スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

0
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月

    評価:
    辻村 深月
    講談社
    ¥ 780
    (2012-04-13)
    Amazonランキング: 7950位

    事件を起こすなら私のほうだと思ってた。
    母を殺してしまった娘と、母との確執を抱える娘。どんな母娘にも起こりうる悲劇。
    地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。
    彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。著者の新たな代表作。
    母親を殺害し、逃走している幼馴染の行方を捜すため、フリーライター(になるのかな?)のみずほは、彼女と親交があった、故郷の「かつての友人たち」に連絡を取り、手がかりを掴もうとする。
    この前に『白ゆき姫殺人事件』を読んでいたので、何だか話がかぶっていて、二つの話の相違点がなかなか面白かったかも。
    物語の「深み」や「凄み」は、こちらが数段上かなと思えるし、その分読んでいてしんどいのもこっちかな。
    女同士の、その場にいない人間のことを話すときの意地悪さとか、自分より下だと思いたい人間に対する本音とか、どれだけ馬鹿にしていたのかとチエミが気の毒になってしまうけど、でも彼女たちの気持ちもすごく良く分かる。自分とは全く違う人間に対する「嫌悪感」みたいなもの…。

    結婚式に呼ばれなかっただけで絶縁、みたいなのは、あほらしいと思えたけど、現実はそんなものなのかな?
    「負け犬の遠吠え」を意識した彼女たちだから、こういう気の強い人の集まりは苦手だけど、かといってちょっとぬけてそうなチエミにも「うーん…」だし。

    幼馴染、というだけでその後の人生は全く違ったものになっていたのに、どうしてこの「みずほ」という女の人は、「チエミ」という女の人を、必死に探そうとしているんだろう…と、読んでいてどんどん不思議に思えてきて、ページをめくる手が止まらなかった。
    今はもう友達でもないのに。
    自分から離れていったのに。
    しかもものすごく上から目線で…。

    なので、第二章で少しはほっとして、謎も解けたかな。
    「チエミ」さんもそれが本音だったのかと。
    タイトルの意味するものが、解ってしまえば心が痛くなる。

    チエミとみずほのあまりにも対照的な親子関係と、その後の人生と。
    そして何より不思議な女同士の関係(本当は仲が良いのか悪いのかわからないけど、離れない、みたいな)が、すごく良く描かれていて、怖くなってしまった。
    これで「直木賞」で全然良かったのに、と思えるほど面白かった。

    それなら今回のは貫井さんだったかもしれないのに…と、ちょっとぶちぶち…。
    0

      『白ゆき姫殺人事件』湊かなえ

      評価:
      湊 かなえ
      集英社
      ¥ 1,470
      (2012-07-26)
      Amazonランキング: 664位

      美人会社員が惨殺された不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。同僚、同級生、家族、故郷の人々。彼女の関係者たちがそれぞれ証言した驚くべき内容とは。「噂」が恐怖を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも―― 意地悪目線が、じわじわ怖い…!!
      ネット炎上、週刊誌報道が過熱、口コミで走る衝撃、女同士の「噂」が暴走する――
      ヒットメーカー・湊かなえによる、傑作ミステリ長編!

      しばらく湊さんの本を読んでなかったけど、これは表紙の絵からして何となく面白そうな気がして、早く読みたかったので、久々に定価で本を買ってしまった…。
      内容は、まあよくある殺人事件なんだけど、読ませ方がいまどきで凝ってる。
      さすが、売り方を考えてるなぁ…という感じ。

      無惨に殺されたネット上で「白ゆき姫」と命名された美人OLが、美人すぎるがゆえに同性からは妬まれたり、怨まれたり、で、実際にはどんな人だったのか…誰かが言うように、美人でなおかつ性格も良かったのか。それとも、誰かが言うように、同性からは嫌われて当然、な性格だったのか。
      誰が、何故、彼女をあんな風に無惨に殺害したのか…。

      この手の、色んな人が語る、一人の人物像というのはどうしても貫井さんのと比べてしまうけど、今風にわざとしてあるので、何だか軽いというか…、フリーライターのあまりの無責任さに呆れてしまった。
      そして、週刊誌の記事は、実際のインタビューのやり取りとは全然違ってて、そのはしょり方が、実際こんなものかもしれないなぁと、そういうの鵜呑みにしちゃいけないなぁと納得。

      一人の人間のことを、実に様々な見方があるもんだなぁと、自分に置き換えて考えてみると空恐ろしくなったというか、きっとろくな人間と思われてなさそうで、こんなことで「自分」を認識させられたくないというか…。
      そして、この場合の彼女にものすごく同情してしまった。
      もう、どこへも戻る場所がないなんて、寂しすぎるし。

      ここに出てくる、美人OLみたいな人とは絶対に関わりたくないなと。
      0

        『新月譚』貫井徳郎

        評価:
        貫井 徳郎
        文藝春秋
        ¥ 2,205
        (2012-04)
        Amazonランキング: 4679位

        ベストセラーを連発していた美貌の人気作家、咲良怜花は、世間から惜しまれつつ筆を折る。
        それから8年、高校生の頃から彼女の作品の大ファンだったという若き編集者の訪問を快く受け入れた咲良怜花の口から、誰にも語られたことのなかった彼女の作家となる以前の話から、作家となるきっかけを作った男との顛末が語られ始める。
        それは実に数十年にも及ぶ、一人の男を愛し続けた彼女の情念の記憶であった…。
        八年前に突然絶筆した作家・咲良怜花は、若い編集者の熱心な復活のアプローチに、自らの半生を語り始める。そこで明かされたのは、ある男性との凄絶な恋愛の顛末だった―。 絶筆した美人作家が隠し通した半生とは?貫井徳郎のあらたなる傑作誕生!内容(「BOOK」データベースより)
        作家となる以前の、本名の後藤和子は全く自分に自信がなくて、人間関係も上手くなくて、そのせいでせっかく就職した大手の会社を辞めざるをえなくなって、たまたま就職試験を受けた小さな会社の社長の眼鏡に適い、外見ではなく、中身を認められたことで、初めて他人から受け入れられたことで、男に傾倒していく。
        当然といえば当然ながら見た目も良く、仕草も会話もスマートな男はとんでもなく浮気者で、和子の幸せはそうそう続かず。
        そして男との別れが、和子の人生の大きな転機となって、作家への道を歩ませる。
        ところが男との関係は断ち切れず、何度も傷つく度に彼女の文章は凄みを増し、大きな賞に何度もノミネートされるほどに。

        と、まあ、自虐的でひねくれた女のうだうだした回顧録が延々続く感じかな。
        貫井さんの本の登場人物は、得てしてぐじぐじうだうだしてる。
        そこまで両親に甘えて、僻んでお金を出させるという神経も信じがたいし、性格悪いなーと。

        会話とかも淡々としているし、付き合っているとはいえ情事のシーンとか一切ないから大恋愛とか情念とか言われても…そこまでの男と女の関係みたいなのも、ふーん、という感じ。
        同級生のストーカーまがいの嫌がらせも意外とあっさり終了してしまうし、その後出てこないし。

        まあ、そういうどろどろは他の作家さんでも書けそうなので、かえってこのあっさりさ加減が貫井さんの好きなところなのかもしれないけど。

        ただ、読んでいて途中ではたと、女流作家の体で書かれているけれども、作家になってからの、新人賞は獲ったものの、なかなか枠から抜け出せず、そこそこのものしか書けなくて、みたいなところから傑作を書くに至るまでの過程が、貫井さんご自身のことのような気がしてしまった。

        主人公が化けてからの作品、暗くてどうしようもなく後味の悪い、という作品そのものが貫井さんのお得意のパターンだし、そういうのが大好きな読者、ここにいるし。

        どこかで、この『新月譚』が直木賞候補と知って、もう結果が出ているのかと思ったら奇しくも今日が発表と、いまさら知って驚いた。
        昨日読み終えたのはたまたまなので、これはもしかして貫井さん獲れるのかも?なんて期待してしまう。三度目の正直。ありますように。

        でも私は『愚行録』や『乱反射』の方が好きだったけど。
        0

          『風紋』上下 乃南アサ

          評価:
          乃南 アサ
          双葉社
          ¥ 900
          (1996-09-12)
          Amazonランキング: 134382位

          評価:
          乃南 アサ
          双葉社
          ¥ 800
          (1996-09)
          Amazonランキング: 113909位

          父親は一流企業に勤めるごく普通のサラリーマン、長女は2浪中の予備校生、次女は姉も卒業した女子高に通う17歳。
          そして、平凡な専業主婦の母。
          傍目からは、ごく一般的な家庭であったはずの高浜家の平穏は、ある日を境に破られる。
          9月の連休前の土曜日の午後、次女の学校での父母会に参加するために、いつものように車で出かけた母親は、そのまま帰らぬ人となる。
          容疑者として逮捕されたのはかつて長女の担任であった高校教師。
          事件の概要が明らかになるつれ、被害者のはずの家族にも向けられるマスコミや世間の好奇の目。
          そして裁判が始まり、一度は犯行を認めたはずの容疑者は一転無罪を主張する……。
          ある善良な家族の上に降りかかった一つの殺人事件。被害者の遺族、そして加害者の家族がその運命を狂わされていく様を、多感な年頃の少女・真裕子を主人公にして描いた社会派問題作。(内容「MARC」データベースより)
          ここに出てくる高浜家とは家族構成が一緒だし、私も子供の頃はかなりのお母さんっ子だったので、母の死を受け入れられず、裁判が始まってからもなお、犯人を有罪にしてほしいのではなく、ただ母を返して欲しいと、それだけを願い自らも命を絶つことだけを考えて生きる高浜家の次女、真裕子に感情移入しまくってしまった。
          これほど本の世界にのめりこんだのは久しぶりかも(『悪人』以来?)。

          母親を失くしてから、それぞれの思いを持って、バラバラだった家族がかろうじて繋がって、これからを生きていこうとするのに、真裕子だけはいつまでも頑なで、でもその理由も仕方ないし、結局母親のことを一番考えて、一番必要としていたのも真裕子だし、とにかくこの子が痛々しい。

          一方の、ある日突然、殺人者の妻と呼ばれるようになり、それまでの暮らしぶりから一転、坂道を転がるように堕ちていく容疑者の妻、香織の変貌振りは鬼気迫るというか、人間の弱さなのか強さなのか、あまりのイタイ人さ加減に、とにかく凄い人としかいいようがなくて、こちらには全く同情の余地もなく。

          一人の人間が殺されたことによって、周囲に与えた影響はいかばかりか計り知れず、事件そのものを「爆風」と例えられているけれども、関係者たち、そしてそれに付随する人たちをも巻き込んで、爆風による風紋はどこまでも広がり続ける。

          事件が起こって、容疑者が逮捕されて、裁判が始まって、その間の遺された家族の心情や生活が実に表面上は淡々としていて、でもこれからもその人たちは生きていかなければならないのだから、というのがとても丁寧に描かれていて、作り物の小説を読んでいるという感じがしなかった。

          裁判ってお母さんのためにやるんだと思ってた、というようなことを真裕子がつぶやいていたけれど、確かに、裁判によって犯人の罪が確定するだけであって、殺された被害者には何の関係もないのかもしれないと、そんなもので遺された人たちの気持ちがどうなるわけでもないというのが良く分かった気がする。

          これとは全く関係ない本のレビューを見ていて、その中に、『白夜行』『疾走』と並べて『晩鐘』があげられていたので、それはぜひ読んで見たいと思って調べてみたら、『晩鐘』は、『風紋』の続編だということで、とりあえず順番通りにこちらから読んでみたけど、この事件から七年後の彼女たちがどうなっているのか、本当に早く続きが知りたいと思えるほど、1000ページ超えのページ数を感じさせないほど、かなり嵌ってしまった。

          かれこれ17年ほど前に書かれた本らしいけど、今読んでも全く違和感もなく。
          インターネットや携帯電話の普及や人間を取り巻く住環境は時代とともに随分と変わってしまった気がするけど、人間の感情や内面といったものには大した変化がないのだなとつくづく考えさせられてしまった。被害者家族に対する扱いも、現在も全く変わってない気がするし。

          本当に何でこんな凄いの知らなかったんだろうと、今までこの本の存在さえ知らなかったのを悔やまれるけど、考えたら乃南さん、昔々一冊読んで、その印象があんまり良くなかったので他のには手をつけなかったのでした。
          こんなに暗くて重い小説を書く人だったなんて、知らなかった。のは、私だけ?
          0

            『マスカレードホテル』東野圭吾

            評価:
            東野 圭吾
            集英社
            ¥ 1,680
            (2011-09-09)
            Amazonランキング: 1908位

            都内で次々に起こった関連性のない3件の殺人事件。
            現場に残されたメモの暗号から、一連の事件は同一犯による連続殺人事件として捜査され、紐解かれた暗号から、次回の殺害現場が都内の超一流ホテル「コルテシア東京」であると判明。
            潜入捜査のため、ホテルマンになりすまし「コルテシア東京」のフロントに立つのは、警視庁の若きホープ、ホテルマンの制服が一番似合うであろうことから抜擢された新田刑事。
            俄仕込みでも、実際にホテルマンとしての業務をこなし、様々な客の対応に追われ、日に日にホテルマンとしての立ち居振る舞いが板についていく新田の、捜査に直接関われない苛立ちをよそに、捜査は着々と進められ……。

            待望の新ヒーロー誕生! 極上の長編ミステリ
            都内で起きた不可解な連続殺人事件。次の犯行現場は、超一流ホテル・コルテシア東京らしい。殺人を阻止するため、警察は潜入捜査を開始し・・・。1行たりとも読み飛ばせない、東野ミステリの最高峰。
            彼の仕事は、相手の仮面をはがすこと。彼女の仕事は、お客様の仮面を守ること。
            様々な仮面をかぶった人間がやって来る――。
            東野圭吾作家生活25周年特別刊行、堂々完結!

            内容をざっと見て、東野さんの名前がなければ、多分読む気にもならなかったと思う。
            読んだ感想も、普通。

            殺人事件の捜査というよりも、昔高島家の弟がやってたドラマ「ホテル」のような様相を呈しているというか、「姉さん事件です」ばりの小さな客とのトラブルなんかがちょこちょこあったりして、あれ、メインの殺人事件はどうなってるの?という感じで、一見群像劇のようにお客様メインのお話が続く。
            「ホテル」は好きなドラマだったので、その話自体はまあ面白かったし、ホテルマンとして成長していく新田もなかなか好感が持てたけど、やっぱり普通。
            ホテルで起こったちょこちょこした事件の中に、本来の事件解決に繋がるヒントがあったりして、ひらめきのままに、新田刑事が影で大活躍。
            この新田刑事が、湯川先生、加賀刑事、に続く「第三の男」とどっかに書いてあったけど、ということは…シリーズ化?そしてドラマ化?

            新田刑事やホテルのフロントの女性より、所轄の能勢刑事が一番印象深かったような。
            頭の中では勝手に能勢刑事は中村梅雀さんに変換されてたし。

            で、結局、煌びやかな超高級ホテルの舞台裏の物語が描きたかっただけなのねというか、何だかどっちつかずの中途半端な感じがしてしまった。

            『白夜行』や『悪意』や『手紙』や『天空の蜂』みたいな、読み終わってからも余韻をひきずるような、やっぱり東野さんでなければ…と思えるような、そんな作品をもう一度読みたいと、懲りずに読み続けてきたけど、最近どれもイマイチな感じがしてしまうのは私だけでしょうか。

            0

              『灰色の虹』貫井徳郎

              評価:
              貫井 徳郎
              新潮社
              ¥ 1,995
              (2010-10)
              Amazonランキング: 116665位

              やってもいない殺人の罪で6年間服役し出所した江木雅史は、家族も仕事も婚約者も、そして生きる希望をも失い復讐へと駆り立てられる。
              そうして江木のターゲットとなった当時の事件の担当刑事、検事、弁護士が次々と不審な死を遂げていくなか、自宅で殺害された検事と懇意にしていた一人の刑事、山名が、一連の事件の共通点に気づき、6年前の事件が冤罪ではなかったのかと疑問を抱くことに。
              山名自身、恋人を無惨に殺害され、「復讐」という行為に対して、ひとかたならぬ葛藤を抱いた過去を持つ。
              出所後行方をくらましたままの江木。
              あまりにも鮮やか過ぎる犯行の手口に、「天罰」という言葉さえ頭をよぎる中、またしても犠牲者が。
              しかし誰一人として江木を目撃した者はなく、捜査は難航し…。
              身に覚えのない殺人の罪。それが江木雅史から仕事も家族も日常も奪い去った。理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は復讐を決意した。ほかに道はなかった。強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。ひとりの刑事が被害者たちを繋ぐ、そのリンクを見出した。しかし江木の行方は杳として知れなかった…。彼が求めたものは何か。次に狙われるのは誰か。あまりに悲しく予想外の結末が待つ長編ミステリー。 「BOOK」データベースより

              どこにでもいそうな、真面目に地味に生きてきた青年が、やっと幸せを掴みかけたその途端、狡猾で獰猛な刑事に犯してもいない罪を自白させられ、一般市民を見下すエリート検事や、キャバクラの女に入れあげるやる気のない弁護士、狭い世界しか知らない世間知らずの判事、たちによって殺人犯として実刑を言い渡される過程は、気の毒としかいいようがないし、実際冤罪というものがなくならないのは、少なからずこういったことが起こりえているのかなとも思えるほど、そこまでの描写が分かりやすい。
              ことの発端となった殺人事件の被害者も、この人なら殺されても仕方ないかな、と思えてしまうほどきちんと嫌な人間に描かれているし、江木が殺意を抱く理由もその日に限ってあったりなんかして。
              きっと普通の人間でもこんな風に陥れられて、どれほど声をあげても誰にも(家族以外)信じてもらえなかったら、こうなってしまうだろうし、ましてや気の弱い内気な江木なら、それはもうどうしようもなかったのだと想像できる。
              唯一頼みの綱の弁護士もこんなだし。
              唯一の目撃者の男の馬鹿さ加減も、こんな人実際いそうだし。
              大人しくて寡黙だったどこにでもいる普通の青年が、犯してもいない罪を着せられたおかげで、出所後実際の犯行に至るというのはなんともやりきれないお話で。
              そんな人じゃないよ、というのを、読者は十分理解しているだけに、彼の絶望が、悲しいなぁと思う。
              最後の最後まで、希望のない、だけども何とも読み応えのあるお話でした。

              でも希望を言えば、最初の事件の犯人は教えてほしかった。

              0

                『刑事のまなざし』薬丸岳

                評価:
                薬丸 岳
                講談社
                ¥ 680
                (2012-06-15)
                Amazonランキング: 22641位

                幼い頃に両親を事故で亡くし、ひきとられた先で虐待にあっていた姉と弟。少年犯罪で鑑別所に入れられていた過去を持つ弟は、自宅近くで起きた事件を捜査中の刑事に見覚えがあり、真っ先に疑われているのだと思い込むのだが…『黒い履歴』
                ホームレスの仲間内でボスのように振舞う粗野な男が何者かに殺害され、過去に男が起こしていた事件の被害者の身内が容疑者として浮上する…『ハートレス』
                過去の男にストーカーのように付きまとわれ、男運がないと嘆いていた女は、今度こそ「男らしい彼氏」ができたと友人に洩らしていた矢先に何者かに殺害されてしまい、交際相手が容疑者として浮かぶのだが…『プライド』
                仕事が忙しく二人暮らしの息子の話をろくに聞く時間も持たない父親は、ある夜の息子の行動から犯罪の関与を疑い、多忙な仕事を休んで後をつけることに…『休日』
                看護士と患者として出会い、最初は一人息子にも気遣いを見せる優しい男だったはずが、一緒に暮らし始めた途端に豹変し、仕事も辞めて自分や息子に暴力をふるうようになった内縁の夫。ろくでなしの夫が放火による火災で亡くなり…『オムライス』
                父親が逮捕されてしまってから学校に行けなくなってしまった女子高生。自傷行為を繰り返す少女は、殺人事件の現場近くで目撃された後、自分を責める言葉を残して手首を切り…『傷痕』
                不幸な家庭で育ち、少年の頃はろくでもない生活を送っていたものの、妻子のおかげで現在は幸せな家庭を築いていた男。荒れていた過去に起こしてしまった事件を目撃していたという、昔いじめていた同級生から脅されるようになり…『刑事のまなざし』
                ぼくにとっては捜査はいつも苦しいものです――通り魔によって幼い娘を植物状態にされた夏目が選んだのは刑事の道だった。虐待された子、ホームレス殺人、非行犯罪。社会の歪で苦しむ人間たちを温かく、時に厳しく見つめながら真実を探り出す夏目。何度読んでも涙がこぼれる著者真骨頂の連作ミステリ。
                罪を犯した少年と向き合う法務技官の職から、10年前の娘の事件をきっかけに刑事に転身した夏目。人を疑う刑事という職が似つかわしくないと、夏目の過去を知る人物たちは口々に語るけれど、夏目にはどうしても解決しなければならない事件があって…。

                次々と事件の真相を暴き出す夏目の着眼点の素晴らしさと言うか…夏目刑事は何でもお見通しなのですね、たぶん。
                なので、最初の『黒い履歴』からもう夏目刑事の語る真実に「あっ」と驚かされてしまいました(私はね)。
                『オムライス』では、そこまでやるのか…と、「これでもかこれでもか」的に真相が暴かれ、ある人を思って、あまりの切なさに心が折れそうになりました。
                どろどろさと容赦なさが薬丸さんらしい。
                そして全てが解き明かされる『刑事のまなざし』は…うーん、話としては良くまとまっているけど、感情的についていけなかったです(色んなことが気持ち悪すぎて理解の範疇を超えてしまったというか)。

                それぞれの短編の断片から、夏目の人となりや過去が少しずつ紐解かれていくのもなかなか興味深くて、夏目刑事のこれからにも期待したいです。
                0

                  『痺れる』沼田まほかる

                  評価:
                  沼田 まほかる
                  光文社
                  ¥ 1,680
                  (2010-04-20)
                  Amazonランキング: 57115位

                  罪を犯した男に囚われていく女。怒りと赦しを背負いながら生きる使用人。褒められたくて女の家に日参する男。馬鹿馬鹿しくて信じられない、泣きたくなるような悪夢。ざわざわと慄く、壊れていく男と女の9つの絶望。一度読んだら捉えて離さない、沼田まほかるの痺れる世界!
                  これは久々にぞくぞくっときた。
                  そして、タイトル通り痺れましたわ「まほかる様」。

                  9つの短編の内容をざっと、
                  数年前から行方不明のままの姑。夢とも現実とも区別のつかなくなった高齢の母親は、息子の罪を隠そうとして…『林檎曼荼羅』 
                  「襲われる」という嫌な予感が的中し、現実のものとなってしまった女が不倫相手にそのことを打ち明けると…『レイピスト』
                  人里離れた別荘地に一人で暮らす女。そんな女の家にある日突然見ず知らずの若い男が転がり込んで…『ヤモリ』
                  娘を亡くした使用人と、命を救われた娘の深い縁…『沼毛虫』
                  ひょんなことから庭師に家に入り込まれた一人暮らしの女性は、男の言うがままに次から次へと家の修理を頼まざるを得なくなり…『テンガロンハット』
                  子供のころに見た「たこ」の絵に絡め取られた女は、一人ぼっちで過ごす誕生日に映画館で痴漢に遭遇してしまい…『TAKO』
                  ゴミの分別をしないマンションの住人を糾弾しようと正義感に燃える男に殺意を抱いた私は、周到に計画を練り…『普通じゃない』
                  嫌いなのか好きなのか良く分からない、妹の友人の母親との不思議な関係…『クモキリソウ』
                  何をしても敵わないと思っている、不倫相手だった男の元妻の姿を見てしまった女は…『エトワール』

                  『九月が永遠に続けば』では、あまりその良さがわからなかったけど、これは嵌ってしまうのもわかるかな。これを読んだら他のも読んでみようと思えたし。

                  たいがいの主人公が一人暮らしで、男の人が出てきて、その先の展開をものすごく期待させるというか、何かざわざわした感じが終始絶えなくて、でもちょっと捩れてたり壊れてたりなので期待とは全く別の方向へ行ってしまうというような。まあとにかく「普通じゃない」。

                  最後の「オチ」も、私は好きです。
                  0

                    『真夏の方程式』東野圭吾

                    評価:
                    東野 圭吾
                    文藝春秋
                    ¥ 1,700
                    (2011-06-06)
                    Amazonランキング: 2584位

                    両親の都合で、夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。その旅館「緑岩荘」は美しい海を誇る玻璃ヶ浦にあった。一方、湯川は海底鉱物資源の開発計画の説明会に招かれ、やはり「緑岩荘」に滞在することとなった。その翌朝、港近くの堤防で男性の変死体が見つかった。男は、もう一人の宿泊客・塚原。これは事故か、殺人か。思わぬ事件に巻き込まれた恭平、環境保護活動にのめりこむ旅館の一人娘・成実、観光業がふるわず廃業を考える両親、そして死んだ男はなぜこの町にやって来たのか、湯川が気づいてしまった真相とは――。
                    東野さんの作品で、こんなに読むのに時間がかかったのははじめてかも、と思うくらい読みづらい本だった。

                    あまりに先に進めないので挫折しそうになったけど、他の方のレビューで「後半から一気に加速する」と書いてあったので、我慢して読み続け(宮部さんはもう無理そうなので東野さんだけでもコンプリートしたいので)、200ページ後半過ぎたあたりから(全部で400ページ強)やっとこさ話の展開が面白くなってきて、そこからは怒涛の一気読み。

                    ガリレオ先生が、論理的でないから嫌いと公言している「子ども」にやけに親切だったり懐いてたり、頼まれもしないのに、自分からあえて事件に首を突っ込んだり、成長というのかドラマ化されてから人が変わったのか。

                    ほのぼのさが途中までは『菊次郎の夏』ガリレオ版、のような。

                    本筋(?)の事件の方も、途中までは緊迫感がないというか、積極的に事件の詳細を知りたいと思えないような感じ。

                    とりあえずだらだらと読んでいて、突然感動が襲ってきて、でも少しでも感動してしまったことを後悔したくなるような、苦々しい結末というか。

                    これがドラマ化とか映画化されたら子役はふくくんか子ども店長あたりかな。
                    どちらも偏屈そうではないけど。
                    0

                      『コンビニたそがれ堂』村山早紀

                      評価:
                      村山 早紀
                      ポプラ社
                      ¥ 567
                      (2010-01)
                      Amazonランキング: 6382位

                      駅前商店街のはずれ、赤い鳥居が並んでいるあたりに、夕暮れになるとあらわれる不思議なコンビニ「たそがれ堂」 。大事な探し者がある人は、必ずここで見つけられるという。今日、その扉をくぐるのは……。
                      慌ただしく過ぎていく毎日の中で、誰もが覚えのある戸惑いや痛み、矛盾や切なさ。それらすべてをやわらかく受け止めて、昇華させてくれる5つの物語。

                      そこに行けば探し物が必ず見つかるという不思議なコンビニ「たそがれ堂」。
                      店員さんは銀色の髪に金色の目をしたちょっと怪しげな、でもとても優しいお兄さん。
                      そしてそこに足を踏み入れた小学生の男の子が見つけたのは、友達から受け取らなかったプレゼント。そのことで友達を傷つけたことを後悔していた男の子にその夜不思議な出来事が起こる『コンビニたそがれ堂』
                      小さな女の子は母親に捨てられた大切な人形を探してコンビニのドアを開ける『手をつないで』
                      自分の生き方にふと疑問を感じはじめた三十歳で独身のアナウンサーが手にした桜の花のストラップがひき起こす奇跡の物語『桜の声』
                      そして一番のお気に入り『あんず』と、心優しい家族を見守り続けた『あるテレビの物語』の、5つの不思議な物語。

                      電車で読み始めてわずか数分で涙があふれてどうしようもなくなるほどで。
                      もともと児童書で子供向けに書かれたものを、文庫化するにあたって大人向けに漢字を多く、手直しされたそうなので文章は、世俗にまみれた私には最初違和感を感じてしまった、とても優しい語り口調。
                      優しさゆえに、心が痛くなるし、涙は止まらない。

                      さよならの場数を踏んだ大人の方が泣けるのでは、というようなことが解説に書いてあったけど、はたして私はそんなに場数を踏んだのか?とふと考えてみたけど、どうなんだろう。飼っていた猫さんたちとの別れは確かに場数を踏んだけど。
                      だからなのか、こんなに泣けてしまうのは。

                      猫を助けたヒーローの男の子がコンビニで出会ったおじいさんにもやられてしまったし、『あんず』のお兄ちゃんの心の支えというのも、もう号泣。

                      「見えなくなっても、会えなくなっても、きっと『どこか』には、みんな、ちゃんといるっていうことさ。消えてしまうわけじゃない。誰の魂も、どんな想いもね。」というコンビニのお兄さんのセリフは、いつまでも忘れずにおこうと思えた。

                      フジテレビの日曜9時あたりでぜひドラマ化していただきたいようなお話。

                      0


                        calendar

                        S M T W T F S
                             12
                        3456789
                        10111213141516
                        17181920212223
                        24252627282930
                        31      
                        << December 2017 >>

                        読書メーター

                        uririnの最近読んだ本 uririnの今読んでる本

                        新刊チェック

                        selected entries

                        categories

                        archives

                        recent comment

                        • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                          uririn
                        • 『痺れる』沼田まほかる
                          uririn
                        • 『絶望ノート』歌野晶午
                          uririn
                        • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                          いちれん
                        • 『痺れる』沼田まほかる
                          くり
                        • 『絶望ノート』歌野晶午
                          智広
                        • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                          uririn
                        • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                          苗坊
                        • 『永遠の0』百田尚樹
                          uririn
                        • 『永遠の0』百田尚樹
                          苗坊

                        recent trackback

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        悪人
                        悪人 (JUGEMレビュー »)
                        吉田 修一
                        読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

                        recommend

                        しずく
                        しずく (JUGEMレビュー »)
                        西 加奈子
                        サイン本買っちゃった。

                        recommend

                        recommend

                        たぶん最後の御挨拶
                        たぶん最後の御挨拶 (JUGEMレビュー »)
                        東野 圭吾
                        猫なんです…。

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        ねこの肉球 完全版
                        ねこの肉球 完全版 (JUGEMレビュー »)
                        荒川 千尋,板東 寛司
                        たまらん。

                        recommend

                        ニャ夢ウェイ
                        ニャ夢ウェイ (JUGEMレビュー »)
                        松尾 スズキ, 河井 克夫
                        たまらん…

                        recommend

                        recommend

                        僕たちの戦争
                        僕たちの戦争 (JUGEMレビュー »)
                        荻原 浩
                        とにかくお薦め。

                        recommend

                        出口のない海
                        出口のない海 (JUGEMレビュー »)
                        横山 秀夫
                        たくさんの人に読んでほしい…

                        links

                        profile

                        search this site.

                        others

                        mobile

                        qrcode

                        powered

                        みんなのブログポータル JUGEM

                        使用素材のHP

                        Night on the Planet フリー素材*ヒバナ *  *

                        PR