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    『トリップ』角田光代

    トリップ
    トリップ
    角田 光代 2004年光文社刊 2007/2/20文庫化 光文社文庫 P.262 ¥520
    ★★★★★
     どうして結婚したのかと、どうして家庭をつくろうと思ったのかと、ときおり疑問に思うことがある。それは後悔ではなく、純粋な疑問だ。きっと今と逆のことをしていても、同じ疑問を抱いたと思う。どうして結婚しないのか、どうして家庭をつくろうとしないのか。つまるところ、あたしは高校生だったあのときと同じことを考えている。いったいあたしに選択権なんてものがあるのだろうか。何かを選んだつもりで、結局何ひとつ選んではいないのではないか。選択権も可能性も持たず、ただただ、待つためにここにいるのではないか。
    待つ。何を?                        〜『トリップ』より〜

    東京から電車で一時間半の私鉄沿線にある、何の変哲もない地方町。

    さびれた駅前のロータリーをまるく縁取るように本屋、不動産屋、喫茶店、居酒屋、古本屋、パチンコ屋などの数軒の店が並び、アーチをくぐれば、肉屋、八百屋、花屋、豆腐屋が軒を連ね、不思議なにぎわいを見せる商店街がある小さな町で、この町の暮らしに倦み、けれど、この町から出て行くという選択肢も持たないままに暮らし続けていくしかない人たち…。

    駆け落ち相手にすっぽかされ、日常生活に戻るしかない、道を踏み外してみたかった女子高生…『空の底』

    幼い子供を抱えてもなお、クスリに走ってしまい、夫は自分との結婚を後悔しているに違いないと考える専業主婦…『トリップ』

    独占欲の強い同棲相手の提案を受け入れ、仕事を辞め主夫業に専念することになった、ヒモ同然の専業主夫…『橋の向こうの墓地』

    さんざん男と遊んだ挙げ句にお見合い結婚し、肉屋に嫁いで15年。来る日も来る日も油にまみれたカウンターの中で客の相手をするだけの、まるでパートのような主婦…『ビジョン』

    酒屋に嫁いだ大学の同級生に片思いし続け、彼女のためにこの町に住み、ストーカーのように後をつけまわす男…『きみの名は』

    他、離婚と引き換えに店を貰った喫茶店の女主人…『百合と探偵』、学校でひどいいじめに合いながらも、新しい父親に期待する花屋の一人息子…『秋のひまわり』、ひがみ根性が染み付いた35歳の独身女、仕事の続かない古本屋のアルバイト店員…『カシミール工場』、不倫の末に家を出た女と一緒に暮らすことになった年下の男…『牛肉逃避行』。

    そして、この町からの脱出を試み、海外でホテル暮らしをする女…『サイガイホテル』の10編から成る、小さな町のどこかの場所で誰かと誰かが微妙にリンクする連作短編集。

    「平凡な街に暮らすふつうの人たちも 誰にも言わない秘密を抱えている。
    小さな不幸と小さな幸福を抱きしめながら生きる人々を、透明感のある文体で描く珠玉の連作小説。直木賞作家の真骨頂。」だ、そうで。


    『ビジョン』の主人公、さんざん恋愛して「そういうのはもういいの…」と、見合いでさっさと結婚を決めた、自身が最大の「はずれくじ」と自嘲する肉屋のおかみさんが、結婚を決めた理由「ゆるされている」という感じは、すごく良くわかるかも。

    『カシミール工場』の、ひがみ根性丸出しで、他人とうまく関われない主人公の「ショタコン」や、これまでもらったプレゼントの中身には、ちょっとひいてしまったけど…最後に彼女にこの品を選んでくれた人の思いやりに、ちょっと嬉しくなってしまった。

    そして『百合と探偵』の、喫茶店の女主人の「たぶん、今のあたしを、たとえば十七歳のあたしが見ていたら、……将来がこれだと知ったら、簡単に絶望していた…」という台詞を聞いて、そうならないために、ちょっと今から努力しとこうかなー、と反省したりして。

    たぶん昔の自分が見たらがっかりしてしまいそうな、今の自分の生活を、改めて考えさせられてしまったような一冊。

    『ビジョン』の主人公の友達の、五年後、十年後の「ビジョン」の話は、かなり本当だと思うし。

    実際高校生の頃、モジリアニの絵に憧れて「フランス人と結婚する」と言っていた同級生は、本当にフランス人と結婚して向こうで暮らしてるし…、そういう「ビジョン」をまず思い描かなければ、今の生活を変えることは出来ないのかもしれないなと(変えたいかどうか、そこが微妙なところなんだけど…ぬるま湯だし。でも、このままだと老後が心配だし…ううっ、三十年後、大金持ちになってたい)。
     
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        コメント
        主人公のこと…?
        一人ひとりの心の奥に潜むもうひとつの想い。
        誰もが持ってるんですよね。
        今の自分じゃないもう一人の自分。
        そんな自分に気付かせる小説集でした。
        微妙にリンクさせながら
        進む話はこの街の人たちの生活を
        垣間見るようで面白かったですね。
        す〜さん、こんばんわ(^^)
        「今の自分じゃないもう一人の自分。」考えてしまいました。
        あの時結婚していたら今頃は…とか、でも、きっと今より幸せじゃないはず、と言い聞かせてます。てへへ(^^;では、では。
        • uririn
        • 2007/03/16 1:44 AM
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        ある町を舞台にして 幾人もの男女が織り成す日々を淡々と綴っている印象。 どの人間にもそれぞれの歴史があり、 そして日々の生活がある。 でも、それが本来の自分の居場所なのか?と聞かれると 素直に「そうだ」と答
        • My Favorite Books
        • 2007/03/15 8:55 PM

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