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    『残虐記』桐野夏生

    残虐記 (新潮文庫 き 21-5)
    残虐記 (新潮文庫 き 21-5)
    桐野 夏生 2007/8/1文庫化 新潮社 P.244 ¥420
    ★★★★★
    ……私はその時も屈辱を感じた。皆が勝手に私を思い遣り、どんなことをされたのか、好きなように想像するのだ。子供にそんな複雑な感情がわかるのか、という質問は意味がない。子供ほど屈辱に敏感な存在はないのだ。屈辱を受けても晴らす術を持たないからである。

    10歳の頃、稽古事の帰り道に見ず知らずの男によって連れ去られ、男の働く工場の二階にある男の部屋で、一年間もの監禁生活を強いられたという経験を持つ、作家の小海鳴海、本名北村景子。

    16歳で作家としてデビューし、ペンネームで活躍する彼女の元に事件から二十数年後に届いた、犯人からの稚拙な手紙。

    犯人からの手紙を受け取った後、彼女は突然失踪してしまい、そこに残されていたのは『残虐記』とタイトルの付された一編の小説。

    そこには、これは事件当時の記憶の検証と、その後の自分自身に対する考察であると言及し、この小説が誰の目にも触れられないようにと記されていたのだが……。

    「私を監禁したケンジと真実に死を。作家は事件を巡る衝撃の手記を残して消えた。
    誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長篇 柴田錬三郎賞受賞作品!」だ、そうで。


    内容とか全然知らなくて、ただ桐野さんのが文庫化されたから、と手にしてしまったけど…うーん、これはちょっと理解に苦しむかも。

    もちろんこれはフィクションだけど、やっぱりあの事件を思い出させるわけで、読んでいてあまり良い気はしないというか…。

    ただ、物語として読めば、事件の後も周囲の好奇の目に晒され、無邪気な子供でいられなくなってしまった少女の失ってしまった「現実」というものや、少女が絶望の淵に立たされる「毒の夢の行き着く先」の描かれ方の部分は圧巻で…。

    「十歳の女の子を拉致するほどの欲望」というのは、私にも全く想像し得ないし、なんでそこまで自分の欲望を満たすことしか考えられない人間が存在するのかが(男の人からすればたいしたことないのかもしれないけど、痴漢にしてもそう)理解できないし、そういう犯罪がこの世から消えてなくなってほしいとただ、ただ思うばかりで…。

    アマゾンのレビューでは、結構非難もされていたし、読み手を選ぶ本かもしれないなと。
    ただ、桐野さんのインタビューを読んで、この本を読んだことを後悔したこと、ちょっと撤回する気になったかも。
    以下、その記事を抜粋させていただきました。

    主人公の少女は大人の男の欲望にぶち当たり、それがどういうものなのかを想像します。つまり、自分にはない欲望について想像するのです。想像力がなくて欲望だけある人は、ある意味で犯罪者だと思うのですが、想像力を働かせるという方法こそ、想像力を持たず欲望だけがある人物と戦う手段になりえるんじゃないか、と思いました。そして、欲望に取り囲まれ、肉体的にも精神的にも奪われるのは常に弱い者――男性よりも、やはり女性や子どもであると思うのです。その闘争が残虐なのです……
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      『東京・地震・たんぽぽ』豊島ミホ


      東京・地震・たんぽぽ
      豊島 ミホ 2007/8/30発行  集英社 P.203 ¥1.365
      ★★★★
      僕はマシなほうの選択をしたはずだ。それなのに、よかった、とは思えない。もしかしたら、ずいぶん長いこと後悔することになるのかもしれないとさえ思う。身体に傷ひとつなく、揺れを感じることもなく、逃げ切ることができてしまった。もしかすると今この瞬間にも、生死の境目でもがいている人間が山といるかもしれないのに……
      〜『僕が選ばなかった心中、の話』より〜

      東京都内を中心に発生した、最大震度6強の大地震。
      その少し前――
      「○月○日、東京で大地震が起こる」という友人の話を鵜呑みにしたわけではないけれど、その日に「僕」がいた場所は…『僕が選ばなかった心中、の話』

      そしてその日――
      付き合って一年になる彼に、妊娠したことを告げるために公園にやって来た若いカップルは、のどかな朝の公園で激しい揺れを感じ…『空と地面のサンドイッチ』

      体育の授業中に地震に遭い、大切な宝物を守るため急いで家に戻った小学生の男の子は、母親の助けを呼ぶ声を聞き…『ぼくのすきなもの』

      幼い娘を連れた公園での散歩の途中で地震に遭い、一休みしていた東屋に生き埋めになった主婦は生きることを諦めたと、携帯からブログに送信し続け…『くらやみ』

      そして、地震の後――
      火災が発生し、死者の数が増え続ける東京の街の片隅で、生き延びたものの地震によって大切な家族を亡くした者、瀕死の重症を負った者、安全な場所から下界を見下ろす者、地震につけこもうとする者、遠く離れた街からボランティアで被災地に向かう者、の、それぞれの思い…『ぼくらの遊び場』、『ついのすみか』、『宙に逃げる』、『だっこ』、『どうでもいい子』、『夢を見ていた』、『出口なし』、『復讐の時間』、『パーティにしようぜ』、『いのりのはじまり』の、14編から成る短編集。

      『ぐらぐらと揺れるいのち。
      「その時」にわかる本当の気持ち。
      瓦礫の街で芽生えるのは、悲しい孤独?それとも明日を生きるための勇気と希望?
      25歳の作家が恐れと祈りを込めて描いた、書き下ろし短編集。』だ、そうで。


      これはかなり心して読んだ方がいいかも…。
      決して他人事ではないし、いつどこでこういうことが起きてもおかしくないし、今もきっと苦しんでる人がたくさんいて…分かってはいても、ついつい日頃は忘れてしまって生きてるなと、ちょっと反省してしまった。

      『パーティにしようぜ』での、神戸の震災で父親を亡くした、自称フリーター兼DJの気持ち、「ここで震災から立ち直ったことがあるのは、俺しかいないかもしれないから。人がまたちゃんと元気になるんだぞってことを示すには、俺が動くしかないかもしれないから。」というのは、かなり心に響いたし。

      結構人間の心の中の暗い部分にスポットが当たってて、落ち込みそうな話が多かったし、その後、の不明な話もあったけど、ニュースでは伝わらないような一人一人の被災者の「その時」の気持ち、きっとこんなこともあったんだろうなぁというようなことが描かれていて、色んなこと忘れないためにも、今読むべき価値のある物語なのかも。
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        『クレイジーボーイズ』楡周平

        クレイジーボーイズ
        クレイジーボーイズ
        楡 周平 2007/7/31発行 角川書店 P.444 ¥1,785
        ★★★★★
         許せるものか……。こんな男を親に持った子供の気持ちが誰に理解できるものか……。
         ……
         哲治は初めて父を哀れだと思った。やり場のない怒りが、交錯する感情の中から、急速に頭を擡げてくる。それは父に対するものばかりではなく、どういう経緯にせよ、こんな酷いやりかたで父の命を奪った人間に対するものでもあった。

        ガソリンに代わる新世代のエネルギー自動車、水素自動車を実用化させるためのキーとなるタンクの開発に成功し、その特許権の帰属を巡って、研究員として勤めていた自動車部品メーカーと法廷で争って5年、二審判決でも全面勝訴し、あとは最高裁での闘いを残すのみとなり、事実上の勝利を確信していたはずの柴山が、何者かによって惨殺された――。

        父親亡き後は年間30億円をも転がり込むという特許の継承者となり得るかもしれない、現在はアメリカで暮らす一人息子、哲治。

        父親の遺体に残された痕跡から、自ら父親の死の真相を究明しようとしていた哲治に突きつけられた現実は、父の裁判を全面的にバックアップし、アメリカでの住居も用意したという、世界有数の環境保護団体「グリーン・シーズ」からの一切の援助の打ち切り。

        このままでは、最高裁で争うこともできず、巨額の借金を抱えることになってしまうと危ぶむ哲治は、父の無念を晴らすためにと復讐を誓い、志を同じくする友らとともに、日本とアメリカをまたにかけた前代未聞の無謀な賭けに出るのだが――。

        『エンタメ度クレイジー級!!
        自動車業界ばかりでなく世界のエネルギー事情さえ一変させる画期的な発明を成し遂げた父が、何者かに謀殺された。
        特許の継承者である息子の哲治は、絶体絶命の危機に追い込まれる。
        僕は知力の限りを尽くして戦う。
        この世界を勝ち抜くために。
        ベストセラー「フェイク」の楡周平が放つ最新作。』だ、そうで。


        「ガソリン」がいらなくなったとしたら、こんな風に世界に影響を及ぼすのか…と、あまりのスケールの大きさにかなりびびってしまったものの、話としては結構単純かも。

        まあ、企業と個人との特許の帰属を巡る争い自体は、青色発光ダイオードでの前例があるから、何となく分かりやすいし、ここで柴山を殺せと命じる人の危機感も良く分かる。
        まあ、父親の趣味は別として…。

        ただ、哲治の復讐の仕方は…うーん、アメリカナイズされちゃった人間の発想だなぁと(最初の方の、ドラッグのシーンは必要なのかどうなのか、あんまり意味がわからんかったのだけど…それもアメリカらしさなのかなと勝手に思うことにして…)。

        まあそこに度肝を抜かれてしまったのと、読み始めてからずーっと気になっていたことが解消された時の、「あー、そういうことか」感はなかなかのものかなと。

        でも、なんかこの主人公はちょっと許せないかも。その考え方嫌だし、じいちゃんに迷惑かけるなんて、もってのほかだし。
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          『かび』山本甲士

          かび (小学館文庫)
          かび (小学館文庫)
          山本 甲士 2006/7/1文庫化 小学館 P.435 ¥690
          ★★★★★
           仮に、労災の認定を取るために闘えばどうなるのか。ヤサカは当然のことながら労災にはならないと主張し、訴訟に持ち込まれる。……そして十年越しの争いに勝って、マスコミからマイクを向けられて「長い闘いでした。やっと春が来たという感じです」などとコメントする。そのとき、自分は何歳になっているのだ。それまでの間、どうやって食べていくのか。
           とんでもないことだと思った。そんなことをして世間からほめられたくはない。
           ではどうする?

          化学製品を取り扱う中では、最大手の企業「株式会社ヤサカ」の本社や関連工場が立ち並ぶ企業城下町、八阪市で「ヤサカ」グループの恩恵に与りながら何不自由なく暮らしていた35歳の主婦、伊崎友希江。

          「ヤサカ」の研究所で研究員として働く夫との夫婦仲はとっくに冷め切り、4歳になる娘を可愛がるあまり何かと干渉してくる義母や、日常の些細なことに不満を溜め込みつつも、できるだけ周囲との摩擦を避け、つつがなく暮らす小市民、友希江を襲った突然の不幸…。

          夫、文則が勤務中に脳梗塞で倒れてしまい、会社での激務が原因ではないかと考える友希江をうまくいいくるめ、会社側はある提案を持ちかける。

          退院の目途もたたない夫を、体よく厄介払いをしようとする会社側の態度に不信感を覚えた友希江は、思い切って新聞社に投稿してみることに。

          ところが「ヤサカ」の権力をもって当然の如く友希江の些細な反乱は握り潰され、友希江の兄妹たちの職場にまで圧力をかけられてしまい、友人にも手ひどい裏切りに合ってしまう。

          パート先でも諍いを起こし、クビになった友希江は次第に「薬」に依存するようになり、とうとう常軌を逸した復讐に手を染めることに…。

          『もう我慢はしない!
          「身体を壊すまで働かせて、後はさいならですか」
          倒れた夫に代わって、主婦たったひとりで大企業に「宣戦布告」!
          人間誰しもが孕む狂気を、緻密に描き出す「巻き込まれ型小説」の傑作、ついに文庫化!』だ、そうで。


          以前、す〜さんのブログで見かけて、奥田さんの『邪魔』のような「壊れていく主婦」というのが気になって…本屋さんでわざわざお取り寄せしてもらってしまった(Amazonでも良かったけど、送料無料にしようと、ついつい買いすぎてしまうので…)。

          舞台が大阪で、大阪弁というのも、ちょっと迫力倍増なのかも。
          娘の幼稚園での他の父兄との諍いの際に心の中でつく悪態なんかは、いかにもだし、ねちっこいし、えげつないし…。

          友人との罵り合い(専業主婦VSキャリアウーマンの図式)も、本音も、良くわかるなぁと。

          まあ依存する「薬」というのも、いわゆるそういうのじゃなくて、そこら辺にあるようなものなんだけど、そんなになってしまうものなのかと…(あくまでも友希江は飲みすぎなんだけど)。

          その常軌を逸した壊れっぷりは、本当に怖いし、普通に犯罪だし、よく普通の主婦がこんな恐ろしくて手の込んだこと(あっちこっち行ったり、お金もかかるし、考えただけでも面倒くさいのに)考え付いたなぁと、ある意味感心してしまった。

          でも、それだけ追い詰められてしまって、ここまでやるとは天晴れなのかもとも(強いというか、恐いというか何というか)。

          こんなこと、どこの企業でもありそうなことだし、泣き寝入りしてる人がほとんどなんだろうなと(確かに裁判とかになったら、時間もお金もかかるし、その間どうやって生活すればいいのやらと、他人ごとながら考えたことあるし)。

          まあ、ここまでは誰もやろうとは思わないだろうし、真似はできないだろうけど、その手口のせこさというか、そこから狙うかというのが、いかに大企業の社長でも、泣き所があるというのがなかなか面白かったかな。

          ラストまで気を抜けないのも、うーん…なかなか好きな終わり方かも。

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            『青い鳥』重松清

            青い鳥
            青い鳥
            重松 清 2007/7/20発行 新潮社 P.325 ¥1,680
            ★★★★★
            ……うまくしゃべれないっていうのは。つらいんだ。自分の思いが。伝えられないっていうのは、ひとりぼっちになるって。ことなんだ。言葉が。つっかえなくても。自分の思いが。伝えられなくて、わかってもらえなくて。誰とも。つながっていないと思う。子は、ひとりぼっちなんだよ、やっぱり。
             でもなぁ、ひとりぼっちが二人いれば、それはもう、ひとりぼっちじゃないんじゃないか、って先生は思うんだよなあ。
             先生は、ひとりぼっちの。子の。そばにいる、もう一人の、ひとりぼっちになりたいんだ。だから、先生は、先生をやってるんだ。   〜『進路は北へ』より〜

            国語の先生、なのに上手くしゃべれない村内先生。
            「タ行」と「カ行」と濁音は全部だめで、特に緊張すると言葉の最初がつっかえてしまって、生徒達からは陰で馬鹿にされ、迷惑がられてしまう。

            上手くしゃべれないから、「たいせつ」なことしか話さない村内先生。

            そんな村内先生は、非常勤講師として赴く先々の中学校で、ひとりぼっちの子のそばに寄り添い、こう話す。
            「間に合ってよかった――」と。

            学校以外の場所では普通に話すことができるのに、クラスでは声を出せない「場面緘黙症」の女の子…『ハンカチ』

            担任に重症を負わせ、3ヶ月ぶりに学校に戻ってきたものの、自分の居場所を見つけられない男の子…『ひむりーる独唱』

            交通事故の加害者となってしまった父親の心の痛みを側で感じる女の子…『おまもり』

            自分たちせいで自殺を図った友達へのいじめの罪を背負わされていることに耐えられない男の子…『青い鳥』

            クラスの女王さまのように振舞う友達の側にはべり、いつも顔色を伺っている女の子…『静かな楽隊』

            突然父親を失い仕方なく公立に転校してきた、勉強も運動もクラスのトップで医師になることを目指している男の子…『拝啓ねずみ大王さま』

            大学までエスカレーター式の私学に通いながらも、高校受験をすると言い出して担任を困惑させる女の子…『進路は北へ』

            そして、村内先生を「恩師」と慕う、かつての「ひとりぼっち」だった青年の物語…『カッコウの卵』 

            『そばに、いるんだ。
            「ひとりぼっち」になってしまった人へ―― 
            涙を超えたほんものの感動に出会う(孤独と希望)の物語。』だ、そうで。


            やっぱり重松さんは「いじめ」とか「少年犯罪」とか「虐待」とか、小中学生のそういうの書かせたら天下一品だなぁと(なんで、こんなにその子たちの気持ちが分かるのかが不思議なくらいに…)。
            そして、重いし。

            吃音の村内先生のことを、中学生達が冷ややかな目で見てるのも、ある意味残酷な年頃なので仕方ないんだろうし(寂しいことだけど)、自分が中学生だったらどうしてたかなと考えるけど、もうあの頃の気持ちには戻れないし、あの頃の気持ちは理解できないので、何とも…今なら、良くしゃべる人(特に男の口先だけ上手い人は大嫌い)より、無口な人の言葉の方がたいせつで、側に居て安心できること分かってきたので、村内先生とも仲良くなれそうだけど…。

            なので、村内先生を必要とする子どもたちだけにでも、ちゃんと村内先生がそこに居る意味が伝わったことが、本気でしゃべる村内先生の言葉が届いたことが、本当にものすごく嬉しくて何度も涙してしまった(『カシオペアの丘』よりも、私にはこっちの方が涙のつぼかな)。

            上手くしゃべれなくても、「たいせつ」なことを一生懸命に相手に伝えようとする気持ちさえあれば、伝えたいことがあるならば、それが伝わる相手は必ずいてくれると思いたいし、せめて人の気持ちをふみにじらない人間になりたいなと。

            装丁の鳥篭も綺麗だけど意味深だし…これは是非、「ひとりぼっち」を感じてない子でも、感じてる子でも、現役の中学生に読んでもらいたい極上の物語だなと。

            に、しても学校の黒板の向きにそんな深い意味があったとは…まったく気付かなかったし、全国の生徒がみんなそっち向いてるって想像すると、ちょっと変な感じで気持ち悪いかも。

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              『ワーキング・ホリデー』坂木司

              ワーキング・ホリデー
              ワーキング・ホリデー
              坂木 司 2007/6/30発行 文藝春秋 P.285 ¥1,550
              ★★★★
               俺がまだヤンキーになりたての頃、朝帰りをするたびに親は俺のことをひどく叱った。帰る時間が数時間ずれただけのことで何故そこまで怒られなきゃならないんだと思っていたけど、今やっとその気持ちがわかった。
               今何をしているのか。誰かにひどいめにあわされてはいないか。進のことを思うと、俺の胸はぎゅうぎゅう痛んでつぶれそうになる。
              (こりゃあ、怒るのも当然だ)
               ていうか怒られて幸せだったんだ。

              ホストクラブ『クラブ・ジャスミン』で接客中のヤマトを訪ねてやってきたのは、見ず知らずの小学5生の男の子、進。

              いきなり現れ「お父さん」と呼ばれても、身に覚えがないとつっぱねるヤマトに、進が告げた母親の名には確かに記憶が…。

              そんなこんなで夏休みの間、ヤマトが面倒を見ることになった、進は小学生らしからぬ小姑ぶりを存分に発揮して、逆にヤマトが面倒を見られる破目に。

              そして客とのいざこざから、ホストクラブを解雇されざるを得なくなったヤマトに、店のオーナー、ジャスミンが新しい就職先として紹介したのは、新興の宅配サービス「ハニービー・エクスプレス」、通称「ハチさん便」。

              マンションも移り、心機一転張り切るヤマトを待ち受けていたのは、エコロジーでセーフティーなハニービー・エクスプレスの新型車「ハニービー・キャリー」でのきつい厳しい集配業務。

              こうして、ホストの頃の癖が抜けきらない、元ヤン、顔はそこそこ男前、血気盛んなヤマトと、ヤマトを父親として認めるかどうか思案中の進の夏が始まったのだが……。

              「開けてみなくちゃわからない
              元ヤン・ホストが宅配便(特別仕様車)ドライバーに転身?
              血気さかんな若者と所帯じみた小学生
              親子と仕事と仲間によるひと夏の贈り物、ハート・ウォーミングな物語」だ、そうで。


              相変わらず、坂木さんらしく悪人は一切出てこず、ほんっとに善人ばっかりで…(まあ、こんなせちがらいご時世なので、坂木さんの作品にはそれを求めてもいるんだけど、にしても、みんな良い人たち過ぎる〜)。

              宅配先でのお客さんとの触れ合いや、ちょっとした事件やなんかがあって、ヤマトの父親としての自覚がどんどん出てくる姿は微笑ましいし、宅配業の裏事情というか、本音というのも書かれてあってなかなか面白い。

              そして相変わらず、脇役陣が魅力的で、ホスト仲間の雪夜さんも、オーナーのオカマのジャスミンさん(ドラマ化されたら、絶対IKKOさんにやってもらいたい)も、みんなみんなとても好きになってしまう。

              もちろん、片付け上手(家にも来てもらって、仕切ってもらいたいぐらい)で料理上手な、少々こまっしゃくれた息子の進君のキャラはピカ一で、またまた真似して作りたい料理なんかも盛りだくさん出てきたりなんかもするし。

              しかも配送先に、私の大好きなあの人物(ひきこもり探偵シリーズの名脇役)の名前があったりなんかして、ちょっと嬉しかったし。

              に、しても、どんな風に育てたら、進君みたいにできた子になるのか…そしてこれからどんな少年になっていくのか、これまた続編を読みたくなるような、このくそ暑い夏にぴったりな、清涼感溢れる物語、かな。

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                『きみはポラリス』三浦しをん

                きみはポラリスAmazonで購入livedoor BOOKS書評/国内純文学
                ★★★★★
                いつも不思議に思うことがある。
                どうして恋に落ちたとき、ひとはそれを恋だとちゃんと把握できるのだろう。
                ……
                言葉で明確に定義できるものでも、形としてこれがそうだと示せるものでもないのに、ひとは生まれながらにして恋を恋だと知っている。
                とても不思議だ。                  〜『私たちがしたこと』〜

                永遠に投函されることのない「彼」への思いを心に綴った「俺」からの手紙…「永遠に完成しない二通の手紙」お題“ラブレター”〜アンソロジー『Love Letter』収録

                子供が生まれてからは妻の愛情がそちらにばかり注がれるようになり、血の繋がった肉親のように妻からの信頼を得たいと願う男が、小学生の時に知った「本気を貫く」ということ…「裏切らないこと」自分お題“禁忌”

                高校を卒業し地元を離れて六年、恋することを止めていた、朋代の高校生の頃の「はじめて」でいまのところ「最後の恋」の相手、黒川君と犯してしまった罪の話…「私たちがしたこと」自分お題“王道”

                高校生の頃はミサの最中に失神してしまうほど、キリストに恋していた少々神がかりの真理子と、親友のエルザ。ある夜様子のおかしくなった真理子がエルザをドライブに誘い、向かった先は…「夜にあふれるもの」自分お題“信仰”

                敬愛していた大学の研究室の「先生」の訃報に愕然とし、誰にも知られぬよう「骨」をこっそり持ち帰った朱鷺子は、毎夜「先生」の骨を慈しみ、見合いの話にも耳を貸さずに…「骨片」お題“あのころの宝もの”〜アンソロジー『あのころの宝もの』収録

                家族三人で仲睦まじく出かけた水族館で、偶然夫の高校時代の後輩「勇次」と出会い、それからは頻繁にマンションを訪ねてくるようになった「勇次」は、夫の留守にもやって来て…「ペーパークラフト」自分お題“三角関係”

                出会って三ヶ月で一緒に暮らしはじめたものの、いまだに「捨松」の職業を知らない「うはね」。ふらりと長期間いなくなってしまうこともある放浪癖を持つ「捨松」の後をつけていく決心をした「うはね」が辿り着いたのは…「森を歩く」お題“結婚して私は貧乏になった〜”アンソロジー『結婚貧乏』収録

                職場の同僚達を見習い、一日中家でパソコンに向かう不健全な同居人「俊明」との生活を甦らせるためにと「ロハス」な生活に目覚めた「さより」。最初は嫌がっていた俊明が、「本物のロハス」を追求し出し…「優雅な生活」自分お題“共同作業”

                老若男女問わず、誰からもモテモテの、かっこよくてスタイルも良くて、そのうえ性格も温厚な、非の打ち所のない「春太」と、「春太」が身も心もひとすじに愛する麻子との物語…「春太の毎日」お題“最後の恋”アンソロジー〜『最後の恋』収録

                いまでもときどき車の後部座席にうずくまって眠るのが好きだという映子が、子供の頃に体験した不思議な「誘拐」の話…「冬の一等星」自分お題“年齢差”

                そしてまたまた最後にBLもの…「永遠に続く手紙の最初の一文」自分お題“初恋”

                「これって恋or愛?いえ、これこそ恋愛そのもの。
                世間の注目も 原稿の注文も「恋愛」のことばかり。なら、とことん書いてみようじゃないの!ということで生まれたただならぬ「恋愛短編集」。
                初恋、禁忌、純愛、結婚、信仰、偏愛、同性愛……本気で恋し、だれかを愛したいなら読むしかない!われらの時代の聖典。
                ひるまず恋し、おそれず愛す。
                直木賞に輝く名手が紡ぐ、11の「恋愛」の形。」だ、そうで。


                「恋愛」をテーマにした短編の依頼が多いという著者の、依頼者からあらかじめ提示されたテーマ(「お題」)と、自分で勝手に設定したテーマ(「自分お題」)に沿って書かれた、ちょっと「いびつ」な何でもありの恋愛短編集、という感じ(BLには、全く興味ないんだけど…)。

                一番好きな「裏切らないこと」に出てくる前園さん夫妻は、もしかして私の理想かも…(少々歪んでるけど、それは別として、決して裏切らない男が欲しいなと、そして自分自身も「本気を貫く」ことができればいいのになと)。

                面白かったのは「優雅な生活」の「ロハス」の考え方。
                そう言えば「ロハス」って奥田さんの「家日和」にも出てきたなぁと…確かに極めれば「生きてることが罪」というのも、日頃から思っていたことなので何だかそういう生活には憧れたりしないかも(玄米御飯は好きだけど…)。

                「私たちがしたこと」と「ペーパークラフト」は、サスペンスタッチで暗くて好きな感じ。(「ペーパークラフト」の後輩が、昔いったい先輩にどんなことをされたのか、それがとても気になるし…)。

                「春太の毎日」は、アンソロジー『最後の恋』で一度読んでいたけど、やっぱり可愛いし、「森を歩く」の「一緒に森を歩きたい」という言葉の意味が面白くて、思わず笑えてしまったかな(男の職業も)。

                最初の一編ですっかりひいてしまって、全部読むのに三ヶ月近くもかかってしまった…。
                多少理解し難いお話もあったけど、「恋」とか「愛」という感情は本当に不思議なものだなと、つくづく考えさせられてしまったかも。

                でもって、つくづく「恋愛」を成就するのは難しいものだなと…、普通に恋愛して普通に結婚してる人たちって、そっちの方が奇跡的な気がしてしまった。
                0

                  『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子

                  夏空に、きみと見た夢 (ヴィレッジブックスedge)
                  夏空に、きみと見た夢 (ヴィレッジブックスedge)
                  飯田 雪子 2006/9/10発行 ヴィレッジブックス P.247 ¥672
                  ★★★★★
                  どうしてつきまとうの、とか、あたしみたいなつきあいのなかった人間じゃなくて他の人のところに行けばいいじゃない、とか、言いたいことはいくらでもあった。けれど、なぜ、と問うまでもなく返ってくる答は予想がつく。きみが好きだから、と。

                  「突然で悪いんだけど、明日、葬式に来てくれないかな」
                  「きみは知らないと思うけど、広瀬天也ってやつがいて。そいつ、きみのこと、すごく好きだったから」

                  男の子から告白されることなど珍しくも何ともない、人目を惹く美少女、高三の悠里が、その日校門で待ち伏せされ、見知らぬ男子高校生、岸川から声を掛けられたのは、告白ではなく、悠里に片思いしていたという広瀬天也の葬式に参列して欲しいとの頼みごとのため。

                  土下座までして頼み込まれた悠里は、岸川から一万円をせしめ、しぶしぶ知り合いの一人もいない葬式に参列し退屈しながら、会ったこともない「天也」を見送ることに…。

                  祭壇の遺影を見ても、何の感傷も持てない悠里は、「天也」の母親から渡された、悠里への想いが綴られた大切な日記も「気持ち悪い」と燃やしてしまい、葬式に出て欲しいと頼んだ岸川からも「お前なんかのどこが良くて…」と軽蔑される始末。

                  そして葬式の後、間もなく始まった携帯への無言電話や、誰かにじっと見つめられている気味の悪い視線を「天也」のものと思い込み、いるはずのない相手に向かって悪態をつくものの、実体を伴わない「天也」に悠里は危機を救われることに。

                  そしていつしか、誰にも心を許せず、泣けなかった悠里が「天也」にだけ心のうちを見せ始め……。

                  「これって天也の祟り?それとも……ピュアでせつないラブ・ストーリー
                  書店員さん涙する
                   30歳過ぎたオッサンですが、胸がキュンとなりました。一生忘れられない物語です
                                          丸善・お茶の水店 吉海裕一
                   こんな傑作に巡り会えて良かった。泣けます、それは覚悟しておいて下さい。
                                          文教堂書店・三軒茶屋店 中川浩成」だ、そうで。


                  職場の後輩が良く行く書店でイチオシ商品として置かれていたそうで、全く見たこともない出版社と作者の名前に惹かれて借りて読んでみたけど、思っていた以上には泣けたかも(もう少し若ければ、もっと泣けたのかな?)。

                  悠里は、典型的ないまどきの女子高生(友達と一緒にいても楽しくなくて無理してるとか、彼氏との関係にもどこか醒めてたりとか、夜遊びしてたりとか…)なのに、なかなか難しい言葉知ってたり、礼儀がきちんとしてるなぁと変なところに感心してしまったかも。

                  ありがちなストーリー展開、なのに泣けるのは「天也」少年の純粋な気持ち、「好きだから」というただそれだけの理由で悠里の側にいたいという気持ちに打たれてしまったからかな。

                  一見「嫌な女の子」の悠里の内面をいち早く見抜いたその洞察力というか、そんな風に想われたら、そうして側に居られたら、誰だって好きになってしまうよなぁと。

                  分かっていたことだけどそれでも好きになるって、それはかなり辛いことだし、私なら耐えられないなぁとも…。

                  そして最後に悠里が周囲の人達の気持ちに気付いてくれて本当に良かったなと。

                  アマゾンのレビューで映画「ゴースト」のような…と書いてる方がいらしたけど、確かにそんな感じと納得。

                  ものすごくドラマ化しやすそうなお話なので、是非「天也」君を4年後の神木君あたりで見てみたいかな。


                  0

                    『楽園(上)(下)』宮部みゆき

                    楽園 上 (1)楽園 下
                    楽園 上 (1)楽園 下
                    宮部 みゆき 2007/8/10発行 文藝春秋 上巻P.413 下巻P.361      各¥1,700
                    ★★★★★ 
                    ……それが真実であるならば、人びとが求める楽園は、常にあらかじめ失われているのだ。
                     それでも人は幸せを求め、確かにそれを手にすることがある。錯覚ではない。幻覚ではない。海の向こうの異国の神がどう教えようと、この世を生きる人びとは、あるとき必ず、己の楽園を見出すのだ。たとえ、ほんのひとときであろうとも。……
                     血にまみれていようと、苦難を強いるものであろうと、秘密に裏打ちされた危ういものであろうと、短く儚いものであろうと、たとえ呪われてさえいても、そこは、それを求めた者の楽園だ。
                     支払った代償が、楽園を地上に呼び戻す。

                    世間を震撼させた連続誘拐殺人事件で、真犯人をTVの前で暴き出し一躍時の人となったフリーライターの前畑滋子。

                    事件をひきずったまま9年の時が経ち、ようやくフリーペーパー専門の編集プロダクション『有限会社ノアエディション』で仕事を再開した滋子の元へ、一人の母親が相談にやってきたことから、滋子はまたもや人間の心の闇の部分に深く関わることに…。

                    12歳の一人息子を事故で失って間もない母親は、息子がスケッチブックに残した不可解な絵が、時効を迎えたある殺人事件を透視していたのではないかと人から指摘され、息子、等にそのような能力があったのかどうなのか、真実を知りたいと滋子に縋る。

                    そして取り敢えずの事実関係だけでも調べてみることにした滋子は、等が絵に描いた家の中で、両親が当時中学生だった長女を殺害し、家の床下に埋めたまま16年間もの間普通の暮らしを営んでいたという土井崎家の事件の詳細を知るうちに、土井崎家の人びとに隠された謎の部分に強く惹かれていくことに。

                    「土井崎家の人びとが、なぜその人生を選んだのか。なぜあんなことが起こったのか。あんなことが起こってもなお、刑事事件としての時効が成立するだけの年月、秘密を守り通せたのはなぜなのか。そして、なぜそれを荻谷等が知り得たのか。…」そして滋子が土井崎家の事件の真相に迫る時、一人の少女の身にも危険が迫り……。

                    『「模倣犯」から9年――前畑滋子 再び事件の渦中に!
                    自宅の床下で16年間眠り続けた少女の死体。その死体を狷視瓩靴疹年の交通事故死。
                    親と子をめぐる謎に満ちた物語が幕を開ける――
                    少年の目には何が見えていたのか。少女の死は何を残したのか。
                    新たなる拉致事件も勃発、物語は驚愕の結末へ!』だ、そうで。


                    上下巻一気読み…(気がつけば朝の四時)。
                    これは途中でやめられない、と思う。

                    滋子さんが知りたいこと、はそのまま私も知りたいことで、16年前、土井崎家で起こったこと、いかに素行が悪かったにせよ、何故中学生の娘を両親が殺害するに至ったのか、6つ離れた妹は、本当に何も知らなかったのか、突然いなくなってしまった姉の存在をどう捉えていたのか、今現在、両親はどこでどうしているのか…などなど、本当に気になって仕方なかったし、宮部さんのを読むといつも感じることだけど、本当にそこにそういう人たちがいて、そういう事件が現実に起こったと錯覚してしまうほど、登場人物の描写が細かくて丁寧で…。

                    その人のことを知ろうとするときに、家系を遡っていくというのも、本当にただ自分一人がぽんとここに生まれて、ここに存在しているのではないということをつくづく思い知らされるというか、血の繋がりというものを改めて考えさせられる。

                    人から見れば愚鈍そうな等の母親に至っては、その気の遣い方から、何から何まで、一人の人間を良く知るのに、これ以上の描写はないのではないかと思うほどで…(そこいらの知り合いよりも、この人のことの方が知ってるようなそんな感じ)そしてこの人には絶対に幸せになってもらいたいと、心の底から思えてしまうし、だからこそ最後に涙してしまったのかなと。

                    章の合間に挿まれる、一人の女の子の歪んだ性格も…。

                    『名もなき毒』とも少し共通するテーマなのかなと思えるけど、本当にそういう人が身内にいた場合、家族や周囲の人間はどうすればいいのか…、奇麗事ではなく、当事者なら、それは仕方のないことだと思えてしまうかも。

                    「誰かを切り捨てなければ、排除しなければ、得ることのできない幸福がある。」というのは、多分真実なんだろうと。

                    そういう人間は、環境によって作られるのか、それとも生まれつきそうなのか…どんなに優しい両親に愛情を注がれて育ったとしても、そうなってしまうものなのか…、だとすれば、本当にどうしようもないなと。

                    そして、全然話は違うけど、これを読んで天童さんの『家族狩り』の話を思い出して、本当に「家族の中」というのは、周囲からは見えなくて、難しいものなのだなと、つくづく怖くなってしまった。

                    やっぱり宮部さんの描く犯罪物は最高だし、時代小説もファンタジーも良いけど、こういうのこれからももっともっと読ませていただきたいなと。

                    0

                      『ドミノ』恩田陸

                      ドミノ
                      ドミノ
                      恩田 陸 2004/1/25文庫化 角川文庫 P.376 ¥580
                      ★★★★
                      人生における偶然は、必然である――。

                      過激派「まだらの紐」のメンバーが爆弾を仕掛けた真夏の東京駅に、たまたま居合わせることになってしまったのは、

                      先輩から買出しを頼まれ、念願だった行列のできる店のケーキを手にして、意気揚々と会社に帰る途中の生命保険会社の熱血OL、優子。

                      ネットで知り合った俳句仲間とオフ会を開くため、東京に出てきたものの待ち合わせ場所に迷ってしまった、筑波山麓で農業を営む吾妻俊策。

                      待ち合わせ場所になかなかやって来ない俊策を手分けして探し始めた、俳句仲間で元警察OBの面々。

                      母親に連れられ、ミュージカル「エミー」のオーディションを受けに来た小学生の麻里花。

                      恋人との別れ話を円滑にすすめるために美人の従妹を伴ってやってきた青年実業家、正博。

                      どう見ても素行の怪しい、青年実業家の恋人、国会中継オタクの佳代子。

                      次期部長の座を巡って謎解きに挑む、大学のミステリ研究部の面々。

                      公開映画のプロモーションに日本を訪れていたアメリカ人のホラー映画監督と、監督の大切なペットの「ダリオ」。

                      そして、その他もろもろの登場人物たち……。

                      東京駅でぶつかった二人の荷物が入れ違ってしまったことから、爆弾入りの「どらや」の紙袋を巡って、総勢27人+1匹もの登場人物が右往左往するスラップスティック・コメディ。

                      「迫りくるタイムリミット もつれあう28のマトリクス
                      必死の思いでかけまわる人々が入り乱れてぶつかりあって
                      倒れ始めたドミノはもう、誰にも止められない!!
                      抱腹絶倒、スピード感溢れるパニックコメディの大傑作!」だ、そうで。


                      恩田さんの本は、2年ほど前に『図書室の海』の一編目で挫折してしまった(全く理解できなくて)し、合わないと諦めてたけど、気を取り直して読んでみたら、これはめちゃくちゃ面白かった。

                      最初の登場人物紹介(単行本のはイラスト付きらしくて、それもちょこっと見てみたい)のページでは、あまりの登場人物の多さに一瞬ひるんでしまったけど、読んだあとにもう一度見てみると、わずか2行ほどのコメントに込められた登場人物の特徴の、あまりの的確さに感心してしまったし、あー、こういう人だったなとすぐに浮かんでくるのがすごいなと、素直に感心…。

                      これだけの登場人物なのに、それぞれの登場人物と物語が丁寧に書かれてて、その人たちが東京駅に向かう必然性もまた面白いなと(まさにタイトル通りの見事な「ドミノ」倒し的展開で)。

                      特に、保険会社の主催のミュージカル「エミー」の子役のオーディションの場面は、『ガラスの仮面』のマヤちゃんが乗り移ったかのような迫真の(て、理由はちゃんとあるんだけど)演技が凄くて、ちょっと感動してしまったし(ライバルの子の母親は、「ここまでやるか」だけど、実際にはこんなことぐらいやってそうだし)。

                      その後の子供たちの活躍も、全ての繋がりの上手さにすっかり参ってしまった。

                      一億円の契約に奔走する保険会社の女子社員たちの意外(?)な過去と、活躍ぶりにも拍手喝采だし(その辺りはまさに抱腹絶倒だし)。

                      そして何より読んでて一番気になったのは、映画監督のペットの「ダリオ」…。
                      こいつは一体…と、正体がわかるまで気になって、気になって。

                      それぞれの登場人物が、それぞれの役割をきちんと果たして壮大な(?)ストーリーを紡ぎあげていくという形式がとても好きなので、これは結構ツボに嵌ってしまったし、恩田さんの他の作品も読んでみたくなったかも。

                      とりあえずは、多分まだ一番分かりやすそうな『チョコレート・コスモス』あたりから…『ガラスの仮面』フリークなもので(とにもかくにも、真澄さまとマヤちゃんのその後の展開を早く読ませてください、美内さま…と、祈っているほどに)。

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