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    『切れない糸』坂木司

    切れない糸
    切れない糸
    坂木 司 2005年 東京創元社 P.365
    ★★★★
    そう、「今」は続かない。
    それは親父が死んだことによって、俺が唯一学んだことだ。
    終わらないことはないし、いなくならない人はいない。でも、だからっていつ訪れるかわからない終わりを考えて、くよくよ暮らすのはまっぴらごめんだ。
    だから俺は、今を楽しもうと思う。今、起こっていること。今、目の前にいる人。それをきちんと味わっておけば、突然終わりが来ても後悔せずにすむかもしれない。

    商店街によくある、町のクリーニング屋「アライクリーニング」を、父親の死後、急遽継ぐことになった、この家の長男、和也。

    大学卒業を間近に控え、まだ就職先の決まっていなかった和也は、和也が生まれる前からこの店で父親の片腕として働いていた、ベテラン職人「シゲさん」から発破をかけられ、沈みきった母親を見兼ね、その場の雰囲気で、ついつい「俺がやる」と、口走ってしまう。

    そうして、父親の葬儀が終わった後も、しばらくシャッターが下ろされたままだった「アライクリーニング」は、再びボイラーが命を吹き返し、和也という新人を加え、新たなスタートをきることに。

    父親の代わりを果たすべく、ださい原チャリにまたがり、近所のお得意先へと御用聞きにまわり、どこに行っても、父親と比較されることが少々面白くない和也は、母親からの言いつけ通り、汚れ物を受け取る際、隅々までチェックをしていたにも拘らず、お得意先の主人から、仕上がった洗濯物を突き返されてしまう。

    次にその客と出会ったのは、スーパーの惣菜売場。
    あまりにも不器用にパックに惣菜を詰め込む男を見兼ね、最初は無視を決め込んでいた和也が、思わず声をかけてしまったことから、「妻が最近働き始めて…」と、困り果てる男に何かと頼られるようになり…『グッドバイから始めよう』

    同じ町内に住む同級生の母親から、一人暮らしを始めてから実家に寄り付かなくなってしまった娘のマンションへ、御用聞きがてら、様子を見に行ってほしいと頼まれた和也。
    母親同士が仲が良いこともあり、和也がしぶしぶ訪ねると、そこには、黒髪をばっさり切り、茶髪にし、眉を整えた、大学時代とは様子の異なる彼女の姿が…『東京、東京』

    比較的新しい顧客の独身の中年男からの預かり品は、何故か女物の派手な服ばかり。
    お客のプライバシーには立ち入らないはずの、母親やパートのおばさんたちでさえも、さすがにこの男の商売には興味しんしんで…『秋祭りの夜』

    普段は比較的平和なこの町内でも、年末だけは放火や窃盗などの犯罪が増えるため、持ち回りで「火の用心」の夜回りをすることに。
    先に「夜回り」を終えた何人かから、女の幽霊を見たと聞かされる和也。
    商店街の喫茶店でバイトをしている友人、沢田を誘い、夜回りをする和也たちの前に現れた女性は、和也たちに礼儀正しくお辞儀をし、消えてしまうのだが…『商店街の歳末』

    「失敗を重ねながら、謎を解決するたびに成長する和也。さわやかな余韻を残す青春ミステリの決定版。『青空の卵』3部作で絶賛をあびた著者待望の新シリーズ開幕!」だ、そう。
    新シリーズ?なら、これほど嬉しいことはない…。


    なるほど、クリーニング屋さんとは、こんなに奥が深かったのか…と、感心させられてしまった。
    (クリーニング屋さんの腕を競う、「染み抜きコンテスト」みたいなののニュースを以前に見たことがあって、その時もすごく感心したけど…資格もあるとは知らなかった。)

    確かに、出される衣類を見れば、その家の家族構成や、どんな仕事をしているとか、そういった情報は、知り得る職業なんだなぁと、何か、これまで何も思わなかったことが、不思議に思えてしまった(最近は、コート類以外は、専ら「ホームクリーニング剤」で洗ってしまっているので、あまりお世話になってないけど)。

    で、やっぱり坂木さんらしく(?)、和也が解けない謎を持ちかけるのは、「魔法の言葉」を唱えるだけで、謎を解いてしまうという、和也の同級生の男友達、喫茶店でアルバイトをしている料理上手の「沢田」で、この二人の関係も何だか微妙で。

    「沢田」の一言で、しばし凍りついてしまった。
    こんなこと、好きな人から言われてみたいというか…。

    同級生の女の子が出てきたときは、「お、これは…」と思ったけど、そっちには行かないところが何とも…。

    何だか宮部さんばりに、お年を召した方を描くのが上手だなぁと言うか、私が子供の頃には、どこの町内もそんな結びつきがあったなぁと…そこに懐かしさや、優しさを感じてしまう。

    昔はさぞ男前だったであろう「シゲさん」の存在は、「ひきこもり探偵シリーズ」の栄三郎さんとダブってしまうけど…。

    他の友達がみんな就職する中、家業を継ぐことになった和也の、なんとなく「くさる」気持ちは、すごく良く分かる気がした。
    それに対する「沢田」の言葉もまた、すごく良くて。

    やっぱり、また癒されてしまった。
    シリーズ化されて、ずっと続けばいいなと思う。
    また、見守り続けたい人が出来たことが、本当に嬉しかったりするので。

    ここに出てくる映画は殆ど知ってるものばかりで…それも懐かしく。

    解説のところに、ムーミン谷の話が出てきたけど、そう言われれば、本当にこの二人は、ムーミンとスナフキンのよう。
    スナフキン好きとしては、やっぱり「沢田」のキャラに惹かれたりする。

    なので、この先続きがあっても「沢田」に、彼女ができなければ良いなと思ってしまう。
    あ、それはないか…。

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        コメント
        トラックバックさせていただきました。
        • 藍色
        • 2009/02/21 5:20 AM
        最近遅くて本当にごめんなさいm(_ _)m
        • uririn
        • 2009/03/09 11:39 PM
        私はつい最近読書に目覚めました。
        それで最初に手にとったのが坂木さんの切れない糸なのですが、とても面白いと思いました。
        感想文とかを書くのは苦手なので内容のことはあまりうまく言えないのですが、キャラクターが好きです(^◇^)
        切れない糸では沢田くん
        ひきこもりシリーズでは鳥井くん
        シンデレラティースでは四谷くん
        皆謎を解く人なのですが。。。
        ホテルジューシーの代理オーナーは好きにはなりませんでした。笑
        いちばん好きなのは四谷くんです。
        これからも坂木さんの作品に注目していこうと思います。

        こんなしょうもない文を読んで下さってありがとうございました。

        • なっちゃん
        • 2009/03/11 5:52 PM
        なっちゃんさん、こんばんわ(^^)
        私も坂木さんの本に出てくるキャラクターが好きで、四谷くんが大好きで、今歯科技工士さんと付き合ってます(^^)なんか変な縁だけど。コメントとてもうれしいです。こちらこそありがとうございました。これからもよろしくです(^^)
        • uririn
        • 2009/03/19 1:37 AM
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        俺、新井和也。家は商店街によくある町のクリーニング屋さ。 新井と洗いをかけた「アライクリーニング店」が屋号。 年じゅうアイロンの蒸気...
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