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    『彼女の部屋』藤野千夜

    彼女の部屋
    彼女の部屋
    藤野 千夜 2006年 講談社文庫 P.217
    ★★★★★
    うっかりミスをしたのはやはり最初に家へ誘われたとき、行く気がないなら「ない」とはっきり言わなかったことだ。そんなところで意味のないいい顔をしたせいで、なんだかややこしいことになってしまった。べつに家に遊びに行くなら行ってもいいのだけれど、そこまで熱心に誘われる理由がわからないのが嫌だ。〜『彼女の部屋』より〜

    結婚しても、しなくても、どちらでもいいようにと考えて、ファミリータイプのマンションを購入した30代独身の編集者。
    10月なかばに回ってきた回覧板で、「ハロウィン」のイベントがマンション内で行われることを知り、関係ないと思いつつ、とりあえず可愛くラッピングしたお菓子を用意したものの…『ハローウィーン』

    太りすぎて小型犬とは言えなくなってしまった愛犬、ポメラニアンの「アメリカ」のために、婚約者からは止められても深夜の散歩を続けるファンタジー作家の女。
    犬の散歩で知り合った、専業主婦の女に誘われて、深夜にも関わらずマンションにお邪魔し、ごちそうになり、後日婚約者にその出来事を報告すると…『アメリカを連れて』

    八年前に病気で他界した父が家に帰って来たと、母親から電話で聞かされ、今は兄夫婦と母親が暮らす実家に帰った児童書専門の出版社に勤めるともえ。
    家族全員が、ありえない現実をすんなりと受け入れ、親子の感動の再会シーンに興味を隠せない、ともえより年下の兄嫁。
    父も含めた家族全員で、父の墓参りに行き…『父の帰宅』

    友達に届いたストーカーからの手紙を、興味本位で預かることになったイラストレーター。
    ひとりで中身を確認するのが嫌で、次々と知り合いに声をかけ、皆に手紙を見せるうち、律儀にも住所も名前もきちんと書いてあるストーカーの家を探しに行こうと誘われて…『愛の手紙』

    お腹の痛みのせいで仕事が手につかないWebデザイナー。
    離れて暮らす二卵性双生児の兄に、「いちじく」の薬を買ってきてくれるように頼んだものの、すげなく断られ、仕方なく様変わりしてしまった馴染みの薬屋に行き、いつものおばさんではないお店の人から、強引に別の高価な薬を薦められ…『薬屋事件』

    二、三度会っただけで大して親しくもない知り合いから、何度もしつこく誘われて、断るのも面倒になり、しぶしぶ家を訪ねることにした、花屋でバイトをするバツイチの恭子。
    無職で暇な時間を持て余しているらしい独身の彼女の住むマンションは、意外にも豪奢で…。
    部屋を全部見せてくれるという彼女の申し出に従い、あちこち見て回る恭子が最後の部屋の前に立つと、急に態度を変える彼女に止められて…『彼女の部屋』

    「何気ない日常を淡々と描きながら、気にも留めずにやり過ごしている狄瓦里兇錣瓩瓩鯀〆戮防發び上がらせる掌編集。芥川賞作家が描く、6つの透明な物語。」だ、そう。


    うーん…、本当に本当に、ものすごく些細な日常と言うか(『父の帰宅』と『愛の手紙』以外は)、独身の私には、結構共感できる話ばかりで。

    『ハローウィーン』では、主人公の隣に住む、推定60代前半の福田夫人の落胆振りを、本人の気持ちを書かずして、読み手に伝えられるってすごいなぁと感心してしまった。
    誰にも悪意も何もなくて、でも傷ついてしまうというのはよくあることで…。

    主人公の部屋の様子や、冷蔵庫の中身があまりにも私のとこと酷似していたので、「そろそろ掃除しないとな…」と(冷蔵庫の中の発酵して蓋が膨らんだ「キムチ」って…忘れてた)。
    でも、意外とみんなこんなものかもと、ほっとしたというか。

    『アメリカを連れて』の、婚約者との「わからないこと」の考え方のズレや、その後の展開も、劇的でも何でもないところが、「ああ、こんなもんだなぁ」と、何もないことに安心してしまった。
    愛想をふりまく太ったポメラニアンの「アメリカ」が何より可愛くて、道で会ったらきっと触ってしまいたくなる。

    『愛の手紙』は、私なら、家を見に行くよりもまず、そのストーカーの顔を見たいと思ってしまうんだけど…(でも、怖いから陰からこそっと)。

    『彼女の部屋』の、八方美人と言われる主人公の気持ちは、ものすごく分かる。
    そういうことで「病院に行ったほうがいい」という、元ダンナの方が全然分からない…。

    ここに出てくる、少々病的な「家に誘う彼女」には、うんざりするけど、きっと相当寂しい人なんだろうなと想像する。

    朝から仕込んでおいたという晩御飯が、それかよ…と、主人公同様「ガクッ」となってしまったけど、そういうズレに気付かない人だから、こうなっちゃうんだろうなぁと。
    その歳まで、よくそれで来れたもんだと感心してしまった。

    そう言えば最近「強い子のミロ♪」のCM全然見てないけど、今もあるのかななどと、どうでもいいような些細なことを考えさせられるような一冊だったかも。

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      『幸福な食卓』瀬尾まいこ

      幸福な食卓
      幸福な食卓
      瀬尾 まいこ 2006年 講談社 P.231
      ★★★★
      翌日もまた朝がやってきた。本当に不思議だ。どんなにショッキングなことがあっても、日常はきちんと進んでいく。父さんが自殺を失敗したときも、母さんが家を出たときも、朝は普通にやってきた。

      どんな朝でも、必ず家族全員が顔を揃える中原家の朝の食卓。
      母さんの横には父さん、そしてその向かいには兄の「直ちゃん」と「私」佐和子。

      一年前、母さんが家を出ると宣言し、居なくなった今も、その習慣は変わらず続けられ、佐和子の春休み最後の日、3人が揃った中原家の朝の食卓で、今度は父さんが、父さんを辞めると言い出した…。
      教師の仕事を辞め、大学を受けなおすと言う父さんの発言に、直ちゃんが「何とかなる」と言うので、「だったら…」と、すんなり受け入れることにした佐和子。
      佐和子、中学二年の新学期から、辛い過去が蘇り体調に異変をきたす梅雨の頃…『幸福な食卓』

      佐和子が敬愛する、兄の「直ちゃん」。
      顔も性格も、運動神経も良く、何より秀才だった直ちゃんの欠点は、音感が全くないこと、そして恋人が出来ても三ヶ月と続かずに失恋ばかり繰り返すこと。
      何度失恋しても、三日もすればけろりと忘れてしまう直ちゃんが、今回家に連れて来たのは、外見からして、今までで最悪の第一印象の「小林ヨシコ」。
      そして佐和子自身にも「大浦君」との運命の出会いが訪れる、塾に通い始めた、中学三年の春…『バイブル』

      朝からステーキを佐和子に勧める直ちゃんが言い出したのは、今さらながら…家族の役割を放棄してしまった中原家をどうするか、ということ。
      高校生になった佐和子は、クジで学級委員に選ばれてしまい、クラスを上手くまとめられず、頑張ろうとすればする程クラスから浮き始め…佐和子、高校一年の春から梅雨までの悩める日々…『救世主』

      クリスマスが近づいた11月の終わり、彼氏の大浦君が「アルバイトをして、すごいプレゼントをする」と宣言し、その翌日から早速、佐和子の家の近所で新聞配達を始めた。
      直ちゃんは、可愛がっているニワトリの中から一羽を選び、ヨシコにプレゼントするらしく、ヨシコは、直ちゃんの留守に部屋を物色し、ここにないものをプレゼントすると言い、佐和子は、プレゼント用の毛糸を母さんと一緒に選び、みんながクリスマスを楽しみにしていた、その日の朝…『プレゼントの効用』

      「第26回吉川英治文学新人賞受賞作 珠玉の才能が生んだありえない感動!」だ、そう。
      ありえなくはないと思うけど…。


      「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
      のっけから、父さんの爆弾発言で始まる中原家の朝の食卓の風景は、朝からそんな…だけど、まあ朝しか全員が揃わないというので、それも仕方ないのか…。

      一緒に住んでいて「父さん」を辞めるのはかなり難しそうだけど、そもそも「父さん」の役割って、何だろう?はたと考えてしまった。
      父さんの遺書に書いてあった、長生きの秘訣(?)「真剣ささえ捨てることができたら、困難は軽減できたのに…」は、全くもってその通りだと(伝説の(?)ロックバンド、アナーキーの『3・3・3』の歌詞「そんなに真面目に生きてもしょうがない」を座右の銘にして生きてきた私には、ものすごく納得できてしまうお言葉のような…)。

      母さんが居なくなった理由は…、母さんは本当に父さんを愛しているんだと思えるし、(好きすぎて…かな)だからこその、この選択は、とても正しいことのように思うし、世間一般の家族の形態からすれば、少しずれてるのかもしれないけど、こういうのも全然ありだと思う(昔から、結婚するなら、別居結婚がしたいと思っていたのでなおさら、そう思うのかもしれないけど…)。

      母さんが家を出て、父さんは父さんを辞め、兄は兄で、大学に進むことを辞め、農業という道を選択し、みんながみんな、自分勝手なことをしているようでいても「家族」であることには変わりなくて…。

      ヨシコさんの最後の励ましの言葉は、当たり前のことだけど、何だかとても良くわかるし、「直ちゃん」にはこの人しかいないと思えた(たとえ使いまわしの油セットでも、手ぶらで行けないヨシコさんは、とても常識のある人のように思えるんだけど…)。

      佐和子がみんなを突き放しても、みんなは決して佐和子を見捨てたりしないし、佐和子が気付いてないだけで、みんなからすごく愛されていて…それは佐和子自身が愛されるべき人間だからで…。

      この物語に出てくる人は、みんなすごく良い人だけど、なかでも、大浦君が本当にもう、めちゃくちゃ素晴らしい。
      単純明快な性格も、少々ずれてそうなとこも…、この子は佐和子の神様なんじゃないのか?と、途中で思ってしまうほど、大きな愛で包んでくれるというか…。

      そんな年頃なら普通「照れ」とかありそうなのに、ストレートですごく気持ちが良い。
      こんな人が現実にいたら、絶対掴んで離さない、と思う。
      最初にこんな子と付き合ってしまったら、もう二度と他の人好きになれないのでは?と、私なんかは思えてしまったけど。

      なので…少し瀬尾さんを恨んでしまいそう。

      しかも、その役、映画では勝地君が演じるというので、それだけで映画も観に行きたくなってしまった。
      折しも今日、勝地君の話題が職場で出て「勝地君て、松村雄基の若いころに似てへん?」と聞いたら「それ誰ですか」と、若い子に言われてしまったところで…。
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        『均ちゃんの失踪』中島京子

        均ちゃんの失踪
        均ちゃんの失踪
        中島 京子 2006年 講談社 P.224
        ★★★★★
         けれども、この男を慰める女は、自分のほかにもいるのだろうと瞬時に思い直した。
         思い直してから、もう一度、だけどほんとにそんな女がいるんだろうかという疑問が、頭をかすめた。
         そして、景子先生が何度か口にした、「それが均ちゃんの、かわいそうなとこやね」というセリフが胸に浮かんだ。
         かわいそうなんだか、かわいそうと思わせるのがうまいんだか、それともやっぱりかわいそうなんだか……

        その家の主である「均ちゃん」の失踪中に泥棒が入り、警察に呼ばれたのは「均ちゃん」と関わりのあった三人の女達。

        一番最後に「均ちゃん」の家を訪れた、ティーン向け雑誌の編集者をしている二十代の片桐薫、外資系の製薬会社で重役秘書をしている三十代後半の木村空穂、そして「均ちゃん」の元嫁であり、今は「均ちゃん」の住む家の大家でもある五十前後の女子高の美術教師、梨和景子。

        被害者である内田均の行方を捜しているという警察に、誰一人として「均ちゃん」の居場所を答えられず、お役御免となった三人は、その後、空穂の提案で、何故か一緒に温泉旅行に行くことに。
        そこに、薫の家を訪れていた「均ちゃん」のゲイの弟までくっついて来て…『均ちゃんの失踪』

        「均ちゃん」の失踪を「ああ、また例の癖が出た…」と慣れっこになっていた、別れて9年が経つ、元嫁の景子。
        「更年期」に脅えつつ、いつもと変わらぬ日常を送る景子は、学校の帰り道、わざわざ遠回りをして、警察に呼ばれた日に車で家まで送り届けてくれた定年間近の刑事「高木ケイブホ」が時々行くという、近所の小料理屋『うがき』を覗いてみることに…『のれそれ』

        「均ちゃん」は実は二番手で、別に本命の男がいるという空穂。
        「妻とは離婚する」と言い続ける本命の男との関係をずるずると続ける空穂に、ある日知人から届いた手紙の内容は…『彼と終わりにするならば』

        そして「均ちゃん」が失踪するに至った『お祭りまで』と、それぞれの結末『出発ロビー』の5編から成る連作短編集。

        「均ちゃんはイラストレーターで、ガールフレンドが何人かいて、ふらふら失踪する癖があって、ともかくろくでもない男。その均ちゃんが失踪中に空き巣が入った。そして、三人の女が関係者として呼ばれた。均ちゃんの行方は?三人の女たちの恋の行方は?『FUTON』『イトウの恋』の中島京子が描く最新連作短編集。」だ、そう。


        「均ちゃん」は、若い頃の火野正平のような人かな(最近は週刊誌も読んでないから知らないけど)。

        年代も、職種も何も接点のない三人の女性たちが、「均ちゃん」を通して何故か仲良くなってしまって…て、何か分かる気がする。
        「均ちゃん」を見る目が、それぞれの年代らしいのも、すごく面白い。
        若ければ若いほど「均ちゃん」がいなくなったことを悲しむというのが…。

        三十代後半の空穂さんの、本命の彼氏へのキレ方も、リアリティがあるというか。

        それでも、三者三様に「均ちゃん」がいなくなったことで、それぞれの新しい道を見つけて「均ちゃん」がいなくても…というのが、とても痛快。
        本当にそんなもんだと思う。
        いればいたで、それでいいけど、いなくなればいなくなったで、それもいいと言うか…、男とは、そういうものかなと。

        中島さんの本は、この前の、不思議な読後感の残る『TURE1989』を読んだだけだったけど、こんなに面白いの書く人だったんだと、見直してしまった。
        東京生まれなのに、景子先生の関西弁の使い方もお上手で、景子先生の「はんなり」とした性格が良く表わされているような。

        あと、突然勃発する兄弟げんかのシーンも、かなり笑えてしまった。

        均ちゃんが嵌りかけた「オレオレ詐欺」ならぬ、「あんたが父親でしょう作戦」は、なかなか使えそうで。

        結局逃亡願望の強い「均ちゃん」は、だらしないのか、優しすぎるのか…そこんとこは良くわからないけど、きっと一生そのまんまなんだろうなぁ。
        まあ、最後は「ざまあみろ」という感じ。

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          『風が強く吹いている』三浦しをん

          風が強く吹いている
          風が強く吹いている
          三浦 しをん 2006年 新潮社 P.508
          ★★★★★
          一人ではない。走り出すまでは。
          走りはじめるのを、走り終えて帰ってくるのを、いつでも、いつまでも、待っていてくれる仲間がいる。
          駅伝とは、そういう競技だ。

          家賃がたったの三万円、大学からは歩いて五分の破格の安アパート、九室しかない「竹青荘」の一室に、今年の春、双子が入居してきたことから、「あと一人、あと一人」と幽霊のように唱え始めるようになった、アパートの住人全員の世話役、寛政大学文学部四年の「ハイジ」こと、清瀬灰二。

          住人が十人揃うと、何かが起こる…と、他室の住民達が不安に思い始めた頃、ハイジが一人の新入生、蔵原走(かける)を拾って「青竹荘」に連れて来た。
          訳あって高校の陸上部を退部し、強い陸上部のない寛政大学に入り、それでも走ることは止められず、一人きりで走り続けていた「走」。

          そして走のために開かれた「竹青荘」での、初めて全員が顔を揃えた歓迎会の夜、ハイジの口から、とんでもない発言が…。

          「十人の力を合わせて、スポーツで頂点を取る」と、高らかに宣言したハイジの「うまくいけば、女にモテるし就職にも有利になるだろう」のひと言に食いついたのは、約三名。

          そして残りの六人も、ハイジへの恩義やその他諸々の事情から、陸上経験のある者も、ない者も、果ては運動音痴の漫画オタク「王子」でさえも、渋々ながらも全員で半年後に行われる「箱根駅伝」の予選会を目指して、厳しい練習を開始することに。

          「くだらない」と思いつつも、ハイジの思惑にどんどん嵌っていく、走るために生まれてきたような「走」。

          そして、たびたび行われる記録会ごとに、ぐんぐんタイムを伸ばすメンバー達は、「まさか」の箱根駅伝への出場を果たしてしまい、とうとうその日がやって来て…襷を繋ぐことだけを考える彼ら十人に任された、それぞれの区間での健闘やいかに……。

          猗∈の山は蜃気楼ではない。襷をつないで上っていける、俺たちなら。
          「速く」ではなく「強く」。目指せ箱根駅伝!
          超ストレートな大型青春小説 最強の直木賞受賞第一作!瓩澄△修Δ福


          毎年、お正月の二日間、何故か見てしまう「箱根駅伝」。
          何かアクシデントがあればある程、応援したくなってしまい、感動して涙してしまう不思議なスポーツ…。

          「何故そんなに苦しそうなのに走るのか」と、「ただ人が走るのを、何故こんなに食い入るように見てしまうのか」と、いつもいつも、思いつつ。
          でも、人が風を切って走る姿は、やっぱり見ているだけでもとても気持ちがいい。

          そして、ここに出てくる10人の個性豊かなメンバーによって繰り広げられる「箱根駅伝」のシーンは、正月に見ている中継さながらに、スピード感があって、緊張感が伝わってきて、実際に彼ら全員が、あの上ったり下がったりの起伏の激しい悪路を、襷をかけて懸命に走る姿が目に浮かぶような…。このシーンは、圧巻。
          素直に、感動した。

          もちろん、そこに辿りつくまでの練習風景や、「走」の元のチームメイトとの軋轢や、彼ら一人一人の背景が丁寧に描かれていて、名前を見れば、すぐに10人それぞれの顔が浮かんできそうなくらい、ライバル校のキャプテンや、監督兼大家さんも、大家さんの家の「ニラ」に至るまで、キャラクター設定がきちんとされていて、読んでいて「これ誰?」と、混乱することもなく(てっきり佐々木倫子さんの絵だと思ってたけど違った、カバーのイラストもかなり役に立ったかな)。

          「箱根駅伝」の区間決めも、それぞれの性格と持ち味が良く生かされていて、感心してしまう(詳しいことは良く分からないけど、雰囲気的に…)。

          走りの神様に選ばれたかのような人間「走」のように走りたくても、故障を抱え、思うように走れなくなってしまった「ハイジ」の、「走ること」への熱い気持ちも、痛いほど伝わってきて、思わず走り始めてみたくなるような(歳取ってから走りに目覚めた上岡龍太郎さんのように…)。

          「ハイジ」のキャラは、『キャプテン』に出てくる谷口君で、「走」は、五十嵐君のようで…(漫画でしか例えられなくてすみません。これもかなり、好きなので…。)

          個人的にはアイドルタレントのような容姿なのに、運動音痴の「王子」のキャラが一番好きかも(へたれっぽくて)。
          あと、丁寧な日本語を話す、黒人なのに、走りがそんなに速くない留学生の「ムサ」(『はじめの一歩』のオズマみたいな…)も好き。

          悲しいかな、双子と言えば「ザ・たっち」しか浮かばないので、ジョージとジョータはあの二人で想像してしまった(読み終わってから、斉藤家の双子もいたことを思い出したけど、遅かった…)。
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            『紗央里ちゃんの家』矢部嵩

            紗央里ちゃんの家
            紗央里ちゃんの家
            矢部 嵩 2006年 角川書店 P.174
            ★★★★
            何故、誰も見つからないのだろう。
            殺されていないのだろうか。
            そういうような物騒な事は、なかったのだろうか。
            じゃあ何故、叔母さんも叔父さんもおじいちゃんも、あんなに変なのだろう。
            なんでみんなこんなにいつもと違うのだろう。

            毎年、夏休みを利用して、家族四人で泊まりに行くことになっている叔母の家。
            だけど今年は僕と父親の二人だけで行くことになった。

            叔母と叔父と、おじいちゃんと、僕より三つ年上のいとこの紗央里ちゃんの住む家には、僕が好きだったおばあちゃんもいたけど、どうやら叔母の話では、風邪をこじらせて死んでしまったらしい。

            強い雨の降りしきる中、車で7時間かけて辿り着いた叔母の家で、出迎えてくれた叔母のエプロンには、血がべっとりついていて、下の模様も見えないほどだ。
            「魚を…」という叔母の言葉を訝しがりながらも、出された夕食、生まれて初めて食べる「カップ焼きそば」の美味しさに舌鼓を打つ僕。

            夕食後に、叔父と一緒にお風呂に入り、先に上がった僕が、洗濯機の下の狭い隙間で見つけたものは、人間の指のようで…。

            僕たちと入れ違いに家を出てしまったという、紗央里ちゃんのものなのか、それとも死んだと聞かされたものの、実感の湧かない、おばあちゃんのものなのか…。

            そして、僕は家の中のあらゆる場所を探し始め…。

            「この家は、いつもと違う。
            驚愕のクライマックスまで、ひたひたと迫りくる恐怖。
            彗星のごとく現れた新鋭が、恐るべき家族の姿を描ききる。
            第13回 日本ホラー小説大賞 長編賞受賞作!」だ、そう。


            しゅ、しゅーる…。
            「僕」が次々に発見していくものは、グロテスクな物のはずなのに、何やらもう単なる「物」でしかなくて。
            読んでいて、御茶漬海苔さんの漫画『惨劇館』を彷彿させるような(結構、好きなので)…。

            最後の方の父親の台詞を聞いて、「子供より、親が大事と思いたい」という、太宰治の『桜桃』の一文を思い出してしまった…。何だか今の世の中を象徴しているような…(考えすぎかな)。

            何よりも、受験勉強のために一緒に来れなかった「僕」の姉との電話でのやりとりが、すごく面白くて、ツボに嵌ってしまった。
            こういうお姉さん、とても好き(これは『まことちゃん』の姉のようかな…)。
            しかも、親戚についての辛辣な意見は、なかなか的を射ているなと感心してしまった。

            異常な大人たち(警察官でさえも…)ばっかり出てくる中で、「僕」の優しい気持ち(「今こうしている瞬間にも人が死んでいるように、あの時そうしていた瞬間に僕の親しいおばあちゃんがこの国のどこにもいなくなってしまったのだ…」のくだり…。)と、電話の向こうの、姉の冷静さが際立つと言うか。

            「だって帰るしかないじゃない。…子供だし。」の台詞は、何か痛々しいというか、虐待とかされても逃げられないでいるのって、きっと「子供だから」と諦めるしかないんだろうな…という現実に胸が痛くなったというか…「家族」の怖さがよく描かれているなと(これも、考えすぎかな)。

            これ書いた矢部さん、19歳だか20歳だかの現役の大学生らしいけど、これからに、ものすごく期待してしまう(最初、一瞬ナイナイの矢部っちかと思ったんだけど…)。
            惜しくも「大賞」には選ばれなかった(「長編賞」なので)そうだけど、いつか何かやらかしてくれそうな…(ただ単に、私がホラー好きだから、そう思うだけかな)。

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              『逃亡くそたわけ』絲山秋子

              逃亡くそたわけ
              逃亡くそたわけ
              絲山秋子 2005年 中央公論新社 P.168
              ★★★★★
              しゃがんで線香花火を見つめながら、明日はどうなるんだろう、と思った。
              わからん。
              これからどうなるんだろう。
              わからん。
              花火が全部終わると、紛れていたさびしさが一斉に襲いかかった。

              「亜麻布二十エレは上衣一着に値する。」
              頭の中で何度も何度も繰り返される、知らない誰かの低い声。
              その意味不明な言葉に導かれるように「そうだ死んでみよう。」と、軽い気持ちで、貯めておいた薬を一気に飲み下し、気がつけば、病院のベッドに両手両足を括りつけられていた、花ちゃん、21歳の夏。

              そして「このままでは廃人になってしまう」と、無理矢理入院させられたプリズンのような病院を抜け出すことを思いつき、たまたま中庭で猫をかまっていた「なごやん」に声をかけ、一緒に脱走することに。

              すぐに病院に戻りたがる、軽い鬱病の「なごやん」を宥めすかして、銀行で金を下ろさせ、「なごやん」の父親のお下がりだという、おんぼろ車に乗り込んで、二人はひたすら東へ、南へと走り続け、逃げ続け…。

              「――おんぼろ車で九州の田舎町を駆け抜けるふたりの前にひろがった暑い夏の物語。
              逃げるのに理由なんていらない。川端康成文学賞作家、絲山秋子初の書き下ろし長編小説」
              だ、そう。


              一体何から逃げてるんだか(追っ手とか来ないし)…。
              なので、緊迫感はあんまりないし、ただひたすら、冷房の効かなくなったムシムシした車で、悪路をドライブしている花ちゃんと「なごやん」の、博多弁と標準語での面白トークバトルが繰り広げられるというか、ぐるりグルメ旅というか…。

              躁鬱病のことは良くは知らなかったけど、私も「なごやん」と同じく、「躁の人は死なないでしょ」と、単純に思ってた。そうじゃないのね…(作者の経験に基づいてそうだから、かなり説得力が…)。

              結構辛そうな話なんだけど、博多弁と茶髪で気弱な「なごやん」のなごみキャラのせいで、花ちゃんが一人取り残された場面も、「なごやん」が川で洗濯していた場面も…面白くなりすぎ。
              男なのに「きゃあああ」って……、なんか可愛いし。

              この先二人がどうなるのか…最後の方の花ちゃんの台詞「ゆたー」の言葉に、安心したというか(こっちで言う「ほっこり」のようなもんなのかな…)そんな気持ちになれたのなら…それで、いいのかな。

              でも、花ちゃん、脱いだぱんつを、そこに捨てるなよ…とか、いくら何もない田圃の真ん中でも、それはしちゃいかんやろう…とか、あれやこれやの悪行の数々…。
              毅君とやらが去ったのは、その辺にも問題があったのでは…と思えてしまったんだけど。

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                『こいわらい』松宮宏

                こいわらい
                こいわらい
                松宮 宏 2006年 マガジンハウス P.284
                ★★★★★
                たしかに私の『こいわらい』は必勝の剣で、私の棒は不思議な存在だ。棒は私のからだと一体で、そのへんのやくざぐらいなら、一発でぶっ倒せるほどのスピードとパワーを生む。……
                 しかし、この平成の世の中になって、それが必然的に蘇ったのか、言葉を替えて言うなら、歴史が私を必要としたのかというようなところまで思いを巡らせると、
                 ―それがどうした―
                と、むなしさだけが残るのだ。

                門から玄関まで100メートル近くあるという、西陣の平和なお屋敷暮らしから一転して、両親を事故で失い、全財産を奪われ、住み慣れた屋敷を離れ、小さな弟と二人、商店街の長屋に移り住むことになった二十歳の女子大生、和邇メグル。

                生活のために、大学の学生課の掲示板で、バイト先を探していたメグルが食いついたのは「用心棒求む 月給五十万円 京都宮内庁」の求人票。
                早速電話し、面接に向かった先は、石塀小路にある一軒の「お茶屋」。

                そこで待っていたのは、とんでもない商才の持ち主のぶっさいくなおっさん、京都宮内庁会長の田上源助。

                メグルに与えられた仕事は、職業柄常に大金を持ち歩き、「お茶屋」で派手に遊び歩く、やくざにしょうもないちょっかいを出しては、どつきまわされ、現金を奪われる会長、田上を守ること。

                そうして始めた用心棒稼業で、メグルは会長に近づく「やから」達を、得意の剣術「こいわらい」で、顎を砕き、次から次へとやっつけていくのだが、会長の注文は次第にエスカレートしていき…。

                「女子大生にして美人剣士メグルの大活劇。謎の剣術、見えない敵、鍵を握る人間の死…
                現代京都を舞台に、圧倒的な筆致で描く。超絶エンタテイメント・ミステリー。
                大型新人作家誕生!」だ、そう。


                京都が舞台ということもあり、タイトルに惹かれて読んでみたけど、微妙。
                実際に読むまでは「濃い笑い」だと(爆笑の連続かと…)思っていたので、吉本系とか、そっち方面の話かと…。

                東山三条にある「古川町商店街」とか河原町今出川の「出町柳商店街」とか、出てくるマイナーな場所は、馴染みの場所なので「おおっ」と嬉しくなってしまったけど…(そこからそこまでチャリで行くの?)とか、突っ込みたくなったりして。

                結末へと向かう十九章(226ページ)当たりから、やっと面白くなってきて(そこまでが、やたらと長く感じてしまった)、そこからの展開には、すごく驚かされたし、和邇家に伝わる秘術の数々の意味もようやく分かったというか。

                子供の頃は、ヒーロー物や活劇物が大好きだったけど(仮面の忍者『赤影』とか…)、最近は慣れ親しんでなかったから、イマイチ話に入り込めなかったかな。

                どうせなら、この「秘術」、ちんけなやくざとかに使うのではなく、本物の悪人をばったばったとなぎ倒してくれたなら、もっともっと楽しめたかも。

                とは言え、Amazonでの評価がすごく高いので、こういうのが好きな人には、すごく受けるのか…と。

                0

                  『水銀虫』朱川湊人

                  水銀虫
                  水銀虫
                  朱川 湊人 2006年 集英社 P.261
                  ★★★★★
                   昔、人は生きている間に犯した罪に応じて、死後、さまざまな場所へ送られるのだと教えてくれたのは母だったろうか。
                   人を殺した者、人を傷つけた者、嘘をついた者、他人を陥れた者……彼らの魂が平穏な世界に行けるはずはなく、いわゆる狠蝋瓩僕遒舛董永遠に罰を受け続けねばならない。自ら命を捨てることも、大きな大罪のひとつだ。

                  預金を全て下ろし、会社を無断で欠勤し(これから、どうするか)と考えていた男は、狭苦しいコーヒーショップで一人の商売女らしき女と出会い、誘われるままに店を出て…小さな虫が、自分の動脈の内側を走り回っているような感覚に陥る『枯葉の日』

                  突然の雨に降られ、アパートの軒先で雨宿りをしていた少年は、アパートの住人に呼ばれるがままに、部屋に上がらせてもらい暖を取り、思いもよらないもてなしを受け…何十、何百匹もの虫が頭の中で走り回っているような気がするという男に出会う『しぐれの日』

                  「死神のような女」をナイフで刺してしまった高校生の自白…その時、何千何万もの小さな虫が、脳の中で一斉に蠢きだしたような気がした『はだれの日』

                  不幸な事故で、孫を失ったばかりの友人の家に招かれた初老の女は、請われるままに可愛がっている孫を連れて訪ねて行き…足の速い甲虫が、神経の上をチョコチョコと走っているみたいな、それまで感じたことのない奇妙な気分に陥る『虎落の日』

                  プロポーズを目前に控え、幸せの絶頂にあった「勝ち組」の女は、毎年現れる「クリスマスの怪物」を思い出し…腕から這い上がってきた小さな虫が、首筋にまで届くのを感じ、皮膚を掻き破りたい衝動に駆られる『薄氷の日』

                  兄の車から持ち出したものを手に、山奥の秘密基地に向かう小学生たちは、途中で出会いたくないクラスメイトに出会ってしまい、仕方なく行動を共にし…足の速い甲虫のようなものが耳の穴から飛び込んで、頭の中心めがけて走っているような気になる『微熱の日』

                  大学の図書館に勤める男は、病気の妻をもてあまし…首筋を這う小さな虫のようなものを摘み上げ…『病猫の日』の7編から成る短編集。

                  「誰もが抱える水銀虫。彼らは人の心に寄生し、自殺へと導くのだ。読むほどに憂鬱になる、慰安と戦慄の七日間。
                  ホラー界の新鋭による罪と罰。」だ、そう。


                  人の魂の中に入り込んで、這いずり回り、やがて無数の穴をあけてしまうという架空の虫、「水銀虫」を想像するだけでも、思わず身体のあちこちが痒くなってしまう。

                  この虫は、人間の良心を食らうのか、それとも良心の顕れなのか…。
                  いずれにしても、虫嫌いの人なら発狂してしまいそうな(そこまでではないかな…)、おぞましさ。
                  ぱっと見、表紙も虫の塊なのかと、虫が平気な私でも、多少びびりながら手にしたけど。

                  それぞれにつけられたタイトルの「〜の日」という言葉の意味も、知らない言葉が多くて、意味を知って感心してしまった(感心するだけで、すぐ忘れてしまうんだけど…)。

                  読んでいて引き込まれたのは、高校生の男の子が、自分の犯す罪の重さを十分に認識しながらも、そうせざるを得なかったという『はだれの日』。

                  一番気持ち悪かったのは、自分の子供より可愛い存在の「孫」のために、ここまでしてしまうのか…と思った『虎落の日』。

                  好きなのは、高飛車女の『薄氷の日』。
                  そうなってくれないと、いたたまれないというか…、こうなればいいという願望かな。

                  昨日は、しばらく餃子が食べられなくなると思ったけど、今日はハンバーグか…ミンチ系は、いろいろと混ざっててもわからなそうで…。
                  0

                    『はずれ姫』長谷川純子

                    はずれ姫
                    はずれ姫
                    長谷川 純子 2006年 新潮社 P.194
                    ★★★★★
                    (どうして俺は何をしても、うまくいかないんだ)
                    本当は、誰でもいいから憤懣をぶつけて、痛めつけてやりたかった。上手い事生きてる世間の奴なら誰でもいい。これまで散々、見知らぬ奴から浴びせられ続けて、体内に入り込んだ醜い泥が暴れだした。
                    (大人しい、弱い人間ばかり、いじめられるんだ)
                    今まで感じた事のない、醜い憎しみが生まれ、俺は苦しんだ。しかし、どうにも出来ない辛い事や、理不尽な思いで煮えたぎっても、結局、大人しく俯いてやり過ごすのに慣れていた。〜『サリーの恵み』より〜

                    「自分の名なんか忘れちゃったわ」というマキが、水商売を転々とし、最後に勤めたスナックを訳ありで辞め、逃げるように辿り着いたのは、住み込みの従業員募集の求人広告の貼り付けられた中華料理店「ぱんだ餃子」。
                    来る日も来る日も一日中、店主や中国人の従業員たちにこきつかわれ、休む間もなく、餃子作りをしていたマキが、餃子の肉餡に練りこんだのは…『マキの包むもの』

                    家族で出かけた祭りの帰り、妻や娘とはぐれ、普段入ったことのない路地に迷い込んだ先にあった小さな店で、男が出会ったのは、完璧な美貌の中年女。
                    冴えない中年男がついつい騙されそうな言葉をさらりと言う女の、大人の優しさと魅力に取り込まれ、ついつい妻と女を比べてしまい、足繁く店に通ううち…『はずれ姫』

                    現実から切り離された世界の入り口のような、路地裏の小さな店で一日中忙しく働く、男を知らない「名無しのナッちゃん」は、いつか男とそうなることを夢想し、それが夢なのか現実なのかわからない、頭の中はいつまでも少女のままの、ちょっとずれた中年女。
                    そんなナッちゃんが、生まれて初めて外の世界に足を踏み出し…『ナッちゃんの豆腐』

                    大学を卒業してからひきこもり生活を送っていた三十過ぎの童貞の男は、ある日家から追い払われ、初めて風俗の店へ足を踏み入れた。
                    さんざんな結果に終わり、家には帰れないと途方に暮れる男を手招きするのは、昔バイト先で仲良くしていた女の子…の、はずがないと思いつつ近づくと、意外にも若い女の子から、「遊びましょう」と誘われて…『蛍を飲む』

                    ある過ちを犯し、親から入院か自立かの選択を迫られたコンビニデブのひきこもり男は、母の差し出した「ニート支援コロニー」の案内に飛びつき、山奥でのボランティア生活を送ることに。
                    荒れ放題の田畑を耕す男の脳裏をよぎるのは、入院中に出会った女<昇天サリー>のことばかり…『サリーの恵み』

                    「わたし、いつだって、はずれを引くのは得意だもん。
                    全身から発散される<大切にされないオーラ>がいけないのか。流されやすくて無防備なタチがいけないのか、愛も恋も知らない夜をくり返し、今まで男に大切にされたためしはない。
                    彼女の恋はいつもひどく悲しい目にあって、最後には心とか金とか信頼とか、色んなモノを失って終わる――。
                    はずれくじ人生を歩む女と行き場のない男の、哀しく切ない恋5つ。」ううっ、痛い。


                    <大切にされないオーラ>という言葉に敏感に反応してしまった(私も発してそうで…)。
                    哀しいというよりも、恐ろしい…かも。

                    結構身につまされる話が多くて…「はずれ姫」とはうまく言ったもので(まあ、もう「姫」でもないけど)。

                    『ナッちゃんの豆腐』は、哀しすぎるし、何だか「マッチ売りの少女」を思い浮かべてしまった。

                    中年の女の人が主人公の話ばかりなのかと思ってたら、意外と「いかにももてない男」の話も出てきたりなんかして、それがすごく面白い。
                    『間宮兄弟』の悪い人版?と一瞬思ったけど…。

                    コンビニデブって…「饅頭の皮みたいなぶ厚い肉に輪郭が埋もれた俺の顔」って…、想像しやすいなぁ。

                    落ち込んでる時に読むと、どよーんとなってしまいそうな話が多かった…。
                    しばらくは餃子を食べたくなってしまったというか…。
                    0

                      『パパとムスメの7日間』五十嵐貴久

                      パパとムスメの7日間
                      パパとムスメの7日間
                      五十嵐 貴久 2006年 朝日新聞社 P.368
                      ★★★★
                       会社って深いな、とあたしは感心してた。そうだよね、誰だって責任なんか取りたくない。あたしだって、ゼッタイ嫌だ。メンドくさいこと大嫌いだもん。
                       あれ? だけど、それって女子高生のリクツだよね。中学とか高校はそれで済むかもしんないけど、会社も同じなの? 会社の都合ばかり言って、客とかはどうでもいいわけ?

                      高校受験が終わってから、会話のなくなってしまった47歳のパパと16歳の今どきの高校生のムスメ、小梅。

                      小梅からすれば、ただ「パパと話してもしょうがない。てゆうか、うざい。」だけなのだが、ムスメに負い目を感じるパパは、「年頃の娘なんて、こんなもんだ」と分かってはいても、何とかムスメとの関係を修復したいと考えている。

                      そんなパパと小梅がある時事故に巻き込まれ、運び込まれた病院のベッドで目覚めると、二人の人格が入れ替わっていて…。

                      取り敢えず、その週末にそれぞれ大事な用事を抱えていたパパと小梅は、二人で話し合った結果、誰にも相談せず、医者にも内緒にして、元に戻るまで、パパが小梅として、小梅がパパとして、それぞれの生活を送ることにした。

                      そして、ずっと憧れていた先輩との、やっとの思いでこぎつけた初デートを目前に控えた小梅は、嫌がるパパを説得(半ば脅迫)し、しぶしぶ了解させ、デートの待ち合わせ場所へと向かわせる。

                      16歳で男と交際なんて…と面白くないパパは、悪魔のような(?)計画を胸に秘め、一人ほくそえみながら、先輩とのデートに向かうのだが…。

                      『ある日突然、「大キライなパパ」と「最愛の娘」の人格が入れ替わってしまったら?
                      ドキドキの青春あり、ハラハラのサラリーマン人生あり。
                      ハートウォーミングな家族愛を描いた
                      笑いと涙のノンストップ・エンターテイメント長編!』だ、そう。


                      『RIKA』の恐ろしいイメージが強烈に残っていた(3回も読んだからかな)ので、こんなにコメディタッチなのも書かれるのか…と、正直驚いた。何だか、荻原さんちっくでもあり…。

                      パパの仕事の内容も、なるほどこれならムスメが代わりに会社に行っても、無理なくこなせるのか…と、設定に感心し、こうなるんだろうなぁと、大体の予想はつくけど、小梅ちゃんの今どき高校生のキャラが良かった(ケンタ先輩、私もすごく好きになりそうなタイプ)ので、最後まですごく面白かった。

                      パパとムスメが、同じ場所でそれぞれに考えていることが、どちらもリアルで、パパはともかく、小梅ちゃんの気持ち、すごく良く書けてるなぁと。

                      ケンタ先輩と、パパのデートシーンは本当に笑えてしまうし、もしや、パパがケンタ先輩に惚れてしまうのでは…と心配したけど。

                      「見たら死ぬ」という小梅の殺気にびびりつつ、目をつぶりながら着替えたり、風呂に入ったり、ダイエットに付き合ったり、試験勉強したり、何てムスメに忠実で、優しいパパなんだ…と、感動してしまう。

                      リカを彷彿させるような女が出てくるのも、なるほどなぁと…。

                      これ読んで私が真っ先に思い出すのは映画の『転校生』だけど、あれは入れ替わった後の方が、女の子(小林聡美さん)が女の子っぽく、男の子(尾美としのりさん)が男らしくなってたのがやけに印象に残ってる(24年ぶりにリメイクされるみたいだけど、監督が一緒ってすごいかも)。

                      この本も、映像化されても面白そう。
                      キャスティングを勝手に考えてるだけでも、わくわくしてしまう。
                      ちなみに私のイメージなら、パパは高橋克実さん、ムスメは福田沙紀ちゃん、ケンタ先輩は…年齢が合わないけど、佐藤隆太さんしか考えられない(若い男の子が全く浮かんでこないので)。
                      0


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