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    『ああ正妻』姫野カオルコ

    ああ正妻
    ああ正妻
    姫野 カオルコ 2007/3/30発行 集英社 P.280 ¥1,680
    ★★★★★
    「小早川くんの奥さんというのは、そんなにすごい方なのですか?」
    事実をそのまま語ったところでだれも信じまい。かくして雪穂は、いちどたりとも一瞬たりとも躓くことなく、ひかりかがやく日なかを歩いていくだろう。白い夜ではなく。これまでそうだったように、これからも。主観でのみ生きることの、その鋼鉄の強さ、ダイヤモンドの清澄。なんぴともかなうまい。
    「……大きな窓と小さなドアのある家で、レースを編むような方です」

    ごくごく普通の家庭に育ち、有名私大を卒業後、「ためしに受けた」競争率の高い大手出版社にめでたく入社を果たした、謙虚で自己顕示欲のないまじめな男、これまで複数の女性になどもてたこともない目立たない男、小早川正人。

    そんな小早川の経済力と人柄に「男」としてではなく「夫」としての素質をいちはやく見抜き、デートに誘い、少々こずるい手を使って結婚にまでこぎつけたのは、お嬢さま女子大出身で、同じ出版社でアルバイトをし、「自らの水着姿のテレホンカード」配りで一躍有名になった「噂のバイト嬢」雪穂。

    そして高給取りなうえに、何もかも自分の思うがままになる夫「魔法の杖」のような小早川を手に入れた雪穂が、二人の女の子をもうけ、夢に描く幸せな家庭を築き上げていくのと反比例するかのように、小早川はどんどん自分の居場所をなくしてしまい……。

    小説家、瓶野比織子(かめのひおるこ)が、10年来の知人である大手出版社の編集者、小早川正人から聞かされてきたという結婚生活の全てを、嘘いつわりなく書き上げた(という体裁の?)「いくらなんでもありえない」理不尽な(小早川にとっては)結婚生活を描いた長編小説。

    『ゴールインしてから始まる物語
    奥さんという問題、夫という病。
    妻はミッションスクール卒の「お嬢さま」、娘2人も妻の母校に通い、恵まれた結婚だと人は言う。しかし、その驚愕の実態とは…。』だ、そうで。


    ありえなくもない話だなと思えてしまうのは、友達の話を聞いてても、女の人の結婚観って結構みんなこんな感じかなと…(男の人が聞いたら憤慨しそうだけど)なるほど、こうやって女は自分の思い描く幸せを掴むのかと、それができない私には羨ましいお話で。

    まあ、雪穂も雪穂だけど、小早川も小早川で「妻を性欲の対象として見た事はあっても、愛情を感じたことが一度もない」ことに気付いて愕然としているぐらいだから、これはこれでバランスの取れた夫婦なのかもしれないなと。

    結婚って…したことない私には、こんなことが結婚なら、やっぱりちょっと考えられないなと、改めて考えさせられてしまったかも(まあ、どちらかというと小早川の立場で読んでしまったので、散歩に出かけるのにさえ理由が必要なんて、そんな不自由な生活は絶対耐えられそうにないなと)。

    ところどころ急に話が飛んで、誰の話かわからなくなったり、難しい話になったり、余計な話が多くてよみづらいところもあったけど、ぶさいくなのに、社内人気ナンバーワンの、吉見のもてる理由や、ベストセラー本『しこめのいいわけ』(『負け犬の遠吠え』のこと?)の分析のくだりはなかなか納得で、小早川の身の上を表す「ドナドナ」や、『白夜行』をもじった『白い夜を行く』(妻の雪穂の名前がここから来ていたとは…)にはかなりウケてしまったし。

    そして最後の、小早川の妻への反撃のあまりのしょぼさにも…。

    懐かしい小坂明子の『あなた』の歌詞もこの本の中に出てきたけど、あれって本当はとても悲しい歌だったのだなと、大人になってから気付いてショックを受けた私には、あの歌に出てくるような理想の結婚像(家庭像?)というものが全く浮かばなかったりする…(描くだけ虚しくなるような気がしてしまって)。

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