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    『どろ』山本甲士

    どろ (小学館文庫)
    どろ (小学館文庫)
    山本 甲士 2004/12/1文庫化 小学館 P.358 ¥650
    ★★★★
    まともな社会人として日常を送っている奴らの中にも、実はおかしなのがいくらでもいる。これまで運が良かっただけで、その運が尽きて事件が起きるのか。それとも人間というものは本来的に、ふとしたきっかけで狂いを生じさせてしまう生き物なのか。

    始まりはほんの些細なことだった…。

    二日連続して朝刊が抜き取られるという小さな「事件」が起こり、真っ先に隣人を疑ったのは、市役所に勤める岩室。

    三ヶ月前に隣に越してきた隣人、手原に庭の手入れのことを注意をしたことで、嫌がらせを受けたのだと思い込み、その報復に手原家の庭に犬の糞を投げ入れ溜飲を下げた岩室。

    ところが今度は、隣人の手原が岩室家の庭の花を全て手折るという報復に出たことから、岩室も後には引けなくなってしまい、二人の大人気ない「泥仕合」はどんどんエスカレートし、やがては家族や職場までをも巻き込んで……。

    『腑に落ちない出来事、ままならない日常。どんなにムカついても腹が立っても、「猫をかぶった状態」でやり過ごすのが、普通の大人である――が、仮面が一度剥がれてしまったら!?  隣の家の住人が気に入らんとか、上司がアホやからとか、とにかく日常にむかついている人、ここまでやってみませんか?おススメです。』だ、そうで。


    「ここまでやってみませんか?」の惹句には、「絶対やっちゃダメ!!!」と言いたくなるようなことばかりで(いや、本当に途中からはものすごいし、こんなこと普通はきっと考え付かない、と思いたい)。

    最初の時点で、お互いに注意されたことに対して少しでも対処していればこんなことにはならなかったのに、何で自分のことは「悪くない」と、許してしまうのか(そこが現代の人間らしいといえば、らしいような)。

    最初は「馬鹿馬鹿しい」ぐらいの報復合戦(それでも立派に器物損壊罪や脅迫罪などなどの○○罪というのがつくらしいけど)が、本当にどんどん「えげつなく」なっていくので、一体どこまでいったら終わるのかと思ったら、やっぱりそんなところまで…。

    その労力、別のところで使えばいいのにと読んでいてずっと思ってたけど、これはこれでこの二人にとって、ある意味「楽しみ」だったんだと納得。

    岩室も手原も、職場や家庭で様々な問題を抱えていて(どこの家庭でもあるような問題かもしれないけど、これも結構重かったりして大変だなと)、「嫌がらせ」がエスカレートしていくほどに、それらの問題に対しても強気になっていくというか、開き直っていく姿勢がなかなか面白い(人間一つのことに一生懸命になれれば、どんどん強くなっていくというか…ここでは「悪巧み」なんだけど、まあそれでもエネルギーには違いないかなと)。

    そして最後の最後まで…懲りてないというか、逞しすぎるというか、二人の力関係が全くの対等なので、これはこれでいいのかなと。

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      『THE QUIZ』椙本孝思

      THE QUIZ
      THE QUIZ
      椙本 孝思 2007/11/10発行 アルファポリス P.269 ¥1,155
      ★★★★★
      ……絶望から這い上がる唯一の術。それもまたクイズだった。なぜ、こんなクイズが行われているのか? 疑問を持つということ。難問に立ち向かうということ。それこそが、人類が人類たり得る最大にして最高の能力だと藤尾は最初に言っていた。

       このままでは、死ねない。

      全国5,887名の参加者の中から勝ち抜き、「勝てば1億、負ければ地獄」がキャッチフレーズの視聴者参加型の新しいクイズ番組爛妊奪鼻Εア・ドリーム瓩亮録スタジオに集められた10名のメンバーたち。

      参加者達は、いずれおとらぬ頭脳の持ち主である男女10名。

      やや殺風景過ぎる真っ白なスタジオセットに設置された巨大な液晶ディスプレイから、メンバー達にクイズを出題するのは、人気司会者『フジコー』こと、藤尾康平。

      ルールはただ一つ、これから出題されるクイズに正解し、勝ち抜いていくこと。
      ただし、不正解だと「消される」のだという。

      メンバー達にはその言葉の意味が良く分からないまま、淡々と番組は進められ、第一問目のクイズの終了直後、唯一の不正解者が突如苦しみ出し…。

      同じように毒を仕込まれていたメンバー達は、このクイズから降りることも許されず、クイズに正解しなければ、ただ「死」があるのみであることを思い知らされることに。

      そして問題は次々と出題され、一人、また一人と不正解者たちは「消されて」いき…。

      『優勝者には賞金1億円
      華々しく広告された視聴者参加型の新クイズ番組。
      しかし、そこで待っていたのは、死と隣り合わせの残酷ゲームだった。
      果たして決勝に進んだ十人の回答者の運命は? そしてクイズの真の目的とは?
      「THE CHAT」の鬼才・椙本孝思が放つ驚愕の異色ホラーミステリー!』だ、そうで。


      テレビドラマの『ライアーゲーム』のようなものかと思ったら、『バトルロワイアル』のようなものだった、という感じ。

      山田悠介の作風にもちょびっと似てるかなと。

      とはいえ、最後まで「なんで?なんで?」と思いながら、一気に読めてしまったし、メンバー達の足の引っ張り合いも、まあこんなもんだろうとなかなか納得。

      クイズの出題の「このなかで浮気をされている人は誰?」は、かなり馬鹿馬鹿しくて笑うしかなかったというか、まあこれもそんなもんだろうと。

      そしてラストは、うーん、そうくるのか…というか、これもまあ納得できるし、なかなかすっきりした終わり方で良かったかなと。

      そういえば小学生の頃「勝てば天国、負ければ地獄」のキャッチフレーズの「アメリカウルトラ横断クイズ」が大好きで、大人になったら絶対参加しようと(トメさんが司会の間に)思ってたのになぁと…しみじみ。

      是非復活してもらえたらと(成田でのじゃんけんぐらいしか勝てそうな気はしないけど…)。

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        『摂氏零度の少女』新堂冬樹

        摂氏零度の少女
        摂氏零度の少女
        新堂 冬樹 2007/11/25発行 幻冬舎 P.324 ¥1,575 
        ★★★★★
        私は、あなたのように誰かを愛したこともなければ、あなたのように誰かを恨んだこともない。
        私は、あなたのように誰かを尊敬したこともなければ、あなたのように誰かを軽蔑したこともない。
        私は、あなたのように誰かに手を差し延べたこともなければ、あなたのように誰かを突き放したこともない。

        名門の進学校に通い、成績は常にトップクラスで、それを面白く思わないクラスの男子生徒たちからは「いじめ」の標的とされるも、「いつでも殺せる」けど「殺す価値もない」と、彼らを蔑み、意にも介さず自分だけの独自の世界で、様々な生き物たちを相手に何時間でも一人過ごす、周囲から孤立した女子高生、涼子。

        家族の前では典型的な「いい子」を演じ、母親思いの優しい子として、祖母や母親からの信頼も厚く、将来は医師になることを嘱望される優等生、涼子。

        幼い頃に愛犬を失ったトラウマから、生き物に対して歪んだ愛情を注ぐようになった涼子は、インターネットで薬を手に入れ、ついには「この世で最も愛する母親」への「悪魔の実験」を開始することに。

        そして家族をそれぞれ「ライオン」「老ライオン」「野ネズミ」「豹」と密かに名付け、初恋の相手の名前をハンドルネームに使用した自身のブログで「悪魔の実験」は公開され、やがては涼子の姉、京子の知るところとなり……。


        「名門進学校で一流大学の医学部合格の太鼓判を押されている桂木涼子がある日始めた“悪魔の実験”。それは、人知れず最愛の母親にタリウムを飲ませることだった……。
        善悪ってなに?いったい、なにを基準に誰が決めるの?
        彼女を狂気に駆り立てた理由とは?
        クライムノベルのエキスパートがまたもや猟奇犯罪に深く切り込んで見せた。現代ミステリーの新機軸!
        少女の心の闇は、身震いするほど不気味で切ない。」だ、そうで。


        1ページ目で「ああ、あの事件か…」と、すぐに思い出せるほど、結構衝撃的な事件だったような(2年も前のこととは思えないほど)。

        同じような新堂さんのクライムノベルの『砂漠の薔薇』では、主人公の母親が追い詰められていく気持ちが多少なりとも理解できたけど、これはちょっと…(主人公との年代の差なのかもしれないけど)。

        頭の良過ぎる(?)彼女は、彼女だけに通じる理屈で次々と生き物を手に掛けていく(この辺の下りは読んでて本当に嫌だったけど、『動物記』や昆虫の本を書かれるほど、新堂さんが人間以外の生物に対して人一倍愛情を持っておられると確信しているので(たぶん…)、この物語には必要なんだと諦めて読んだ)けど、そこはまあ、何とか理解できるような部分もあって(そうなって生きているのが動物達にとって「幸福」なのかどうかというのは、私にも分からないし、かといって、やっぱりそれはあんまりだとも…)。

        ただ、母親へのそれは全く別物というか、理解できないことだらけで。

        この物語に出てくる母親も母親だし。
        そこまで見た目にも悪化してるのに、たかが「子供の頃の注射が痛かったから」くらいの理由で、病院にも行かないというのは理解に苦しむし、そんだけ仕事休んでるのに「病院に行く時間がない」というのは、もう好きにすれば…としか。
        最後の方は壮絶すぎて、よくそれで動けてるなと感心するぐらい(それもこれも、一家の大黒柱としての責任感なのか…)。

        何にせよ天童さんの『家族狩り』然り、家族って一歩間違うと本当に怖ろしいなと思えてしまうし。

        読み終わってから、これの元となった事件のこと少し調べてみたけど、結局この本の終わり方と似たような感じなのかな。

        この本のタイトルが、全てを物語ってるのかもしれないなと。

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          『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』重松清

          永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢
          永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢
          重松 清 2007/11/20発行 講談社 P.389 ¥1,680
          ★★★★★
           はてしないような長い人生の中、いったいどれだけのひとの死を見つめてきただろう。
           現世から立ち去っていく――目の前から消え去ってしまう――そう考えると、死はどこまでも悲しい。
           だが、ひとは死ぬことでどこかへ帰っていくんだと考えてみれば、悲しみに、安らぎや歓びが入り交じってくる。
           そして、死ぬことも老いることもできないカイムは――どこへも帰っていけない。

          死にいたることのない体をもち、決して老いることもなく、激しい戦火を生き続ける男、カイム。
          永遠の生を背負ったカイムは、千年のも永きに渡って行く当てもない旅を続け、人生を彷徨い続け、苦悩する。
           
          「自分はなんのために、この世界に生まれてきたのか――。」
          「自分がこの世界でなすべきことは、いったいなんなのか――。」
          「ひとはなぜ、憎み合うのか。」
          「ひとはなぜ、戦うのか。」
          「そして、ひとはなぜ――戦うことや憎むことをやめられないのか……。」

          カイムは、旅の途中に訪れ滞在する場所で、旅人として、時には傭兵として、また時には農場の働き手として…さまざまな人たちと出会い、別れを繰り返す。

          戦場となった小さな村では、ある老婆と出会い「永遠の生よりも強い、一度かぎりの短い生」を認め、またあるときには聖地と呼ばれる場所で「弱いがゆえのひとの優しさ」を認め、人間を「当たり」と「はずれ」に分けることで治安を保っているという小さな国で「変われる」ことを証明してくれた一人の年老いた革命家と出会い、また「こちら側」と「あちら側」に壁一つで分断されていた国の歴史的和解の瞬間に立ち合い……。

          カイムは、ただ生きつづけ、ただ歩き、ただ旅を続ける。
          これまでも、これからも……。

          「彼は老いず、ただ去りゆくのみ。
          彼は死なず、ただ別れるのみ。
          その寂しさ――あんたにわかるかい?
          『流星ワゴン』重松清×『バカボンド』井上雅彦×『ファイナルファンタジー』坂口博信
          三人の絆が生んだ重松文学の新たな試み 
          書き下ろし、700枚!壮大なスケールで描く命の賛歌」だ、そうで。

          先日発売されたX−BOXのロールプレイングゲーム「ロストオデッセイ・千の夢」(最近やたらとCMでよく見る…)のために書かれた物語で、主人公のカイムが時折見る「夢」の中の過去の記憶なんだそうで、物語の舞台は全て千年の間にカイムが訪れた「いつか、どこか」の町のお話31編、なのでどこから読んでも大丈夫なんだとか。

          どことなく『銀河鉄道999』を彷彿させるというか、どの過去の記憶の話も全て感動もので…(半分以上の話で泣けてしまったかも)。

          これを読んでゲームもやりたくなったけど(でもFFよりドラクエ派)、いかんせんX−BOXが…。なので、このゲーム出来る人は羨ましいかも。
          もちろん、この物語だけでも充分価値のあるものだと思えるので、ゲームとか関係なしに多くの人にオススメしたくなってしまった。

          人間の優しさ、愚かさ、強さ、弱さ、本当に大切なもの、そして何より「変われる」ということ(これは期待を込めてかな)、そういうのがいつもの重松さんらしい言葉で描かれていて、本当に心に残るストーリーが多かったなと。

          なかでも特に好きなのは『コトばあさんのパン』と『天のつぶて』と『はずれくじ』と『老兵士の遺言』。

          そして一番心に残っている言葉。

          「自分のやらなければならないことをちゃんと持ってるひとは――そして、それ以外のことには目を奪われない人は、愚かなまでに強い。」

          そういう人になりたいし、そういう人に惹かれるし。

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            『女たちの内戦』桂望実

            女たちの内戦
            女たちの内戦
            桂 望実 2007/11/30発行 朝日新聞社 P.262 ¥1,470
            ★★★★
            今年中に絶対結婚してやる。私はこの目標のためだけに生きている。こんなにかわいい私が、幸せな結婚をできないわけがない。もし、万一、できないとしたら、それは私が美し過ぎるから。アプローチする前に諦めてしまうほど、私は最高級の女。私に相応しい最高級の男を、必ずゲットしてやる。    〜『真樹 二十九歳の戦い』より〜

            30歳までに結婚してやる!と息巻いて、クレジットカードで男好みの服を次々と買いあさり、精一杯めかし込んでは合コンにあけくれるものの、やって来るのは「はずれ」の男たちばかり。自分よりも容姿が劣るはずの友人や姉には素敵なダーリンがいるのに、どうして自分には「運命の人」が現れてくれないのだろうかと、自分自身を一切省みず、相手に求めてばかりの「自分大好きOL」…『真樹 二十九歳の戦い』

            同級生の中では比較的早くに結婚して子供を産んだ専業主婦。久しぶりの同窓会でバリバリ働くかつての友人たちを目の当たりにし、自分も「なにか」を始めたいと思うものの、その「なにか」がなかなか見つけられない「世間知らずの主婦」…『佳乃 三十四歳の戦い』

            そんなつもりで付き合っていなかった9歳年下の恋人から、突然プロポーズされてしまい、「結婚」の二文字を重く感じる、キャリア志向ではなかったはずなのに、気がつけば重要なポストを任されていた「気のつきすぎる女」…『めぐみ 三十九歳の戦い』

            二人の子供の親権を夫に渡し、離婚後がむしゃらに働いて、ようやく自分の店を持てるまでになったものの、資金繰りに行き詰まり、元彼たちに金の無心を企む「規格外の女」…『治子 四十五歳の戦い』

            「女たちの戦いは終わらない――。
            キャリアウーマン、専業主婦、バツイチ、OL……20代から40代、理想と現実の間をさまよう4人の女たちの内なる戦いを描く連作短編集。」だ、そうで。


            アマゾンでの評価が良くなかったので、あんまり期待せずに読んだら、これが意外や意外、読み始めると止まらなくなってしまった。

            ただ、主人公たちよりも、その周囲の友人・知人に共感しまくったかも(特に専業主婦「佳乃」さんの友人たちには…)。

            自信過剰のOL「真樹」は、自分からは何もせず、それでいて何でも人のせいにしてしまうつまらない女なのに、何でこんなに自信があるのか不思議で仕方ないけど、この人の心理描写はすごく面白い、かも(女だなぁ…というか、自分に冷たい男にはとことん毒をはくところが、なんとも)。

            専業主婦「佳乃」さんは、しょっちゅう出歩いてて、「ヒマだなぁ」という印象。でも、自分自身を認めてしまうところが、にくめないし、結婚にものすごく向いてるタイプだなと。そんなにお金にいとめもつけず、がばがば買い物できる今の生活の何が不満なのか…私からすれば羨ましい人、という感じ。

            一人が長い、39歳の「めぐみ」さんの「結婚」を躊躇する気持ちはすごく良く分かるし、必要なときだけ、側にいてくれる人…は、理想だけど、相手が「結婚」を望む人なら、さっさと別れてあげなければ、相手が可哀相なんじゃないのかなと…少し勝手過ぎる気がしてしまうかな。

            最後の「治子」さんは、本当にじゃあ何で子供を産んだのか?ちょっと理解できないし、離婚後の元彼たちも最低。「しゅっぱい」の幼児言葉にドン引きしてしまったし、その後の借金の理由も「あほか、こいつ」としか思えなくて、「治子」さんの子供以外に向けられる母性愛が不思議な感じ…。

            そして、物語を繋ぐキーマンのような役割の足ツボマッサージの店主、舞子さんのところに置いてある「運命の人を見分けるネックレス」、舞子さんは年齢は関係ないと言うけれど、やっぱり若い頃なら欲しいと思ったかも…。

            ともあれ、どれもラストが前向きで、女のズルさや逞しさがすごく良く描かれてて、何となく読み終わった後にほっとする一冊かなと(自分だけじゃないんだと…)。

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              『秋の牢獄』恒川光太郎

              秋の牢獄
              秋の牢獄
              恒川 光太郎 2007/10/31発行 角川書店 P.223 ¥1,470
              ★★★★

              私はもう充分に、楽しんだし、悲しんだし、苦しんだのだ。一人でいたかった。
                                           〜『秋の牢獄』より〜

              11月7日の水曜日。午前中の講義が終わった後、学食で友人と他愛もない話をし、アパートに戻り図書館で借りてきた本を読み、炬燵でテレビを見た後一人きりの食事をし、風呂に入り眠りに就いた、東京の大学に通う一人暮らしを始めて二年の「私」。

              そんな何の変哲もない一日を終えたはずの「私」が目覚めると、ふたたび11月7日の朝へと戻ってしまい、その日から自分の記憶以外、全く同じ一日が何度となく繰り返されることに。
              果たしてこれは何かの罰や呪いなのか…『秋の牢獄』

              そして…、酒を飲んだ帰り道、見知ったはずのいつもの場所で、見慣れない民家の敷地に足を踏み入れてしまったがために、その家から出られなくなってしまった男…『神家没落』

              「神」の力を授けられたがために、「普通の暮らし」を取り上げられてしまった少女…『幻は夜に成長する』の、それぞれ、時間や空間、人間の心といった、ある意味「牢獄」のようなものに囚われてしまった人たちのお話。

              「まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる文体。心地良さに導かれて読み進んでいくにつれて、思いもかけない物語の激流に巻き込まれる。
              数千ページを費やした書物にも引けを取らない、物語の凄まじさ。
              圧倒的な多幸感と究極の絶望とを同時に描き出す、新鋭・恒川光太郎の珠玉の作品集。
              小説の力を再認識させられる大傑作。
              話題作『夜市』を凌ぐ、現代の神話の誕生! 〜帯の惹句より〜」だ、そうで。


              恒川さん初読みなのに、何故か読んだことあるような感じがしたのは、どことなく「世にも奇妙な物語・秋の特別編」みたいな空気が漂ってるからかも(朱川さんの作品にも感じたけど。て、朱川さんのは実際ドラマ化もされてたけど…)。
              そしてこの感じは、たまらなく好きかも。

              特に好きな話で、羨ましかったのは『神家没落』の家に閉じ込められてしまうお話。
              固定した場所でなく、こんな風に全国各地を転々とできて、食べ物の心配もいらないのなら、私ならここから出たいとは思わないなと(猫さえ連れて行ければ)。

              なので、一度解放されたあとの主人公の気持ちは良くわかるし、手放してしまったものは二度とは戻らないというか…当然の結末というか。

              『秋の牢獄』のリプレイも、やっぱりちょっと羨ましいと思えるかも。同じ一日でも、そんなに色んなことが出来たりするのなら、永遠に繰り返しでも構わないかなと(何度も殺されたりすると嫌だけど)。
              そして、終わりの一行がすごく良いなと。
              何もないことが、本当は一番の「幸せ」なんじゃないのかなと、最近良く思うので。

              『幻は夜に成長する』は、何となく「人間くさい」話というか、「救い」なんて結局は「幻想」でしかなくて、所詮「地獄」も人の心の問題なのかなと。
              これは、ものすごく哀しい話なのかも。

              この本を読んでる間、束の間今とは違う所へ行けた気がして(自分なら…と、想像するの楽しいし)、これこそが読書の醍醐味かなと思えたような(一種の現実逃避かも知れないけど…)。

              遅ればせながら、ホラー小説大賞受賞作の『夜市』も読んでみようかなと思えるぐらい(読まなかったこと、後悔してしまったので)、ちょっとはまってしまいそうな作家さんの一人かなと(Web KADOKAWAの動画インタビューを見たら、ちょっと好きなタイプだったもので、余計にそう思えたのかもだけど)。

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                『ダイイング・アイ』東野圭吾

                ダイイング・アイ
                ダイイング・アイ
                東野 圭吾
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                2007/11/25発行 光文社 P.372 ¥1,680
                ★★★★★
                 そうだ、あたしは帰らなければならないのに――。
                 途絶えようとする意識の残り火が、激しい恨みへと変わっていった。幸せだった人生を、突然終わらされたことに対する恨みだった。
                 あとまだ何十年も続くはずだったのに、それをなぜ、誰が、こんなところで。……
                 許さない、恨み抜いてやる、たとえ肉体が滅びても――。

                結婚して3年、今の生活に何の不安も不満もなく、夫と二人きりの幸せな生活を送っていた主婦が交通事故に巻き込まれ、あっけなく命を絶たれてしまった。

                それから約一年後、交通事故の加害者であるバーテンダー、雨村は仕事帰りに何者かに襲われ、一命は取り止めたものの、事故の記憶だけを一切失くしてしまう。

                何故事故から一年以上も経ってから命を狙われたのか…。
                一年前の事故当日の状況を調べ始めた雨村が知らされたのは、もう一人の加害者の存在。
                なのに何故自分だけが…と理不尽な思いに囚われる雨村。

                雨村の退院後間もなく、突然マンションから姿を消してしまう雨村の恋人。
                交通事故の後、羽振りの良くなった、もう一人の加害者の男。
                事件の後、雨村の店に姿を見せるようになった得体の知れない女の存在。

                雨村の周辺で次々と起こる不可解な出来事…。

                そして事故の記憶が欠落したままの雨村は、「人形」のような怪しい謎の女の魔力に絡め取られるように動きを封じられ、女のマンションに監禁されてしまうことに――。

                「俺をみつめるマネキンの眼。そいつは、確かに生きていた。
                その眼には、何が映っていたのか。

                誰もが少しずつ嘘をつき、誰かを陥れようとしている。
                今度の東野圭吾は、悪いぞ。
                ベストセラーを連発する人気作家の幻の傑作、解禁! 〜帯の惹句より〜」だ、そうで。


                冒頭の事故の描写が生々しくて、東野さんにしては珍しくエグいなぁ…新境地なのかな?と思って読み始めたら、実は9年も前の作品だったのかと知ってがっくり。
                その頃の作品調べてみたら、『白夜行』『天空の蜂』『秘密』と、なんと私のベスト3がずらりと…だし、そんな黄金期に書かれていたのに、何故いまさら???という気がしないでも…。

                そして、必然性があったのかどうか良く分からないけど、これまた珍しく、性描写にも力入ってる?というか…。

                なので帯に書かれてるのは、その辺のことだったりもするのかな?

                アマゾンのレビューで、ホラーミステリーと書かれてたけど、確かにホラーちっくだし、もし自分が加害者の立場なら…と考えると、この状況は耐えられないだろうし、逆に被害者の立場なら、これ以上のことするかも(と、いうような想像力は、ものすごく掻き立てられたかな)。

                ただ、ちょっと理解できない部分も多々あったりして。

                そう言えば東野さん、事故に遭った被害者の遺族の気持ちとか、そういうのすごく慮るというか、「忘れ去られる側」の無念さみたいなの、よく書かれてるのかもしれないなと…。

                そして、これとは全く関係ないけど、映画化される『容疑者xの献身』の数学の先生の役、絶対に温水さんでやってほしいなと(もう決まってたりしたらごめんなさい)、切に願う今日この頃…。
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