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    『千年樹』荻原浩

    千年樹
    千年樹
    荻原 浩 2007/3/30発行 集英社 P.299 ¥1,680
    ★★★★★
     大きな木を眺めていると、ときどき寿久は思うことがある。生物として彼らのほうが人間より格上なのではないかと。彼らの一族は、人類が誕生するずっと前からこの地上に君臨してきた。人間よりはるかに長寿で、本体を失っても再生が可能な生命力を持っている。それに比べたら、人間は小さくて、ひ弱だ。  〜『郭公の巣』より〜

    今は荒れ社となった、人気のない神社の石段を登りきったとば口で、もともとは雑木林と田畑しかなかった土地を切り拓いて建設された新興住宅地を見下ろすように立つ、大きな「くすの木」。

    神社が建つはるか以前より、その地に根を張り、古くから「子盗りの木」と言い伝えられ、人々から畏れられる存在でもあった樹齢千年の「くすの木」も、やがてその命を終えようとしていた…。
    そんな「くすの木」が千年もの長き年月に渡り、見続けてきた人間たちの暮らし。

    「くすの木」が、この場所に根を下ろすことになった壮絶な物語…『萌芽』に始まり、

    第二次世界大戦中に空襲を受けた村の過去と、少し前の現代の話が交錯する…『瓶詰の約束』

    貧しさゆえに幼くして遊郭に売り飛ばされた女と、遠距離恋愛で久しぶりに会えるはずの恋人を待つ女が、時を越えた「くすの木」の下で男を待ち続ける…『梢の呼ぶ声』

    煩いぐらいに蝉の声の鳴り響く「くすの木」の下で、「切腹」をさせられようとする不運な男と、職場の学校での自分の不遇を嘆き、「くすの木」に怒りをぶつける男の話…『蝉鳴くや』、

    離れ離れになった母の姿を追い続ける山賊と、「くすの木」の根元に死体を埋めようとするチンピラたちの愚かな話…『夜鳴き鳥』

    女の子ばかりを産み続けたために、姑から冷たくされる貧しい農家の嫁と、サファリ・パークへ出かけた帰り道、道に迷い、偶然に「くすの木」の側にある史料館に足を踏み入れることになった、一見幸せそうな四人家族の物語…『郭公の巣』

    大正と昭和のはざ間に生まれ、今まさにその命を終えようとしている祖母の若き日の恋と、現代の孫娘の恋の話…『バァバの石段』

    村を襲われ、幼馴染を侍達に奪われた少年と、「くすの木」には思い出したくない過去を持つ、役所の「あれこれ相談課」に勤める男が「くすの木」の最期を見守り、その後に見えたもの…『落枝』で終わる、

    一本の「くすの木」がこの世に生まれてから、次の世代へと命を繋ぐまでの間に、「くすの木」の下で連綿と続けられる、変わらぬ人間の生の営み8編から成る連作短編集。

    「木は、すべてを見ていた。
    千年を生きたクスノキの物語。
    それは、繰り返された人間たちの物語。」だ、そうで。


    これだけ短いページ数の間で、一体どれくらい過去と現代を行ったり来たり出来たことか…。

    何度も何度もタイムスリップして、その度に悲惨な過去を見せ付けられて、でも現代に戻っても、平和かもしれないけれど、人々の暮らしは決して幸せじゃないことを思い知らされる。

    一つの短編に、千年の間の様々な時代の過去の話と、現代の(といっても、昭和50年代だったり、60年代だったりそれも様々で)話が織り交ぜられていて、それらの繋がり方が絶妙(長くても良いから、もっともっと、この「くすの木」が見た事実を知りたいと思ってしまった)。

    時代がどれだけ変わっても、人間がやってることや、人の思いは変わることなく受け継がれていくのだなと痛感してしまうし。

    昔の話はあまりにも壮絶で痛々しいものが多くて(読んでいて、その痛みも、辛さも自分のことのように感じられるほど、リアルに描かれていて、荻原さんの凄みを感じてしまった)、どれも結構ラストに思わず「ぞくり」とさせられたし、救いがなくて全体的には怖かったけど、少し前の時代の『バァバの石段』の、祖母の昭子さんの話には、ちょっとほっとした。

    普段何気に御所の中を歩いてて、古くからある「木」を見る度に、ここに書かれてあるようなこと思ってしまってたけど、「実は人が癒されているのではなくて…」というのに、これから「木」を見る目が変わってしまうかも。

    最初の物語で「自分の死は覚悟していたが、我が子だけは助けたかった。…」という父親の気持ちが、そのまんま、この「くすの木」の気持ちのようで。

    次の世代へ…という気持ち、現代の人間は、徐々に失いつつあるのかも知れないなとも。
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      『世界の終わり、あるいは始まり』歌野晶午

      世界の終わり、あるいは始まり
      世界の終わり、あるいは始まり
      歌野 晶午 2006/10/25文庫化 角川文庫 P.515 ¥780
      ★★★★
      私は何を望んでいるのだろう。自分が苦しい思いをしたくないだけなのか、家族に傷を負わせたくないのか、世間体を守りたいのか、美しい思い出を壊したくないのか、雄介が更生してほしいのか彼はもういらないのか。その答を考えれば進むべき道は自ずと決まってくると思うのだが、自分の望みさえよくわからない。
       いや、望みは決まっているではないか。
       雄介が潔白であることだ。

      事件と言えば、せいぜい火事と痴漢騒動くらいしか思い浮かばない、平和で巨大な新興住宅街、埼玉県入間市にある「ひいらぎ台」で起こった、小学校低学年の男子児童ばかりを狙う、残忍な手口の連続誘拐殺人事件。

      同じ町内で、息子が親しくしていた児童が殺害された時点でもまだ「誘拐事件は、ごく近所で発生したとはいえ、しょせん他人の不幸でしかない」と自分の息子が被害者でなくて良かったと胸をなでおろし、自分達家族はいつまでも平和に暮らし続けるのだと信じて疑わない、妻と、小学6年生の息子、そして1年生の娘を持つ、食品会社の係長である父親、富樫修。

      ところが、事件には無関係な場所に自分を置いていたはずの父親は、息子の部屋で発見したある物から、自分の息子が何らかの形で、事件に関わりを持っているのではないかと疑い始めることに。

      そして、警察の手が伸びる前に息子の身の潔白を証明しようと、事件当日の息子のアリバイを確認するために訪れた進学塾で、親には内緒でとうに退塾していたという事実を知らされ、ますます息子の事件への関与を疑わざるを得なくなった父親は、警察から、マスコミから、世間から、家族をそして何より自分を守ることを考え始め……。

      「私の子供が誘拐犯なのか?
      既存のミステリを超越した、崩壊と再生を描く衝撃の問題作!」だ、そうで。


      「被害者の父親」になることすら考えもしなかった、ある意味脳天気な父親が、いきなり、「加害者の父親」になってしまった…と、これから先自分達に襲い掛かるであろう数々の苦難に苦悶する様は、何だかリアルだし、「こんな息子を育ててしまった自分たちの責任」に煩悶するところは、普通の人間ならきっとそう考えるだろうなと。

      たぶん実際に事件を起こしてしまった少年達の家族には、こういうことがあったんだろうなと容易に想像できるし。

      息子の言うことが、全部が全部、今どきの子供らしすぎて怖すぎるし(2002年に最初に出版された本なのに、ものすごく現在っぽいというか、その当時よりもたぶんさらに…)、こういう話が全然有り得なくないところが、また怖い。

      そして、家族のことより、何より自分が一番大事だと考えてしまう父親の気持ちも、息子を信じきってあげないところも、今の父親像っぽいと思えてしまった。

      ページ数多くて、時間かかりそうと思って放置していたけど、読み始めたらあまりにも面白くて、中断することなく、あっという間に読めてしまったという感じ(久しぶりに時間を忘れて、読むことに没頭してしまったミステリかも)。

      「パンドラのカメ」は、やっぱりちょっと間抜けな感じがしてしまうので、「パンドラの箱」の方が良いなと…そして「パンドラの箱」に最後に残されたもの、お父さん、それを持ち続けて家族の幸せの為にいつまでも頑張って働いてねと…いう感じかな。

      これは、年頃の反抗期の息子にちょっぴりひびっているというお父さんに、是非お薦めしたい本かも。
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        『カラスのジョンソン』明川哲也

        カラスのジョンソン
        カラスのジョンソン
        明川 哲也 2007/2/6発行 講談社 P.222
        ★★★★★
         団地の屋上。家々の屋根。街の灯り。
         初めての本当の空だった。
        風に乗る。逆らう。巻かれる。……
        人間は自分を守ろうとした。人間は食べるものを与えてくれた。人間は自分を捕まえようとした。人間は人間をいじめた。
         人間のそばに戻らなければ。
         いや、このまま飛び続けるのだ。人間から逃げるために。
         ジョンソンは空中で何度も方向を変えた。

        カラスが害鳥とされ、カラスの撲滅を望む一つの街で、母親の留守に他の鳥に襲われ、巣ごと落とされてしまい傷ついたカラスの幼鳥を拾い上げたのは、昼間はタイル工場で清掃員として働き、夜はカラオケバーでバイトをしながら、女手一つで小学生の息子を育てる、四十歳の母、里津子。

        里津子が家に持ち帰ったカラスの幼鳥を見て、ことの外喜ぶ息子、学校では何かと問題児扱いされている陽一に「傷が治るまで」と言い含め、「絶対に誰にも内緒で」と釘を刺す母の言いつけを守り、「ジョンソン」と名付け、母がいないひとりぼっちの夜、片時も「ジョンソン」の側を離れようとせずに、必死で看病する陽一。

        母子の住む市営住宅の一室で、母子の愛情に暖かく見守られながら「ジョンソン」の傷も少しずつ癒え、やがて少しの羽ばたきが出来るようになった頃、「ジョンソン」の存在が周囲に知られることとなり……。

        「翔べ、高く! 羽撃(はばた)け、遠くへ!
        千々のきらめきと、葉のこすれる乾いた音の中で、カラスのジョンソンは生まれた。
        さらさらと流れる風。翼に当たる雨。遥かな空から見おろす星……。
        カラスと少年の伝説が、ここに紡がれた。
        “詩人”が謳い上げる、生の交歓。」だ、そうで…。


        冒頭から中盤まではまるで、小学生の時に観て号泣した映画「キタキツネ物語」を彷彿させるような展開で…。

        物語は、カラスの「ジョンソン」の視点と、母子の視点とから描かれるけど「ジョンソン」の視点の章が圧巻過ぎて、この作者(実は「ドリアン助川」さん)は、前世がカラスだったのでは?と思いたくなる。

        詩人さんなだけあって、言葉の一つ一つの持つ凄みが心にストレートにつきささるし。

        この世に生を受け、初めて目にするもの、耳にするもの、感じるもの全てに驚き、戸惑う姿は、覚えてないだけで、人間も、赤ちゃんの頃はきっとこんなだったんだろうなと。

        餌を運んでくれる暖かくて大きな鳥の存在(母という認識はないから)や、隣に並び、餌を横取りするものたちの存在(兄弟という認識も、もちろんない)、そして次々に襲い掛かる自然の脅威や外敵の存在を知り、幼い「ジョンソン」は巣の中にいながらにして「生と死」を同時に知ることとなるけれど…。

        その辺の描かれ方が、自分が「ジョンソン」になったかのように怖くて怯えてしまう…「ただ生き残ること」の大変さを改めて思い知らされたような(何のために生きてるとか、自分探しとか、そんなこと考えること自体、人間は生ぬるいのかもと)。

        叱られるのを覚悟で、学校をさぼってまで「ジョンソン」を必死に守ろうとする陽一と、事の顛末を知った担任の先生との交流も良かったし、何より「ジョンソン」が苦しい生活を強いられる母子を見守る姿に、ただただ感動。

        そして一方で、人間のあまりの自分勝手な酷さに、自分が人間であることが申し訳なくなってしまうし、「ジョンソン」がそうしていたように、何もできないことが、ただただ哀しくなってしまう。

        「ナクナ。
         ナクナ、ナクナ、ナクナ。
         マモッテヤルカラ。」
        陽一に教えてもらった言葉で、必死でそう伝えようとする「ジョンソン」の姿には涙が止まらなかった。

        いつも「つがい」で行動するという「カラス」をちょっぴり尊敬していたし、「カラス」を見つけるとその行動に目が離せなくて、側に寄ってじーっと監察してしまうほどに惹かれるものがあるので、これを読んで余計に好きになってしまったかも(確か宮部さんの時代小説で、カラスを手なづけている人が出てきたときにも、こんな風にカラスと仲良くなりたいと思ったけど…)。

        そして、このタイトルは…やっぱり『カモメのジョナサン』からきてるのかな?(あっちも懐かしくて、読みたくなってしまったんだけど)。

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          『ほしいあいたいすきいれて』南綾子

          ほしいあいたいすきいれて
          • 著:南綾子
          • 出版社:新潮社
          • 定価:1260円
          livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く

          ★★★★★
          「お前、俺、言ったよな」「何を?」「相手のことなんて構うな。相手の都合なんて構うな。お前はお前の思っとることを言え、と。」「受けとめてもらえなかったらどうするの」「あ?」「だから本当に思ってることを言って逃げられたらどうするの。いなくなっちゃったらどうするの」「お前、答えはわかっとるだろ。」「答えって? わかんないよ」「思っとることを隠して苦しいまま付き合い続けるのと、思っとることを吐き出してダメになっても次へ進むのと、どっちが幸せか自分で考えろ、ばーか。」        〜『夏がおわる』より〜

          「来てほしいの?」と聞かれると、心とは裏腹に「別に」と答えてしまい、本気の相手に会えずに寂しい夜には、次々と好きでもない男と寝てしまう「私」。
          そして男とセックスした帰り道に限って、マンションの近くで必ず出会うのは、小学生の男の子に姿を変えた、私だけの「セックスの神様」?…『夏がおわる』

          男と付き合うたびに、「風俗で働いて」と懇願されてしまう、肉感的ではあるものの、キャバクラで働くには少々バカでダサすぎると自覚し、何にでも流されながら生きている「あたし」。
          そしてまた、一緒に暮らす男の企みで、真面目に勤めていた事務の仕事を無理矢理辞めさせられてしまい、しぶしぶ歌舞伎町の風俗店で面接を受けたものの、出勤の時間が過ぎても店に行くことが出来ずに、街をうろつき歩く「あたし」が道で拾ったのは、痴漢が落としていった携帯電話。

          携帯を開き、待ち受け画面の画像にショックを受け、警察に届けようかどうしようかと考える「あたし」が急いでマンションに帰ると、携帯が鳴り出し、見ず知らずの男から携帯を返すようにと脅されてしまい…『ほしいあいたいすきいれて』

          「あたしは明日、風俗嬢になる。
          一年後には
          何になっているだろう。
          せつない気持ちが爆発する、官能度200%の恋愛小説。
          第4回「R−18文学賞」大賞受賞作『夏がおわる』を収録したデビュー作」だ、そうな。


          「こういう男、いるんだよなあ。こういうこと、言うんだよなあ」と、R−18文学賞選考委員の角田光代さんを唸らせたという『夏がおわる』に出てくる不倫相手は、まさに典型的なそういう人で…ずるい男。

          本当に好きな相手には素直に「会いたい」と言えなくて、他の男で寂しさを誤魔化す「私」の気持ちも、不倫相手との関係をはっきりとさせることができない気持ちも、まあ、わかるかも…。

          そんな「私」を諭す、私の「セックスの神様」を名乗る小学生の男の子の台詞に、「そうだ、そうだ」と、今ならものすごく賛同できるし。

          表題作の『ほしいあいたいすきいれて』は、タイトルからは想像できない話と言うか、結構深くて、重い話だったのかも。

          主人公と同じように、私もこういう写真を撮るような変態さんは、こうなってもらいたいと全く同じこと思うし。

          でも、変態相手にこれだけ啖呵切れる「あたし」が、何であほで最低な男にばかりひっかかり、どうしようもない男の言うなりになってしまうのか…、男と女の、そこが悲しいなと。

          『IWGP』に出てくるようなテーマなのに、「マコト」みたいな、男気のある男前が出てこない(最低の男しか出てこない)ような話、といったところかな(その分現実味があるかもしれないなと)。

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            『トカジノフ』戸梶圭太

            トカジノフ
            トカジノフ
            戸梶 圭太 2006/8/25文庫化 角川文庫 P.333 ¥620
            ★★★★★
            「六畳一間のくそぼろいアパートの黴臭いちっぽけな空間を高い金で借りて、肉体的にも精神的にもエネルギーを搾取されて、それで自分は自立した大人だと悦に入って何になるってんだ? 馬鹿じゃねぇのか?……搾取されたエネルギーは最後は大企業の黒い豚をますます太らせるだけだという仕組みがわかっていないんだ。…」〜『くるまびと』より〜

            対立するやくざの組が雇った謎のヒットマンを狙うつもりが、マンションの部屋を間違え、他国の工作員に銃を向けてしまった間抜けな鉄砲玉の男は、ヒットマンよりも恐ろしい、公安に追われる工作員の男に追われることに…。そして鉄砲玉←工作員←ヒットマン←公安の壮絶なチェイスが始まった…『ターゲット508』(スピード★★★ 地響き★★ 思い込み★★)

            深夜の『ニッコリマート』新座南店からの通報を受け、駆けつけた警察官二人は、店に押し入り、客や店員に危害を加え暴れまくるシャブ中の男と、たまたまパトカーに乗せていた捕まえたばかりの別の事件の犯人を闘わせることを思いつき…『Jの利用法』(バトル★★★ 知恵★★ 内臓★★★)

            富士登山を楽しむ熟年夫婦が、そこには場違いなサラリーマン風の姿の男を発見し、男の行動を双眼鏡で見張りながら、あれこれ推測しているうち、やがて恐ろしい推理に行き着き、身の危険を感じることに…『七合目』(謎★★★ 熟年★★ 注意力★★)

            結婚をせく母親にうんざりし、出会い系に嵌る友人を尻目に、キャラクターデザイナーを夢みるデパガに訪れる、人生最低の一日、そしてその後、女はイラストブックだけを残して姿を消してしまい…『二十八歳の事情』(成長★★ ホロリ★★★ キュート★★)

            の他『交番トライアングル』(官能★★ 映画★★★ 愛情★★、『くるまびと』官能★★ 団地★★ カリスマ★★★)、『鳩殺し』(老人★★★ ベンチャー★★ 負け犬★★)、『ニ種族激突』(女気★★★ 成長★★ シーソー★★)の8編から成る、トカジワールドの魅力を満載した伝説の短編集。

            「強烈な殺笑能力を秘めた8発の弾丸(ショート・ストーリー)。イカした文体で、イカれた男と女共を徹底描破!フヌケな現代をこらしめる比類なきイリーガル文学!ハイブローなトカジ波(ウエーブ)が、あなたを小説の虜にする――。トカジは短くても凄い!」だ、そうで。


            もしかして、トカジさん、短編の方が面白いかも…。

            相変わらずの「安い人間」達が繰り広げる、お馬鹿なエログロワールド炸裂で、でも、『七合目』や『二十八歳の事情』の2編は、結構まともと言うか、こういうのも書くんだ…と見直したと言うか。

            『鳩殺し』はすごく嫌な話だけど、我慢して読むと、その分ラストが痛快だし…、またまたトカジワールドに嵌ってしまった。

            『くるまびと』の話は、結構考えさせられるし…。
            自殺を決意した一人の女の子が、街を彷徨っていて見知らぬ男に声をかけられて連れて行かれた先には、自分と同じように、傷ついた心を抱えた人たちが寄り添い暮らすコミュニティがあって、やがてそこに人間が増えていくにつれて方向性が変わっていき…というのは、あの宗教がモデル(たぶん)?

            感動物に涙するのも好きだけど、たまにこういう人間の愚かな部分が満載の本を読むのも、結構心が洗われて良いのかも(身体の毒が抜けていくと言うか…まさに毒を以って毒を制す、かな)。
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              『花宵道中』宮木あや子

              花宵道中
              • 著:宮木あや子
              • 出版社:新潮社
              • 定価:1470円
              livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く

              ★★★★
              縋ってしまうから、優しくしないで。
              どこかへ行ってしまうのなら、痕を残さないで。
              お願いだから、もうこれ以上好きにさせないで。
              〜『十六夜時雨』より〜

              生まれたときから吉原で育ち、ただ黙々と男に抱かれ、幸せも不幸せも感じないまま、生まれてから死ぬまでの道筋まで見失ってしまった、不器量な「朝霧」。不器量ながらも、そこそこに上客を持ち、年季明けの身請け話も出てきた頃に、ただ一人の男に出会ってしまったが為に…『花宵道中』

              二ヶ月後の初見世を控え、好いた男がいるからと、他の男に抱かれることを嫌がり泣き崩れる山田屋の新造「茜」。「茜」の好いた男には、「茜」にはとうてい敵わぬ美しい遊女がいつも側にいると知りつつ、顔を見ずにはいられずに、二人が逢瀬を重ねる茶屋へと足を運ぶうちに…『薄羽蜉蝣』

              母と死別し、父親に捨てられた幼い姉と弟は、離れ離れになり、弟を守るために姉は遊郭へと売られることに。そして売られた京の遊郭ではすっかり評判を落としてしまい、流れ流れて辿りついた先「山田屋」で、実の父親と遊女と客として再会してしまった姉「霧里」。そしてまた、弟「東雲」も数奇な運命に翻弄され…『青花牡丹』

              他、『十六夜時雨』、『雪紐観音』の5編から成る連作短編集。
              時は天保の頃、江戸吉原の遊郭の中では少々貧乏臭い、中途半端な小見世「山田屋」を舞台に、妖しく切なく繰り広げられる、遊女たちの哀しい恋の物語。

              「恋しい人を胸に思い、他の男に抱かれるのが遊女――
              江戸・吉原を舞台に、叶わぬ恋に咲いては散りゆく女たち。
              第5回R−18文学大賞&読者賞ダブル受賞の大型新人が放つ、驚愕のデビュー作。
              角田光代さん、三浦しをんさん絶賛!」だ、そうで。


              時代物は、宮部さんと山本周五郎さんぐらいしか読んだことないし、あんまり進んで読もうとは思わないけど、これはそういうの抜きにして、するっと物語に嵌りこんでしまうようなお話…(人を好きになる気持には、古いも新しいもないからかな)。

              5つの物語の繋がり方が絶妙というか…後の話で明かされる、男の裏側とか、そういうのが凝っていて、最初の話だけでも切ないのに、また切なさが倍増してしまう。

              江戸時代の遊郭の、遊女たちへの取締りの厳しさ(足抜けしようとしたら、半殺しのような目に遭わされるかとか、そういうの)は、何となく知ってるけど、そういうシチュエーションだからこそ、まさに男に惚れるのは命懸けで、「男のために生きる女と、男のために死ぬ女」の対比がすごく良く描けてて面白いなぁと。

              なかでも『青花牡丹』と『十六夜時雨』は圧巻かも。
              事件の真相が解ったときには「ぞくり」とさせられたし、女ばかりの遊郭で、女同士だからこそ庇いあえる部分というのには、すごく共感させられるし、女の潔さも良いし。

              茜の姉女郎、八津の「男に惚れる弱さなんざ、其処のどぶに放って捨てた筈なのに。」というつぶやきが何故だか胸につきささる(私も捨ててしまったクチなので…)。
              それと同じくらい、「何も恐くないと言っていたが、唯一恐いのは男を失うことだったのだろう。」というのも…。

              R−18文学大賞…だし、遊郭だし、官能的なシーンは一応あった(すごく上手いし、ツボに嵌ってしまう)けど、それよりも「山田屋」という場末のような遊郭で、共に暮らし、共に辛い時代を生きた遊女たちの友情物語、という感じもしないでもない。

              これ読んで久しぶりに(何十年ぶりかな?)名取さんの『吉原炎上』が見たくなってしまった(「道中」とか、確か豪華絢爛なシーンがあったなぁと…)。前に見たときはまだ高校生?ぐらいだったから、あまり良く分からないシーンもあった気がするけど、今見たら良く分かるのかも…。

              なので、この本の帯にある角田さんの「子どもには読ませたくない、読ませてたまるもんか」というコメントに、すごく納得させられてしまった。その通りかも。
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                『図書館戦争』有川浩

                図書館戦争
                図書館戦争
                有川 浩 2006/3/5発行 メディアワークス P.341 ¥1,680
                ★★★★★
                「君たちは――公序良俗を謳って人を殺すのか!」
                 それが正義だとすれば正義とはこの世で最も醜悪な観念だ。そしてこんな醜悪の根拠にされるメディア良化法とは一体何だ。

                公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が成立・施行されてから、三十年――。
                エスカレートしていくメディア良化委員会の検閲によって狩られ、破棄されてしまう本を守ることができるのは、メディア良化法に対して唯一対抗できる根拠法

                図書館の自由に関する宣言
                一、図書館は資料収集の自由を有する。
                二、図書館は資料提供の自由を有する。
                三、図書館は利用者の秘密を守る。
                四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。
                図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

                を有する「図書館」のみとなり、合法国家機関や、様々な手段で図書を弾圧しようと襲撃を繰り返す輩から、自分たちの手で図書館を守るべく、自衛隊にもひけをとらない訓練を受けた「図書隊」の6人の隊員達――。

                「運命の王子様」を追いかけて、図書隊への入隊を希望し、全国で唯一女性図書特殊部隊に配属された身体能力だけは男性隊員にもひけをとらない、熱血バカ。笠原郁

                女性隊員達からの人気はそこそこ、なのに郁にだけは厳しくあたるため、背中に飛び蹴りをくらわされる鬼教官、怒れるチビ。堂上篤

                圧倒的な女性隊員の支持を受ける、ツボに入ると止まらない、笑う正論。小牧幹久

                できそこないの郁と同時に特殊部隊に配属されたことに不満を抱くスーパーエリート、ちょっぴりおバカで頑な少年。手塚光

                寮では郁と同室の、男性隊員たちの憧れの的、美人でソツのない情報屋。柴崎麻子

                練成教官の総責任者、泣く子も黙る豪胆で大雑把な、喧嘩屋中年。玄田竜助

                図書館の自由を、愛する本を守るため、合法国家機関を相手に血を流すことも厭わない、彼ら6人の闘いがここに幕を開ける――。

                『正義の味方、図書館を駆ける!―公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館!狩られる本を、明日を守れ。
                「本の雑誌」が選ぶ2006年上半期エンターテインメント 第1位』だ、そうで…。


                やたらと説明が多くて難しくて、頭痛くなりそうだったけど、要するに、ちょっとのことでも「有害」とされてしまうような、ごく普通の本が自由に読めなくなる世界…、買いたくても本の価格が高騰してしまい、唯一法に守られた図書館のみでしか、読みたい本が手に入らない世界で、それらの本を守るために闘う大人たちのお話、という感じかな。

                そして、図書館を守る「図書隊」に入隊して間もない主人公の熱血バカ、笠原郁を中心に、彼女の行動を周囲の人間達はハラハラしながらも、その成長ぶりを暖かく見守る…という構図は、何だか大昔の『エースをねらえ!』とか、『スチュワーデス物語』なんかを彷彿させるようなお話で。

                少年犯罪が起こるたび、見ていた映画や漫画の悪影響が取り沙汰されて、そういった有害(とされる)図書なんかを大人たちが規制しようと企む中、健気に自分達で本を守ろうとする中学生達の話や、『日野の悪夢』の話は、なかなか良かったかも。

                作者の有川さんの本を愛する気持がとても良く伝わってくるというか…。

                「本を焼く国ではいずれ人を焼く」という古くからの言い伝えがとても心に残るし、そうならないことを願いたくなるし。

                郁が追いかける「王子様」の真相が解った時、郁がどんな反応を示すのか…(はっ、これもまた『ガラスの仮面』の、マヤちゃんと紫のバラの人のような…?)見届けたいから『図書館内乱』も『図書館危機』も読まなくちゃだけど、この本、寝ながら読むには若干重たい…。

                0

                  『ドアD』山田悠介

                  ドアD
                  ドアD
                  山田 悠介 2007/1/25発行 幻冬舎 P.205 ¥1,155
                  ★★★★★
                  こいつは、サークルの仲間でも、知り合いでも何でもない。
                  私を殺そうとする、敵だ。
                  殺らなければ、殺られる。

                  クリスマスも近い12月のある日、大学のテニスサークルの2年生だけの飲み会で集まった8人の男女…

                  サークルのリーダー的存在、責任感の強い翔太。
                  将来は医者を目指し、容姿も端麗で誰にでも優しい友一。
                  思いやりがあり、正義感も強い照之。
                  サークルのムードメーカーでお調子者、でも実は一番苦労人の豊。
                  有名アパレル企業の社長の御曹司であることを鼻にかける、短気で自己中心的なサークルの鼻つまみ者、竜彦。

                  そして、サークルのマドンナ的存在、勉強にバイトにサークルにと、忙しい日々を送る優奈。
                  見た目は派手でも中身は奥手…照之に密かに想いを寄せる千佳。
                  運動神経が鈍くて大人しい、テニスは初心者のメガネ少女、美紀。

                  すぐにキレる性格の竜彦のせいで、楽しかった飲み会に水を差され、その日は早々に解散し、駅へと向かった8人のメンバー達は、駅で別れたのを最後に、全員が記憶を失い目が覚めたときには、自分たちがコンクリートで作られた、正方形の部屋の中に閉じ込められていることを知ることに…。

                  どういった理由から、このような状況に自分たちが置かれることになったのか、冷静な判断をする間もなく、部屋の隅にある穴から水が溢れ出し、パニックに陥る8人。

                  窓もなく、携帯も通じず、助けを求められそうもないこの部屋で、水に溺れる恐怖の中、かろうじて生き残り、一つ目の部屋から脱出する際に学んだことは、ただ一つ。
                  誰か一人が犠牲にならない限り、「D」の文字が刻まれた鉄の扉は、永遠に開くことはないということ。

                  そして開けても開けても続くドアを開けるため、一人、また一人と仲間を犠牲にしながらも、生き残った最後の一人を待ち受けていたものは……。

                  「脱出の条件はたった一つ――友人を殺すこと。
                  人間の本性を剥き出しにした、壮絶な殺人ゲームが始まった。
                  オリコンブログにて、アクセス数100万件突破!!
                  話題騒然のサスペンス・ホラー」だ、そうで……。


                  Amazonでのレビューのあまりにも低い評価に、ビビりながら読んだけど「あれ?意外と面白いかも…」という感じ(期待しなかったからそう思えたのかもだけど)。

                  それぞれのドアの向こうの趣向は、どっかで見たなぁ(映画とか、ゲームとか)というのもあったけど、想像すると怖いものばかりで。

                  まあ、相変わらず突っ込みどころは満載で(生きてる時と死んだ後で、こうまで人物の評価が変わるのか?とか、あれ、いつの間に恋人になったの????とか…)、そういう突っ込みも含めて、楽しめてしまいそうな。

                  登場人物の命に重みを持たせようとしたのか、結構一人一人について細かく説明してあるのも、好感が持てるし、犠牲になる順番が解りやすくて(若干解り易すぎるというか、画一的な気もしないでもないけど)期待を裏切らないし(褒めてるんだか貶してるんだかだけど、多分褒めてると思う)。

                  これは映像化されたものを是非見てみたいなと…(結局不明な点が多いので、そこを何とか映像で明らかにしてほしいと希望してしまうので)。

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                    『このベッドのうえ』野中柊

                    このベッドのうえ
                    このベッドのうえ
                    野中 柊 2007/2/28発行 集英社 P.202 ¥1,365
                    ★★★★★
                    私の人生における、唯一無二の恋。そんなふうに感じていたのは、年齢のせいだったろうか。まだ若かったからなのだろうか。もちろん、彼との将来も夢見ていた。いや、それは嘘かもしれない。彼のそばにいるときには、いつだって未来はどこにもなかった。現在と――いくら手を伸ばしても、すんでのところで手の届かない過去しかなかった。
                     今になってみると、こう思う。いつか失われる恋だと予感していたからこそ、私はあれほどまでに彼を愛しがっていたのかもしれない、と。   〜『真夜中にそっと』より〜

                    名残雪が静かに舞い降りる真夜中、窓の外の同じ景色を見せたくなり、電話をかけたものの、優しい現在の恋人の声を聞くに止めた女は、一人ぼっちで自作の石榴酒を飲みながら過去の激しい恋愛を想い…『真夜中にそっと』

                    つつじが燃えるような初夏の夕暮れ、家を訪れていた一時は疎遠になっていたはずの姉の友人であり、かつての憧れの人を、駅まで送ることになった大学生の「僕」は、彼女の離婚話を聞き、駅までのつもりが一緒に電車に乗り込み…『余音』

                    なにもかもが燦然と輝く夏の午後、海に近いマンションに住む女に招かれたカップルは、去年は彼女の隣にいたはずの男の不在に違和感を感じ…『さざなみ』

                    付き合って八年近くにもなる恋人と過ごす秋風の吹く夜、いつもと同じように食事をし、シャワーを浴び、いつもとは違う、部屋には場違いな真鍮のベッドに潜り込んだ「私」は、ベッドの前の持ち主の従姉妹のことを思い…『このベッドのうえ』

                    冬の到来を告げるかのようなマリーゴールドの花の終わりに、馴染みのバーのカウンターで言葉を交わすようになった、年齢の離れた女性から他愛もない話を聞くうちに、付き合っている彼女への自分の態度を後悔する男は…『マリーゴールド』

                    姉がいた頃と変わらず姉の元彼とのクリスマス・パーティーを、もう何年も続けている「私」は、今年が最後と思いつつ…『七面鳥を焼いて』

                    付き合い始めてから、初めて迎えるバレンタインデーに彼氏へのプレゼントに迷う彼女が選んだのは…『なんでもない感情』

                    花びらも散り行く桜の季節の終わり、大学時代からの友人に花見に誘われた「僕」は、彼女のあまりの変貌振りに、現在の彼女の心境を問いただすと意外な答えが返ってきて…『春の嵐』の、8編から成る、恋に揺れる男女の複雑な心のうちを、美しい筆致で描く恋愛短編集。

                    「この恋は いつまでも続かない。
                    続けられない。
                    だからこそ今
                    私は、夢中で、恋をする。
                    恋のもたらす恍惚と危うさをつぶさに描いた生命感あふれる恋愛小説。
                    今、最も支持される恋愛小説の書き手が贈る、季節を巡る珠玉の8編。」だ、そうで。


                    ここに出てくる多くの物語には、特別な何かは、何もなくて、結末も特にはなくて、ただ、ごくごく普通の男女や、カップルの、その時々の心の揺れというか、そういうのが濃ゆく描かれていて、だからこそ読んでいて懐かしい気持が蘇ったり、今の自分の心境をずばり言い表されているようで…痛いところをつくような。

                    『真夜中にそっと』の主人公が、突然理由もなく涙してしまうのも、現在の彼氏の誠実さと優しさと、その安心感への不安さも、手に取るように解るかも。

                    「失うとわかっているからこそ愛しく思える」というのは、まさにその通りで(と、恋愛がいつまでたっても日常化しない私は、いつか失う怖さに怯えて暮らしているのが、ある種の快感にもなっているような…まあ、結構ドMな性格なので、これはこれでいいのかも知れないなと)。

                    表題作の『このベッドのうえ』には、ちょっとドキドキさせられたけど、どの話も、読み終えるとすぐに忘れてしまうぐらい、何も残らないような話だなぁと、その時には思ったけど、実は妙な余韻をひきずるというか…寂しい心の隙間にそっと入り込むような話ばかりだったのかも。
                    0

                      『ミハスの落日』貫井徳郎

                      ミハスの落日
                      • 著:貫井徳郎
                      • 出版社:新潮社
                      • 定価:1470円
                      livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く

                      ★★★★★
                      「神はひとりであって、その他に神はない。私が聖書のその言葉を思い出したのは、密室の真相に気づいたときのことだ。私は自分が神ではなく、ただの人間であったことを改めて認識した。そして神ならぬ身に、人を裁く権利などないことも自覚した。……それなのに私は神が許したアリーザの行為を神に代わって糾弾した。己を神と勘違いしたとき、私もまた取り返しのつかない罪を犯したのだ。……」〜『ミハスの落日』より〜

                      バルセロナでの一人の女性との邂逅から、孤独な人生を歩むことになった大富豪の男は、命の際におかれ、一人の青年を呼び出し、30年前に犯した自身の罪について語り始める…『ミハスの落日』

                      女に好意を持たれたことのない、コンプレックスの塊のようなビデオ屋の店員は、客として男に声を掛けてきた美しい女性の微笑を「好意」だと勘違いし、ストーカー行為を繰り返した挙げ句、彼女に殺意を抱くようになり…『ストックホルムの埋み火』

                      保険会社の調査員の男は、サンフランシスコ警察の極悪刑事に頼まれて、二人の夫を事故で亡くした過去を持つ女性の、三人目の夫の事故死の調査をすることに。
                      ツバメの巣を取ろうとして、アパートから墜落死した三人目の夫には、多額の保険金が掛けられていたというのだが…『サンフランシスコの深い闇』

                      夫が残した借金の返済の為に、仕方なく娼婦に身を落としたと、最近客として頻繁に指名してくれるようになった日本人の男に語る女。
                      女の近辺で、近ごろ頻出する「切り裂きジャック」のような、娼婦だけを狙う殺人鬼の正体は…『ジャカルタの黎明』

                      アメリカ人の観光客女性から、失踪した夫の捜索を手伝って欲しいと頼まれた現地ガイドの男は、その報酬と彼女の美しさに惹かれ、妻には内緒で彼女の依頼を引き受けることにしたことから…『カイロの残照』の、世界各国の5つの都市を舞台に繰り広げられるミステリ短編集。

                      「今も胸に残る、強い想い 心の底に潜む、深い闇
                      そして待ち受ける、驚愕のどんでん返し 世界を舞台に描く、最新作品集」だ、そうで。


                      最初の『ミハスの落日』から、最後の『カイロの残照』まで、実に8年間に渡って書き溜められた作品集だそうで、実際に貫井さんが訪れた土地ばかりが舞台ということで、「あとがき」の各地の感想みたいなのも、なかなか面白かったりする。

                      海外が舞台で、主人公達もみんな現地の人だしカタカナの名前だし、微妙に違和感を感じなくもないけど、中身はやっぱり貫井さん、という感じ。

                      『ミハスの落日』の大富豪の男の振り返った過去の話が、なんとなく『白夜行』っぽいなと。神によって作られた密室…は、まあそういう話だから、これでいいのかなと納得。
                      ラストの真実は、少し涙を誘うような。

                      『ストックホルムの埋み火』を読んで、レンタルビデオ屋さんって、どこの国にもあるのか…と妙なところに感心し、これ日本が舞台でも全然構わないと思ったけど、何かの作品へのオマージュだと知って最後の主人公の台詞から、ネットで調べてああなるほどなと。

                      もてないストーカー男の心の叫び(身勝手な)と、自分とを重ねる刑事の鬱屈した心が面白くて、この作品はすごく好きかも。

                      『サンフランシスコの暗い闇』は、『光と影の誘惑』の中に収められてる「二十四羽の目撃者」の続編ということで、ちょっと軽妙な感じのお話、なのに、真実はダークかな。

                      『ジャカルタの黎明』の犯人の動機を聞いて、やっぱりこれも、その国でなければならなかったんだなと、舞台の国に感心されられてしまった(ジャカルタってどこにあるのか知らないんだけど…)。

                      エジプトにはものすごくそそられるので、最後の『カイロの残照』を読んで、ちょっと行きたくなってしまった(背景が鮮やかに描かれていて、イメージしやすかったからかな)。これもやっぱり海外ならでわの犯罪、ぽい。

                      でも、この作品集読んでて、なぜか友近と彼氏がやってる「ビバリーヒルズ」ネタ(ディランが大好きなので、結構ツボに嵌ってる)を思い浮かべてしまったのは何でだろう…。

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