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    『宿命』東野圭吾

    宿命
    宿命
    東野 圭吾 1993年 講談社文庫
    ★★★★★

    なぜこの男のことが好きになれなかったのか、なぜ何となく嫌だなあと思ったのか。
    似ていたからなのだ。
    自分でも思った。あいつとはよく似ている。だがそれを認めたくなかった。自分が誰かに似ていたり、誰かが自分に似ていたりするのは我慢ならなかったのだ。

    少年の頃の記憶…。
    広い病院の敷地内に入り込んで、虫取りやドングリ拾いをしていた子供達に、いつも飴玉やキャラメルをくれた入院患者の「おねえさん」。
    少年は、彼女の側にいるととても穏やかな気持ちになれた。
    そんな「おねえさん」が突然死んでしまった。
    少年は木の下にうずくまって、長い間泣いた。

    それから数年後、少年はある一人の少年と出会う。
    クラスのリーダー的存在だった少年にとって、存在こそ目立たないものの、どこか気になる奴。
    勉強も、スポーツも、少年がどれほど努力しても、その子には敵わない。
    しかも大会社の御曹司…。

    少年は、子供の頃よく遊んだ病院の記憶から、いつしか医者になりたいと思い始めていた。
    しかし、その夢はある事情によって断念せざるを得なくなる。
    そのために、彼は、夢も恋人も諦め、父親と同じ警察官への道を選ぶ。

    そして警察官となった彼は、ある殺人事件の容疑者の一人として、かつてのライバルだった男と再会する。
    その男は、彼の諦めたものを全て手に入れていた…。仕事も、家庭も…。

    またもや敗北感を味わう彼は、事件の全貌を解明するため、必死の捜査を開始し、男の背後にある過去のおぞましい出来事をつきとめてしまうのだが…。


    犯人探しとか、トリックがどう、というよりも、この二人のライバルっぷりがすごく面白い。
    何より登場人物が多いので、途中で「これ誰?」と思うような人がたくさん出てきて困ってしまった…。

    何もかも負けていると感じる彼には、一つだけそうでないことがあって…。
    そして、最後の一行。
    素晴らしい…。

    ここまで読んだことが全部、ものすごく「納得」できる一行だった。
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      『慟哭』貫井徳郎

      慟哭
      慟哭
      貫井 徳郎 1999年 創元推理文庫
      ★★★★

      もし自分の娘が殺されたら、おれはどうするだろうか。
      気が狂うな。すかさず答えは浮かんだ。娘が無残に殺されたら、確実に気が狂う。

      痛ましい連続幼女誘拐事件が発生した。
      捜査は難航し、犯行は繰り返される…。
      指揮をとる捜査一課の佐伯一課長には、同じ年頃の娘がいる。
      佐伯一課長の心痛を察しているのは、彼の部下の丘本ただ一人だけだった。

      そして、ここに、救いを求める、一人の男がいた。
      男の名は、松本。
      「孤独」な朝が来るのが耐えられない男。
      心に大きな穴を開けたまま、彼はただ、生きていた。
      ある日道端で、彼に救いの手を差し伸べる少女が現れる。
      「あなたの幸せを祈らせてください」と、少女は言う。
      男は、少女に導かれるように、新興宗教にのめりこんでゆく。

      そして男は、教団の悪魔の儀式に魅せられていく。
      生贄を差し出せば、望みは叶えられるという。
      男の望みは、たった一つ…。

      章が変わるごとに、佐伯一課長、丘本、松本、の3人の視点から話は進められていく。
      そして、辿りつく驚愕の真実…。


      いまだに新刊の帯に「あの『慟哭』の貫井徳郎の…」と書かれているぐらい、インパクトのあった作品…。
      デビュー作にして、代表作なのかな(私は他にも好きなのあるんだけど…)。
      私にとって、初めての貫井さんとの出会いの小説だったけど、これを読んで、この人の本、全部読もう、と思った。
      帯には「この作品について、あれこれいう必要はない。読んでいただければ、慟哭、練達、仰天、の線で納得していただけると思う。」と、ある。
      本当にその通り。

      書けないし…。

      言いたいのに、言えないところが、つ、辛い…。

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        『魔王』伊坂幸太郎

        魔王
        魔王
        伊坂 幸太郎 2005年 講談社
        ★★★★
        でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば世界は変わる

        「自分に政治を任せてくれれば、五年で景気を回復させ、五年で老後の生活を保障する」
        そうきっぱりとテレビで言いきった若き指導者。
        たかが二十人ほどの議席を抱えるだけの小さな党の党首。
        彼の言葉には、これまで選挙に関心などなかった若者達をもその気にさせる力があった。

        そして、その党首の統率しようとする社会に、いち早く、危険を感じ、怖れを抱く男がいた。
        ある日、彼は自分の持つ特殊な能力に突然目覚める。
        彼は、さまざまなことについて、考えて、考えて、考えぬく。
        自分だけが「魔王」の存在に気づいているのに、周囲の人間はだれひとり気づかない…。

        ある日、街頭演説で、彼の住む町に、その党首がやって来た。
        人ごみをかきわけ、党首に近づいていこうとする男。
        そして、党首を守ろうとする巨大な力…。


        アメリカの言いなりになる、現代のこの国。
        この国に誇りを持たない、若者達。
        誇りを持てない理由…。
        すごく考えさせられる物語だった。

        テーマが大きくて重いのに、さらっと読ませる。
        一つ一つの会話が、とてもきれいだと思う。
        文章が、とてもきれいで読みやすい。
        主人公の心も、きれいだ…。
        主人公がはっきりと形をもって目の前に現れる気がした。

        主人公が考えるときに口にする「考えろ、考えろ、考えろ」の台詞は、頭の中にいつまでもこだまする。

        普段、結構考えるのが面倒くさくて、つい人任せにしたり、流れに身を任せたりしてしまいがちだけど、この台詞を口にすれば、何かが変わるような気がする…。

        関係ないけど、帯にあった「世の中の流れに立ち向かおうとした、兄弟の物語」というのを見て、昔好きだった「NIGHT HEAD」の兄弟を思い出した…(名前、忘れてしまったけど)。
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          『動機』横山秀夫

          動機
          動機
          横山 秀夫 2002年 文春文庫
          ★★★★

          生きていくしかなかった。どれほど無様な生きざまであろうと、すっかり投げだしてしまえる人生などないに違いなかった。

          魔が差した…。
          これまで女の方から近づいてこられた経験などなかった男に、突然差しかけられた赤い傘。
          女は簡単にホテルへと連れ込めた。
          すべてははじめから彼女の企みのうちだった。
          女に金を要求され、逆上され、脅された男…。
          気がつけば、傘の先端は彼女の背中につきささっていた。

          女子高生殺し。

          少女の父親が証言台で男を指差し「この男を殺してください」と訴えた悲痛な叫び声は法廷内に響き渡った。

          それから12年、刑期を終えて出てきた男は、父親の古くからの知り合いだという保護司の世話になり、葬儀屋の運転手をしてつつましく暮らしていた。

          そんな男の元に再三かかってくる電話…。
          それは、男に完全犯罪を依頼する電話だった。
          「カサイ」と名乗るその人物は、男の過去を全て知っていた。
          そして、誰も知らないはずの、彼の口座に金は振り込まれる。
          男にも金が必要な事情があった…『逆転の夏』

          警察官の父親を持つ男。
          父と同じ警察官の道を選んだ男。
          その男の署内で、こともあろうに警察手帳が30冊、紛失する事件が起きた。
          盗まれたのであれば、悪用されかねない。
          マスコミにもたたかれる。
          警察手帳の一括保管を提唱した男は、何とか事が大きくならないうちに、自分の手で犯人を探し出そうと聞き込みを始める。
          そして、動機を持つ人物に辿りつく。
          しかし、その動機は男の想像をはるかに超えていた…『動機』

          「女」であるがゆえに、不当に扱われていると常日頃から不満を抱いていた弱小新聞社、の記者の女に、ある日大手の新聞社から引き抜きの声がかかる。
          彼女には、魅力的な副産物がついているはずだった…『ネタ元』

          あろうことか、裁判の最中に、居眠りをしてしまった裁判官の男。
          彼は、妻の名を寝言でつぶやいていた。
          そして、彼は職を失う事態に陥るが、それはある者の手によって仕組まれたものだった…『密室の人』

          順番が逆になってしまった…。
          表題作『動機』『逆転の夏』『ネタ元』『密室の人』の4編から成る短編集。


          『動機』の、犯人の「動機」には、思わず泣かされる(情にもろいので…)。
          最初に出てくるシーンは、後になって「ああ、そうなのか…」と納得。

          『逆転の夏』も、最後の展開に唸らされる。感嘆する。
          殺されてしまった女子高生にも、必死にならざるを得ない理由があって…。

          『ネタ元』の、女性新聞記者には共感するし、『密室の人』に出てきた、奥さんの気持ちもよく理解できる。

          ここに出てくる、誰の気持ちも良く理解できるし「仕方ないなぁ」と納得してしまう…。
          それだけやっぱり作者の横山さんの「読ませ方」が、上手いのかもしれない。
          確か、これが横山さんの作品を読み始めた、最初のきっかけの本だったかな…。
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            『最悪』奥田英朗

            最悪
            最悪
            奥田 英朗 2002年 講談社文庫
            ★★★★

            少しでもいいことがあると、その数倍の量で悪いことが自分にのしかかってくる。
            まるで人の運命を弄ぶかのように、悪魔がどこかでほくそ笑んでいる。
            もうたくさんだ。殺してくれてかまわない。

            従業員がたったの二人、の小さな町の鉄工所の社長は、月曜の朝、まだ早いうちから、午前8時に納品しなければならない荷物を積み込み、タイヤの擦り減ったトラックを走らせていた。

            親の勧めるまま、銀行員になった女は、湿気のこもった電車に揺られ「つまらない毎日だ」と思いながら仕事に向かう。

            パチンコとカツアゲで、日々を食い繋ぐプータローの男は、バタフライナイフをポケットに突っ込み、アパートを後にした。

            月曜日で、雨降りで…。
            そんな「最悪」の日が、彼らにこれから訪れる、本当の「最悪」の始まりの日となった。

            工場の社長は、近隣の住民から、工場から出る騒音のことで苦情を受けていた。
            プータローの男は、仲間から、工場のトルエンを盗む計画をもちかけられていた。
            銀行員の女には、銀行の恒例行事である「新歓キャンプ」の回覧が回ってきていた。

            そして、最初は些細な出来事から、底なし沼に足を踏み入れるように、3人は、それぞれの「最悪」の事態を迎える。

            そしてある日、3人は、それぞれの立場で、必然的に出会ってしまう。
            二人の銀行強盗と、一人の人質として…。

            そこから三人の奇妙な逃亡劇が始まるのだが…。


            一旦物事が悪いほうへ転ぶと、連鎖的に悪い方向へ向かってしまうことは、経験上よくあることで…。
            に、しても、気の毒なのは、工場の社長だと思う。
            彼は本当に悪くない。
            どちらかと言えば、人が良すぎる。
            そして、その人の良さゆえにこうなってしまうのだけど…。
            何だかそれは、やり切れない。

            数年前、ハードカバーのこの本を見つけて、タイトルが目に飛び込んできて、思わず手にしてしまった。
            普段文庫にしか手がでないのに、何故か本に呼ばれた気がした。
            きっとその時の自分も、こんな気分だったんだと思う。
            そして、読み終わってみて、何だかとてもすっきりしたのを覚えてる。

            少し、希望が見えた気がして。

            ドラマでは、沢田研二が町工場の社長を演じていたから「えっ、あのジュリーが…」と絶句した。
            だって、私の中のジュリーは、樹木希林が、ポスターの前で「ジュリー」と、身悶えていた、あのジュリーのままなので…。
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              『疾走』重松清

              疾走
              疾走
              重松 清 2003年 角川書店
              ★★★★★

              シュウジ、遠くの町に行っても、これだけは忘れないでください。あなたの憎んだふるさとの片隅の小さな庭に、ヒマワリが咲いていることを。その花は、いつも太陽のほうを向いている、ということを

              干拓によって、土地が5倍以上に増えた町。
              以前からの住人の住む集落は「浜」と呼ばれ、浜の人間は、干拓後に住み着いた人々の住む集落を「沖」と呼んでいた。
              「浜」の人間と「沖」の人間は、決して交わろうとはしなかった。

              そんな町の「浜」側に住んでいた少年。
              少年には、4歳年上のとても優秀な、兄がいた。
              幼い頃の少年は兄のことがとても好きだった。

              少年が中学生になった頃「沖」の干拓地は、リゾート計画の中心地として、どんどん開発が進んでいく。
              住民達は、高額の立退き料を受け取り、それを拒むものは、やくざの制裁を受けていた。

              そんな頃「沖」で起こった連続放火事件。
              少年は、高校生になってから、ある事件のために壊れてしまった兄を疑っていた。
              学校に行かなくなり、自室にひきこもり、食べ続け、太り続ける兄。
              人々が寝静まってから、コンビニに通い続ける兄。

              少年には、唯一心の安らぐ「教会」という場所があった。
              少年は、神父に打ち明ける。
              神父は言う「お兄さんというにんげんを信じなさい」と。
              神父にも、かつて罪を犯した弟がいた…。

              そして「終わり」の終わりを告げるサイレンは町に鳴り響き、その日から少年の「終わり」の次の物語が始まる…。

              全てを捨てて、ひとり逃げていく父親、酒に溺れ、ギャンブルにのめり込む母親。
              そして両親に見捨てられ「ひとり」になった少年は、クラスメートたちからも、生きながら殺されてしまう…。


              これほど救いのない小説を、私は読んだことがない。
              『白夜行』も、ある意味そうだったけど、まだ「ふたり」だ。
              でも、これは「ひとり」。
              「ひとり」と「ひとり」が繋がろうとする…。

              重松さんの作品は好きで、たくさん読んでるけど、ここまで主人公をいじめぬくのは、多分私の読んだ中では他にない、と思う。
              だけど、この作品が一番好きかもしれない。

              心が痛くなるし、哀しくなるし、辛くなるし…。
              徹夜して一気に読んだとき、もう朝方だったのに、最後の何ページかを読む前に、ビールを1本飲んでから、読んだ。

              しらふで読むには、しんどすぎた。

              けれど、これが彼の「運命」だった。

              映画化されて、見に行こうかどうしようかさんざん迷ったけど、『模倣犯』のショックが大きすぎて、やっぱり見に行けなかった…。
              神父役の豊川悦司はぴったりだし、あかね役の中谷美紀も、多分上手なんだろうけど、あの残酷な性描写、どう映像化したんだろう?
              見たいような、見たくないような…。

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                『レヴォリューションNo.3』金城一紀

                レヴォリューション No.3
                レヴォリューション No.3
                金城 一紀 2005年 角川書店
                ★★★★★

                遠くに行っちゃった人間はズルいね。残ったほうの人間に自分が悪いみたいに思わせる。でもね、踏みとどまってファイトする人間が本当のヒーローになれるのよ。人間、生きててナンボよ

                進学校の激戦区、新宿区にぽつんと存在するオチコボレ男子高。
                脳死と判定される血圧値ぐらいしかない、偏差値。
                生ける屍、に近い存在。
                殺しても、死にそうにない。
                彼らのことを、人々は「ゾンビ」と呼ぶ。

                そんなオチコボレ男子高に通う彼らが、生物教諭の発案をもとに、「勉強できる奴らののさばる社会」を改革するため「新しい遺伝子の創造」を夢見て、ある壮大な計画をたてる。

                その計画を聞きつけて、自然発生的に集まったメンバー達で結成された『ザ・ゾンビーズ』
                彼らはどういうわけか、そろいもそろって携帯電話とカラオケと巨人軍が嫌いだった。

                結成されて一年目、彼らが立てた計画は《出前作戦》
                二年目の計画は、名付けて《ええじゃないか作戦》
                そして三年目の今年、実質的なリーダー、板良敷が病に倒れてしまい、僕こと、南方に、代役が回ってきた…。
                そして、彼らの「ちょっとした」冒険譚がはじまるのだが…『レヴォリューション癸魁

                そして、表題作の次のお話は…
                三年目の計画を無事に終えた彼らには、どうしても沖縄に行かなければならない理由があった。
                そして沖縄行きを計画し、アルバイトをして旅行代金を捻出するメンバーたち。
                せっかく集まった旅行代金を、よりにもよって、メンバーいち、ヒキの弱い山下の「信金王になりたい」という夢のために、山下一人に預けてしまったばっかりに、彼らはまた「ちょっとした」ハプニングに巻き込まれることになる…『ラン、ボーイズ、ラン』

                最後の『異教徒たちの踊り』は、時間を巻き戻して、前の二作よりもちょっと前の話…。
                南方にある日かかってきた電話は、メンバーの一人、井上からの、ある依頼。
                「美女が命をねらわれている」の一言で、ほいほい出向いた南方は、ある事件に巻き込まれ、命の危険にさらされる…。
                そして、彼らの犯人探しが始まるのだが…。


                『異教徒たちの踊り』で、板良敷が話してくれる昔話。
                『ザ・ゾンビーズ』の産みの親ともいうべき生物教諭、ドクター・モローの「子供を作らない」理由。
                アギーが南方に「どうして、おまえみたいな奴が高校になんか来てんだ?」と聞かれて答えた台詞。

                何から何まで、感動させられっぱなし…。

                しかも、山下の生まれながらのヒキの弱さの理由も…わかったような…。
                なるほど、ダミアンの生まれ変わりかも…か。
                南方がいつも「抱かれてもいい」と思うほど、男からみても女からみても魅力的なアギーのことも…。
                沖縄生まれの、板良敷のことも…。
                そして、大好きな朴舜臣のことも。
                南方が、この学校に来た理由も。
                全てが、この一冊に凝縮されてて。

                重くて、深くて、そのうえ面白い。

                本当にいそうな気がする『ザ・ゾンビーズ』
                いたらいいのに『ザ・ゾンビーズ』

                この本は絶対人には貸さない。
                ぐらい、大切になると思う…。

                おまけに、角川の装丁もやっぱり、いい。
                朴舜臣、なんだかブルース・リーみたいだな…。
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                  『青の炎』貴志祐介

                  青の炎
                  青の炎
                  貴志 祐介 2002年 角川文庫
                  ★★★★

                  一度火をつけてしまうと、瞋りの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くすことになる

                  たとえば、火事。
                  寝タバコに見せかけて装置を仕掛ければ、清浄な炎が、ごく潰しの男のことなど、きれいに焼却してくれる…。
                  やはり、普通に殺害し、死体をきちんと処分する。
                  突然いなくなったところで、この男のことなど誰も気にもとめないだろう。
                  死体さえ見つからなければ…。

                  17歳の少年は、完全犯罪を、繰り返し頭の中でシュミレーションする。
                  そうすることで、心に燃え盛る怒りの炎を必死に押さえつけようとしていた。
                  母と妹と少年、3人の平穏だった生活は、10日前、突然家にふらりとやってきて、そのまま住みついた寄生虫のような男「昔の義父」のせいで、毎日が脅威に晒されていた。

                  母が離婚したのも、この男の子供への暴力が原因だった。
                  毎日酒を浴びるように飲み、母から金をせびり、脅して母を自由にものにする男。
                  妹にさえも、魔の手をのばそうとしているかのような男。
                  二階の一番奥の部屋。
                  そこにその男はいる。

                  母と妹をこの男から守らなければ…。

                  少年の願いはたった一つ。
                  この男の存在を完璧な形でこの世から消してしまうこと。
                  罪を犯した後、自分が捕まれば母や妹に迷惑がかかる。
                  そんな事態だけは回避しなければならない。

                  そして少年は、法医学書を読み漁り、インターネットを駆使し、あらゆる方法の中から、一つの手段に辿りつく。

                  アリバイも、犯罪も、すべて完璧なはずだった。

                  少年を追い詰める脅迫者さえ現れなければ…。


                  これまでのおどろおどろしい貴志さん作品とはがらりと変わって、一見爽やか…。

                  たった一人で、全てのことを背負い込もうとして苦悩する少年。
                  法律も彼の家族を守ってはくれない。
                  力では、とうてい敵う相手ではない。

                  じゃあ、少年はいったいどうすれば良かったのかな。
                  こんな時、人はどうやって大切なものを守ればいいんだろう…。

                  罪を犯した後の、彼の苦悩は、そのまま全ての犯罪者に通じるのかな…。
                  通じてほしい、と思う。
                  こんなに苦しまなければならないということを。
                  全てを知りながらも、彼のために、嘘の証言を必死でしてくれた友達がいたということを。

                  できることなら、このまま遠くへ逃げてほしい…。
                  と、思わせるようなラストだった。

                  映画にもなってたけど、二宮君は演技派なので、多分ただの「アイドル映画」にはなっていないと思う…。

                  少年の唯一心休まる場所、ガレージを改造した部屋、こんな部屋がほしいなぁと思った。
                  ここで飲んでるコーヒーや、バーボンがやけに美味しそうに思えて…。
                  0

                    『野ブタ。をプロデュース』白岩玄

                    野ブタ。をプロデュース
                    野ブタ。をプロデュース
                    白岩 玄 2004年 河出書房新社
                    ★★★★★

                    言葉は人を笑わせたり、楽しませたり、時には幸せにすることもできるけれど、同時に人を騙すことも、傷つけることも、つき落とすこともできてしまう。そしてどんな言葉も、一度口から出してしまえば引っ込めることはできない。だからこそ俺は、誰にも嫌われないように薄っぺらい話ばかりしてきた。言葉に意味を、意志を持たさぬように、俺は徹底してきたつもりだった。

                    「さてと。今日も俺をつくっていかなくては。」
                    そうつぶやいて、桐谷修二は、健全かつ完璧な高校二年生の「桐谷修二」を演じるために学校へと向かう。

                    通い飽きた道、教室に足を踏み入れれば、おばかなクラスメートの「お客様」たちに精一杯愛想をふりまき、くだらない冗談に適当に付き合い、女の子たちを煙に巻き、教師さえもなめてかかる。

                    もちろん、本当のことは、決して口に出したりなどしない。

                    そして、好きでもない女の子の作ってくれたお弁当を、食費が浮くからと毎日一緒に食べる。
                    適当にうまくかわしながら。
                    中身のない会話だけを楽しんで。

                    そんなくだらない飽き飽きした日常に、ある日変化が訪れる。
                    ブタで、不細工で、気持ち悪い、超悲惨な転校生、信太の登場によって…。

                    はじめは関わり合いになるのが嫌で、他のクラスメートたち同様、完璧シカトしていたはずだった。
                    なのに、ある日いじめに遭い、殴る蹴るの暴力を受けていたノブ太を思いがけず助けてしまう。
                    そしてノブ太に泣きつかれ「お前を人気者にしてやる」と言い放ってしまう。

                    まずは、ノブ太のべっとりワカメヘアーをばっさりと丸坊主に刈り「桐谷修二」による「ノブ太。」のプロデュースが始まるのだが…。

                    亀梨君の主演ドラマということで、ドラマになる前に「読んでおかなくては…」と思って読んでみた。
                    会話のテンポが良くて、読みやすい。
                    本を読んで、声を出して笑ったのは久しぶりだった。
                    最初の方は…。

                    最初、亀梨君をイメージして読もうと思ったのに、作者の写真を見てしまったら、もう桐谷修二=白岩玄、になってしまった…。
                    なんせイケメンだったので。

                    そして、ラストは…。思わず初めの方のページに戻って、確認してしまうほど唐突だった。
                    そう言えば、文中に「障害物を避けて生きたい」みたいなこと書いてあったなぁ…。
                    でも、本当にそれでいいのかな…。
                    と、考えさせられる本だった。
                    まあ、この選択、いまどきと言えばいまどきなのかな。
                    0

                      『R.P.G』宮部みゆき

                      R.P.G.
                      R.P.G.
                      宮部 みゆき 2001年 集英社文庫
                      ★★★★★

                      ― ロールプレイング(Role-playing)
                      実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせて、問題の解決法を会得させる学習法。
                      役割実演法。―

                      杉並区の閑静な住宅街。
                      近隣の主婦の通報により、ブルーシートに覆われた建築中の住宅から一人の男の死体が発見された。
                      男の全身には、刃物による二十数ヶ所にもおよぶ刺し傷が残されていた。

                      殺されたのは所田良介、48歳。
                      事件現場近くに住む、妻と高校生の娘との3人家族。

                      男は、この家族とは別に、パソコンのネット上にも家族を持っていた。
                      皮肉にも、ネット上の娘のハンドル名は、実の娘と同じ「カズミ」…。

                      そして男の死体発見から数日後、渋谷南署では、かつて前例のないような「取調べ」が行われようとしていた。

                      取調室のネット上の家族、と実の娘「一美」とのマジックミラー越しの対面。
                      父親が事件前、見知らぬ他人と話しているのを見かけたことがある、という一美の証言をもとに、その人物を判別してもらう面通し…。

                      そして「ミノル」「カズミ」「お母さん」と次々に現れる、父親の擬似家族たち。

                      この中に父親を殺した犯人がいるのか…。

                      若い女に目がなく、娘ほどの歳の女子大生と不倫をしていた父。
                      そんな父の浮気ぐせを黙認していた母親…。

                      このお父さんが、私にはいまいちよく理解できない人だった。
                      取調室で繰り広げられる、ネット上の家族3人のやり取りが、まあまあ面白かったかな。
                      なるほど、そういうことだったのか…、と最後はみょーに納得してしまう。
                      「クロスファイア」の石津刑事や、「模倣犯」の武上刑事などなど、これまでの宮部さん作品に登場した刑事たちも、火曜サスペンスの「取調室シリーズ」の長さん、さながらで…。

                      そして最後に、ある刑事が諳んじる、西條八十の『蝶』の詩は何となく、ぐっとくるものがある。

                      「やがて地獄へ下るとき
                       そこに待つ父母や
                       友人に
                       私は何を持つて行かう
                       たぶん私は懐から
                       蒼白め、破れた
                       蝶の死骸をとり出すだらう
                       さうして渡しながら言ふだらう
                       一生を
                       子供のやうに、さみしく
                       これを追つてゐました、と」
                       
                      どことなく切なさの残る小説、だったのかな…。
                      0


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