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    『みなさん、さようなら』久保寺健彦

    みなさん、さようなら
    みなさん、さようなら
    久保寺 健彦 2007/11/10発行 幻冬舎 P.332 ¥1,575
    ★★★★★
    団地の中にとどまる限り、危険な外部とは隔たっていられる。しかし、団地は外部と完全に隔絶しているわけではない。三か所の入り口から、外部の猖皚瓩侵入してくる恐れは常にある。同級生たちはいわば、反転した炭坑のカナリアだった。炭坑と外部を行き来する彼らの様子を、おれは鳥かごの中からうかがっていたのだ。

    小学校を卒業すると同時に、中学へは行かないと宣言し、その日から団地の敷地内から一歩たりとも外へ出ない生活を始めた「渡会悟」。

    同じ団地に住むかつての同級生たちが普通に中学校へ行っている間、団地内のコミュニティセンターにある図書室で、本を片っ端から読み漁り、強くなるために身体を鍛え、トレーニングに励む毎日。

    みんなが下校し、団地に帰って来てからは、団地内に住む同級生全員の行動を把握するためのパトロールに専念し、最初は面白がって行動を共にしていた仲間たちが、一人、また一人と脱落してしまう中、一日も欠かすことなくパトロールを続けるものの、そんな悟の行動は、かえって団地の人たちから訝しがられ…。

    そうして悟が団地という限られた空間だけで職を見つけ、恋愛をしていた十数年の間に、かつての同級生たちは次々と団地から外の世界へと飛び出して、悟の前から去って行ってしまい……。

    「団地という限られた世界の中だけで生きようとした少年。だが誰もが彼の前から去ってゆく……。少年が孤独と葛藤に苛まれながらも伸びやかに成長する姿を描く、第一回パピルス新人賞受賞作!」だ、そうで。


    悟が団地から出られなくなってしまった理由があまりにも痛々しすぎて、その理由が分かるまでの前半と、知ってしまってからの印象がガラリと変わってしまった。

    こんなに重い話だったのかと…。

    一年ごとに、かつての同級生達が次々と姿を消していくのを、外の世界へ出て行くのを、どんな気持ちで見送るのかと、結構取り残され派の私にはその辺も痛々しかったかな。

    もちろん、外の世界は楽しいことや良いことばかりじゃなくて、みんなが団地から出て行く理由もさまざまで、そこもまた面白いというか、時の流れの残酷さというか、時代が良く反映されているなぁという感じ。

    外の世界に出なくても、団地の中だけで、こんな風に生きていけるものなのかと感心してしまったけど、そこは一番の理解者である悟の母親の存在や、友達や、悟に関わった多くの人たちの助けが、どうしても必要だったわけで、悟はそういうの気付いてたんだろうか、みんなに感謝してたんだろうかと、そこら辺が何だかひっかかったような。

    なので、主人公の悟のことは、最後まであまり好きになれなかったかな…というか、やっぱり狭い世界で生きてると、こうなってしまうのかなと(自分自身も、職場と家との往復だけの狭い世界で生きてしまっているので、悟とあんまり変わらないような気もするけど…)。

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      『結婚しなくていいですか。−すーちゃんの明日』益田ミリ

      結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日
      結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日
      益田 ミリ 2008/1/25 幻冬舎 P.127 ¥1,260
      ★★★★★
      「ちがう
      あたしの不安は、死んでからじゃないじゃん
      不安なのは、老いている自分
      老いて、おばあさんになった時に
      生きているのがつらいと思っている状況だったら
      って想像すると不安になってくるんだ」

      35歳独身
      趣味 料理
      資格 調理師免許、そろばん4級
      貯金 200万円
      嫌いなことば 自分探し
      仲良しの友達はいる、でも親友はいらない
      日記 つづかない  〜す〜ちゃんプロフィールより〜

      の、カフェの店長として周囲の年下の子達に常に気配りし、コツコツ地道に働く「す〜ちゃん」と、す〜ちゃんの先輩、同期入社で残っているのは男性ばかりの会社で働き、実家で祖母の介護を手伝う40歳間近の独身OL「さわ子」さん、そしてもうすぐ出産予定の「す〜ちゃん」のお友達、妊婦の「まい子」さん、の三人が日常生活のなかで、それぞれに抱える、将来の不安や、現在の寂しさ、結婚に対する希望などなどを、淡々と、なのにリアルに描く四コマ漫画。

      「夫なし男なし三十路半ば
      大逆転はなくても、“あした”がある!
      異色四コマ漫画、じわじわ人気上昇中。
      香山リカ氏号泣」だ、そうで。


      怖ろしいほど身につまされるというか、それぞれ立場の違う彼女達だけど、みんなの気持ちがとても良く分かる、ような。

      一番心情的に近いのは、実家に住む「さわ子」さん(介護は私にはまだ先の話だけど)かな。
      「いつまでも実家にいて」と周囲から思われても、それぞれの家庭にはそれぞれの事情があるわけで…「さわ子」さんの、「自分がいなくなったら…」という気持ちは手に取るように良くわかってしまった(「さわ子」さんほど、私は優しい娘ではないけど…)。

      主人公の「す〜ちゃん」の、結婚しても、大切にしたい自分の時間というのも、私もほしいし、結婚できなかったとしたら、の老後の不安ももちろん痛いほど良く分かるし…。

      きっとこれって誰もが感じてることなんだろうなぁと、結婚してても、してなくても、将来に不安を感じてない人なんて、いたら羨ましいけど、恐らくない人の方が少ないのではないかなと。

      特に女の人は、子どもを産むのにタイムリミットが、どうしてもあるわけで、私自身が最近そのことで結構悩んだりもしてるので、「さわ子」さんのお見合い相手の申し出も分かるけど、やっぱりそんなこと言われたら、辛いというか、悲しいというか(自分自身の責任でもあると思うから、余計に辛いなと)。

      でも、やっぱり結婚したいと思える相手に巡り会うのが遅かったとしたら、そこはどうしようもないというか…。

      帯に「精神科医の香山リカ氏号泣」とあったけど、私も最後「す〜ちゃん」が「さわ子」さん家に遊びにいった際にかけたひと言には、ほろりとさせられてしまったし、そういう心配りができる人間になりたいなと思えるし。

      これからどうなるんだろうなぁと、不安なことばかりだけど、みんなそうなんだと思えば、少しは楽になれたかな。

      タイトルに妙に惹かれて読んだ初読みの漫画家さんだけど、すーちゃんの前作も、他のも読んでみようかなと。

      そして、大逆転を夢見て、今日もナンバーズを買ってしまってたり…(ナンバーズでは大逆転にはならんか)。

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        『ブランケット・キャッツ』重松清

        ブランケット・キャッツ
        ブランケット・キャッツ
        重松 清 2008/2/28発行 朝日新聞社 P.329 ¥1,575
        ★★★★★
         ひとり――。
         タビーはずっと一人で生きてきた。
         ニンゲンだって、猫だって、この世に生きとし生けるものはすべて、結局はひとりきりなんだ、と思っていた。
         いま気づいた。
         ひとりきりと、ひとりぼっちは、似ているようで違う。
         誰かと一緒にいたいのに一人になってしまうのが、ひとりぼっち――。
         エミちゃんだって、ひとりきりの人生を歩んでいく。
         だが、それは、ひとりぼっちの人生であってはいけない。
                          〜『旅に出たブランケット・キャット』より〜

        買い取り不可で期間は二泊三日の三日日間のみ。
        ペットショップから渡されたえさ以外は、食べさせないこと。
        眠る時には、猫たちが仔猫の頃から慣れ親しんだ毛布を入れたバスケットの中で。
        決して安くはない料金の、7匹のとびきり優秀な「レンタル猫」たちが、それぞれレンタルされていった先は…。

        これまで動物を飼ったことのないという、四十代にさしかかった夫婦が二人だけで暮らす静かすぎるマンション…『花粉症のブランケット・キャット』

        家族的な小さな会社でこれまで真面目にこつこつ働いてきた中年を過ぎた独身女性は、温泉旅行のおともに、レンタカーの助手席に「クロ」を乗せ…『助手席に座るブランケット・キャット』

        「いじめ」に悩む中学生の少年は、父親にせがんでレンタルしてもらった猫に自分と同じ「コウジ」と名付け…『尻尾のないブランケット・キャット』

        施設に入居する前の数日間、認知症が進む祖母と過ごす四人家族は、祖母が可愛がっていた猫によく似た猫をレンタルし…『身代わりのブランケット・キャット』

        レンタル猫を使って、動物の有無を確認して回る厳しい大家さんが同居する動物禁止の格安マンションで、彼女が拾ってきた仔猫と一緒に暮らすことになったフリーターは秘策を思いつき…『嫌われ者のブランケット・キャット』

        レンタル主の車から逃げ出したレンタル猫「タビー」が飛び乗ったトラックには幼い兄妹の先客が。果たしてタビーは兄妹と行動を共にすることに…『旅に出たブランケット・キャット』

        リストラされ、マイホームを手放すことになった父親は、せめてこの家での最後の思い出に、子どもたちのささやかな夢を叶えようと、猫をレンタルすることに…『我が家の夢のブランケット・キャット』

        「2泊3日、毛布付き
        我が家にレンタル猫がやってきた。
        いまを生きる孤独と救済を描いた、猫とひとの物語・全7編。」だ、そうで。


        3日以上だと情が移ってしまうから…という理由での、三日間の期限付きだけど、1日でも、1時間でも、一緒にいてしまったら、私は手放したくなくなってしまうだろうなぁと。

        でも、飼いたくてもどうしても飼えない事情があるとすれば、こういうのもありなのかなと。

        ここに出てくる猫たちは、本当に賢くて、優しくて、読む前には、もしもこのうちの一作でも、猫に何か不幸なことが起こったら…と心配したけど、そういうことは全くなくて、なのにここまで号泣させられるとは、何で重松さんはこんなに泣かせるのが上手いのかと。

        どの猫も、本当にそのまま猫なんだけど、『身代わりのブランケット・キャット』の猫の優しさと、『旅に出たブランケット・キャット』の猫の賢さ、そして関わった人たちの優しさにも、涙、涙で。

        『嫌われ者のブランケット・キャット』もすごく良いお話で、大家さんの過去と、二匹の猫の交流と、ラストにまた、涙、涙。

        私もこれまでたくさんの猫を飼ってきたけど、オス猫さんが、良く赤の他人の(たぶん)野良の仔猫を家に連れてくることがあって、その面倒見の良さというか、仔猫に、じゃれつかれても何をされても怒らずにじっと耐えてる姿がすごく面白くて、可愛かったなぁと。

        寂しいときに、本当にそっと寄り添っていてくれるのも、慰めてくれるのも、いつも猫だったなぁと…しみじみ。

        猫好きには、本当にたまらん本だけど、そうでなくても、猫好きにさせてくれるかもと思えるような、本当にとびっきり優秀な猫さんたちの話ばかりで、これは是非、一家に一冊と薦めたくなる一冊だなと。

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          『キュア cure』田口ランディ

          キュア cure
          キュア cure
          田口ランディ 2008/1/30発行 朝日新聞社 P.344 ¥1,680
          ★★★★★
           そうだ、みな、助かりたいのだ。ガンという宿業から逃れたいのだ。
           救われたい。その痛烈な念の力が入ってくる。内臓が煮え立つような熱い念だ。だが、救われないぞ。祈祷では救われないのだ。僕はそのことを知っている。祈っても無駄なのだ。生き抜くのは、生き抜く意志のある者だけだ。しかし、それも永遠ではない。人はいつか死ぬ。必ず。
           人間には二つの道しかない。死ぬか。生き果てるか。

          子供の頃、片方の耳の聴力と引き換えに、自分の内なる力に目覚め、大人になって外科医となってからは、その不思議な力に導かれるかのような的確なメスさばきによって、看護士たちから畏敬の念を込め「ゴッド・ハンド」と呼ばれる「斐川」。

          医局とソリが合わずに、一度は離れた大学病院から再び呼び戻された斐川は、患者を人として見ようとしない病院の医療のあり方に疑問を抱きつつ、ただ切って、切って、切りまくるだけの手術をこなし、バイトに励み、魂をすり減らす日々を送ることに。

          そんな疲れ切った暮らしの中、斐川が目の当たりにする、さまざまな「ガン難民」たち。

          早期発見されたにも拘らず、手術を拒否する不可解な川村、末期の「癌」を宣告され、全ての医師から匙を投げられても、生きる意志を捨てない、若くして成功を収めた竹井。

          また、斐川自身も「癌」に蝕まれ、準教授の手術を拒否したことから医局を追われることに。

          そして、自ら余命一年と判断を下した斐川は、「癌」と闘うことよりも、共に生きる道を模索し……。

          「いのちを救うのは悪いことではありません。
          現代医療は科学の恩恵か、呪縛か。
          神の手をもつ医師がたどりついた究極の治療・キュアとは?待望の力作 長編小説」だ、そうで。


          これまで名前だけは知ってたけど初読みの作者さんだったので、読んでる途中まで、てっきり男の人かと(多分俳優の田口浩正さんのイメージで…)。

          なので、改めて女性だと知ってから、この文章の、あまりの力強さというか、荒々しさに圧倒されてしまったかも。
          プロローグはイメージ的に『カラスのジョンソン』を思い出させるような(鳥、だけかもだけど)。

          巻末の参考文献の羅列を見ても、この本の内容の凄まじさに納得してしまうし、実際「癌」のこと、「怖い病気」としか、ただ漠然としか知らなかったなぁと、すごく勉強になったというか、知らないから怖いということも確かにあるのかもと、つくづく考えさせられてしまった。

          斐川の力を知ってからの、友人の心の本音も、何だか人間だなぁと思えるし、その反面、斐川を支える人たちもまた、人間だなぁと。

          「人を頼らないことは、決して正しいことでも偉いことでもないのだ…」「誰にも迷惑をかけない人生なんて在りえない」というのも、すごく良く分かる。

          「生かされている」というのも、「生きている」ことの不思議さも、「いのちは理由なく生きたいのだ。だから、最期まで生きようとする。それでいいんだ。」という言葉も、何だかものすごく心にすっと入ってきたかなと。
          生きてるのに、「生きる意味」とか、考えても仕方ないというか(投げやりではなく)…。

          そしてエピローグで、斐川が少女に伝えた言葉に、ものすごく楽になれたような気がしてしまった。

          「癌」が苦手とする生活…今からでも遅くないかな…。
          とりあえず、玄米を食ってみようかなとも。

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            『わたしはここにいる、と呟く。』新津きよみ

            わたしはここにいる、と呟く。
            わたしはここにいる、と呟く。
            新津 きよみ 2007/11/30発行 徳間書店 P.245 ¥1,785
            ★★★★
            女は、この十年を顧みた。十年前、女はこれからの自分の人生を思い描いた。十年後、わたしはきっと仕事を辞めている。結婚して子供を産み、平凡に暮らしている。そんな人生設計を立てた。だが、十年後のいま、女の人生は変わらない。仕事も辞めなければ、結婚もせず、子供もいない。結婚するチャンスは何度かあったが、縁がなかったのだろう。正社員だったのが、その後のリストラで契約社員にされた。
            女の三十五歳。将来に不安はある。が、どうしようもない。いまの人生を続けるしかない。       〜『あの日あのとき』より〜

            五歳の頃、家を出て行ったまま音信不通となっていた母親の居場所を、父親の葬儀後に知らされた「萌子」。理想の住まい、理想の仕事を見つけ、37歳まで一人で生きてきた「萌子」には、幼い頃に捨てられたという記憶を拭いきれないまま、自分からはどうしても母親に会いに行くことができず…。そして離婚後、新しい家庭を持った母親は、今ではもう認知症が進み、娘の名前さえあやふやで…『わたしを探して』

            同窓会に出かけて以来、様子のおかしくなった夫を疑うようになった妻の「真紀子」。そんな折、今度は自分が結婚指輪をなくしてしまったことに気づき、どれだけ探しても見つからない指輪に、夫との縁の薄さを重ね合わせてしまい…『時のひずみ』

            中学の卒業文集に将来の夢として「夢中になれるものを見つける」と書き、平凡な主婦となった「わたし」と、「いまはまだわからないけど、絶対に探す」と書き、その通り「なりたいもの」を探し続け、輝き続けていたかのように見えた同級生の「奈美」。そして20年後、ニートを続ける「奈美」と偶然再会したことから、「わたし」の家庭に危機が訪れ…『あなたの居場所』

            かつての恩師と、老人ホームで再会した「ケアハウス」の相談員「恵子」。小学生の頃に理不尽ないじめに遭ったせいで、その後もずっと不幸の連続だったと考える「恵子」は、いじめを黙認していた恩師に、過去の過ちを認めさせようとして…『忘れはしない』

            結婚前の不倫旅行の際、自分たちには撮ることができなかった旅の思い出としての「写真」が欲しくて、他人のフィルムを思わず持ち帰ってしまった「朋子」。それから16年の歳月が流れ、中学生の娘の母親となった「朋子」は、その人たちにとっても大切な旅の思い出であろう写真を、元の持ち主に返すことを思い立ち…『思い出を盗んだ女』

            電車内でのつまらない諍いに巻き込まれ、その正義感ゆえに若くして命を落としてしまった兄のため、少しでも事件の真相に近づこうと、10年後も一人でチラシを配り続け、関係者が名乗りでてくれることを待ち続ける妹の「美乃里」。そして事件のきっかけとなった当時のOL、今は主婦となった「紀子」は、幼い一人息子の正義感の強さゆえに、周囲に気を遣い続け、心配な日々を送り…『あの日あのとき』

            間もなく時効を迎えようとしている殺人事件の容疑者、かつての同僚であった「秀美」が逃げ続けてくれることを心から願う「涼子」。「秀美」のあまりのクジ運の良さから、側にいるだけでそのおこぼれにたびたびあずかっていた「涼子」には、警察には決して言えない秘密があり…『その日まで』の、7編から成る短編集。

            「何度も、何度も、この胸にこみ上げてくる本当の“わたし”をあなたに伝えたかった。―――もっと探して。一生懸命に探して。
            自分の奥底で眠っていた感情がうつくしく、しなやかに、呼び覚まされる珠玉の物語。」だ、そうで。


            てっきりよく読んでる作者さんだと思ったら、実は初読みだったんだと驚いてしまった…(アンソロジーなんかで読んだ記憶があったのか、名前だけはよくよく知ってたからかな)。

            長篇だと思って読み始めたら、いきなりぶつっと終わった感があって、この続きは…?と思うほど、あっけないというか、不完全燃焼で、でも読み返してみたらなるほど、こういう話だったのかと…さらっと読んでると分かりづらいのかも。

            そして、先日ここで書いた『イジ女』同様、中盤から、やたらと怖ろしくなってしまった。

            前半のお話も、同年代の女性として、心にぐさっとくるような台詞がたくさん出てきて、結構痛かったけど、『あなたの居場所』、『忘れはしない』は、別の意味でものすごく「いたい」お話。

            そんな昔のこと…と思えてしまうけど、された側にとっては、そうとは思えないものなんだろうなぁと、結構考えさせられてしまった。
            でも、やっぱりコワすぎる…。

            『思い出を盗んだ女』と『その日まで』は、ミステリっぽくて、面白くて、でもやっぱりぞっとする話。

            『あの日あのとき』は、こういう話、実際にもよく起こってる事件だし、勇気があれば…と思うけど、現実にはやっぱり恐くて、正義感なんて吹っ飛んでしまうというか。なので、お兄さんみたいな人…と、恋人にそれを求めても相手は辛いだろうなというのも分かるし、そこはどこかで折り合いをつけないといけないなと、自分自身も、相手にそういうの求めてることに気がついたかも。

            そして、このお話の最後のほうは、ちょっと感動(こうあってほしいという理想だからなんだろうけど)。

            タイトルがなんだか意味深で、でも、ものすごくわかるなぁと。
            こうしてブログを書いてるのも、本当は誰かに見つけ出してもらいたいからなのかもなと、しみじみ。

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              『イジ女』春口裕子

              イジ女
              イジ女
              春口 裕子 2008/1/25発行 二葉社 P.333 ¥1,680
              ★★★★
               だってしょうがないじゃない。それがあたしなんだもの。
               いつも同じパターンだとか懲りてないとか、誰に何と言われようと、どうしようもない。自分でもウンザリすることは時どきある。あるけどだからって自分を嫌いになったりはしない。自分を見放したりは、絶対にしない。       〜『レッツらゴー』より〜

              それまでの社宅住まいから、ドラマのロケにも使われるという憧れのハイソなマンション「グランドパルテノン」に住み始めた、実家はそのマンションの住人達が馬鹿にする「駅向こう」で100円ショップを営む、庶民派の専業主婦、加奈子。
              周囲のセレブな奥様達との付き合いもそつなくこなしていたものの、友人に頼まれて引き受けた雑誌の読者モデルの取材を機に、マンションで少数派の公立の小学校に通う娘の沙智が目に見えてふさぎこむようになり……『目立とう精神』

              同期入社であるがゆえに反目しあう、仕事のできるタイプの多賀子と、気配り上手で家庭的なタイプの真美。二人は派遣社員の百花の「ここだけの話…」に振り回され、一人の男を巡って、いっそういがみ合うことに…『オフレコ』

              クリエイティブなカタカナ職業の彼氏との大切なデート中、ハナが偶然出会ってしまった昔の同級生、デビュー以来の織田裕二ファンで、いまだに追っかけを続ける80年代ファッションそのままの、ハナから見ればイタイ女、美代子。その日以来、ハナは自分の幸せな姿を見せ付けるはずが、ついつい美代子のペースに巻き込まれ、彼氏と迎えるはずだった30歳の誕生日にも…『ミーちゃんハーちゃん』

              他、合コンで釣った男にさんざんおごらせた挙句にさっさと立ち去る、ちやほやされることだけが好きな、巨乳の女の話『ご機嫌なナンバー』

              社内での仲良しグループの、どろっどろの披露宴の話『あんぽんたん』

              急な呼び出しにも快く応じるアルバイト君よりも、責任感もやる気も全くないような、正社員のダメ男と付き合う女の話『やる気ナッシング』

              ランチタイムのいじめに耐え切れず、「恨む」という手紙をいじめ仲間の一人に遺して自殺してしまった派遣社員の話『イジ女』

              そして、それぞれの女の後日譚ともとれる『レッツらゴー』の8篇から成る短編集。

              『女の世界はこんなに大変。同僚、友だち、隣近所―こういう女、いるでしょう?女社会の「チクチク感」を描く達人・春口裕子presents。傑作短編集。』だ、そうで…。


              『目立とう精神』は、今やってるドラマ『斉藤さん』の、幼稚園のママさんたちをすぐに思い起こさせるようなお話で、こんな近所づきあいが実際にあったら、絶対嫌だなぁと。

              独身の私にはあまり縁がない話なのと、それぞれの短編のタイトルが何となく一昔前というか、軽いなぁと思いつつ、最初の方はさらっと読んでたら、後半の『あんぽんたん』から急にものすごく怖ろしい話になってしまった。

              会社内での一見仲良しグループの中で、二人だけ披露宴に呼ばれなかったことを気にして、なのに突然空きが出たからと、直前に呼ばれて…なんて、有り得ないというか、この新婦さんは、まさに「あんぽんたん」というか、こんなぐらいで済んで、ありがたいと思え…というか、本当にムカついてしまった。

              私なら空気も読まずにスピーチで思い切り、この人の性格を暴露してしまいそうな…(その前にまず、披露宴に呼ばれないタイプかな)。最後には、少し救われたけど。

              その二つ後の、表題作『イジ女』も、また後味の悪い話というか、てっきりイジっぱりな女の話の『イジおんな』と思ってたら、壮絶な女のいじめの話、『イジめ』と読むとは…。

              自殺した派遣の子の日記が痛々しすぎて、生々しくて、そして最後はホラーで、ちょっとびびってしまったけど、過去に「ホラーサスペンス大賞特別賞」とやらを受賞されている作者さんなんだと知って納得。

              まったくこんなことした覚えがないかと聞かれれば、そうとは言い切れないし、年下の子に対して、余計なお世話を随分してきたかなぁとちくちくと心痛むところもあって…。ここに出てくるのは本当にひどい話だけど、相手の取り方次第で、似たようなことならやってしまってるのかもしれないなぁと。

              にしても、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎる「イジメ」かなとも(その数の数え方、気持ち悪くて、そこに真っ先に突っ込みたくなるし)。
              逆の立場なら…と考えてみたけど、私自身が一人が全く苦にならないタイプなので、そうまでして誰かとくっついていたい彼女の気持ちが良く分からないかも(女王様みたいな人も、周りにいなかったし、それも幸いだったかなと…)。

              社内でのランチタイムにそんなに怯えてる人がいるなんて…、今まで考えたこともなかったけど、人が多ければ多いほど、そういうことってあるのかもなぁと結構考えさせられる、女性ならでわの秀逸な短編集。

              この装丁、何かに似てると思ったら桐野さんの『リアル・ワールド』っぽいような。
              考えれば女って、高校生でもおばさんでも、人間関係の煩わしさには、あんまり年齢とか関係ないのかもなとも…。

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                『とりつくしま』東直子

                とりつくしま
                とりつくしま
                東 直子 2007/5/10発行 筑摩書房 ¥1,470
                ★★★★
                 違う。そのくちびるを、手を、受けるのは、あたしなのに。いやだ、こんなの。見たくなかった。こんなの、見なくちゃいけないなんて、地獄だ。とりつくしまなんて、もらうんじゃなかった。
                 ねえ、渉。これ以上、この女といちゃつくつもりなら、いっそ、あたしを壊して。たたき割って、粉々にして。
                 あたしの必死の想いは、でも、届かなかった。  〜『トリケラトプス』より〜

                死んでしまった人間が、この世にあるなにかの「モノ」にとりつくことができるように取り計らってくれるという、あの世にある「とりつくしま係」。

                声を掛けられた人たちは、失くしてしまった元の身体の代わりに、それぞれにこの世で思いを残した人たちの身近な「モノ」へと形を変えて、この世を再び体験することができるというのだが……。

                病に倒れた母親は、野球部の試合中「ロージン」へと形を変えて、エースの息子を見守り…『ロージン』

                事故で突然死してしまった若妻は、夫が大切に使っていたマグカップになって…『トリケラトプス』

                死んだことが理解できない幼い男の子は、母親と良く来た公園のジャングルジムに形を変えて、母親を待ち続け…『青いの』

                慕い続けた「先生」に想いを寄せていた女性は、かつて先生に贈った扇子になって…『白檀』

                図書館にしか居場所のなかった老人は、親切にしてくれた受付の女の子の「名札」になって…『名前』

                他、『ささやき』、『日記』、『マッサージ』、『くちびる』、『レンズ』の10編の連作短篇集と、番外編『びわの樹の下の娘』の11編から成る短編集。

                『あなたは何に「とりつき」ますか?
                死んでしまったあなたに、とりつくしま係が問いかけます。そして妻は夫のマグカップに、弟子は先生の扇子に、なりました。切なくて、ほろ苦くて、じんわりする連作短篇集。』だ、そうで。


                これは、あまりにも切ない…。

                大切な人のすぐ側に居ても、声をかけることも出来ず、気付いてもらえることもなく、ただ黙って見ているだけ、というのは私なら悲しすぎて耐えられない、と思う(子どもがいたら、もしかしたらなりたいもの、あるのかもしれないなと思えるけど、彼氏とか、旦那なら絶対嫌だなと…)。

                なので、『トリケラトプス』や『日記』のように、愛した人が別の人を愛するのを目の当たりにするなんて…想像しただけでも辛くて、とてもじゃないけど「それでいい」とは思えないだろうなぁと。

                そういうの以外の『名前』や『くちびる』、家族の『マッサージ』、『レンズ』は、何となくあったかくて良いお話と思えたけど、やっぱり切ないのは、切ない…。

                死んでから、思いの叶わなかった相手の側にある「モノ」になる、というのはアリだけど、かつて愛されていた人の側にいて、その人の新しい恋を見守ることが耐えられない…ということは、私はかなり嫉妬深い性格なのかも、と改めて考えさせられてしまった。

                「もしも…」の話は結構好きなので、これを読んで、自分ならと考えてみたけど、自分がいなくなった後、みんなが何一つ変わりなく生活しているのを見るのは結構悲しいので、絶対この世に戻りたくないなとも(自分の小ささを改めて思い知らされてしまったかも…)。

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                  『家族狩り オリジナル版』天童荒太

                  家族狩り オリジナル版
                  家族狩り オリジナル版
                  天童 荒太 2007/10/20発行 P.562 ¥2,415
                  ★★★★★
                  「……愛することはとても難しい。親なら、家族なら、しぜんと愛があるだなんて幻想です。家族が幸せであること、それは幻想ではなく、希望であり目標です。でも放っておいて手に入る幸福などありません。努力が要るのです」

                  息子を半ば自殺同然の事故で失った責任を全て妻に押し付け、その挙句妻を精神的に追い詰め、家庭を崩壊させてしまった刑事、馬見原。

                  恋人から妊娠を機に結婚を迫られても「堕ろしてくれ」としか言えない、父親に自由を奪われたことで、他人との関わり方や「愛」がわからないままに大人になってしまった美術教師、巣藤。

                  父親のせいで不自由な身体となり、今は痴呆が進み不自由になってしまった父親に振り回され、自身は子どもを産むことに不安を感じながら、他人の家庭のことに心を砕く、児童相談センターに勤める氷崎遊子。

                  アパートの隣家で起こった惨たらしい一家惨殺事件の第一発見者となったことから、その後の同様の事件にも深く関わることになり、テレビカメラへの学校批判ともとれる発言と、女生徒との不祥事から学校を追われることになった巣藤は、「何もしなかった」という罪を自らに課すことに。

                  巣藤を学校から追い出す直接の原因となった女生徒を気に病む氷崎は、巣藤を罵りながらも、自分自身もまた無力感に苛まれる。

                  また、児童虐待の被害者となった母子と深い関係に陥り、加害者である夫に執拗につきまとわれる馬見原は、自身の家庭よりも母子を守ることに躍起になり、再び妻を追い詰め、狂気へと走らせてしまう。

                  それぞれの事情を抱え、頑ななまでに「家族の愛」に背を向けて生きる3人が、それぞれの立場から事件の真相に行き着いたとき、新たな凶行に巻き込まれ……。

                  『「……オヤジに、姦られた」「ぶっ殺してやるっ」衝撃のオリジナルバージョン!
                  きっかけは1本の電話だった。声の主は、一家皆殺しを宣言して受話器を置いた……。あまりにも残虐すぎる連続殺人、ページを捲るごとに満ちていく狂気。迷える子どもらに救いの日は訪れるのか? 1995年発表、1996年に山本周五郎賞を受賞し、文庫120万部ベストセラーの種子となった大作が、ファンの熱い声を受け堂々の刊行。』だ、そうで。


                  全5巻の文庫版のオリジナル版、是非読みたいと思っていたのでこの刊行はめちゃくちゃ嬉しいなと、いそいそと読み始めたら、これは文庫よりエグいような…(文庫もそこそこだけど)。

                  一家惨殺事件の殺され方は想像を絶するし、そんな殺され方、死んでも嫌だなぁと(いや、これなら死んだ方がまし、というか…)。

                  骨格は同じだけど、別物と思って読んでもいいくらいなのかも(文庫版の話をすっかり忘れてしまってるのかもだけど)。

                  自分のところだけは大丈夫だと思っていても、外部から災厄をもたらされるというか、「家族の問題」は、その一家だけに留まらないという二つの災い(?)の繋げ方が絶妙で、上下二段の560ページも、苦もなく読めてしまうくらいにやっぱり惹き込まれてしまった。

                  この話がなんでこんなに好きなのかと、オリジナル版を読んでみて再び考えてみたけど、やっぱり最初の頃の巣藤のひねくれた「結婚観」に全く同調してしまうからで、そして事件と関わっていくらか変わっていく巣藤にもまた、共感できるというか、色んなことから逃げないで考えようとすること、人間は変われるということ、そういうのがすごく自分自身の今と重なり合ってるからなのかも。

                  そしてこれは今回初めて知った気がするけど、この3人が全員AB型というのも、同じAB型なのでなんだか納得してしまった(こんな風に醒めていても、所詮は愛がなければ生きられないなと痛感しているのに、なかなか素直になれないなぁというか、強がりすぎてるなぁとつくづく…)。

                  そして「幸福」には努力が必要だとも、つくづく。

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