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    『静かな黄昏の国』篠田節子

    静かな黄昏の国
    静かな黄昏の国
    篠田 節子 2007/3/25文庫化 角川文庫 P.376 ¥620
    ★★★★
    しかし彼らの予言したこと、危惧したことなど何も起こらなかった。何しろ人類滅亡の予言だの、警告だのというものは、それこそ一千年も前から出され続けていたのだ。
     そして案の定、ホロコーストも、地球上の人口を十分の一にするウィルスも、南極の氷の融解とそれにともなう海面上昇も、何もなかった。
     エイズの蔓延も地球規模の旱魃も、突出した技術の発達によって切り抜け、人口は現在も着実に増え続け、産業社会の崩壊も文化の後退も起こらず、ますますしたたかに、ますます不健全に、奇形と化した人類は繁栄を続ける。
     それでもやがて終焉を迎えるだろう。……〜『静かな黄昏の国』より〜

    一匹六十万円という、まるでプランクトンのような小さな「人魚」に魅せられた一人の青年は、それからわずか十ヶ月後に遺伝子組み換え技術を持つ日本のメーカーによって、ポピュラーなペットとして売り出されると、それを手に入れ、鑑賞しているうちに、どうしても口にしてみたい衝動をおさえきれず…『リトル・マーメイド』

    知人や友人から借金を繰り返し、返済を迫られると開き直ろうとする男は、昔捨てた女からの電話に一縷の望みを託すのだが…『一番抵当権』

    地方の文学賞を受賞したものの、さっぱり売れなくて生活に窮する作家の男に舞い込んだ執筆依頼は、新作の美少女ゲームのノベライズ本…。
    自分の才能を過信する男は、最初はゲームに出てくる美少女とのやりとりに辟易としていたものの、どんどんゲームに嵌り込んでしまい…『ホワイトクリスマス』

    繁栄を謳歌するアジアの国々に囲まれ、貿易赤字と財政赤字と、膨大な数の老人を抱え、さまざまな化学物質に汚染されてもはや草木も生えなくなり、自給できるのは核燃料サイクルによって支えられる電力のみ、というアジアの最貧国に転落した近未来の日本で、生きる望みを失った老夫婦の終の棲家となった場所は…『静かな黄昏の国』

    他、『陽炎』、『エレジー』、『刺』、『子羊』の8編から成る短編集。

    「現在・過去・未来にわたり、すべての生きとし生けるものに等しくやってくる終末の風景を、時に叙情的に、時に黒い笑いを交えて直木賞作家は描き出す。もしかしたらそれは、明日のあなたのことかもしれない――甘美な破滅と残酷な救済が織りなす、8つのものがたり。
    おかえりなさい。終末の地へ。
    すべての滅びゆくものたちに贈る短編集――」だ、そう。


    篠田さんの書く、近未来ものやパニックものは、本当にリアリティがあり過ぎて、ぞっとするからすごく好き。
    全く有り得なくもないように思えるし…。

    『リトル・マーメイド』のお話は、どこかで読んだことあるような…と思ったら、東野さんの『毒笑小説』の中に収められてる『エンジェル』と似通ってて、どちらも風刺が効いてて、読み比べると、なお面白いかも。

    『陽炎』と『エレジー』は、音楽もの(『ハルモニア』とか、そのジャンルの篠田さんのは読んでないので、多分そういう感じなのかなと)。

    『一番抵当権』に出てくる男は、もうどうしようもないくらいお馬鹿なので、このラストは小気味良いし。

    『刺』は、ホラーでもあり、ミステリちっくでもありで、最後にぞぞっとしてしまう。

    『小羊』の「神の子」の話は、以前にアンソロジーか何かで読んだような記憶があってその時も思ったけど、これは映像化されたものを見てみたくなるようなお話。

    『ホワイト・クリスマス』で、美少女ゲームに男が嵌っていくように、私も男のやってるゲームの、その先が気になって気になって、通勤電車でちょこちょこ読んでいたから、仕事中も気になってしまったぐらいに嵌ってしまった。

    この男も、『一番抵当権』の男同様、どうしようもないお馬鹿さんだけど、女性に求めていたものが、「ありがとう、私のために」という言葉と笑顔だけだった、ということに気づいたというのは、何となく解るかも(男の人って本当にそうかも…と、思えるし、現実の女性は強すぎるから、実際の恋愛より、ゲームの美少女に嵌ってしまう人たちがいるんだなと)。

    そして表題作の『静かな黄昏の国』に出てくる近未来の日本の姿は、このままいけば、もしかしたら本当にそうなってしまうのかも…と「原発より農耕が大事かもしれない…」という、以前に読んだ篠田さんの『齊藤家の核弾頭』の中の台詞を思い出してしまった。

    老人が長生きしすぎて、若い人たちが先に死んでいくというのも、今の子どもたちの食生活とかを見てると何だかリアルに思えてしまうし。

    今のようなお年寄りに優しくない世の中のままなら、長生きなんてとてもじゃないけど望みたくないから、ここに出てくるような終の棲家があれば、行きたくなってしまうかも…。

    解説の最後の一行も、かなり怖いし、タイトルも怖いし(まさに今の日本はそうなのかもなと…)。

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        コメント
        uririnは、自給ー!
        それでもアジアで角川が予言するはずだった。
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