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    『千年樹』荻原浩

    千年樹
    千年樹
    荻原 浩 2007/3/30発行 集英社 P.299 ¥1,680
    ★★★★★
     大きな木を眺めていると、ときどき寿久は思うことがある。生物として彼らのほうが人間より格上なのではないかと。彼らの一族は、人類が誕生するずっと前からこの地上に君臨してきた。人間よりはるかに長寿で、本体を失っても再生が可能な生命力を持っている。それに比べたら、人間は小さくて、ひ弱だ。  〜『郭公の巣』より〜

    今は荒れ社となった、人気のない神社の石段を登りきったとば口で、もともとは雑木林と田畑しかなかった土地を切り拓いて建設された新興住宅地を見下ろすように立つ、大きな「くすの木」。

    神社が建つはるか以前より、その地に根を張り、古くから「子盗りの木」と言い伝えられ、人々から畏れられる存在でもあった樹齢千年の「くすの木」も、やがてその命を終えようとしていた…。
    そんな「くすの木」が千年もの長き年月に渡り、見続けてきた人間たちの暮らし。

    「くすの木」が、この場所に根を下ろすことになった壮絶な物語…『萌芽』に始まり、

    第二次世界大戦中に空襲を受けた村の過去と、少し前の現代の話が交錯する…『瓶詰の約束』

    貧しさゆえに幼くして遊郭に売り飛ばされた女と、遠距離恋愛で久しぶりに会えるはずの恋人を待つ女が、時を越えた「くすの木」の下で男を待ち続ける…『梢の呼ぶ声』

    煩いぐらいに蝉の声の鳴り響く「くすの木」の下で、「切腹」をさせられようとする不運な男と、職場の学校での自分の不遇を嘆き、「くすの木」に怒りをぶつける男の話…『蝉鳴くや』、

    離れ離れになった母の姿を追い続ける山賊と、「くすの木」の根元に死体を埋めようとするチンピラたちの愚かな話…『夜鳴き鳥』

    女の子ばかりを産み続けたために、姑から冷たくされる貧しい農家の嫁と、サファリ・パークへ出かけた帰り道、道に迷い、偶然に「くすの木」の側にある史料館に足を踏み入れることになった、一見幸せそうな四人家族の物語…『郭公の巣』

    大正と昭和のはざ間に生まれ、今まさにその命を終えようとしている祖母の若き日の恋と、現代の孫娘の恋の話…『バァバの石段』

    村を襲われ、幼馴染を侍達に奪われた少年と、「くすの木」には思い出したくない過去を持つ、役所の「あれこれ相談課」に勤める男が「くすの木」の最期を見守り、その後に見えたもの…『落枝』で終わる、

    一本の「くすの木」がこの世に生まれてから、次の世代へと命を繋ぐまでの間に、「くすの木」の下で連綿と続けられる、変わらぬ人間の生の営み8編から成る連作短編集。

    「木は、すべてを見ていた。
    千年を生きたクスノキの物語。
    それは、繰り返された人間たちの物語。」だ、そうで。


    これだけ短いページ数の間で、一体どれくらい過去と現代を行ったり来たり出来たことか…。

    何度も何度もタイムスリップして、その度に悲惨な過去を見せ付けられて、でも現代に戻っても、平和かもしれないけれど、人々の暮らしは決して幸せじゃないことを思い知らされる。

    一つの短編に、千年の間の様々な時代の過去の話と、現代の(といっても、昭和50年代だったり、60年代だったりそれも様々で)話が織り交ぜられていて、それらの繋がり方が絶妙(長くても良いから、もっともっと、この「くすの木」が見た事実を知りたいと思ってしまった)。

    時代がどれだけ変わっても、人間がやってることや、人の思いは変わることなく受け継がれていくのだなと痛感してしまうし。

    昔の話はあまりにも壮絶で痛々しいものが多くて(読んでいて、その痛みも、辛さも自分のことのように感じられるほど、リアルに描かれていて、荻原さんの凄みを感じてしまった)、どれも結構ラストに思わず「ぞくり」とさせられたし、救いがなくて全体的には怖かったけど、少し前の時代の『バァバの石段』の、祖母の昭子さんの話には、ちょっとほっとした。

    普段何気に御所の中を歩いてて、古くからある「木」を見る度に、ここに書かれてあるようなこと思ってしまってたけど、「実は人が癒されているのではなくて…」というのに、これから「木」を見る目が変わってしまうかも。

    最初の物語で「自分の死は覚悟していたが、我が子だけは助けたかった。…」という父親の気持ちが、そのまんま、この「くすの木」の気持ちのようで。

    次の世代へ…という気持ち、現代の人間は、徐々に失いつつあるのかも知れないなとも。
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        コメント
        読んでいて苦しかったですね。特に過去の話が。
        「瓶詰の約束」の過去の誠次と現代の敏三の関係。
        「郭公の巣」の過去のトミの話。
        胸が痛かったです。
        だからといって現代が必ずしも幸福かと言えば、そうでもないんですよね。
        重かったです。

        そういえば、「瓶詰の約束」に出てくる昭子さんと
        「バァバの石段」の昭子さんは同一人物なんでしょうかね?
        す〜さん、こんばんわ(^^)
        確かに、すごく重くて、辛くて痛いお話でした。こういうの、どんどん後世に語り継いでもらいたいというか。若い人にはこの話、どう受け止められるのかな?と考えさせられました。
        そして、昭子さん、慧眼ですね!全く気づきませんでした。すごいすごい。年代的に考えてもそうなのかと、感服いたしました。さすがですね。ぼーっと読んでた自分が恥ずかしい(^^;
        • uririn
        • 2007/04/11 12:15 AM
        uririnさん、こんにちは。
        過去の人たちのドラマの数々、辛くて痛かったですね。
        ふたつの物語がどんな接点を持っているのか、に惹かれながら読みました。
        昭子さんの話、ほっとしました。と思ったら横レスですが、、「瓶詰の約束」にも?
        もう一度読んでみるとp53に誠二の従姉として出てました。すごい!す〜さん。
        あ、でもコメントもう書いちゃったので後で書きます。

        そういえば、先日テンプレート褒めていただいてたのにお礼を書けてませんでした(汗)。ありがとうございます。
        でもまだ改善しなきゃです。
        uririnさん、こんにちは。
        過去の人たちのドラマの数々、辛くて痛かったですね。
        ふたつの物語がどんな接点を持っているのか、に惹かれながら読みました。
        昭子さんの話、ほっとしました。と思ったら横レスですが、、「瓶詰の約束」にも?
        もう一度読んでみるとp53に誠二の従姉として出てました。すごい!す〜さん。
        あ、でもコメントもう書いちゃったので後で書きます。

        そういえば、先日テンプレート褒めていただいてたのにお礼を書けてませんでした(汗)。ありがとうございます。
        でもまだ改善しなきゃです。
        藍色さん、こんばんわ(^^)
        ほんとに鬱蒼と繁る樹の下に、おいてけぼりにされたような、暗くて辛くて痛いお話ばかりでした。
        そして、あの人が、この人だったのか…の、す〜さんご指摘の登場人物の意外な接点も、なかなか楽しめました。こういう重いの好きです。
        では、では。
        • uririn
        • 2007/05/18 12:42 AM
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        • 粋な提案
        • 2007/05/17 12:47 PM
        千年間生き続けた巨大なくすの木。 その萌芽から伐採されるまでの千年間で くすの木が見続けてきた人間たちの物語。 全8話からなる連作短編集。 1篇の中に二つの時代の話が交互に入るのだけど、 その二つの時代の話が
        • My Favorite Books
        • 2007/04/10 9:29 PM

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