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    『ちぇりあい−ちぇりーぼーいあいでんてぃてぃ』戸梶圭太

    ちぇりあい―ちぇりーぼーいあいでんてぃてぃ
    ちぇりあい―ちぇりーぼーいあいでんてぃてぃ
    戸梶 圭太 2006年 祥伝社 P.258
    ★★★★★
    みんなが俺たちを人類の救世主だとたたえた。デッチ上げの電車男と違って本物はキモいとバカにされていた俺たちがヒーローになった。女の子たちが作り物でない本物の笑顔で迎えてくれた。……
    あの日々はなんだったんだ! あのキラキラと輝いて希望に満ちて、皆が笑顔でいられたあの日々は、幻だったっていうのか!

    東京駿河医科大学の研究チームが極秘で集めているという謎の「脳内物質」。
    提供者には、高額の謝礼が支払われるというネット上の噂を聞きつけ、親からは「ありがちなひきこもりの肥満ガキおやじ」と罵られ、勘当を言い渡され、その日食べるのにも困り果てていた三十七歳、独身のひきこもり男、大岩は、提供者になることを決心した。

    脳内物質の抽出過程では、スタッフの虐めによって泣きたくなるような屈辱を味わう大岩。

    提供者が屈辱を受ければ受けるほど、大量に抽出できる、成人童貞男子の脳からしか抽出されない謎の物質の発見により、人類の平均寿命を平均220歳まで延ばすことも可能になるというのだが…。

    それぞれに「カメヤマダジトロエキシニン」「ナルタキジロエキシニン」と名付け、研究を進める宿敵のライバル、二人の変人教授、亀山田と鳴滝は、貴重な成人童貞男子を奪い合い、製薬会社をバックにつけ、金に糸目をつけない壮絶なバトルは、とどまるところを知らず…。

    「究極の若返り薬をめぐり、アキバ系オタク童貞たちを襲う天国と地獄…戸梶圭太が全国の童貞(素人童貞含む)に鉄槌を下す、残酷ファンタジー!」だ、そうな。
    確かに残酷かも…。


    「童貞」でいることだけで、月に一度は必ず抽出される物質によって、働かなくても、大金が手に入れられ、ついには、将来なりたい職業=童貞、という高校生まで現われる始末、というのに妙に感心してしまった。

    ライバルの教授から送り込まれた「おばさん軍団」によって、童貞を奪われて茫然自失って…。
    まあ、その奪われ方には同情するけど…。

    確かに、絶対に確実に若返れる、若返りの化粧品なんてものが、実際売り出されたら、この値段ならきっと馬鹿みたいに売れてしまいそうな。

    最後の方の展開には、ちょっとついて行けないとこもあったけど、途中までは本当に面白かった。
    まさか、こんな話になるとは…装丁からは想像もできん。

    何より、大岩の頭の中に流れるオリジナルソング「生きててすいません〜 生きててすいません〜 ああ、ああ、何の役にも立ちません〜」のフレーズが、頭にこびりついてしまった。
    CDになれば、一回くらいは聞きたいような…。
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      『対岸の彼女』角田光代

      対岸の彼女
      対岸の彼女
      角田 光代 2004年 文藝春秋 P.288
      ★★★★★
      大人になれば、自分で何かを選べるの?
      女の人を区別するのは女の人だ。既婚と未婚、働く女と家事をする女、子のいる女といない女。立場が違うということは、ときに女同士を決裂させる。

      母親たちのしがらみを避け、公園を転々とすること。
      娘が自分そっくりに一人ぼっちで遊んでいること。
      自分と同年代の女性達が買うブラウスの相場がわからないこと。
      働きはじめれば、これら全てのことが解決できるのではないか、と考え、仕事を探し始めた小夜子。

      幾つもの会社の面接を落ち、やっと採用された旅行会社の、試験的に立ち上げたばかりのハウス・クリーニング部門を任されることになった小夜子は、厳しい研修期間中、仕方なく娘を預かってもらうことになった義母や、夫の嫌味にも耐えつつ、汚れのこびり付いた他人の家を綺麗に磨きあげ、研修が終わってからも顧客の獲得に懸命に働き、周囲からも認められる存在となった。

      旅行会社の女社長、サバサバした性格の葵は、偶然同じ大学の出身で、同い年ということもあり、話もはずみ、何かと小夜子を気に掛けてくれる。

      初めて新規の契約が取れた記念すべき日、小夜子は葵に誘われるままに、熱海行きの電車に乗った。
      けれど、ふと、現実に戻された小夜子は、葵を残して、一人帰ることに…。

      そして、会社の同僚たちから、葵の「暗い過去」を聞かされた小夜子は、葵が、高校生の頃、興味を惹かれた「心中事件」の主人公だったことを知り…。

      小夜子の視点と、葵の過去の話が交互に描かれ「立場の違う二人」が、他者との関わりに一筋の光を見つけるまで、を描いた友情物語。
      第132回 直木賞受賞作。


      何で、今まで読まなかったんだろう…と後悔した。
      多分、同年代の女の人なら、こういった「友達関係」で、一度は壁にぶち当たったことがあるような…。

      お互いに、持っているものと、持っていないものが、あまりに違いすぎると、友達にはなり難いと思う。
      熱海の海岸での、二人の決裂のシーンは圧巻で、どちらの言うことも、すごく良く分かる気がした。

      葵の高校時代の友達「ナナコ」が、ものすごく愛しく思えた。

      読み終わってからも、しばし余韻に浸ってしまうほど、色んな言葉が心に残る。

      高校生の頃、友達と熱海のペンションに泊まりに行ったこと、思い出した(何かすごくおしゃれな気がして「ペンション」と名がつけば、どこでも良かった頃のこと)。

      立場が違ってしまっても、一度「壁」をぶち破ってからの、会えば、相も変わらず馬鹿な話ができる友達って、有難いなと、つくづく思えた。

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        『インディゴの夜』加藤実秋

        インディゴの夜
        インディゴの夜
        加藤 実秋 2005年 東京創元社 P.275
        ★★★★★
        アロマキャンドルの光に最高の酒とクラブミュージック、そして、おしゃれで面白い男の子たち。《club indigo》で一晩すごせば、世の中の大抵の厄介ごとは何とかなる。どうってことないって思えるはず。

        渋谷駅から徒歩五分、古びたビルの二階にある《club indigo》。
        「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」という、女性ライター兼オーナー、高原晶のちょっとした思いつきから生まれた、ホストクラブらしくない、ホストクラブ。

        平日はライターとしての仕事があるため、ホスト達の管理や店の経営は全て、謎に包まれた「王道ホスト」優夜に任せ、月に一度の経営会議でだけ、もう一人のオーナー塩谷と、晶、優夜の三人は顔を揃える。

        そしてその、月に一度の経営会議の夜、店がハネた後、最初の事件は起こった。

        最近《club indigo》で派手に遊んでいた女、カリスマ編集者のまどかが、何者かに絞殺された。
        第一発見者は、まどかに貢がせていた《club indigo》のナンバーワン・ホストのTKO。
        TKOは、犯人らしき女が逃げていくのを確かに見たという。
        真っ先に疑われることになったTKOの無実をはらすため、《club indigo》の面々は、彼ら独自のネットワークをフルに活かし、晶達の指揮のもと、真犯人を探し始めた…『インディゴの夜』

        成り行きで、ホストのジョン太が、知り合いから預かったという小生意気な小学生、祐梨亜の面倒を見ることになった晶。
        祐梨亜に振り回され、連れて行かれた新宿で、因縁の、ホストクラブ《エルドラド》のナンバーワン・ホスト、空也と遭遇し、空也に興味を示す祐梨亜。
        その夜、《club indigo》のホスト達からお金をかき集め、祐梨亜は姿を消してしまった。
        どうやら一人で空也の店に行こうとしたらしいのだが……『原色の娘』

        晶たちの行きつけの店の、おかまのなぎさママから呼び出され、ママの部活の先輩だという男から、娘をナンパした男を探して出してほしいと頼まれた晶と塩谷。
        ナンパした男は、娘の「ある写真」をネタに、強請を働こうとしているのだという。
        娘の話から、独特のナンパの誘い文句を聞いて、犯人がわかったという《club indigo》のホスト、犬マンは、早速ナンパ師達を全員集合させ、男の居場所を突き止めるのだが、アパートの部屋はぐちゃぐちゃに荒らされていて…『センター街NPボーイズ』

        《club indigo》を不義理に辞めた、元ホストのBINGOから、優夜宛てに、助けを求める電話がかかってきた。
        その日の帰り、しばらく姿を消していたBINGOの客、元《club indigo》の常連客だったハルカが、変わり果てた姿で、店の前に現われ、一台の車とともに、また忽然と姿を消した。
        調べてみると、ハルカと同時期に、突然姿を消したキャバ嬢が何人もいるという。
        BINGOが最近まで働いていたという、ホストクラブ《クロノス》を調べるために、キャバ嬢に化け、客として潜入する晶と、なぎさママ。
        表では《club indigo》のホスト達が待機する中、晶は、まんまと罠にひっかかり、店の奥へと連れて行かれ…『夜を駆る者』
        の4編から成る連作短編集。

        「第十回創元推理短編賞受賞の表題作がシリーズ化。スタイリッシュでウイットあふれる新世代探偵小説、ここに登場」だ、そうです。


        ここに出てくる《club indigo》のホストたちは、なんとお行儀の良い子たちなんだろうと、感心してしまった。
        これも全て、優夜さんの厳しい指導の賜物なのか…。

        経歴も、年齢も、本名すら、塩谷さん以外は誰も知らないという、謎の大物、優夜さんのことをもっと知りたいと思ってしまった。

        なので、続編の『チョコレートビースト』も、読んでみなくては…。

        に、しても、相手によって変えてるらしい、晶の着メロの選曲が、すっかりツボにはまってしまった…。
        「セクシー・ナイト」って、「ジェームス・ディーンのように」って…嬉しすぎ。
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          『ぼくだけの☆アイドル』新堂冬樹

          ぼくだけの☆アイドル
          ぼくだけの☆アイドル
          新堂 冬樹 2006年 光文社 P.239
          ★★★★★
          みーちゅんを知って、三年が経つ。
          その千九十五日間は、僕にとって、寝ても覚めても、御飯を食べているときでも、カブトムシの糞尿を掃除しているときでも、俊哉につき合って仕方なく女の子をナンパしているときでも、安西にいわれのない理由で説教を食らっているときでも、いつだって、みーちゅん一色の日々だった。

          下膨れの頬と垂れた眉毛
          ぽっちゃりとした胸と甲高い声
          生白い肌やぽっこり突き出たお腹に毛深い脛
          という外見の持ち主、「あきおくん」は昆虫ショップ「ムシムシワールド」で働く、夢見がちな27歳(ついでにマザコン)。

          有楽町の銀座ブックボックスで初めて出会い、一目ぼれした「みーちゅん」こと美千との一ヶ月ぶりのデートに、いそいそと今日も勝負服を着て、彼女の待つ新宿の文左衛門書店へと急ぐ…。

          「めざせ、第二の『電車男』!絶対に無理だとわかっていても、アイドルに真剣に想いをよせたって、いいじゃない。ファンタジック・ニート青春小説。」だ、そうな。


          連載中は『あきおくんのユカイな日々』というタイトルだったのが、単行本化にあたり改題されたそうだけど、もとのタイトルの方がしっくりくるような…。

          まさしく「あきおくん」の日々の生活、職場での出来事や、キャバクラに行ったときの話や、アイドルのコンサートに行ったときのことや、ライバルとのバトルやら、恋の話や、あれやこれやの面白話(まあ、本人にとっては、大概悲惨な結末なんだけど)。

          最後の展開は、ちょっとびっくりしてしまった…。

          「あきおくん」は、これでも、女性からラブレターをもらったり、ナンパをしたり(それもくどいけど)、デートに誘われたり(まあそうなるように仕組んだというか…)と、なかなかイケてる(この言葉が「あきおくん」は好きらしい…)。

          アイドルのおっかけを見て「ファンというものは概して思い込みの激しい生き物であり、妄想と現実の区別がつかない輩がいる」と、他人のことは、冷静に分析できるのに…。

          まわりに「おたく」な知り合いがいないから良く分からないけど、多分こういう人達なんだろうなぁ…という感じはする。

          そう言えば新堂さん、昆虫のDVDとか出してたなぁ…と思いつつ、カブトムシとかクワガタに、そんなたくさんの種類がいて、種類によって性格まで違うのかと感心した。
          本当に好きなのね。
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            『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

            葉桜の季節に君を想うということ
            葉桜の季節に君を想うということ
            歌野 晶午 2003年 文藝春秋 P.411
            ★★★★
            どうして俺が特別であってはいけないんだ。誰が決めた。特別か特別でないかは生きてみないとわからないじゃないか。優秀な人間を見て、自分は敵わないと思ったら、その時点でもう負けだ。自分の可能性を信じる人間だけが、その可能性を現実化できる資格を持つ。

            いつか魂の震えるような女と巡り会い、プラトニックな関係の、本物の恋愛を望む一方で、テレクラや出会い系や合コンで知り合った女との肉欲に溺れる成瀬。
            その肉体を保持するためには、忙しい仕事の合間を縫ってのジム通いで、身体を鍛えることも怠らない。

            ある日のジムの帰り道、たまたま電車を使うことになった成瀬は、ホームで一人の女性を助けたことがきっかけで、彼女と再び会う約束をすることに…。

            そして彼女とのデートの約束の日、ジムで知り合った、高校生のキヨシに呼び出され、キヨシの片思いの相手、久高愛子から「おじいさんの轢き逃げ事件」の真相を調べて欲しいと頼まれる。

            第三者によって多額の保険金をかけられていた資産家であった久高隆一郎は、生前「蓬莱倶楽部」という会社の悪徳商法にひっかかり、一組100万円もする布団や、磁気ネックレスや薬や水などを買わされていたのだという。

            過去に探偵事務所で働いたこともあり「何でもやってやろう屋」を自称していた成瀬は、「よそでは頼めない」という、愛子の頼みを引き受け「蓬莱倶楽部」と轢き逃げ事件との関連を調べることに…。

            「蓬莱倶楽部」へ潜入し、捜索する一方、どんどん惹かれていく彼女との関係に苦悩する成瀬。

            そして「轢き逃げ事件」の真相に迫る時、成瀬自身にも危機が訪れる…。

            2004年
            「このミステリーがすごい!」第1位
            「本格ミステリ・ベスト10」第1位
            「週間文春ミステリーベスト10」第2位

            と、何だか某通販化粧品のCMのような錚々たる帯の謳い文句…。


            「面白い」とは聞いていたけど、予想以上に面白かった。
            読み始めは、何だかナルシストっぽい男が主人公の、ただのハードボイルドなのかと思ってしまったけど。

            何から何まで良く出来ていて、ミステリーとしても、すごいんだろうけど、何だか元気が出る本だと思った。
            読み終わった後に、もう一度ところどころ読み返すと、何だか余計に。
            成瀬と彼女の会話も、すごく面白いなぁと…。

            読み終わってから、巻末の「補遺」をじっくり読むと、それぞれの意味がすごく良く出来ていて、感心してしまった。

            に、してもここに出てくる事件は生々しくて、本当に怖くなってしまう。
            こういうの、発覚しないだけで、実際にあちこちでありそうだし…。

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              『同級生』東野圭吾


              同級生
              東野 圭吾 1996年 講談社文庫 P.369
              ★★★★★
              俺の行動は、由希子の恋人としてふさわしいものであっただろうか。もしもあの世というものがあって、そこから由希子が見ていたとしたら、少しは満足してくれただろうか。そして俺が受けた傷は、俺の犯した罪から考えて妥当なものだっただろうか。
              いや、まだまだだなと俺は思った。罪の償いにはほど遠い。

              同級生の死を、登校して初めて知った「俺」。
              死んだのは、野球部のマネージャーの由希子。
              交通事故だったという。
              彼女の他に、その場にはもう一人女性がいたというのだが、事故の後、女は姿を消していた。

              由希子が事故の日に向かった先が、産婦人科の病院だったという噂が学校に広まり、「俺」は、彼女のお腹の子の父親が自分であると名乗り出ることにした。

              そして「俺」は、由希子の死に関わっていたと思われる独身の女教師を、授業中、クラスの皆を証人にして糾弾することに…。

              彼女を愛していたとしたら、そういう行動を取るのだろうと。
              そうすることが「愛されている」と信じたまま、逝ってしまった彼女への償いになるのかもしれないと。

              そして、ある朝、教室内でその女教師の死体が発見され、刑事はクラスメイト達の証言から、最も動機のある「俺」を真っ先に疑っているようなのだが…。

              「乱歩賞の名作『放課後』を遥かに凌ぐ学園推理」と、帯にあり、あとがきには「本格学園推理の二作目となる本作は、あまり苦労したのであとがきを書く気になった」と、書いてあった。苦労された甲斐があったのかな。


              教師嫌いを公言されてる東野さんらしい作品で、確かに、生活指導の先生とか、潔癖症で、偏執狂そうな…化粧もしてなくて、服装も地味で…そんなタイプの先生うちの学校にもいたなぁ…と思ってしまった。
              (「あとがき」の先生に対する批判は痛烈だけど、私もその半分ぐらいは同じように考えてるかも。)

              「序章」がどう生きてくるのかと思ったら…なるほど、そんなに重かったのか。

              「俺」が由希子を求めた理由は、高校生だから仕方ないか、とも。
              でも、結局は、その後も彼女を騙すようなことになって、それはちょっと大人のずるさのような…。

              由希子は、何も悪いことしてないのに…気の毒というか。
              それとも、もし由希子が死ななければ、本当に責任取ってたかもな。

              最初は「冷淡な奴だ」と、主人公のことをあまり好きにはなれなかったけど、彼も辛かったわけか、と納得。

              最後の一行は、やっぱり東野さんらしくて、いいなぁと思った。

              に、しても、ラブホテルに泊まれるほどのおこづかいを持ち歩くとは、今どきの(といってもこれは、も少し前の話だけど)高校生は、金持ってるなぁと羨ましく思ってしまった。
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                『噂』荻原浩

                噂

                荻原 浩 2006年 新潮文庫 P.484
                ★★★★
                携帯を片手に歩く群衆の声、声、声。ひっきりなしに鳴る着信メロディ。街宣車の大音響。スピーカーで神のメッセージを唱える伝道師。ゲームセンターの電子音。店を通り過ぎるたびに変わる店内BGM。  
                不確かな情報、あいまいな伝聞、虚言、妄想。

                渋谷に屯する女子高生達からまことしやかに流された「レインマン」の噂。

                晴れた日でも真っ黒なレインコートを着用する、ニューヨークから来た殺人鬼。
                狙うのティーンエイジの子ばかり。
                逃げられないように、まず足首を切り落とすという残忍な手口。
                でもなぜか「ミリエル」の香水をつけている女の子は狙われないのだという。

                情報の発信源は、女子高生の口コミを利用して、無名のブランド「ミリエル」の販売促進を企む、ある企画会社。
                噂が噂を呼び、またたく間に「ミリエル」の香水はヒット商品となりつつあった。

                多くの都市伝説と同じように、単なる「噂」、「デマ」の一つに過ぎなかったはずの「レインマン」。

                ところが、噂通りに女子高生が殺害され、都心の公園に捨てられた足首を切り落とされた死体が発見され…。

                「都市伝説が渋谷の女子高生たちの間を駆けめぐる。背筋が凍る荻原流サイコ・サスペンス 衝撃のラスト一行に瞠目!」だ、そうです。


                事件を追う、二人の刑事、娘と二人暮しの小暮と、警部補の名島さんのコンビがなかなか良かった。
                いまどきの女子高生の娘と、娘思いの小暮との会話は、本当に仲良さそうで…。

                あと、「コムサイト社」の女社長、なかなか壊れたキャラクターの杖村さんも最後の方はかなり面白い。
                ああ、この人もいろいろと大変なんだな…と。

                実際にこういう売り出し方されてる商品は、世の中に溢れてるんだろうなぁと思う。
                私も口コミには結構振り回されてしまう。
                口コミサイトの「@コスメ」とかで「良い」とされてるものは、信用して結構買ってしまったりする。
                お陰で、それまで全然知らなかったような、良いものにも出会えたりするけど。

                ここに出てきた「噂」の数々は、どれも耳にしたことがあるものばかりで、しかもやっぱりある程度、地元に根ざしたものに脚色されてるのに感心してしまった。

                「牛女」の噂は、4、5年前、うちの高校生から聞いたときには「だるま」で、木屋町の路地をカップルで歩いていると…だったし。

                そして帯にある「最後の一行」に期待して…、読んでる間も「わくわく」してしまったけど、裏切られなかった。

                「BABY DOLL」の小瓶、長いこと持ち歩いてたけど…効果は…まあ、これは本人に問題ありなのか。
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                  『スイッチを押すとき』山田悠介

                  スイッチを押すとき
                  スイッチを押すとき
                  山田 悠介 2005年 文芸社 P.362
                  ★★★★
                  七年間…。
                  彼らは、ずっとここで。
                  ただ、四人の目は決して死んでいなかった。死しか、残っていないのに。

                  2007年、増加する若年齢層の自殺を食い止めるため、政府が立ち上げた、青少年自殺抑制プロジェクト、通称YSC。

                  その内容は、全国から無作為に抽出された児童たちに、ある手術を施し、さらにその5年後、国の統括する施設に収容し、彼らを監視下に置き、高ストレスを与え、記録を取り、その精神構造を解明することによって、青少年の深層心理の解明に役立てるというもの。

                  そして、2030年、YSC八王子センターでは、最後に一人残った児童が、両親の死を係員から告げられ、自ら命を絶った。

                  八王子のセンター内に「サンプル」がいなくなってしまったことで、監視員の洋平は、横浜市の同センターへの異動を命じられ、辞令を言い渡されてから一週間後、初めてYSC横浜センターの建物内へと足を踏み入れた。

                  自己紹介もそこそこに、同僚となる監視員から、「この施設は他とは違う」と、意味ありげな言葉を聞かされ不安になる洋平。

                  センターでの洋平の最初の仕事は、子供たちへの朝食の配膳。
                  センターの地下にある1つ目の部屋の扉をノックし、中から現われたのは17歳の少女。
                  次の扉も、その次の扉も…残り3つの扉から現われたのは、同じく17歳の3人の少年たち。

                  何故この歳まで、彼らが生き続けてきたのか、訝しがりながらも、死を待つだけの彼らに、何かをしてやりたいと、監視員としての立場を超えて、少年らと接しようとする洋平。

                  そして、一人の少年の死をきっかけに、洋平は彼らをセンターから逃がしてやろうとするのだが…。

                  「君たちはなぜ生きているんだ?
                  増加する青少年の自殺に終止符を打つため、政府が立ち上げた恐るべきプロジェクトとは…。生きる意味を問う衝撃のストーリー!」だ、そうな。


                  夜中に成宮君主演でやってるドラマを見てみたら、昔のNHK「少年ドラマシリーズ」みたいな感じで、とても面白そうだったので、先の展開が気になり、読んでみた(USENテレビのGyaoでも放映中)。

                  ドラマを先に見ていたからかもしれないけど、今まで読んだ山田さんの本の中では、一番面白かった。
                  (内容的に、面白いと言ってしまって良いのか、正直悩むけど)

                  3人の少年たちがどうして、こんな過酷な状況下でも、死を選ぶことなく生きつづけていたのか、その理由は納得できるような気がする。

                  大人にとっては「そんなこと…」と思うようなことが、子供にとっては、とても大切なことだったりすると思うので。

                  唯一の女の子、真沙美の「死ななかった理由」も、それって、誰にとっても、一番大きな理由なんじゃないのかな、とも。

                  最近の事件とか見てて、こんな時代だから、こういう発想もありなのかな、と思えてしまった。
                  本来なら、母親は、身を呈してでも子供を護ろうとするもんなんじゃないのかなと…。
                  0

                    『ミシン』嶽本野ばら

                    ミシン
                    ミシン
                    嶽本 野ばら 2000年 小学館 P.134
                    ★★★★
                    僕は何故、もっと君の傍にいようとしなかったのでしょう。僕は何処で、間違ってしまったのでしょう。どうして人は、本当に大切なことを喪失の後にしか気付けないのでしょう。

                    「どんなお店でもいいから…」と、ビルのオーナーに懇願され、廃墟と見紛うような雑居ビルの一室で、ガラクタや駄玩具など、現代から隔絶した品物ばかりを扱う、蝋燭の灯りを灯しただけの「世界の終わり」と名づけた小さな雑貨店を開くことにした「僕」。

                    はなから売ることを目的としない、「僕」のためだけの空間のような店。

                    雑誌に取り上げられてしまってからは、ぽつりぽつりと興味本位の客が入りだし、そうしてやって来た客の中の一人、全身をVivienne Westwoodで固めた、その女の子はひときわ「僕」の目を惹く存在だった。

                    学校に行く様子もなく、毎日のようにやって来ては、一日中狭い店内を見て回る不思議な女の子。

                    オーナーが代わり、店の立ち退きを迫られた「僕」は、何故だか突然、彼女を連れて駆け落ちすることを思い付き、彼女にその計画を口走ってしまう。
                    そして「僕」と彼女の逃避行が始まった…『世界の終わりという名の雑貨店』

                    クラシックの音楽、中原淳一の挿絵、そういった古い物にしか興味が持てない「私」は、大正ロマンの乙女心溢れる小説の世界に浸り「女の子どうし」の美しい恋愛に憧れていた。

                    男の子に全く興味が持てない「私」が心を奪われた理想の相手は、過激なコメントやパフォーマンスで有名になった、パンクバンドのボーカリスト「ミシン」。

                    「ミシン」に少しでも近づきたくて、「ミシン」の行きつけの店で服を買い、「彼女と近づけますように」と、神社で神様に祈り続ける「私」。

                    「私」の祈り(呪い)が届いてしまったのか、「ミシン」に近づける最大のチャンスが「私」に訪れた…『ミシン』
                    の2編を収めた短編集。

                    「吉本ばななさん推薦!魂の恋物語」だ、そうな。


                    ちょっと前にテレビでやってた映画「下妻物語」が思いの外面白かったので(ビデオに録って、何回も見てしまったほどに…)、野ばらさんの他のも、読んでみたくなって、これが最初に書かれた小説と言うので読んでみた。

                    もう、のっけから文章の美しさに、心を鷲掴みにされてしまった(少々オーバーかな)。
                    綺麗過ぎて、綺麗過ぎて泣けてしまった。
                    平成の耽美派と、紹介されていたけど、なるほど納得。

                    京都の宇治市出身ということもあって、親近感も増してしまい、すっかり嵌ってしまったかも…。
                    今はもう失くしてしまった遠き日の乙女心をくすぐられてしまった(恐らく同年代の女の人ならわかってもらえそうな)。

                    高校生の頃、MILKの服が欲しくて欲しくて、でもとても手が出なかったので、似たようなバッタもんのぶりぶりの服とか着てたなぁ、とか。

                    仲の良かった友達とは、全身お揃いの格好とか平気でしてたし、財布とか小物も色違いで持ってたりして。

                    今考えると気持悪いけど、そういうのも一種の「エス」とやら、だったのかな。

                    0

                      『コンビニ・ララバイ』池永陽

                      コンビニ・ララバイ
                      コンビニ・ララバイ
                      池永 陽 2005年 集英社文庫 P.329
                      ★★★★★
                      一人息子を失って、精神的に参っていた妻の有紀美を家に一人で放っておくわけにはいかなかった。できれば一日中そばについていてやりたかった。……
                      本当は小さなコーヒー専門店でもひっそりとやりたかったのだが、
                      「賑やかだけど乾いているから…」
                      こんなことをいってコンビニエンス・ストアに固執したのは妻の有紀美だった。

                      40歳を過ぎてから一人息子と妻を相次いで交通事故で亡くし、すっかりやる気を失くしていたコンビニエンスストアの店長、幹郎。
                      いつ潰れてもおかしくないという経営状態の、小さな町の、小さなコンビニエンス・ストア「ミユキマート」には、幹郎と同じように悲しみや悩みを抱えた人間達が集う。

                      息子の死後、事故に巻き込まれた妻の死が、実は自殺だったのではないかと疑念を抱いていた幹郎は、妻の遺したメモの意味を量りかねていた。
                      「…しあわせでした」そんな風に言われるようなことは、何一つしてこなかった、寧ろ家庭を顧みない夫であり、父親であったはずなのに。
                      「…」の部分に妻の悪意を感じてしまうという幹郎だったが…『カンを蹴る』

                      「ミユキマート」のベテラン従業員の治子に、好意を抱き、真面目に誘ってきたのはヤクザの八坂。
                      治子の一言で、ヤクザの世界から足を洗い、堅気となって再び「ミユキマート」に姿を現した八坂。
                      けれど八坂の両肩に入れられた刺青を見て、治子の身体がどうしても彼を拒んでしまい…『向こう側』

                      最近「ミユキマート」で勤め始めた、パートの照代。
                      前の会社を辞めたのは、夫との離婚を周囲の人間に詮索されたくなかったから。
                      シナリオライターになるのが夢だという夫を心から応援していた照代は、妊娠したことに気付き、自分の判断で堕ろしてしまっていた…『パントマイム』

                      「ミユキマート」のすぐ側のアパートに住む、女優の卵。
                      今度の舞台で、少しでも良い役をもらおうと、彼女は決死の覚悟で演出家に体を任せた。
                      けれど、今回も台詞のある役をもらえず、ショックから声を失ってしまう…『パンの記憶』

                      だらしない情夫のせいで、借金取りから逃げ回っている、「ミユキマート」の常連客だった克子。
                      新しい街で働き始めたスナックの常連客から、結婚を前提に付き合ってほしいと言われ、生まれて初めてのプロポーズに心は浮き立つのだが、今の男は別れてくれそうにもなくて…『あわせ鏡』

                      「ミユキマート」で万引きすることで、イライラした気持ちを解消させる女子高生の加奈子。
                      中学生の頃から付き合っている「優等生」の彼氏の紹介で、歯科医のおやじと援交もやってる。
                      ちょろいはずだった「ミユキマート」での万引きを、ある日幹郎に見咎められ、奥に連れて行かれた加奈子は「体で払う」と、幹郎をたらしこもうとするのだが…『おやじ狩りの夜』

                      「ミユキマート」の店の前のベンチでデートを重ねる老年のカップル。
                      家族からの猛反対にもめげず、幹郎たちの応援も受け、愛を育む二人の前には、戒律と言う壁が立ちはだかり、お互いに求め合っていても、それ以上前には進めないでいた…『ベンチに降りた奇跡』

                      の7編から成る、心温まる連作短編集。


                      大人な話だなぁ…と、しみじみ。
                      少し生臭くて、汚い部分もいっぱいあって…真実の大人の愛の物語、というか。
                      みんな真面目に生きすぎてるような気がしなくもないけど。

                      「本妻さん」と「愛人さん」の話は、なかなか良かった。
                      二人で男の悪口を言い合うというのが、すごく良くわかる。
                      女同士って、そうやって男を罵ることで、仲良くなれることもあるような…。

                      『ベンチに降りた奇跡』の、二人のラストには憧れてしまうかも。
                      そう願って、そうなれれば良いと。

                      でも、確かにお年寄りの恋愛って、なかなか世間的に受け入れられないのは何でだろう…と、ふと考えさせられてしまった。
                      もしもお互いに、一人ぼっち同士なら、若い頃の恋愛と、何ら変わらないはずなのに、何でうんと年下の息子や娘に、怒られないといけないのかなぁ…と。

                      私が「おばあさん」になる頃には、そういう偏見、なくなってたらいいなぁと思う。
                      でも、同い年や年上の「おじいさん」に相手にもされなかったりすると、ちょっとショックかな。

                      やっぱり大金持ちになって、少しでも若い男に走るしかないか…。
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