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    『観覧車』柴田よしき

    観覧車 (祥伝社文庫)
    観覧車 (祥伝社文庫)
    柴田 よしき 2005/6/20文庫化 祥伝社文庫 P.317 ¥630
    ★★★★
    知らない方が幸せだなんて、そんなのは嘘だ。
    嘘だ。
    でも、知ってしまったらその先は、どうすればいい? 何ができる?

    私立探偵だった夫・貴之の突然の失踪後、探偵事務所を引き継ぎ、ひたすら夫を待ち続ける下澤唯、32歳。

    貴之の失踪から3年が経ち、ずぶの素人から始めた探偵業もすっかり板につき、意地で続けるという唯の元に舞い込んだ依頼は、単身赴任先の京都から戻ってこない夫を探してほしいという、妻からの捜索願い。

    無断欠勤を続ける男の愛人でもあった部下の女に目をつけ、張り込みを開始した唯。
    ところが女は、来る日も来る日も、ただ鄙びた遊園地の観覧車に乗り続けるだけの毎日を送るだけ…。

    何かに絶望し「普通に生きること」を放棄した女は、別れ話のもつれから不倫相手を殺害してしまったのか…表題作『観覧車』に始まり、

    男と女の哀しすぎる様々な依頼を引き受ける唯が、調査のために訪れた佐渡で、失踪中の夫、貴之にそっくりの男を発見し、調査を放棄してまで後を追おうとしたものの、見失ってしまい……。

    「めっちゃ、切ない…
    3年、5年、10年…失踪した夫を待ち続ける女探偵・下澤唯の物語。
    静かな感動を呼ぶ恋愛ミステリー。」だ、そうで。


    主人公、唯の夫、貴之の失踪の謎がベースとなって、一見バラバラな依頼も繋がって…と、独立した短編としても、事件の真相が憐れで読み応えがあって、夫を待ち続ける唯の心の揺れも、本当に哀しくて切なくて、大人の女性の心理が見事に描かれてるなぁと。

    「生きていたのだから、あたしを裏切っていないはずがない。」

    その現実と向き合うのは、辛すぎる…。
    それでも、

    「むちゃくちゃに、好き。
     まだ。」

    と、どんな結果が待ち受けていようとも、夫を探し続ける唯に、この先どんな真実がつきつけられるのか。
    続編の『回転木馬』、すぐにも読みたいけど、本当のことなんて知りたくないような気も…。

    そして、解説の新井素子さんの「男の嘘」の見解に「なるほどなぁ」と、ものすごく唸らされてしまった。「男は決してついてはならない嘘をつく生き物なのと同時に、“約束”と“希望的観測”の区別がつかない、単なる莫迦なんじゃないのか?」と…確かに思い当たるふしが。

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      『ジバク』山田宗樹

      ジバク
      ジバク
      山田 宗樹 2008/2/25発行 幻冬舎 P.399 ¥1,680
      ★★★★★
       すべてをお終いにしたかったのだ。
       それなのに、俺は生き延びてしまった。義足という異物を着けて、また歩かなくてはならなくなった。
       ………
       そこになにか意味はあるのか?
       価値はあるのか?
       そもそも、生きていくって、そんなにいいことか?
       俺は、生きてきたばかりに、若さを失い、職を失い、家族を失い、友人を失い、財産を失い、そして左脚まで失った。これからも失い続けていくだけの人生が待っている。
       そんな人生を生きて、なんになる?

      年収2千万、美しい妻、そしてもうすぐ1億4千万のマンションに移り住む予定の、外資系投資会社のファンドマネージャー、麻生貴志、42歳。

      自ら「人生の勝ち組」と自認する貴志は、郷里で行われた同窓会に出席し、過去に見向きもされなかった、かつての憧れの女性「ミチル」に再会し、現在の成功した自分の力を見せ付け、「ミチル」の気を惹きたいが為に、「みちる」に儲け話をもちかけることに。

      そうして手に入れた「ミチル」との情事に溺れる貴志に仕掛けられた、貴志を天国から地獄へと一気に引きずりおろそうとする巧妙な罠。

      職と家庭を一度に失ったものの、まだ自分自身を過信する貴志がかろうじて得た新しい仕事は、詐欺紛いの未公開株の電話でのセールス。

      上司の叱責にも堪え、ようやく厳しいノルマをこなせるようになった頃、貴志をまたもやどん底に突き落とすかのような、世間を騒がす事件が起き、身を隠すように行きずりの女の部屋に転がり込むことに。

      そして女のヒモ同然の生活に甘んじていた貴志は、今度は生命の危機にさらされてしまい……。

      「女は哀しくも怖ろしく、男はどこまでも愚かだった。
      押し寄せる衝撃と感動。
      残酷なまでに転落する人生を描く『嫌われ松子の一生』男性版!」だ、そうで。


      気分が滅入ってるときに読むと、ほんとに落ち込んでしまいそう…。
      どこまで主人公を不幸にすれば気が済むのか…というか、最初のつまづきで何でここまで…と、思わなくもないかな(男の人の、そこまで女にのめり込むスケベ心はよくわからないし)。

      松子もたいがいだったけど、そこは女の方が逞しくて、まだ救いがあったような。
      これは男がダメダメすぎて、ほんとうに救いがないというか…でも、そこが現実っぽくて余計に悲しくなるというか。

      主人公と年齢が近い分、この先生きていても、本当に失うことばかりだなと思えなくもないし。

      今は良くても、いつこうなるか解らないなと、ある意味ホラーよりも怖かったかも。
      でも、自分はもっと強くありたいなと。

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        『リセット』垣谷美雨

        リセット
        リセット
        垣谷 美雨 2008/2/20発行 双葉社 P.350 ¥1,680
        ★★★★
         いつ頃からだったろうか。人生をやり直せたら――そういう思いが強烈にこみ上げてきたのは。
         そう、確かあれは四十歳の誕生日を迎えた日のことだ。
         ――もう四十歳?
         ――もう人生の折り返し地点なの?
         そう思って、愕然としたのだ。
         なんという早さで月日は流れてしまったのだろう。これほどまでに人生が短いとは思わなかった。こんなことなら挑戦すればよかった。あのとき……。

        「もしも人生をやり直せれば、絶対に専業主婦なんかにならない」と強く決心し、47歳になった今も、高校生の頃に思い描いていた「女優になる」という夢を捨てきれずにいる平凡な専業主婦、知子。

        高校生の頃から容姿にコンプレックスを抱き、ひたすら勉学に励んできたお陰で今では会社の副部長にまで登りつめたものの、ごく普通の結婚をし、子供を持つ妹とことあるごとに比較され、母親からいつまでたっても認められないことに寂しさを感じる薫。

        不良グループにいた高校時代、ナンパされた男の子供を身ごもり、結婚するつもりで高校を中退したものの、あっけなく男に捨てられてしまい、まともな仕事にも就けないまま、故郷に帰ることも出来ず、昼夜働きづめに働くことで六畳一間の東京での生活をかろうじて維持する晴美。

        それぞれに人生をやり直したいという思いを強く抱きながら生きてきた、特別仲良しでもなかった同級生三人が、立ち寄ったデパートの地元の物産展で偶然に再会したことから、三人揃って30年前の、高校生から人生をやり直せることに。

        そして望みどおり人生をやり直し、それぞれが思い描いていた別の人生を歩み始めたものの……。

        「ぼんやりとした不安と不満を抱え、それでも平凡に暮らしていた三人が、突然、高校時代にタイムスリップ。“未来の思い出”がリプレイされる毎日は、彼女たちの意識を少しずつ変えていく。そしていま、再び新しい人生へ!人生は変えられることを、彼女たちは教えてくれた。「第27回小説推理」新人賞受賞の注目の大型新人待望の書き下ろし!」だ、そうで。


        一見、何不自由ない幸せそうな専業主婦、成功したキャリアウーマン、そしてまるで「嫌われ松子」のような、不遇な女性の、全くタイプの違う三人が、三人とも人生をやり直して、今度こそはと望みのままにやり直した人生もまた…というのが、きっと本当に人生ってこういうもんなんだろうなぁと痛感させられてしまったかも。

        高校生に戻ったときに(実際は47歳の気持ちのままの)彼女達それぞれが感じた、自分よりも若かりし頃の母親に対する思いが、すごくリアリティがあって面白いなと。

        実際問題として高校生の頃に、もっと「こうなりたい」という夢が明確にあったとしたら、それを叶えることができたんじゃないかなと最近思えるし、だとしても、それが今より幸せとは限らないというか。

        幸せな結婚を望んでいたのが、それを手に入れて、でも今度またやり直せたら二度と結婚したくないというのも、なんとなくわかるかな。

        なので、彼女たちの最後の選択には結構勇気付けられるし、やっぱり今の人生を頑張らないとなと、そして、人生はこれからでも、自分次第で如何様にも変えられるのかもなと思えてしまった。

        彼女たちのように「リセット」という幸運(?)な機会は、多分私には訪れないだろうから、これが一度こっきりの自分の人生と肝に銘じて、悔いのない生き方ができればいいかなと、なんだかものすごく前向きになれてしまった一冊。

        でも、もしも、こんな風に今の記憶を持ったまま、好きな時代に戻ってやり直せるとしたら…公務員になりたいとしか思えない、夢のない自分がものすごく悲しかったりするかも。

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          『さみしいうさぎ』飯田雪子

          さみしいうさぎ (ヴィレッジブックスedge (E-イ1-2))
          さみしいうさぎ (ヴィレッジブックスedge (E-イ1-2))
          飯田 雪子 2008/2/20発行 ヴィレッジブックス P.252 ¥672
          ★★★★
           うさぎは、淋しくても死なない。
           けれど人は、淋しいと死んでしまうのかもしれない。

          人とうまく関わることができず、周囲の人間からは「淋しそう」と言われるものの、一人でいることに安心感を覚えていた大学生の菜月。

          そんな菜月が、何も話さなくても一緒にいることが心地良いと感じていた恋人らしき存在、峻の突然の帰郷によって、ひとりぼっちの本当の意味を知ることに。

          故郷で実家を継ぐという峻の、菜月への気持ちが解らず、淋しくて堪らないのに、恋愛に不慣れなために、その気持ちを伝える術を知らず、一人思い悩む日々を送る菜月の前に現れたのは、お金を貰って女性をただ「抱きしめる」だけという奇妙なアルバイトをする青年、龍生。

          龍生のそれをバイトとは知らず、菜月の尊敬している大学の准教授、郷子の恋人だと勘違いしたことから、二人は最悪の形で出会ったものの、龍生はたびたび菜月を誘い出すように…。

          そして、菜月がひとりぼっちで迎えたクリスマスの日、峻との約束を思いがけず破ることになってしまった菜月につきつけられた、峻の冷たい言葉。
          峻に拒絶され、ようやく菜月は峻に会いに行く決心するのだが……。

          「あなたがそばにいないことが、こんなに苦しいなんて……
          『夏空に、きみと見た夢』の著者が贈る書き下ろしラブ・ストーリー、第2弾!」だ、そうで。


          恋愛ものはあんまりすすんでは読まないけど、飯田さんの『夏空に、きみと見た夢』の読後感が良かったのと、大好きだったドラマ「星の金貨」の主題歌のフレーズのようなタイトルに惹かれて読んでみたら、これまた意外とじんわりと心が温まってしまった。

          遠距離恋愛はしたことないし、会いたいときにすぐに会えないというのは、私には堪えられそうにないのできっと無理だと思うけど、菜月の不安はとても良くわかる。
          近くにいても、相手の気持ちが解らなくて不安なのは同じだし、遠ければ会えない分余計に辛いだろうなと。

          菜月の理想とする一人で生きる強い女性、郷子が龍生に、愛情でなく、抱きしめてもらうことだけを依頼する気持ちもものすごく良く解るし、女の人なら、きっと誰でもそうされたい願望ありそうな…、それとも歳のせいかな。

          「淋しいから、誰かを愛するのか。
           愛するから、淋しいのか。」
          菜月が、その答えは永遠に解らないかもしれないというこの言葉、私にははっきりと後者だと思えるかも。

          恋愛に臆病で、不器用、きっと自分でそう思ってる人は、意外と多いのではないかなと思えるし、こんな風に悩むのは、私だけじゃないんだとつくづく安心させられたような。

          そして、菜月のような本当の意味での心の強さが、私にもあれば、もっと恋が上手くできるのかもなとも。

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