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    『さよなら、そしてこんにちは』荻原浩

    さよなら、そしてこんにちは
    さよなら、そしてこんにちは
    荻原 浩 2007/10/25発行 光文社 P.244 ¥1,575
    ★★★★
     妊娠を告げられた時には、喜んでみせ、すぐに入籍することを約束したのだが、正直に言うと、手放しに嬉しかったわけでもない。何かが終わってしまうかもしれない予感に、内心、動揺していた。……
     しかし、それが不思議なことに、純子のお腹がふくらんでくるにつれて、自分の目の前の景色が変わって見えてきた。    〜『さよなら、そしてこんにちは』より〜

    笑顔を見せてはいけない商売「葬儀社」に勤める、もうすぐ父親になる陽介。普段からの無愛想な顔立ちが、この仕事に向いていると社長からは言われるものの、実は笑い上戸の陽介。そんな陽介が葬儀の最中に意識をそらせるために考えるのは、まだ見ぬ娘とのシミュレーション…『さよなら、そしてこんにちは』

    会社をリストラされ半年間ぶらぶらしていた父親が、農園をやると突然言い出し、東京から3時間離れた、携帯も圏外のど田舎に引っ越すことになった一家4人。「赤毛のアン」や「若草物語」のような田舎暮らしを想像していたものの…『ビューティフルライフ』

    テレビの人気情報番組をくまなくチェックし、翌日の商品の仕入れを決めるスーパーマーケットに勤める食品課係長。ライバル店に負けないように、テレビ番組の情報を事前に仕入れたいあまり…『スーパーマンの憂鬱』

    子ども番組のヒーロー役の彼見たさに、子どもをだしにする専業主婦。後楽園で行われるショーに、憧れの彼がやってくると知り、いてもたってもいられなくて…『美獣戦隊ナイトレンジャー』

    客はといえば、安いネタばかりで長時間居座る常連ばかりの、流行らないすし屋「寿し辰」の典型的な頑固おやじ。ある日店にやってきた一見の客は、どうやらこっそりと取材をしているようで…『寿し辰のいちばん長い日』

    流行の「スローフード」の先駆者として取り沙汰され、一躍時の人となってしまった料理研究家、兼主婦。取材に、テレビ出演に、原稿の締め切りにと、てんてこ舞いになってしまい…『スローライフ』

    クリスマスを家族で祝いたいと、可愛い妻と娘にせがまれた由緒正しき寺の僧侶。
    檀家にばれないようにと、こっそりクリスマスの準備をすすめるのだが…『長福寺のメリークリスマス』の、7編から成る「いっしょうけんめい翻弄される人々」を描いた短編集。

    「いろいろあるさ、人生だもの。
     世のため、人のため、そして家族のため、働き者の悲哀を描く、著者独壇場の傑作集」だ、そうで。


    雰囲気的に奥田さんの『家日和』と同じ匂いがしたような…。

    一番笑えたのは『ビューティフルライフ』の少女ちっくなお母さん(の夢が次々と砕かれるところ。そりゃそうだ、というか、やっぱり外国でも昔は「ぼっとん便所」だったのかな?)。
    そして床下の謎の生物…とても気になる。

    とは言っても、面白いだけじゃなく家族の引越しの本当の理由がなかなか重くて、こんなお父さんお母さん、いいなぁと思える物語(文句垂れの、お姉ちゃんもなかなか)。

    『スーパーマンの憂鬱』は、リアルな話だなぁと(消費者の私は、思いっきり、この手のテレビの情報番組に踊らされてるし…)。
    実際、スーパーで働く人たちは、やっぱりああいうの見て参考にしてるのか、どうなんだろう?と思えてしまった。

    『スローライフ』は、最後のオチがなかなかよろしくて(奥田さんのは「ロハス」だっけかな)、『長福寺のメリークリスマス』は、ああ、もうすぐそんな時期かと、すっかりクリスマスなどご無沙汰になっている私にクリスマスを思い出させてくれたかも。

    『さよなら、そしてこんにちは』の葬儀社の社長の言う「結婚は人生の墓場…」は、実際どうなんだろう。
    そうとも思えるし、ここに出てくる家族は、どれもごくごく普通の幸せな家族だし、そういうの羨ましくもあるし、結婚して家庭を築くのは悪くないのかもなとも(みんな自分以外の誰かのためにだから、一生懸命になれるんだなと)。

    荻原さんらしく、いたるところにユーモアたっぷりで、面白いからさくさく読めるけど、そんなようなことも、つくづく考えさせられるような一冊だったかも。

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      『この指とまれ−GONBEN−』小川勝己

      この指とまれ  -GONBEN-
      この指とまれ -GONBEN-
      小川 勝己 2007/9/25発行 実業之日本社 P.401 ¥1,890
      ★★★★★
       意地の悪い言い方をすれば、夏樹にとっての爛咼献優広瓩箸蓮金儲けの手段ではなく、他人とコミュニケートできる唯一の手段なのだろう。この爛哀襦璽廰瓩蓮彼にとって、生まれてはじめてできた居場所なのだろう。そしておそらく本人は、自分の本心に気づいていない。
       しかしそれは――と博貴は思う。それは、おれも似たようなものかもしれない。
      居酒屋で知り合った美女と巨乳の二人組に嵌められ、連れて行かれた飲み屋でとんでもない金額を請求されることになった、サラリーマンの二人連れ。

      その場は何とか逃れられたものの、後日会社に取り立て屋がやってきて、男たちの身には破滅が訪れることに……。

      プロのような鮮やかな手口で、「ぼったくりバー」を発端とする、大口の詐欺を仕組んだのは、他の女に男を奪われた腹いせに「金持ちになって見返してやる!」と、半分冗談のような理由から、次々と犯罪行為を繰り返しては大金を稼ぐようになった、夏子と歩の女子大生二人。

      二人が仲間に引き入れたのは、犯罪者となってしまった父親を持ち、母親と弟のために金を必要としていた、気の弱いスキー部の後輩、博貴。

      身近な母親の死をもって知り、「アルコール依存症」になることを誰よりも恐れている、キレたらとことんまでいってしまう夏子のバイト先のボーイ、前科のある夏樹。

      そして、歩に思いを寄せる庸司、中国からの留学生王維、介護福祉士を目指す美代子。

      「金」だけで繋がっているというドライな関係の7人の「仲間」たちの詐欺の標的は、次第に大きな組織を巻き込むこととなり、やがては命を狙われることになるのだが……。

      第一章『他人の不幸は蜜の味』、第二章『情けは人の為ならず』、第三章『百害あって一利なし』、第四章『人を呪わば穴ふたつ』、第五章『善人猶以て往生を遂ぐ、況んや悪人をや』
      から成る、それぞれの登場人物からの視点で描かれる連作短編集のような、実は長篇もの。

      『最強の知能犯たちが罠を仕掛け合う
      ノンストップの札束争奪戦!
      鬼才が満を持して放つ傑作青春クライムサスペンス!
      「負け組人生」から抜け出すため、女子大生の歩と夏子は詐欺グループを結成。自らの犯罪を“ビジネス”と称して、カモを騙し続ける彼女たちの運命は…。』だ、そうで。


      犯罪の内容が難しすぎて…「ぼったくりバー」とか、「ワンクリック詐欺」とかは、まだわかるけど、コンピュータを駆使するあたりのは、まるでちんぷんかんぷんで(まあ、私みたいなど素人に理解できてしまうような犯罪なら、犯罪にならないのかもしれないけど)。

      最初の方の、半ば強引に詐欺の仲間にひきずりこまれた母親と弟思いの博貴の、犯罪で手に入れた金を、全て家族の為に…というところや、アルコール依存症の夏樹が、自分を襲った中学生俊明のために、仲間に仕事を依頼するあたりなんかは、何となく『必殺』っぽいなと思えて、「あれ?小川さんなのに、どこか爽やか(犯罪だけど)」と…。

      でもやっぱり中盤辺りから、ただでは済まなくなってきたというか、何もそこまでしなくても…という感じで、読後感は最悪かも(嫌いじゃないけど)。

      最後は、「そんなあほな」と思えるような展開だけど、恋心とは、時としてそれ程のものかなとも思えてしまったし。

      これまで小川さんのを何作か読んできて、どの登場人物も好きになれなかったけど、今回だけは、夏樹のキャラが良くて(やり過ぎなとこもあるけど、優しいし…)、好きになってしまった(便秘を隠す辺りが、ちょっとツボに嵌って…)。

      去年の今頃に読んだ『イブの夜』もそうだったけど、序盤と中盤からがこうも印象が変わるのは、良い意味で裏切られて、こういうのも好きかも(でも、やっぱり『僕らはみんな閉じている』のようなのが、もっと読みたいかな)。

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        『落花流水』山本文緒

        落花流水 (集英社文庫)
        落花流水 (集英社文庫)
        山本 文緒 2002/10/25文庫化 集英社文庫 P.256 ¥500
        ★★★★
        私は最後の夫となった正次郎さんを愛していたわけではなかった。そして最初の夫も、マーティルも、今思えば誰も愛してはいなかったように思う。……だからこうして一人きりになってしまったのかもしれないと、私は仏壇の前でぼんやりと考えた。……
         何故こんなにも穏やかな気持ちなのか分からない。だが悲しい時はその理由を考えるが、幸福なのに理由を考える必要は特になかった。ちん、と鉦を鳴らして、私は風呂に入りに行った。   〜『また夢をゆく 2017年』より〜

        祖父と祖母を実の両親だと信じ込まされ、何不自由なく、我がまま放題に育てられた「手毬」。
        そんな「手毬」が七つの時、母親(祖母)の死をきっかけに、実の母親である「姉」に引き取られることになったことから、「手毬」の人生は大きく変わり始め…。

        男にだらしのない母親が、生活の安定のためにと再婚した相手を実の父親以上に慕い、父親と同じ会社に勤める、父親似の真面目な男と結婚し、一人娘を授かり、ようやく穏やかな暮らしを手に入れた「手毬」の前に突然現れたのは、「手毬」の幼少時代、隣家に住んでいたハーフの少年「ジョン」こと「マーティル」。

        そして、30年ぶりの再会を果たした初恋の相手「マーティル」は、「手毬」の娘を人質に取り、「手毬」にこの先の人生の選択を迫るのだが……。

        『夏の音 …1967年…』、『もう行かなくては …1977年…』、『濃密な夢 …1987年…』、『落花流水 … 1997年…』、『ムービー・ムーン …2007年…』、『また夢をゆく …2017年…』、『葵花向日 …2027年…』の、「手毬」の7歳から67歳までの人生を、「手毬」自身、初恋の相手「マーティル」、「手毬」の「実母」、「手毬」の「義弟」、「手毬」の「娘」の視点から、10年ごとに描いた長篇小説。

        「甘ったれでわがままな7歳の少女、手毬。家族に愛され、平穏な日々をおくるはずだったのに…。17歳、かつては姉だった人を母親と呼ぶ二人だけの暮らし。27歳で掴んだ結婚という名の幸せ。その家庭を捨て幼なじみと駆け落ちした37歳。そして…。複雑に絡みもつれる家族の絆、愛と憎しみ。運命に流されるひとりの女性の歳月を、半世紀にわたって描く連作長編小説。」だ、そうで。


        これは、なかなかすごかったかも。

        「手毬」という一人の女性の、お話の中の人物の60年間だけど、その60年間の重みがひしひしと伝わってくるような。

        波乱万丈とひと言で言ってしまえば、そうなんだけど、そこはまあ、普通では有り得ないような展開があったりして、この話の最終章が、まだ現時点ではなくて、20年後の未来の話というのが結構面白かったりする(大して生活は変わってはないけど、そんなもんかなと思えるし)。

        特に好きだったのは、17歳の「手毬」が、母親と暮らすアパートを出て行けない理由…。
        そして、37歳の「手毬」の決断と、その後の生活も、ちょっぴり羨ましいというか、こういう生活には憧れるかなと。

        ものすごく現実的でもあり、有り得なくもあり…不思議な感覚に包まれて、でも最後はやっぱり現実に引き戻されてしまいそうな、ちょっと大人なお話なのかも。

        「手毬」の、どこか醒めた生き方には、とても感銘を受けてしまったし、人生の最後って案外こんな感じなのかもなと。

        でも、私は「手毬」の母親のような老後を送るのが理想かな、と(やっぱり、いつまでも「女」でいたいなと)。

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          『ホームレス中学生』麒麟・田村裕

          ホームレス中学生
          ホームレス中学生
          麒麟・田村裕 2007/9/20発行 ワニブックス P.191 ¥1,365
          ★★★★★
          手紙を読み終えて、感動して涙が出た。
          自分のことを好きだと言ってくれる人がいる。
          自分の存在価値を見出してくれている。
          それをはっきりと言葉にしてくれる。
          それは僕の中で革命的だった。……

          中学二年の一学期の終業式の日、学校から家に帰った田村少年を待ち受けていたのは、いきなりの家族の解散劇。

          父親の「ご覧の通り、まことに残念ではございますが、家のほうには入れなくなりました。厳しいとは思いますが、これからは各々頑張って生きてください。………解散!!」の一言で、それぞれ自力で生きていくことを余儀なくされた田村三兄弟(兄と姉と田村少年と)。

          「一緒に行こう」と言う兄に、「僕は大丈夫やから」と行くあてもないのに言い切ってしまい、その日から一人、兄や姉と離れ、近所の通称「まきふん公園」にある「ウンコ」の形の滑り台をねぐらにすることに決めた田村少年。

          手持ちのこづかいが底をつくと、たちまち食べるものにも困るようになった田村少年は、ハトの餌を奪い取り、雑草や段ボールを口にして飢えを凌ぐように…。

          自販機の下に落ちている小銭を捜し歩き、雨で体を洗い、野良犬と闘い(?)、子供たちからは「ウンコの神様」と崇められる(?)ようになった、そんな田村少年に救いの手を差し伸べてくれたのは……。

          『大ベストセラー!!
          「泣けた!」「感動した!」と絶賛の嵐!
          麒麟・田村の貧乏自叙伝
          「人々にパンを与えたアンパンマン、ハトからパンを奪った田村くん。どちらの話も、みんなに生きる勇気を与えてくれる」byやなせたかし』だ、そうで。


          これはほんとに、結構感動したかも…。

          お笑いコンビ麒麟・田村の少年時代の貧乏話は、以前からかなり有名な話で、つい最近も、テレビ番組で父親との感動の再会を果たしたばかりだし、大まかなことは知っていたけど、これまであまり知らなかったお兄さんやお姉さんの話も、かなり面白いし、その心遣いに感動(お兄ちゃん、特に)するし。

          そして何よりお母さんのこと。
          これほどまでに息子から慕われるお母さんっていいなぁと…。
          やっぱり母親の存在は偉大だなと、改めて自分の母親にも感謝したくなるような。

          そしてホームレス生活から脱出した後の、田村少年の「生きること」の悩みは深いし、それを初めて話す気にさせた先生は凄いし、この出会いがなかったら…と、思うのと、この出会いはやっぱりあるべくしてあったんだなと、この学校へ進んだことも何もかも、運命というか、それもお母さんが見守ってくれていたのかもしれないけど。

          何より、まだ甘えたい盛りに、大好きだった母親を失くし、裕福だった子供時代から一転して、そんな不自由な生活を強いられるようになって、どれだけ寂しい、辛い思いをしても、いつも周りから「明るい」と評されてみんなの人気者になり、最後に考えるのが「誰かのために…」というのが、すごいなと(「ふりかけ……」のくだりは、別の意味ですごかったけど)。

          土曜日にいつもの本屋さんに山積みされていたのに、今日行ったら、もう置いてなかったのは、もしかして全部売れてしまったのかな…(買ったときにも、高校生の女の子たちが手にとって見てたし、私の買ったのも、もう5版だったし)。

          でも、どれだけ本が売れても、この人は、きっとつましい生活を送りそうだなと…。
          うーん、M1(まだ、出場資格の10年未満だったかな?)も、優勝して是非金持ちになってもらいたいと、心の底から思えるかも。
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            『三面記事小説』角田光代

            三面記事小説
            三面記事小説
            角田 光代 2007/9/30発行 文藝春秋 P.260 ¥1,300
            ★★★★
             私は今から警察にいく。膨れ上がった借金と止むことのない督促に困り果てたからではない。これは私の最後の賭けだ。警察沙汰にすることで、彼の人生に関わることができるか否か。彼の感情を、たとえそれが負の方向へでも動かせるかどうか。私は彼を笑わせたい、笑わせることができないのなら泣かせたい、泣かすことができないのなら怒らせたい、怒らせることができないのなら、絶望させたい。なんでもいい、私はここに、あなたのそばにいるのだということを彼に知らしめたい。            〜『ゆうべの花火』より〜

            夫の浮気を疑い、しじゅう愚痴をこぼしていた姉からの電話がぱったりと来なくなり、心配になった妹は、様子を見に姉夫婦自慢の庭付き一戸建ての家を訪れてみることに。
            近所でも噂になるほど、姉夫婦の評判は悪く、家にはトタンでこしらえたバリケードがはりめぐらされており、顔を覗かせた義兄は家にも入れてくれず…『愛の巣』「26年前に殺害 男自首」平成16年8月23日付 読売新聞

            会社の同僚であり、不倫相手である恋人の気持ちが離れていくのを食い止めようと、ネットの闇サイトに恋人の妻への嫌がらせを依頼する女。
            女の依頼は次第にエスカレートしていき、ついには殺人を依頼したものの…『ゆうべの花火』「警察に相談 32歳女逮捕」平成17年9月15日付 毎日新聞

            離婚後、二人の子供を引き取って育てたものの、子供たちが大きくなるにつれ、疎ましがられるようになる母親。
            ろくに家事もせず、娘の服を無断で拝借し、街をふらつく母親が、時間潰しに立ち寄る漫画喫茶で顔見知りになったアルバイトの高校生と付き合うようになり…『彼方の城』「16歳男子高生にみだらな行為 38歳女逮捕」平成17年11月17日付 中日新聞

            街で出会っても挨拶さえしなくなった、今は別々の高校に通う中学生の頃の親友。
            いつかは東京に戻ってしまう担任の美術教師を慕う親友の為に、当時中学生だった少女が思いついたのは…『永遠の花園』「担任給食に薬物混ぜる」平成17年4月25日付 読売新聞

            有名進学校に通う高校生の姉と、同じ中学を希望したものの受験に失敗し、姉のことを無視するようになった妹。
            小学生の頃いじめに遭い、それからずっと妹だけが頼りだった未だに友達のできない姉は、入学した中学校で沢山の友達を作り、毎日楽しそうに両親にその日の出来事を話す妹の日記を盗み見してしまい…『赤い筆箱』「中一女子殺される 自室で勉強中男が押し入り」平成4年3月5日付 毎日新聞

            認知症の母親ために仕事も辞め、つきっきりで介護する冴えない中年男性。
            かつてはいた恋人との結婚を母親に強く反対され、未だに独身の男は、過去の確執から母親を未だに憎み続ける姉の手を借りることもできず、働くことができるという理由から、生活保護の申請も却下されてしまい、この先どこまで続くのか分からない今の生活に疲れ果ててしまい…『光の川』「介護疲れで母殺害容疑」平成18年2月3日付 朝日新聞

            「私は殺人を依頼しました
            恋人の妻を殺してほしいと頼みました――
            誰もが滑り落ちるかもしれない記事の向こうの世界
            現実がうみおとした六つの日常のまぼろし
            バリケードのような家に住む姉夫婦、妻殺害をネットで依頼した愛人の心の軌跡など"三面記事"の向こう側を鮮やかに描いた小説集」と、いうことで。


            「この小説は実際の事件を発想の発端にしているが、フィクションであり事実とは異なる。」と、最初に注意書き(?)してあるように、あくまでも実際に起きた過去の事件をモチーフにしてあるだけだけど、この想像力というか、創造力は凄まじいものがあるなと。

            角田さんの『八日目の蝉』を読んだ時にも、「あれ?今までと違う」と感じたけど、それがいっそう強くなったというか。

            結構どれも記憶に新しい事件ばかりで、新聞を読んだ当時「なんじゃこりゃ」と不思議に思えた事件も、もしかしたらこういうことがあったのかもしれないなと、これを読んで納得できてしまったような。

            『愛の巣』の、姉と比べて、幸せな結婚生活を満喫していると思い続けていた妹の足元のすくわれ方が結構好きだし、『ゆうべの花火』の、ネットで殺人を依頼する女の、男に対する執着心はあきれるほど馬鹿馬鹿しいけど、そこまで狂えるって逆に凄いなと感心してしまう。

            『彼方の城』の、高校生の男の子を軟禁する主婦の一家は不気味としか思えないけど、被害者扱いの高校生の子も、一体何を考えていたのかなとも思えてしまうし。

            『永遠の花園』の事件は、新聞記事で読んだのを一番覚えてた事件で、事実より、こういう動機であったなら、分かりやすくてまだ納得がいくかなと…。

            仲の良かった姉妹の『赤い筆箱』も、姉の歪み方が何となく分かる気がするし、介護に疲れた中年の息子が母親を殺害してしまうという『光の川』は、他人事ではなくて、きっと誰の身にも起きることかもしれなくて、こうなった時、自分ならどうするかというのを一番考えさせられた事件かも(お金さえあれば…と、常に思っているけど、それが一番大変なんじゃないかなと)。

            新聞の三面記事を読んでも、そこに書いてある少ない情報だけでは事実は全く見えてこないし、その事件の奥に、どれだけの人の思い(憎しみとか悲しみとか妬みとか苦しみとか…)があったのかなんて、他人にはきっと解るはずもないから、こういうの読むと少し安心してしまうのかも。

            に、しても『ゆうべの花火』の、不倫相手の男の要求は可笑しすぎて(それ、普通男女逆じゃないの?というか)、言いなりになる女の気持ちは理解に苦しむし、私なら、男の妻より、この男になら何とか復讐の手段を考えるかもなと(その前に、多分一発グーで殴って、さっさと別れてしまうと思うけど)。
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              たくさんの人に読んでほしい…

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