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    『夜想』貫井徳郎

    夜想
    夜想
    貫井 徳郎 2007/5/30発行 文藝春秋 P.447 ¥1,750
    ★★★★
    「……うまく説明できないけど、おれは嬉しかったんですよ。おれがこんなに大きい悲しみを抱えているのに、周囲の人間にとってはあくまで他人事でしかない。そんなときにおれのために泣いてくれる人がいたので、すごく嬉しかったんです。なんというか――助けられました」

    目の前で妻子が炎にのまれてゆくのを、なす術もなく呆然と見ていることしかできなかった無力な自分を責め、後を追おうにもその気力さえ失くし、絶望の日々をただ生き続けている「雪籐」。

    職場でも同じミスを繰り返すばかりで一向に立ち直る気配を見せない雪籐に、同僚の憐れみもいつまでもは続かず…。

    誰にも理解されないことへの不満や孤独を抱える雪籐は、街で偶然出会った女子大生、「遥」の特殊な能力によって癒され、初めて自分に共鳴してくれる相手を見つけられたと信じ、遥の願いを叶えることをこれからの生きる糧とすることで、生きる気力を取り戻そうとする。

    その能力のせいで子供の頃から辛い思いをしてきたという遥もまた、雪籐の全面的な支援を受け入れ、より多くの人の役に立てればと、人目に晒されることを承諾し、最初は地道だった遥の小さなボランティア行為が、マスコミにも取り上げられるようになると、周囲に支援者も集まり出し、雪籐の思いをよそに、やがて大きな団体「コフリット」へと姿を変えてゆくことに。

    そしてまた、別の場所には、愛情を注ぎ込んで育てた一人娘に見捨てられ、必死で娘の行方を探し始めた母親の存在が。

    やがて歪んだ愛情を持つ母親は「遥」の能力に縋ろうと「コフリット」を訪れるのだが…。

    「――あたしはずっと、夜の中にいました。
    救われる者と救われない者。
    名作『慟哭』から十四年。ふたたび〈宗教〉をテーマに、魂の絶望と救いを描いた雄渾の巨篇。」だ、そうで。


    最初は本当に小さな「善意」に、色んな思惑の人間が集まってきて、どんどん大きくなって、当初の理想が次第にずれていって、やがて「宗教団体」のように見做されて…というような過程が解りやすく書かれていて、今あるそういった団体の多くも、始まりは「一人でも多くの人の為に…」とか、こういうことだったんだろうなぁと。
    そこに「お金」が絡んでくるのも、なるほどこういうことなのかと、少し納得。

    ただ、あんまりそういうことには今のところ興味がない(多分救済が必要なほど、苦しいことが今はない、ということだけでいつかは縋りたくなるのかもしれないけど…)ので、途中までは読んでいて正直あんまり面白くなくて、何度も途中で寝てしまった…。

    「コフリット」が大きくなるにつれて、雪籐の当初の思惑からずれていくもどかしさとか、雪籐が感じる居心地の悪さというか、そういうのは読んでいて「なるほどなぁ」とは思えるし、今の、自分のことしか考えない人間が多すぎる世の中を少しでも良くしたい、というようなニュアンスも何となくは分るけど…。

    私は貫井さんの本の中に出てくる「狂気の人」が結構好き(正気を逸脱しすぎて、怖すぎるところが…)なので、娘を探す母親の部分はかなり読み応えがあったし、後半からは俄然話の展開が面白くなったというか、ああ、さすがに貫井さん、という感じ。

    そして、読み終わった後に、「救済」とはなんぞや、と結構深く考えさせられてしまったかも(というか、今もずっと考えてるし、しばらく考え込んでしまいそうな…)。

    宗教でも何でも、人が何かに救いを求めて、その時救われたとしても、そこから先は?と、最終的な「救い」って何なんだろうと。

    やっぱり「救い」とは自分の心の問題ではなくて…なのかもしれないなと。
    でもやっぱり難しい…難しすぎるテーマを、貫井さん選びすぎ。

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        コメント
        こんばんは。
        “何度も途中で寝てしまった”、にびっくり。字が小さかったですもんね。わかります。
        「狂気の人」今回も出てきましたね。やっぱり貫井さんって納得。そして雪藤の秋葉原の再会で、まさかのショックも(想像通り)。
        「救済」…あんまり深く考えきれないので考えないようにしてましたけど、今回読んでみて…受身じゃいけないんだろうな〜って思いました。
        “心の問題ではなくて…なのかもしれないな”の部分、「励ましてくれる人の存在」と私は感じましたが、いかがでしょう?。
        藍色さん、こんばんわ(^^)
        何故かすいすい読めなかったのですよね〜。歳とともにどんどん字が読みづらくなってきたのかも(^^;「救済」は、ほんと自分のことばっかりじゃなくて他人を思いやれる気持ち、誰かに何かをしてあげたいという気持ちを持てて初めて自分自身も救われるのではないかと。
        あの部分は、なので他者との繋がり方というか、そういうことを読んだ直後考えてたのかな?励ましてくれる人、励ましてあげられる人、上手く言えないけど、そういうことを考えてたような気がします(半分くらい忘れてしまってるんだけど(^^;。
        では、では〜。
        • uririn
        • 2007/06/24 11:42 PM
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        著者:貫井徳郎 夜想価格:¥ 1,750(税込)発売日:2007-05 不慮の事
        • たこの感想文
        • 2007/08/03 1:17 AM
        **************************** 32歳のカー・ディーラー、雪籐直義は交通事故で愛する妻子を一瞬にして失ってしまった。それ迄は有能なカー・ディーラーだった彼も事故後は仕事に身が入らず、同僚との間に無用な軋轢を生み出して行く。生
        • ば○こう○ちの納得いかないコーナー
        • 2007/07/17 4:45 PM
        写真は松尾哲。装幀は関口聖司。「別冊文藝春秋」第261号〜第269号連載。かなりネタバレあり。 目の前の事故で最愛の妻娘を喪った雪藤直義(ゆきとうただよし)。苦しんでいたある日、定期入れを拾った天美遙(あまみ
        • 粋な提案
        • 2007/06/24 3:17 AM

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