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    『八日目の蝉』角田光代

    八日目の蝉
    八日目の蝉
    角田 光代 2007/3/25発行 中央公論新社 P.346 ¥1,680
    ★★★★★
     ここではない場所に私を連れ出せるのは私だけ――かつて抱いた気持ちが唐突によみがえる。
     そうだ、どこかにいきたいと願うのだったら、だれも連れていってなんかくれやしない、私が自分の足で歩き出すしかないのだ。

    1985年の冬、不倫相手の男の家庭から、赤ん坊を連れ去り、逃亡の果てに辿り着いた地で、束の間、「薫」と名付けた娘と二人きりの親子としての暮らしを許された女。
    どうしても母親になりたかった「希和子」。

    娘に自分の全てのものを与え、少しでも長く、二人きりの時間が続けば良いと、ただそれだけを願っていた希和子の、幸せな時間は、ある写真をきっかけに脆くも崩れ去ることに…。

    そして2005年、20歳になった「薫」は、実の両親の元を離れ、大学に通う傍ら、生活費をバイトで稼ぎ、父親の役目を放棄した父や、家庭を放棄した母を嫌い、自分たちの家庭をめちゃくちゃにした、血の繋がりのない、かつて「母」であった女を憎むことで、かろうじて自分を保ちながら、黙々と、ただ生きることをこなす日々を送っていた。

    そんな「薫」のバイト先に、ある日突然現れたのは、2歳だった頃の「薫」と、ある施設で一緒に暮らし、よく遊んでいたという、千草と名乗る女。

    千草は、自分たちが当時置かれていた特別な境遇に「なぜ、自分でなければならなかったのか?」という疑問を抱いたまま大人になり、その答を求めるために「薫」を探し出して会いに来たのだという。

    そして「薫」も、これまで誰にも言えなかった胸のうちを初めて曝け出し、過去と向き合うことを決心し……。

    「逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか―――   
    理性をゆるがす愛があり
    罪にもそそぐ光があった
    角田光代が全力で挑む長篇サスペンス」だ、そうで。


    久々に魂が揺さぶられるような本に出会ってしまったかな、と。
    角田さんの新境地(全部読んでないから知らないけど)というか、これはなんだか凄まじい。

    かなりドキュメンタリータッチで、誘拐犯として逃げる女の逃げ場所も、かなり特殊な場所で、実際こうやってそういう場所に逃げ込む人たちもいるんだろうなと思わされるし、その受け容れ先のずるさも奥が深くて、生き延びるための人間の知恵のフル回転というか…。

    犯人なんだけど、赤ん坊を連れて逃げる女の切実な思いは、充分過ぎるほど解ってしまうし、このまま…とさえ思えてしまった。
    被害者なのに世論に叩かれる、実の両親の「どうしようもなさ」も…、なんとなくは理解できるかも。

    「なんでこんなしょうもない男の子供が、そんなに欲しい????」と、第三者なので思えるけど、実際の恋愛とは、そういうものかなとも(そういう男ばかりを好きになる、昔の自分の愚かさも知ってるし)。

    そうして、大人たちの身勝手すぎる行動で、何の罪もない子どもたちが、こんなに苦しんで苦しんで、心に空洞を抱えたまま、大人になってしまうというのは、読んでいてとても辛かったかな。

    なので「憎みたくなんか、なかったんだ。」という「薫」の台詞のくだりには、心底胸が熱くなってしまったし、「愛情」を充分知っているはずの「薫」が、これからしようとしていることにも、「きっと大丈夫」と言いたくなるような。

    タイトルの『八日目の蝉』の意味もすごく良いし、ラストの光景もあまりにも美しくて、いつか私もその景色を見たいなと…(近くだから、GWにでも本当に行こうかな、素麺食べに)。
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        コメント
        uririnさん、こんにちは。
        赤ん坊を連れて逃げる希和子の、母親になりたい気持ち
        子供を守りたい気持ちがリアルに伝わってきましたよね。
        後半の「薫」の行動も胸に迫りました。
        「薫」は愛情を知ったので、大丈夫って応援したくなりました。
        あの島、お近くなのですね〜。
        私はむかし、桃太郎大通りを通ったことはありますけど…。
        藍色さん、こんばんわ(^^)
        最近読んだ中では、一番心にぐっとくる小説でした。実際に起きた事件みたいで、緊迫感があって、本当に希和子さんの子供を守りたい気持ち、リアルに伝わってきて、痛々しくなるというか。前半は凄まじいお話でした。
        そして、あの島、近いという程すごく近くはないけど、ぱっと行けちゃいそうかなと。これ読むと、すごく行きたくなっちゃいますよね(^^)
        では、では。

        • uririn
        • 2007/04/22 11:40 PM
        大人のことを書いてるのかな?
        こんにちは。TBさせていただきました。
        角田さんの作品は3冊目だったのですが、本当に衝撃的でした。
        女性の目線で見ると、私は希和子を応援したくなりました。
        希和子の受けた仕打ちはひどいですもん。
        でも、母親になったらまた見方は変わるのかなとも思いました。
        • 苗坊
        • 2008/02/02 11:12 AM
        苗坊さん、こんばんわ(^^)
        これは、犯人であるはずの希和子さんに、かなり同情してしまいました。実の親はどうしようもないし…。
        文庫になったら、もう一度読見返してみたいと思えるようなお話でした。こういう重厚な角田さんのお話、大好きです。
        では、では〜。
        • uririn
        • 2008/02/06 12:48 AM
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        八日目の蝉 希和子は自分と血の繋がらない赤ん坊を抱き、必死にその場を離れた。 その赤ん坊は、自分の愛した男性とその妻の子ども。 全てのものと引き換えに、赤ん坊「薫」を育てる事を決意する。 逃げて、その先に何が見えるのか。 角田さんの作品は3冊目です
        • 苗坊の読書日記
        • 2008/02/02 11:07 AM
        エンターテインメント小説を対象にした第2回中央公論文芸賞は、 「全編、ハラハラするようなリアリティーと迫力があり技も力もある小説」 などと評価され、 角田光代さんの「八日目の蝉」に満場一致で決まりました。   第2回中央公論文芸賞受賞作「八日目の蝉
        • 及川的大人のブログ
        • 2007/08/30 9:38 PM
        装幀は坂川栄治・田中久子(坂川事務所)。装画は水上多摩江(題字共)。 「読売新聞」夕刊2005年11月21日から2006年7月24日掲載。 逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか−−理
        • 粋な提案
        • 2007/04/22 4:11 PM

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