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    『三面記事小説』角田光代

    三面記事小説
    三面記事小説
    角田 光代 2007/9/30発行 文藝春秋 P.260 ¥1,300
    ★★★★
     私は今から警察にいく。膨れ上がった借金と止むことのない督促に困り果てたからではない。これは私の最後の賭けだ。警察沙汰にすることで、彼の人生に関わることができるか否か。彼の感情を、たとえそれが負の方向へでも動かせるかどうか。私は彼を笑わせたい、笑わせることができないのなら泣かせたい、泣かすことができないのなら怒らせたい、怒らせることができないのなら、絶望させたい。なんでもいい、私はここに、あなたのそばにいるのだということを彼に知らしめたい。            〜『ゆうべの花火』より〜

    夫の浮気を疑い、しじゅう愚痴をこぼしていた姉からの電話がぱったりと来なくなり、心配になった妹は、様子を見に姉夫婦自慢の庭付き一戸建ての家を訪れてみることに。
    近所でも噂になるほど、姉夫婦の評判は悪く、家にはトタンでこしらえたバリケードがはりめぐらされており、顔を覗かせた義兄は家にも入れてくれず…『愛の巣』「26年前に殺害 男自首」平成16年8月23日付 読売新聞

    会社の同僚であり、不倫相手である恋人の気持ちが離れていくのを食い止めようと、ネットの闇サイトに恋人の妻への嫌がらせを依頼する女。
    女の依頼は次第にエスカレートしていき、ついには殺人を依頼したものの…『ゆうべの花火』「警察に相談 32歳女逮捕」平成17年9月15日付 毎日新聞

    離婚後、二人の子供を引き取って育てたものの、子供たちが大きくなるにつれ、疎ましがられるようになる母親。
    ろくに家事もせず、娘の服を無断で拝借し、街をふらつく母親が、時間潰しに立ち寄る漫画喫茶で顔見知りになったアルバイトの高校生と付き合うようになり…『彼方の城』「16歳男子高生にみだらな行為 38歳女逮捕」平成17年11月17日付 中日新聞

    街で出会っても挨拶さえしなくなった、今は別々の高校に通う中学生の頃の親友。
    いつかは東京に戻ってしまう担任の美術教師を慕う親友の為に、当時中学生だった少女が思いついたのは…『永遠の花園』「担任給食に薬物混ぜる」平成17年4月25日付 読売新聞

    有名進学校に通う高校生の姉と、同じ中学を希望したものの受験に失敗し、姉のことを無視するようになった妹。
    小学生の頃いじめに遭い、それからずっと妹だけが頼りだった未だに友達のできない姉は、入学した中学校で沢山の友達を作り、毎日楽しそうに両親にその日の出来事を話す妹の日記を盗み見してしまい…『赤い筆箱』「中一女子殺される 自室で勉強中男が押し入り」平成4年3月5日付 毎日新聞

    認知症の母親ために仕事も辞め、つきっきりで介護する冴えない中年男性。
    かつてはいた恋人との結婚を母親に強く反対され、未だに独身の男は、過去の確執から母親を未だに憎み続ける姉の手を借りることもできず、働くことができるという理由から、生活保護の申請も却下されてしまい、この先どこまで続くのか分からない今の生活に疲れ果ててしまい…『光の川』「介護疲れで母殺害容疑」平成18年2月3日付 朝日新聞

    「私は殺人を依頼しました
    恋人の妻を殺してほしいと頼みました――
    誰もが滑り落ちるかもしれない記事の向こうの世界
    現実がうみおとした六つの日常のまぼろし
    バリケードのような家に住む姉夫婦、妻殺害をネットで依頼した愛人の心の軌跡など"三面記事"の向こう側を鮮やかに描いた小説集」と、いうことで。


    「この小説は実際の事件を発想の発端にしているが、フィクションであり事実とは異なる。」と、最初に注意書き(?)してあるように、あくまでも実際に起きた過去の事件をモチーフにしてあるだけだけど、この想像力というか、創造力は凄まじいものがあるなと。

    角田さんの『八日目の蝉』を読んだ時にも、「あれ?今までと違う」と感じたけど、それがいっそう強くなったというか。

    結構どれも記憶に新しい事件ばかりで、新聞を読んだ当時「なんじゃこりゃ」と不思議に思えた事件も、もしかしたらこういうことがあったのかもしれないなと、これを読んで納得できてしまったような。

    『愛の巣』の、姉と比べて、幸せな結婚生活を満喫していると思い続けていた妹の足元のすくわれ方が結構好きだし、『ゆうべの花火』の、ネットで殺人を依頼する女の、男に対する執着心はあきれるほど馬鹿馬鹿しいけど、そこまで狂えるって逆に凄いなと感心してしまう。

    『彼方の城』の、高校生の男の子を軟禁する主婦の一家は不気味としか思えないけど、被害者扱いの高校生の子も、一体何を考えていたのかなとも思えてしまうし。

    『永遠の花園』の事件は、新聞記事で読んだのを一番覚えてた事件で、事実より、こういう動機であったなら、分かりやすくてまだ納得がいくかなと…。

    仲の良かった姉妹の『赤い筆箱』も、姉の歪み方が何となく分かる気がするし、介護に疲れた中年の息子が母親を殺害してしまうという『光の川』は、他人事ではなくて、きっと誰の身にも起きることかもしれなくて、こうなった時、自分ならどうするかというのを一番考えさせられた事件かも(お金さえあれば…と、常に思っているけど、それが一番大変なんじゃないかなと)。

    新聞の三面記事を読んでも、そこに書いてある少ない情報だけでは事実は全く見えてこないし、その事件の奥に、どれだけの人の思い(憎しみとか悲しみとか妬みとか苦しみとか…)があったのかなんて、他人にはきっと解るはずもないから、こういうの読むと少し安心してしまうのかも。

    に、しても『ゆうべの花火』の、不倫相手の男の要求は可笑しすぎて(それ、普通男女逆じゃないの?というか)、言いなりになる女の気持ちは理解に苦しむし、私なら、男の妻より、この男になら何とか復讐の手段を考えるかもなと(その前に、多分一発グーで殴って、さっさと別れてしまうと思うけど)。
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        コメント
        こんばんは。
        角田さんが三面記事に、どんなアプローチをされるのか興味津々でした。
        予想以上にヘビーな内容だったので、かなり凹み気分です。
        『光の川』は、やはり他人事じゃないみたいですね。
        藍色さん、こんばんわ(^^)
        こういうの、桐野さんのお得意分野のような気がしましたが、角田さんの想像力にも、すごく納得させられる一冊でした。
        『光の川』は、ほんと誰にでも切実な問題ですよね…。私はこれで凹んだかも。
        では、では〜。
        • uririn
        • 2007/10/15 11:24 PM
        こんばんは。

        生々しかったです。
        そ〜なんですよね。桐野さんのお得意分野なんですよね。
        桐野さんのを読んでるときはあんまり感じなかった嫌らしさを感じてしまったんですけど…

        いや〜。濃かったです。
        ちきちきさん、こんばんわ(^^)
        ほんと「生々しかった」ですね〜。あんまり「どろどろ」の恋愛感情を持ったことがないので、ここに出てくる人たちの「執着」みたいなのは理解できないんだけど、こういう事件が頻繁に起こるというのは、結構世間は「どろどろ」してるのかなと。それにしても最近は「事実は小説より奇なり」の事件がほんと多くて…。
        では、では〜。
        • uririn
        • 2007/12/16 11:38 PM
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        • 2009/11/24 10:58 AM
        三面記事小説/角田 光代 ¥1,300 Amazon.co.jp バリケードのような家に住む姉夫婦、妻殺害をネットで依頼した愛人の心の軌跡…。誰もが滑り落ちるかもしれない記事の向こうの世界。現実がうみおとした6つの日常のまぼろしを、鮮やかに描いた小説集。 実
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        • 2008/08/03 2:53 PM
        2008年 最初に読んだ本がコレ。 「三面記事小説」    角田光代:著     文芸春秋/2007年9月/1,300円 私は殺人を依頼しました。 恋人の妻を殺してほしいと頼みました。 誰もが滑り落ちるかもしれない記事の向こうの世界。 現実が
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        • 2008/01/11 2:37 PM
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        • ぼちぼち
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        • 粋な提案
        • 2007/10/13 3:20 AM

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