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    『さよなら渓谷』吉田修一

    さよなら渓谷
    さよなら渓谷
    吉田 修一 2008/6/20発行 新潮社 P.199 ¥1,470
    ★★★★
     でも、私は誰かに許してほしかった。あの夜の若い自分の軽率な行動を、誰かに許してほしかった。でも……、でも、いくら頑張っても、誰も許してくれなかった……。
     私は、私を許してくれる人が欲しかった。

    景勝地として人気の高い渓谷の側にありながら、清流からの涼風が決して届くことのない老朽化した市営団地で、ある夏の日に起きた「幼児殺人事件」。

    大勢のマスコミが見守る中、容疑者として連行された母親の一言で、思わぬところから、15年前の事件について暴き出されることになった、隣家の夫の許されざる過去の「罪」。

    執拗に彼の過去を探り出そうとするジャーナリストが辿り着いた、有り得ない真実。

    そして、事件の「被害者」と「加害者」は、ただひたすら「不幸せ」に生きることを選ぶように――。

    犢せになったら、きっと壊れてしまう。
    どこまでも不幸になるために、私たちは一緒にいなくちゃいけない。
    人の心に潜む「業」を描き切る。『悪人』を凌ぐ最新長篇。瓩澄△修Δ如


    「『悪人』を凌ぐ――」かどうかは、読み手の好き嫌いかもしれない(私には『悪人』の方が断然上と思える)けど、これはこれで『悪人』同様、テーマが重くてなかなか考えさせられるところがあって…。

    過去にあった色んな事件の寄せ集めみたいなので、こう描くのか…と(多少二つの事件の繋がりが強引な気もしないでもないけど)。

    隣家の夫(?)の過去の事件は、被害者も確かにこういう目で見られるだろうなと、想像はつくし、加害者たちに至っても、それぞれに違う人生を歩んでて、でも結局は金の力かよ…と悲しくなるけど、現実はこうなんだろうなと思えるし。

    ただ、「男の強さ」と「女の弱さ」というか、何かそっち側にいないと…みたいな描写は、ちょっと私には(女だからか)理解しにくいし、こういう犯罪は本当に嫌だなと。

    なので、こんなことって有り得ないとは思うけど、最後に何となく納得させられてしまうところが、小説の凄さというか、小説だからこそというか…。

    事件そのものは許せないのに、最後の「出会えなかった人生と、出会えた人生」どちらを選ぶかという問いに、ちょっと心が揺さぶられてしまったし。

    そして何より、「ただ幸せになりたい」と願いながらも、それを得られない人たちの孤独を描いた『悪人』と、「幸せになってはいけない」(と、考える)この二人が「幸せ」になってしまいそうという、なんとも皮肉な対比が何となく面白いかもと。

    『悪人』の中の「これまで寂しいと思ったことはなかった。寂しいというのがどういうものなのか分かっていなかった。ただ、あの夜を境に、今、寂しくて仕方がない。寂しさというのは、自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなのかもしれないと祐一は思う。これまでは誰かに伝えたい自分の話などなかったのだ。でも、今の自分にはそれがあった。伝える誰かに出会いたかった。」という部分がすごく良く分かる気がして、とても好きだけど、こちらの「私は、私を許してくれる人が欲しかった」というのも、何だか良く分かる。

    人との出会いって、どこでどうなるか分からなくて、本当に複雑で難しいものだなと、つくづく。

    JUGEMテーマ:読書


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        コメント
        対比してみると面白さもアップしますね。

        トラックバックさせていただきました。
        藍色さん、お久しぶりです(^^)
        (て、私が更新できてないのか…)。藍色さん、かなり絶賛でしたね。確かに切ない愛の物語で、最後はしんみりとしてしまいました。吉田さんのこういうの、これからももっと読みたいです。もう少し量多目でも良かったかも。
        では、では〜。
        • uririn
        • 2008/07/29 10:22 PM
        はじめまして
        『悪人』との比較、参考になりました。
        小生は『パーク・ライフ』と比較して著者がこの数年の間に大きく飛躍したなと思いました。
        よっちゃんさん、はじめまして(^^)
        コメント&TBありがとうございます。『パーク・ライフ』は、パラパラと読んで何だか軽そうな気がして読む気がおこりませんでした(^^;
        以前の吉田さんのは二、三冊しか読んでないのですが、何だかものすごく印象が変わったなぁと(めちゃくちゃ良い方に)いう気がします。こういう重々しいの、これからもどんどん書いてもらいたいです。よっちゃんさんのブログに書いてあったように、あの夫婦の家の中で蒸し暑さというか、何か上手く言えませんが、その温度まで伝わってきそうな風景の描写とか、背景の描写とかそういうのが秀逸だなぁと。では、では。
        • uririn
        • 2008/08/01 11:05 PM
        コメントする








           
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        「さよなら渓谷」 吉田修一:著 新潮社/2008.6/1470円 きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。 その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱える とてつもない秘密を暴き出す。 取材に訪れた記者が探り当てた、15年前の“ある事件”。 長
        • 月灯りの舞
        • 2011/01/03 12:55 PM
        「悪人」に続けて、またまた難しいモノを書きなさる… どこまでも不幸になるためだけに、私たちは一緒にいなくちゃいけない……。   まずは来訪記念のポチッ[:ひらめき:] [:next:] ブログランキング[:右斜め上:] 【あらすじ】 きっかけは隣家で起こった幼
        • じゅずじの旦那
        • 2008/08/08 10:07 AM
        どこまでも不幸になるためだけに、私たちは一緒にいなくちゃいけない……。 きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、 15年前の"ある事件"。
        • とんとん・にっき
        • 2008/08/04 12:49 PM
        今年の夏はことのほか暑い。外に出かける気にはならず、しかし、なんの因果かわが家のクーラーが壊れているものだから、生暖かい扇風機の風にあおられながら、汗が流れるままにゴロゴロと読書をしている。そういう、いたたまれないようなかったるい気分で読むとどこ
        • 日記風雑読書きなぐり
        • 2008/07/30 2:13 PM
        さよなら渓谷(2008/06)吉田 修一商品詳細を見る 装幀は新潮社装幀室。ネタバレありです。 警察は幼児殺人事件で幼児の母親、立花里美を逮捕しま...
        • 粋な提案
        • 2008/07/27 3:24 AM

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