』桂望実

          平等ゲーム
          平等ゲーム
          桂 望実 2008/8/25発行 幻冬舎 P.346 ¥1,575
          ★★★★★
          「平等だと幸せなんでしょうか?」
           息を呑み、僕は途端に不安になった。
           わからない。
           平等であることが幸福の条件だと思っていた。だが……。

          住むところも食べ物も、仕事さえも与えられ、島民全員が何不自由ない暮らしができるユートピア、瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。

          人口1600人の小さな島では、代表者は存在せず、どんな小さな決まりごとでも、何もかもが島民の投票による多数決で決定され、そこに住む人たちはみんな、本土の人間から「いい人」と呼ばれ、争いも妬みも、もちろん格差もなく、誰もが平等。

          そんな楽園のような「鷹の島」から、「勧誘係」の仕事で本土に渡ったのは、生まれてから34年間、ずっとこの島で暮らし、この小さな島を誰よりも誇りに思う、芦田耕太郎。

          島民の補充のため、抽選で選ばれた本土に住む「対象者」に島の素晴らしさを懸命に伝えようとする耕太郎。

          ところが、一度は「鷹の島」での暮らしを希望していた「対象者」たちの中には、島での暮らしを拒む者も…。

          そんな対象者たちの島での暮らしを望まないという気持ちが理解できない耕太郎が、「対象者」に近づくために習い始めた「華道」をきっかけとした様々な人達との出会いから、「達成感」や「敗北感」、そして「悪意」といった、島ではおよそ知ることのなかった感情を知ることに。

          そうして島に戻った耕太郎は、不正のないはずの島「鷹の島」の真実の姿を目の当たりにし……。

          『瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。そこでは1600人が、全員平等。果たしてそこは楽園か、それとも……?現代社会に蔓延する「平等幻想」をテーマに描く傑作エンターテインメント長編。』だ、そうで。


          実際にこんな島があって、住みたいかと聞かれれば、私もあんまり魅力を感じないかも(もう少し歳取ってからなら、多分住みたいと思うかもだけど)。

          ここに出てくる女性のように、特に誰かと比べて、より良い暮らしというのを望んでるわけではないし、ごくごく普通でいいと思っているけど、その普通がなかなか難しいのも現実かな…、でもやっぱり運動会でみんなでお手つないでゴール、みたいな社会は面白くないなと思えてしまうし。

          「格差」があまりにもありすぎるのは嫌だけど、「平等」もどうなんだろう…と、ものすごく考えさせられてしまったかも。

          いい歳の大人のはずの耕太郎が、本土の人たちとの出会いによって、どんどん成長していく過程は興味深いし、人間の成長に「挫折」が必要というのも、ものすごく納得。

          その人のエピソードを知って、似顔絵が変わるというのも、興味深いお話で。

          今回一番魅力的なキャラの、船員の柴田さんの「だいたい、その守らなくてはいけないルールって本当に完璧なんでしょうか? 最善で最高のものなんでしょうか?」という台詞も、すごく良くわかるし、融通の利かない「正しい」とはいったい何ぞや?というか…。

          不正を許そうとしなかった耕太郎もだけど、過ちばっかり繰り返している私みたいな人間も、きっとユートピアには住めないのだろうなと、つくづく。

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            『告白』湊かなえ

            告白
            告白
            湊 かなえ 2008/8/10 双葉社 P.268 ¥1,470
            ★★★★
            私は聖職者になりたいなどと思っていません。
            警察に真相を話さなかったのは、AとBの処罰を法に委ねたくなかったからです。殺意はあったけれど直接手を下したわけではないA。殺意はなかったけれど直接手を下すことになったB。警察につきだしたとしても、二人とも施設に入るどころか、保護観察処分、事実上の無罪放免になりかねません。………私は二人に、命の重さ、大切さを知ってほしい。それを知った上で、自分の犯した罪の重さを知り、それを背負って生きてほしい。では、どうすればいいのか。

            ある中学校での終業式の後のHRで、クラスの生徒に幼い愛娘の命を奪われた女教師が、淡々と語り出した事件の真相。

            当初、事故で片付けられてしまった職場内での母親の監督不行き届きによる娘の死が、実は悪意ある生徒の手によるものであったことを知り、事実関係を確認した上で教師が自らの手で、犯人である生徒に下したおぞましい制裁。

            そして教師が去った後、残されたクラスの生徒達の間で起こる二重、三重の悲劇――。
            「先生は、少年二人を自分が直接裁いたことを、今どう思っていますか?」

            『「愛美は事故で死んだのではありません。
            このクラスの生徒に殺されたのです」
            第29回 小説推理新人賞受賞
            選考委員をうならせた、驚異の大型新人現る!』だ、そうで。


            評判が良いのはあちこちのブログをのぞかせてもらって知ってたけど、これは本当になかなか…おぞましくて、ぞくぞくするようなお話で(これが作り事で良かった、というか)。

            本当にこの先生は生徒に対して、こんな怖ろしいことをしてしまった(これは半端なく怖い…)のか???も、気にはなったけど、それ以上に、罪を犯した生徒たちをばっさりと切り捨てるような一刀両断口調が結構小気味良くて、子供におもねないところが、読んでいて、すっきりしてしまうような(「馬鹿ですか?」には、かなり…)。

            少年犯罪の罰の軽さに対する作者の(?)静かな怒りみたいなのが、沸々と感じられて、その辺も読み応えがあったかも。

            教師の告白から始まり、関係者、当事者それぞれの視点に切り替わって語られる事件の真実と、その後の彼らや、彼らの生活環境、その他もろもろ…そして全てが明かされた後の衝撃の結末?も、なかなかなもので。

            少年二人の関係も、子供ならありそうな関係で、動機そのものも子供なら…と思えるし、でも子供だから…で許されることは決してないというのが、この教師の復讐の方法の是非は抜きにして、考えさせられるお話だったかな。

            本当にまた次回作を期待してしまうような作家さんが出てきてくれて嬉しいなと。

            ただ、「世直しやんちゃ先生」のネーミングには、「うーん?」という感じがしないでも…。

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              『サクリファイス』近藤史恵

              サクリファイス
              サクリファイス
              近藤 史恵 2007/8/30発行 新潮社 P.245 ¥1,575
              ★★★★★
              教えてほしい。
              どこからやりなおせば、この結果を避けられるのだろう。後悔せずに済むのだろう。


              「勝つこと」の重圧から逃げ出すために、陸上選手から自転車のロードレーサーへと転向した「チカ」こと白石誓。

              大学卒業後、プロのロードレースチーム「チーム・オッジ」にスカウトされ、2年目の今はチームのエース石尾のアシストとして、自分が勝つために走ることより、ただ石尾を勝たせるためのチームプレイに徹することに、自分の持てる力をあますことなく発揮する「チカ」。

              ところがアシストとして働くために選抜されたはずの国内大会で、思いがけずも勝利を手にしてしまい、海外のチームからも注目されるようになった「チカ」に、同じチームの先輩から明かされる、石尾に潰されたという過去のチームメイトの事故の話。

              そしてロードレースの本場、ヨーロッパでの「チカ」にとって初めての海外遠征先で起こる悲劇――。

              「ただ、あの人を勝たせるために走る。
              それが、僕のすべてだ――。
              二転三転する真相、リフレインし重さを増す主題、押し寄せる感動!
              自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。」だ、そうで。


              装丁からして、ただのスポ根ものかと敬遠してたけど、本屋大賞の2位に選ばれていた(しかも私が大絶賛の『悪人』を抜いて)ので、それほどまでに面白いのか…と、とにかく読んでみたら「とにかく読んでみて下さい。絶対に損はさせません!」の帯に偽りなしだなと、納得(ミステリとは知らなかった…)。

              競輪とロードレースの違いもあまりよくわからなくて、個人競技じゃなくてチームプレイだというのに、まず驚いたし、一人のエースのために、そんな風にサポートに徹する選手たちがいるというのも、そして「そういうのが好きなんだ」と考える、ちょっと暗めの主人公「チカ」の辿り着いた真相に、しばし茫然。
              そして真実を知ったあとにじわじわと湧いてくる、ものすごい感動。

              そこまでの伏線も素晴らしいし、何となく「やられた」感もあって…(ただ、「チカ」の時間が止まるほど、あの彼女は素晴らしくないような…)。

              「チカ」のチームメイト、伊庭の言うように「そんなことのために…」とも思えるけど、実際にスポーツやってる人なら、まさにそれが悲願なら、理解できるのかもしれないなとも。

              タイトル「サクリファイス」の意味と、勝利の重圧から逃げ出したはずの「チカ」の最後の台詞「ぼくの勝利は、ぼくだけのものではない。」に込められる、様々な思いに、また涙…。

              オリンピックが終わった直後なので、なんとなく余計にこの本を読んで良かったなと思えたのかも。
              人を感動させることのできるスポーツって、本当に奥が深いんだなと、しみじみ。

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                『虚夢』薬丸岳

                虚夢
                虚夢
                薬丸 岳 2008/5/22発行 講談社 ¥1,575 P.320
                ★★★★★
                この世の中には、人を殺しても、残虐な罪を犯しても、罰せられない者たちがいるのだ。
                『刑法三十九条』という法律によって。
                 心神喪失者の行為は、これを罰しない。
                 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

                ごく普通のおだやかな公園内での日常が、一人の男の登場で地獄絵図へと一変する。

                自身も傷を負わされ、成すすべもなく目の前で幼い我が子の命を奪われてしまった母親、佐和子。

                すぐ近くに居ながら、億劫がって妻子と行動を共にしなかったがために、公園での惨事に気付くことが出来なかった、父親、三上。

                9名もの人間を傷つけ、3名もの死者を出しながら、法に守られ、逮捕後は実名報道もされなかった犯人は、佐和子も顔見知りだったという、コンビニでバイトをしていた当時21歳の専門学校生、藤崎。

                事件から4年後、藤崎の姿を街中で偶然に発見してしまったという佐和子に呼び出され、妻子を守ってやれなかったことを悔い、自堕落な生活を送る三上は、事件後離婚し、今は他の男の妻となっている佐和子のために、藤崎の姿を追い求めて奔走することに。

                そして事件後、たった4年で、この街に舞い戻っていた藤崎の居場所をつきとめたものの――。

                猝爾鮖Δ靴身反佑目の前を歩いている!
                愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は「心神喪失」で罪に問われなかった。
                運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった。
                『天使のナイフ』の江戸川乱歩賞作家が衝撃の展開で描く感動作!瓩澄△修Δ如


                相変わらず、重いテーマ路線で読むのを楽しみにしていたけど…。
                冒頭の無差別殺人のシーンは、何だか生々しすぎて、まるで秋葉原の事件みたいで(この本の方が先なのが驚きなくらい)とても嫌な気持ちにさせられてしまった。

                でも、そのシーンが、犯人の残虐さを際立たせてて、何でこんなことをした犯人がたった4年で…と、ものすごい理不尽さを感じざるを得なくなるから、仕方ないのかな。

                そして、愛娘を失った後の母親と父親の子供に対する思いの重さの違いというか、司法に絶望し、闘うことを諦めた父親と、諦めなかった母親との対比(かな?)が、なかなか興味深かったかも。

                何で、こんなつまらんおっさんと再婚したのかとか、途中で感じた様々な疑問も最後には解消されたし(多分途中で、分かる人には分かるんだろうけど、私は真実を知って、「ほーーーーっ」と、ものすごく感心してしまった…)。

                次回作のテーマはいったい…と、とても気になる作家さんだなと思うのと同時に、テーマになるような事件がなくなってほしいと願わざるを得ないかも。

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                  『さよなら渓谷』吉田修一

                  さよなら渓谷
                  さよなら渓谷
                  吉田 修一 2008/6/20発行 新潮社 P.199 ¥1,470
                  ★★★★
                   でも、私は誰かに許してほしかった。あの夜の若い自分の軽率な行動を、誰かに許してほしかった。でも……、でも、いくら頑張っても、誰も許してくれなかった……。
                   私は、私を許してくれる人が欲しかった。

                  景勝地として人気の高い渓谷の側にありながら、清流からの涼風が決して届くことのない老朽化した市営団地で、ある夏の日に起きた「幼児殺人事件」。

                  大勢のマスコミが見守る中、容疑者として連行された母親の一言で、思わぬところから、15年前の事件について暴き出されることになった、隣家の夫の許されざる過去の「罪」。

                  執拗に彼の過去を探り出そうとするジャーナリストが辿り着いた、有り得ない真実。

                  そして、事件の「被害者」と「加害者」は、ただひたすら「不幸せ」に生きることを選ぶように――。

                  犢せになったら、きっと壊れてしまう。
                  どこまでも不幸になるために、私たちは一緒にいなくちゃいけない。
                  人の心に潜む「業」を描き切る。『悪人』を凌ぐ最新長篇。瓩澄△修Δ如


                  「『悪人』を凌ぐ――」かどうかは、読み手の好き嫌いかもしれない(私には『悪人』の方が断然上と思える)けど、これはこれで『悪人』同様、テーマが重くてなかなか考えさせられるところがあって…。

                  過去にあった色んな事件の寄せ集めみたいなので、こう描くのか…と(多少二つの事件の繋がりが強引な気もしないでもないけど)。

                  隣家の夫(?)の過去の事件は、被害者も確かにこういう目で見られるだろうなと、想像はつくし、加害者たちに至っても、それぞれに違う人生を歩んでて、でも結局は金の力かよ…と悲しくなるけど、現実はこうなんだろうなと思えるし。

                  ただ、「男の強さ」と「女の弱さ」というか、何かそっち側にいないと…みたいな描写は、ちょっと私には(女だからか)理解しにくいし、こういう犯罪は本当に嫌だなと。

                  なので、こんなことって有り得ないとは思うけど、最後に何となく納得させられてしまうところが、小説の凄さというか、小説だからこそというか…。

                  事件そのものは許せないのに、最後の「出会えなかった人生と、出会えた人生」どちらを選ぶかという問いに、ちょっと心が揺さぶられてしまったし。

                  そして何より、「ただ幸せになりたい」と願いながらも、それを得られない人たちの孤独を描いた『悪人』と、「幸せになってはいけない」(と、考える)この二人が「幸せ」になってしまいそうという、なんとも皮肉な対比が何となく面白いかもと。

                  『悪人』の中の「これまで寂しいと思ったことはなかった。寂しいというのがどういうものなのか分かっていなかった。ただ、あの夜を境に、今、寂しくて仕方がない。寂しさというのは、自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなのかもしれないと祐一は思う。これまでは誰かに伝えたい自分の話などなかったのだ。でも、今の自分にはそれがあった。伝える誰かに出会いたかった。」という部分がすごく良く分かる気がして、とても好きだけど、こちらの「私は、私を許してくれる人が欲しかった」というのも、何だか良く分かる。

                  人との出会いって、どこでどうなるか分からなくて、本当に複雑で難しいものだなと、つくづく。

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                    『東京島』桐野夏生

                    東京島
                    東京島
                    桐野 夏生 2008/5/25発行 新潮社 P.281 ¥1,470
                    ★★★★
                    「ああ、疲れた。あんたたち男って何を考えているのかしら。あたしが邪魔なの、それとも必要なの」

                    リストラに遭う前にさっさと会社を辞めて得た退職金を投入し、クルーザーに狂った夫とのクルーザーでの世界一周の冒険旅行の途中、嵐に遭った夫妻が辿り着いたのは、どこの国の領域かも分からない無人島。

                    日本の生活では威張り散らしていたものの無人島では無能な夫隆と、サバイバル本能に目覚めた妻、清子が救助を待ちながら暮らし始めた無人島に、三ヶ月後に漂着したのは、おいしいバイトに飛びついたものの、あまりの仕事のきつさに逃げ出した日本のフリーター、若い男ばかりの23名。

                    さらに、金銭トラブルでこの島に捨てられた中国人の男たち7名。

                    日本の若者達が、食物には困ることのないこの無人島を「トウキョウ」と呼び、それぞれ好き勝手にバラバラに暮らし始めるのとは対照的に、7人で結束し、役割分担を決め、ずば抜けた生活力を見せ付ける日本人たちから「ホンコン」と名付けられた中国人たち。

                    無人島での生活が一年を過ぎた頃、清子の夫隆が死んでしまったことから、島でただ一人の女性である40歳を過ぎた清子を巡って、男達はいろめきたつことに。

                    そして、この島での暮らしも5年目を迎える頃、清子は4度目の結婚をし、若くて美しい夫との生活に満足していたものの、「ホンコン」たちにそそのかされるままにこの島からの脱出をはかるも失敗に終わり、妊娠に気付いたものの、一度は清子が捨てた夫からも見捨てられてしまい……。

                    「あたしは必ず脱出してみせる。
                    無人島に漂着した31人の男と1人の女。
                    食欲と性欲と感情を剥き出しに、生にすがりつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読者の手を止めさせない傑作長篇誕生!」だ、そうで。


                    「無人島生活」と言えば、すぐさま「電波少年」を思い出して、懐かしくて(大好きだったので)珍しく即買いして、一気読みしてしまった。
                    島でたった一人の女性であるが故に、46歳の清子が若い男たちからモテモテって…なんとも羨ましくなるお話で。

                    これは何だかめちゃくちゃ馬鹿馬鹿しくて面白いかも。
                    日本人の若者たちが生活能力よりも、文化を優先させるというのも、「ホンコン」たちが保存食を作ったり、船を作ったり、着々と島からの脱出準備を図るというのも、何だかリアリティがあるようでいて、でもやっぱり描写が軽妙(「横山やすし」が何故か何度も出てくるし…)というか、桐野さんらしくないというか、それぞれのキャラが滑稽すぎて漫画みたいな。

                    ちくちくと現代社会を風刺してる部分も多々あって、そこもなかなか。
                    自分の姿を見ることの出来ない鏡のない無人島が「自分のことを棚に上げ、他人を見ては笑ったり憐れんだりする、厚顔無恥な場所」というのも、鏡で自分の姿が見えたところで、本質的には現代社会もそんな感じだし。

                    「紙」がそれほど大事というのには、すごく考えさせられるし、それぞれ好き勝手に生活する若者達も、なかなか適応能力があって面白いし、清子の逞しさとしたたかさは、女性ならでわだし。

                    「愛」が全くなくて、みんな自分のことだけが大事で、でも、どろどろもしてなくて、ただ「生きる」ってこういうことかなと。

                    そして最後は、まあこうなんだろうなと…めでたし、めでたし、という感じかな。
                    女は強し。

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                      『回転木馬』柴田よしき

                      回転木馬
                      回転木馬
                      柴田 よしき 2007/3/20発行 祥伝社 P.369 ¥1,785
                      ★★★★
                      自分と貴之とは、並んだ木馬に乗っていた。そのまま何事もなければ、回転が停まるその時まで、木馬は二つ、並んだまま、そして二人も、並んだままでいられただろう。だが途中で、貴之は、別の木馬に跨った。回転は続く。終わりの日が来るまで続く。そして、回転木馬の上で、それぞれの木馬は決して変わることがない。……
                      そして、回転が終わるその日まで、自分の手は、貴之の心に届かないのだろう。
                      貴之が、それを望んだのだ。

                      最愛の夫、貴之の突然の失踪後、貴之の興した探偵事務所を引き継ぎ、ずぶの素人から始め、ほそぼそと夫の居場所を守り続けてきた女探偵、下澤唯。

                      夫の帰りを待ち続けるだけの12年…大手探偵事務所の下請けとして引き受けた調査の途中、思いもかけない場所で偶然貴之らしき人物とすれ違った唯は、大手探偵事務所に夫の捜索を依頼し、自身も細い糸のような手がかりを手繰り寄せるように夫の捜索を開始することに。

                      生きていたなら、自分を裏切っていないはずがない…それでも、逢いたいという一心の唯。
                      そんな唯の前に現れた「ゆい」と名付けられた少女、そしてかつて二人が寄り添っていた頃の思い出の数々。

                      それらを手がかりに、夫貴之の居場所を突き止めた時、12年もの間、たった一人で貴之を待ち続けた唯につきつけられた、あまりにも残酷な現実……。

                      『「逢いたい。もう一度彼に逢いたい」
                      失踪した夫を追い続ける女探偵・下澤唯の前に、
                      忌まわしい過去の事件が浮かび上がる……
                      希望と哀しみが交錯する著者渾身の感動ミステリー
                      作家 新井素子さんも推薦!』だ、そうで。


                      実に12年も経ってようやく完結した、前作『観覧車』の続編の物語でもあり、これだけでも充分に読み応えのある、哀しい人間たちの物語でもあり。

                      唯が僅かな手がかりとして訪れた病院で出会った、愛人を失くした女性然り、自殺未遂を繰り返す、理不尽な事件で大切な人たちを失った女性然り、そして夫、貴之然り、本当に哀しいし、切なくて泣けてしまった。

                      特に「逢いたい」と切望し続ける人にもう二度と逢えなくて、最後に別の生き方を選択する女性の気持ちが痛いほど伝わってきて、まだ最愛の人に逢える望みのある唯にその思いを託すところがなんとも良かったなと。
                      でも、待つ女って本当に辛いなとつくづく。

                      敵討ちを心に誓う女性のエピソードも良かったし。

                      ただ、夫の失踪の真相は何だか「はいからさんが通る」のような展開かも…。
                      でも、読み終わった後、心から「良かった」と思えてしまった。

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