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    『Re−born はじまりの一歩』伊坂幸太郎、瀬尾まいこ、豊島ミホ、中島京子、平山瑞穂、福田栄一、宮下奈都

    Re-born はじまりの一歩
    Re-born はじまりの一歩
    伊坂 幸太郎,瀬尾 まいこ,豊島 ミホ,中島 京子,平山 瑞穂,福田 栄一,宮下 奈都
    2008/3/25発行 実業之日本社 P.269 ¥1,470

    ★★★★★
     ほんとうは幸せだけで育つ子なんか居ないとわかっている。私たちみたいに、ここが世界の底だと思うような目も見るだろうし、他人をそういう目に遭わせることもあるだろう。まっさらのまま生きていくなんてありえない。……
     でも、私は目の前に居る子どもを見て、ただ、この子に育ってほしいと願った。背負っていく罪だとか傷だとかとりあえず関係なく、幸せになってほしいと能天気なまでに思った。  〜『瞬間、金色』より〜

    音大の附属高校への受験に失敗し、音楽科のない新設の女子校に滑り込んだ、音楽家の母を持つ「私」。期待しない学校で、期待されない日々を送り、クラスの中で常に浮いている存在の「私」が、合唱コンクールの指揮者に選ばれてしまい…『よろこびの歌』宮下奈都

    入学して間もなく、大学へ通う代わりに、屋内の市民プールに足を運ぶようになり、無気力な日々を送っていた大学生の「克彦」。プールで泳いだ後、休憩していた克彦は、ウォーキングの老人ばかりのプールで、熱心に泳ぎを覚えようとしていた一人の老人に強引にコーチを頼まれ…『あの日の二十メートル』福田栄一

    親の都合で転校を繰り返し、新しい学校に溶け込む術をすっかり会得していたはずの「シンジュ」は、危険を承知でクラスで浮いている「ナナミ」と仲良くなり、卒業までイジメられ続けることに。
    そんな中学生活に終わりを告げ、心機一転、新たな気分で入学したはずの高校でも「シンジュ」をイジメ続けた女子と再び同じクラスになってしまい…『瞬間、金色』豊島ミホ

    父親の浮気から「解散」することにした、家族で過ごす最後の日、父親の携帯に見ず知らずの男から「友達になってください」とのメールが入り、親子三人はメール相手と会うことに…『残り全部バケーション』伊坂幸太郎

    他、『ゴーストライター』瀬尾まいこ、『コワリョーフの鼻』中島京子、『会ったことがない女』平山瑞穂の、7人の人気作家さんによる「はじまり」がテーマのアンソロジー。

    「迷い、揺れ、苦しみながら選びとった、これがわたしの生きる道――。
    時代を鮮やかに切り取りつづける7人の作家が描く、新たな出会いと出発の物語。
    オール書き下ろし&オリジナルの珠玉アンソロジー。
    わたしの人生、もう一度ここから。」と、いうことで。


    瀬尾さん、伊坂さんのが読みたくて買ったけど、一番印象に残ったのは福田さんの『あの日の二十メートル』と、豊島さんの『瞬間、金色』。

    特に『瞬間、金色』の「シンジュ」と「ナナミ」のつかず離れず(?)の関係がとても良くて、でも二人の青春は厳しくて…「生まれてこなきゃよかった」と昔つぶやいた「ナナミ」が、出産して感じた思い、それがすごくほっとしたというか。
    そして、いじめっ子にいったい何をして、あんなに怯えさせたのか…も知りたいところ。

    瀬尾さんの『ゴーストライター』は、最近出た『戸村飯店青春100連発』の元となった話、ということでそれを読む前に読みたかったけど、相変わらず少し心に痛い話という感じ。家を出て行く兄の、家族への思いが辛いというか、本当の気持ちが知りたくなってしまった。

    伊坂さんの『残り全部バケーション』も、相変わらず全く接点のないはずの、ちょっと変わった家族と、犯罪の片棒を担ぐ男との二つの物語が繋がっていく様がさすがだなと思わせられるお話で…「レバーをドライブに入れれば勝手に前に進む」という台詞は、心に刻みたくなる良い言葉かも。
    に、しても「解散」て、そんな『ホームレス中学生』みたいな…。

    「はじまり」の物語。まさに今の季節にぴったりだなと。
    ただ、「はじまり」の前には、悲しい別れがいつもつきものだなと、つくづく感じる今日この頃。ううっ。

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      『流星の絆』東野圭吾

      流星の絆
      流星の絆
      東野 圭吾 2008/3/5発行 講談社 P.482 ¥1,785 
      ★★★★★
       彼等の信頼を裏切ることなどできないと思った。幼い日から、いつか三人で両親の仇を討とうと話し合ってきたのだ。その固い結束を、一時の淡い恋心などを理由に壊すことなどできない。
       この男は――行成の背中を睨みつけ、静奈は自分に言い聞かせた。
       この男は、自分たちの両親を殺した犯人の息子なのだ――。

      子ども達がこっそり家を抜け出し、流れ星を待っていた深夜、家に押し入った何者かによって両親は殺害され、幼い弟、泰輔だけが逃げていく男を目撃することに。

      残された三人の子ども達は施設で育ち、そこで両親の仇を討つことを誓う。

      そして大人になり「騙される側の人間より、騙す側の人間」に回ることに決め、長男、功一の明晰な頭脳、二男、泰輔の人当たりの良さ、末の妹、静奈の美貌をもって次々と「カモ」を陥れることに成功した三人が、次なるターゲットとして目をつけたのは、大手洋食チェーン店のオーナーの一人息子、行成。

      まんまと行成に近づくことに成功した静奈と泰輔の前に突如現れた行成の父は、両親が殺された夜、泰輔が見た、犯人かもしれない男。

      時効を目前に控え、ようやく容疑者を探し当てた三人は、男の周囲に仕掛けをし、確実に陥れることに成功していくものの、唯一の誤算、静奈の行成への恋心に気付いてしまい……。

      『息もつかせぬ展開、張り巡らされた伏線、驚きの真相、涙がとまらないラスト。
      「この小説は私が書いたのではない。登場人物たちが作りだしたのだ。」――東野圭吾
      すべての東野作品を超えた現代エンタメの最高峰』だ、そうで。


      無性にハヤシライスが食べたくなったというか、一から作りたくなってしまうようなお話で…。

      最近読んだ東野さんの中では、一番良かったかもだけど。
      うーん…、やっぱりもっと凄いの(『白夜行』以上のもの)を期待してしまうから、なんだかなぁと。

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        『有頂天家族』森見登美彦

        有頂天家族
        有頂天家族
        森見 登美彦 2007/9/25発行 幻冬舎 P.357 ¥1,575
        ★★★★★
         平安遷都この方続く、人間と狸と天狗の三つ巴。
         それがこの街の大きな車輪を廻している。
         天狗は狸に説教を垂れ、狸は人間を化かし、人間は天狗を畏れ敬う。天狗は人間を拐かし、人間は狸を鍋にして、狸は天狗を罠にかける。
         そうやってぐるぐる車輪は巡る。
         廻る車輪を眺めているのが、どんなことより面白い。

        狸界を束ねる、洛中に名高い立派な狸であった父親の血を引き継いだ下鴨家の四匹の息子たち。

        責任感の強さだけを受け継いだ、かちかちに頭の堅い長男「矢一郎」、暢気さだけを受け継いだ引き篭もりの二男「矢二郎」、阿呆さだけを受け継いだオモシロ主義の三男「矢三郎」、そして純真さだけを受け継いだ、底抜けに繊細で化け下手の末の弟「矢四郎」。

        そんな四匹の「ダメ兄弟」のだめっぷりを温かく見守る偉大な母。

        大正時代から続く美食家たちの集まり、毎年行われる忘年会で「狸鍋」を喰らうのが習わしの「金曜倶楽部」。

        下鴨家と敵対する夷川家。

        そして下鴨一族の恩師でありながら、山を追われ、今は出町柳のアパートでつましく暮らす孤高の天狗「赤玉先生」と、「赤玉先生」が愛してやまない、人間でありながら天狗よりも天狗らしい「金曜倶楽部」の紅一点のメンバーである美貌の「弁天」。

        そんな個性溢れる面々と、立派すぎる父親を持つがゆえに「立派な父の血を引きそこねた阿呆たち」と、世間からは評される、堅い絆で結ばれたちょっぴり残念な四人の息子たちが、京都の街を縦横無尽に駆け巡る壮大なファンタジー(?)もしくはドタバタ劇。

        『偉大なる父、優しい母、かけがえのない兄と弟、こんなファミリーがまだ日本にあった。
        ……でも、これ、全部「狸」の話。
        かくも毛深き家族愛!! 』だ、そうで。


        これは、なんとも説明のしようがないオモシロさというか。
        完全にツボに嵌ってしまった。

        京都に住んでて良かったなぁと(出町の桝形商店街は馴染みの場所なだけに余計に…)つくづく思わせてくれるし、すれ違った人たちが実は狸だったりしないかなと期待してしまうし。

        誰もかれもものすごく愛すべきキャラクターで、物語の構成もなんとも素晴らしいし。徐々に徐々にきて、最後にドッカーンとはじけるのが堪らなく楽しい(そんなもんにまで化けられるのか…と、想像を絶する化け合戦もわくわくするし)。

        笑いあり、涙あり(母親狸の命の恩人の話や、矢二郎がカエルになってしまった話なんて、もう号泣してしまうぐらい)、そしてちょっぴりサスペンスというか、父親の死を巡る陰謀ありの盛りだくさんで。

        敵対する夷川家のアホ兄弟、四文字熟語好きな「金閣」「銀閣」も最高だし、その妹の矢三郎の元婚約者で姿を現さない「海星」も堪らなく可愛いし、矢四郎のしっぽもえも言われず可愛いし。

        まさに「面白きことは良きことなり!」の台詞を地でいく極上のエンターテイメント。

        そして「くたばれ」の台詞もまた最高(いつか誰かに使ってしまいそうな)。

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          『阪急電車』有川浩

          阪急電車
          阪急電車
          有川 浩 2008/1/25発行 幻冬舎 P.221 ¥1,470
          ★★★★★ 
           宝塚から出発し、乗客を乗せたり降ろしたりしながら西宮北口まで到着した電車は、また新たな乗客をその車内に招き入れた。
           やがてルルルとホームの乗客を急かす発車のベルが鳴り、駆け込み乗車を一人二人受け入れる寛容さでドアが閉まる。
           そして電車がホームを滑り出た。西宮北口から宝塚までを遡る車中、乗客たちがどんな物語を抱えているか――それは乗客たちそれぞれしか知らない。

          それまで図書館で顔を見知っていただけの男女が、偶然(?)同じ電車で隣同士に座ったことから、恋が始まる『宝塚駅』から出発し、

          真っ白なドレスで周囲の目を引く結婚式帰りの美人OLと、電車で乗り合わせた孫娘を連れた老婦人とのお話『宝塚南口駅』⇒『逆瀬川駅』⇒『小林駅』と電車は進んで、

          一緒に暮らす部屋を探すために電車に乗ったはずのカップルが、男が途中下車してしまい一人取り残される女子大生、そして聞こえてくる車内の女子高生たちの他愛もない会話『仁川駅』⇒『甲東園駅』

          さらに電車は進み、偶然同じ大学に通っていることが発覚したことから、言葉を交わすようになった、似たもの同士の初々しいカップルの話『門戸厄神駅』⇒『西宮北口駅』

          そして、折り返し。
          『西宮北口駅』⇒『門戸厄神駅』⇒『甲東園駅』⇒『仁川駅』⇒『小林駅』⇒『逆瀬川駅』⇒『宝塚南口駅』⇒『宝塚駅』の、電車は走り続けるものの、とりあえず物語は終わりを迎える16編の連作短篇集。

          「電車は、人数分の人生を乗せて、どこまでもは続かない線路を走っていく――
          片道わずか15分。
          そのとき、物語が動き出す。
          累計45万部突破!『図書館戦争』シリーズ著者による最新作!!」だ、そうで。


          正直『図書館戦争』シリーズは、一冊目で挫折してしまった(ベタ甘はあんまり…今は読みたい気分でないので)けど、これは本当に面白くて、寝る前に読み始めたら止まらなくなって寝不足になってしまった…。

          元彼の結婚式帰りの白いドレスのOLの話はすごく共感できる好みの話で、特に老婦人の一言で途中下車した『小林駅』の話が本当に暖かくて泣けてきて、私もここに住みたい!と思えるぐらい。

          ほぼ実話という女子高生たちの恋バナも最高に面白いし、それぞれの話がリンクして、こうしてすれ違うだけの人たちに影響されたり、心が温かくなったり…その匙加減が絶妙。

          高校生の頃、良く利用した「阪急電車」が舞台なだけによりいっそう愛着がわく一冊というか…中州の「生」の文字の意味も重くて、しんみりとしてしまった。

          「生」といえば、私も「生ビール」派、なんで「ベタ甘」よりも、こっちの方が(少々「甘い」もあったけど)断然好きかな。
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            『静かな爆弾』吉田修一

            静かな爆弾
            静かな爆弾
            吉田 修一 2008/2/25発行 中央公論新社 P.199 ¥1,365
            ★★★★★
             何がどうなろうとしているのか分かっていたのに、楽観的な気持ちのほうを信じて、声を上げなかったのは誰か。
             大丈夫だと思う気持ちはどこからくるのか。
             大丈夫だと思いたい気持ちはどこからくるのか。
             大丈夫だと思えない気持ちは、いったいどこへ行ってしまったのか。

            公園での偶然の二度の出会いから、思い切って彼女をファーストフードの店に誘い、いつしか週末を一緒に過ごすようになった、テレビ局に勤める俊平と、耳の不自由な響子。

            響子と一緒に暮らしたいと考え、実家の両親にも響子を紹介し、響子の気持ちをよそに、両親に温かく迎え入れられたことに安堵する俊平。

            そして希望の部署から異動を命じられ、腐っていた俊平の身に、突然歴史的な事件を追うという仕事上でのチャンスが訪れ、多忙になったことから、二人の気持ちはすれ違ってしまうように…。

            「出会いは突然で、言葉にならない緊張のなか、出会った彼女は彼の心へしっかりと刻まれた。過ぎ行く日々に翻弄されながら保たれる絆。恋愛小説の新境地を切り開く意欲作。」だ、そうで。


            とにかく『悪人』に惚れこんでしまったもので、あの興奮をもう一度…と思ったら、ちょっと肩透かしをくってしまった感じ(決して悪くはないけど、期待しすぎてしまった分、ページ数の少なさに、がっかりしてしまったと言うか、そう言えば、もともとはこういうイメージだったなと)。

            俊平の気持ちは『君の手がささやいている』の旦那さんも、そんなことしょっちゅう感じてたなぁと、あのドラマがとても好きだったので、懐かしくてしみじみしてしまった(『星の金貨』も好きだったし)。

            「それまで知っていた世界では、交わす言葉がないということは、用がないということを意味していたし、用がないのに一緒にいるのは不自然だった。…」という俊平の言葉は、以前の私もそう思っていたし、まさに私も最近感じていたことで(私の場合は、以前の教訓を胸に余計なことをしゃべらんようにと自分を戒めて、敢えて話さないようにしてる部分もあるけど)。

            なので、会話なんてなくても、用なんてなくても、側にいたいと思う気持ちは、今ならとても良くわかる(そもそも男の人と、話したい内容なんて、そうそう私にはなくて、無理に会話をしようと思うとしんどくなるので、話さなくていいなら、その方が楽チンだし…普通のカップルって、みんな何話してるんだろうとかえって不思議かも…)。

            付き合って半年が過ぎて、彼女の何を知っているのか…と考える俊平の気持ちは良く分かるけど、すれ違い方が普通すぎるというか、この設定でなくても、そうなってしまうような。

            駅での見送りのシーンは、痛いほどよく分かるし…。

            途中、これが妻であれば仕事を休んでも探すのか、彼女だからこうして普通に出勤しているのか…みたいな文章があったけど、その違いって何だろう?とふと疑問に思えてしまったような(妻なら…というのは、体裁が大事ということなのかな?そこら辺はリアルというか、何というか)。

            ラストはちょっと「あれれ?」という感じ(彼女の気持ちがわからなすぎて…)。

            そして、俊平の追っかける歴史的事件の方の緊迫感が、私が無知すぎるせいで、あまりピンとこなかったのが若干読んでいて、なんだか申し訳ないなと思わされてしまった。

            ただ、そんな私でも、冒頭の引用部分の言葉は、結構考えさせられてしまったかな。
            「根拠なしポジティブ」というか…。

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              『福袋』角田光代

              福袋
              福袋
              角田光代 2008/2/29発行 河出書房新社 P.232 ¥1,365
              ★★★★
              ……ひょっとしたら私たちはだれも、福袋を持たされてこの世に出てくるのではないか。福袋には、生まれ落ちて以降味わうことになるすべてが入っている。希望も絶望も、よろこびも苦悩も、笑い声もおさえた泣き声も、愛する気持ちも憎む気持ちもぜんぶ入っている。福と袋に書いてあるからってすべてが福とはかぎらない。袋の中身はときに、期待していたものとぜんぜん違う。安っぽく、つまらなく見える。ほかの袋を選べばよかったと思ったりもする。それなのに私たちは袋の中身を捨てることができない。……

              「やばそうな人」と「そうでない人」を見分けることのできる駅ビルの洋菓子屋で働く葛原さん。店に入ってきた一見「やばくなさそう」な見知らぬおばさんから「すぐに取りに来るから」と、中身の分からない大きな段ボール箱を無理矢理押し付けられてしまい、箱の中身を店のみんなでいろいろ想像してみたものの…『箱おばさん』

              別々の部屋に引き込む、生活習慣の異なる夫婦。妻が毛嫌いする「拾いグセ」が治らない夫が今回拾ってきたのは、手書きでタイトルの記された数本のビデオテープ。早速自分の部屋でテープを1本ずつ見始めた夫は、ビデオの元の持ち主に自分たちの姿を重ね…『イギー・ポップを聴いていますか』

              夫婦揃って離婚届を提出した帰り道、夫と別れ、ひとりぼっちになった妻は、公園で見知らぬ若い母親から、赤ん坊を押し付けられてしまい…『白っていうより銀』

              社内で「フシギちゃん」と陰で呼ばれる年長の派遣社員、長谷川さんに彼氏の愚痴をこぼしたことから、一緒にご飯を食べることになった十歳年下の「私」。お酒が進むうち、長谷川さんの壮絶な過去の恋愛話を聞かされて…『フシギちゃん』

              母親の四十九日の法要の後、母の遺言に従って遺産を分配することになった、四人兄妹。それぞれの使い道に思いを巡らせる兄妹たちが、遺言状を開けてみると…『母の遺言』

              別の相手とやり直したいと家を出て行った夫宛てに届いた同窓会の案内状。代理で出席することにした妻は、夫の同窓生達から、自分の知らない大学時代の夫のエピソードを聞かされて…『カリソメ』

              同棲生活をはじめることにした、恋愛経験の少ない似たもの同士の男女。引っ越してきた一軒家の玄関先から動かない一匹の犬を異様に気にする彼女の奇行に、彼女の意外な一面を見た彼氏は…『犬』

              両親から縁を切られたろくでなしの兄の行方を捜すために、兄に逃げられた兄の結婚相手と称する面識のないケバイ女と、土地勘の全くない「大阪」へ遠路はるばるやってきた「私」。兄の行方などどうでもいいと考えていた「私」は、女のペースにすっかり嵌り…『福袋』の8編から成る短編集。

              「私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…
              人生に当たりハズレなんてない!?
              直木賞作家が贈る8つの連作小説集」だ、そうで。


              『母の遺言』の遺言の中身の意外さには驚かされたけど、母親って「女」だし…なんだかものすごく納得できるようなお話で、それ以前の兄妹たちのバトルというか、そういうのも結構面白くて好きなお話。

              『犬』も、お互いのことをまだ良く知らないでいる恋愛馴れしていない男女が一緒に暮らし始めて、こんなことでこうなるのかと、何か身につまされるようなお話で。

              もしも私が結婚したら、きっとこうなるだろうなぁと思える夫婦の関係というのが、なかなか絶妙で、相手のこと、どれだけ知っているのか、本当に知っているのか、知ってなくちゃいけないのか、知らないほうがいいのか、なんだかぐるぐると考えさせられてしまうようなお話が多かったような。

              何が入っているのか分からないからそそらてしまう「福袋」。
              期待しすぎて、開けてがっかりすることの方が多いけど、普段自分では買わないようなものでめっけものなんかがあったりするのも「福袋」ならではなのかもなと。
              結局は自分の心の持ちよう次第と言うか。

              そして、どれだけ相手が分からなくても『フシギちゃん』の、長谷川さんの真似だけは絶対にしたくないなと。こわすぎるし。

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                読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

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