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    『春の魔法のおすそわけ』西澤保彦

    春の魔法のおすそわけ
    春の魔法のおすそわけ
    西澤 保彦 2006年 中央公論社 P.271
    ★★★★★
     要するにあたし、ひとりぼっちなんだ。……
    このままどんどん歳をとって。老いさらばえて。都会の片隅で、ひとりぼっちのまま死んじゃうんだ。
     なんて、むなしい。こんなむなしい末路のために、これまで一生懸命、生きてきたのだろうか、あたしは?
     なんのために。
     この苦しみは、寂しさは、虚しさは、いったい、なんのため?
     答えてくれる者はいない。誰も。

    記憶を失うまで飲み続け、酔っ払ったまま電車に乗り込み、二日酔いで意識の朦朧とした朝を迎え、気づけば武道館へと続く道を歩いていたという売れない女流作家、もうすぐ45歳の誕生日を迎える鈴木小夜子。

    こみ上げる嘔吐感に堪えきれずに道ばたでリバースしてしまい、何か口を拭う物をと、持っていたバッグをまさぐり、そこで初めて自分の物ではないことに気づき、バッグの中を見て愕然とし、コンビニのトイレにかけこみ、中身を確認してみると、そこには札束が20束。

    取り敢えず、そのまま出るのも気がひけ、札束から一枚抜き取り、ビールと日本酒を買い込み迎え酒を決め込んで、千鳥ヶ淵公園へと向かう途中、入学式へと向かう親子連れの団体に出会い、はたと昨夜の記憶が蘇り、ひとりぼっちの寂しさに押しつぶされそうになった小夜子は、2000万をネコババすることに。

    そしてすっかり「ご乱心」してしまった小夜子は、何を血迷ったか、公園のベンチにたたずむ美青年に思わず「きみ、いくらなの?」と声をかけ、バッグの中身と交換に……

    「『ある朝、わたしは、すべてが嫌になりました』
    ちょっとミステリアスで、あたたかくて、思わず涙する 
    ヤケな女流作家と謎の青年の不思議な出会い
    あたたかく、美しい再生の朝を――女はいつでも、手に入れることができるんです」だ、そう。


    なんともまあ、羨ましくなる「夢」のようなお話で…。
    小夜子さんの飲みっぷりは、酒飲みの私でも、読んでて少々気持ち悪くなるほどだけど、酔いから醒めて理性を取り戻せば、ご乱心できなくなるから飲み続けるというのも分かるかな(いや、でも、ここまではちょっと…)。

    小夜子の申し出をやすやすと受け入れる美青年の「謎」が解き明かされれば「なーんだ」なんだけど、それでもちょっと切なくなる(いや、これも羨ましい)。

    色気のある話なんだか、ない話なんだか良くわからなかったけど、読み終わった後は何故か「私ももう一度、頑張ってみようかな…」と思えたような。

    にしても、主人公の小夜子さん、もう少し身奇麗にしててほしかったかな(これからその年代を迎える身として、ちょっと許せないかも)。

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