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    『通天閣』西加奈子

    通天閣
    通天閣
    西 加奈子 2006年 筑摩書房 P.203
    ★★★★★
    「生きている」というのは、もっと、血の通ったことだと、俺は思う。こんな風に日々、早く時が過ぎればいい、今日が早く終わればいいと思いながら過ごし、そのくせ明日を心待ちにすることもない。こうやって明日も早く終わり、その次の日も早く終わり、その次の次の日も早く終わればいい、そう思いながら生きるのは、生きているのではなく、こなしているのだ。連綿と続く、死ぬまでの時間を、飲み下すようにやり過ごしているだけだ。

    家庭を持つことをあきらめた中年男は、時計の電池を抜き去り、時間を止めたまま、一日一日をただやり過ごし、他人との接触を極力避け、工場での単調な仕事をひたすらこなす毎日。

    生活の中心であり、全てであった同棲相手が、夢を追いかけ一人アメリカに旅立った後、取り残された若い女は、ひとりぼっちの孤独を持て余し、海を渡った男の興味を惹きつけておくために夜の世界に足を踏み入れ、辛い仕事をこなす毎日。

    別々の場所で、同じように、凍えそうなほど冷たい部屋で目覚め、一日が始まり、終わることをただ繰り返す二人。

    そして、かつて一人の人を愛せなかったことを悔いる男が、自分の人生を嘆き「死にたい」と思ったとき、
    父親の顔さえ知らずに育った女が、一つの愛を失い、生きる力を失くし、自棄になりかけたとき、

    二人は同時に「俺以外につまらない人生」、「私とどっちが不幸か」という思いから、今まさに死のうとしている奴の顔を拝みに行こうと「通天閣」の足元へと駆けつけ…。

    「えらいこっちゃ!
    このしょーもない世の中に、
    救いようのない人生に。
    ちょっぴり暖かい灯をともす、
    驚きと感動の物語。」だ、そうで。


    これはほんまに「ええ話」。
    「魂の再生」のきっかけとなる場面がおもろすぎる(舞台が大阪だから、余計に…)。

    中年男の、人を寄せ付けまいとする生き方の奥底にあるものが、切ないというか、胸が苦しくなるほど締め付けられるというか…(しかも、そんなこと言ってる割には、自ら歩み寄ってるのがまた切ない)。

    同棲相手の「マメ」が出て行って、それでも毎日鏡に向かって「別れたわけやない」と一人つぶやく女の姿も痛々しい。

    最初の方は「なんだ、この暗いムードは…」と、読んでいて絶望したくなるほど寂しい話なのかと思ったけど、背景にある大阪の新世界の猥雑さが、落ち込むことを赦さないというか、人情味あふれる大阪弁が悲壮感を和らげているというか、絶妙なおもしろさを醸し出すというか。

    最後に男が叫んだ一言は…あ、憐れすぎて、くくくっ。

    各章の冒頭の「夢」の話もすごく好きだし(見たらうなされそうな夢ばかりだけど)、心に響く台詞が本当にたくさんありすぎて…(私も「死ぬことを待つだけ」の日々をやり過ごしてるなぁと…これではいけないと、つくづく考えさせられた)。

    女の働く「サーディン」の店の名前の由来も「こてこて」で良いけど、店の「ママ」さんのキャラがまた良くて(一緒にいたらイライラしそうだけど)…結構ツボだらけだったかも。

    私も長い(あまりにも長すぎる)充電期間を終えて、そろそろ、「阿呆」のように人を愛そうと、腹の底から力が湧いてきた、ような。
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        コメント
        uririnさん、こんばんは。うれしいっ!。
        トラバ&コメント、本日分をお先にいただいちゃって、ありがとうございます。
        この本、実際の場所や雰囲気をご存知の京阪神の方が読まれたら、
        どう感じるのか、興味津々だったんです。
        最初の方の暗いムードから、最後の場面。
        男の一言が、ほんと、くくくっ。でした。
        心に灯が点るようないい感じになりましたね〜。
        そして、おぉ、充電期間を終えられて力が湧いてきたのですね!。
        影ながら、応援しています。
        最後は「あ〜っ勘違い」ってな終わり方で
        さすがに苦笑でしたけど、
        なんか明日に生きる力が湧いてくるような
        ラストで
        その点では好きな作品でした。
        藍色さん、こちらにも(^^)
        まさに最後「心に灯が点るような」本でした。
        そして、ぜひ応援していてください。
        最後に一花…といきたいところです。
        では、では。
        • uririn
        • 2007/01/23 8:04 PM
        す〜さん、こんばんわ(^^)
        でも、実際あんな風に誰かに叫んでもらえたら幸せだろうなぁ…と、思ってしまいました。
        読み終わった後も、そのシーンを思い出しては笑ってしまうほど、印象深い良い本でした。
        では、では。
        • uririn
        • 2007/01/23 8:08 PM
        コメントする








           
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        地味な小説なのに、ものすごく心を揺さぶられた。 最初は登場人物たちが嫌いだった。 まず中年の男が登場する。真面目に働いているし、人並みの常識が備わってもいるが、周囲の人々とは一切かかわろうとしない。
        • ぱんどら日記
        • 2007/05/15 9:26 AM
        通天閣西 加奈子 (2006/11)筑摩書房 この商品の詳細を見る 中年男はなぜかホモに好かれ、電池を抜いた時計に囲まれた暖房の無い部屋に住む。 家庭を持つことをあきらめ、他人との接触を極力避けて深く関わり合う人も居ない。
        • しんちゃんの買い物帳
        • 2007/05/08 5:04 PM
        夢を失いつつ町工場で働く中年男と 恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。 この二人の日常が交互に描かれています。 そしてこの二人が接することはありません。最後までは。 最後にほんのちょっとだ
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        装幀は多田進。装画は西加奈子。 主な作品「あおい」「さくら」「きいろいゾウ」など。書き下ろし。 夢を失いつつ町工場で働く四十四歳の中年男。チーフとしてスナックで働く若い女。通天閣の近くに別々に住む、無関係のよう
        • 粋な提案
        • 2007/01/22 2:03 AM

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