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    『動物園の鳥』坂木司

    動物園の鳥
    動物園の鳥
    坂木 司 2006年 創元推理文庫 P.265
    ★★★★★
    世界はたった一つの考えで動いているわけはなく、いつも多面的で複雑だ。物事の片面だけを見て断罪する人の目には、ひきこもりもホームレスも野良猫も、同じように良くないものとして映るのだろう。
     言葉は、通じない。
     だとしたら、一体僕らはどうしたら理解し合うことが出来るのだろうか。

    外資系の保険会社に勤めるごく普通のサラリーマン「僕」坂木には、子供の心と大人の頭脳を持ち合わせた、ひきこもり気味の友人がいる。

    自宅でコンピュータ・プログラマーをしている、人間嫌いで外出嫌いの友人、鳥井を何とか外に連れ出そうとしているうちに、坂木たちは事件に巻き込まれ、頭脳明晰な鳥井の冷静な推理力と判断力で、次々に事件を解決してからは、二人の元に、他人の相談事が持ち込まれるように…。

    バレンタインデーが近づいたある冬の日、坂木のお客様であり、唯一鳥井を「しんちゃん」と呼ぶことのできる年上の友人でもある栄三郎さんが、古くからの友人を連れて、鳥井の部屋を訪れた。

    動物園でボランティアをしているという、その友人の相談事とは、ボランティア仲間の心優しき女の子が近頃気に病んでいる、傷つけられた野良猫たち、の犯人探し。

    早速、人気のない平日の動物園へ出向き、事のあらましを聞き、さっさと帰ろうとする鳥井と離れて歩く坂木に声を掛けてきたのは、坂木の人生において、唯一存在を消したいとまで考えた、思い出したくもない人物…。

    次に、その人物と会ってしまったときのために、友人の警察官、滝川に自分たちの過去を打ち明け、援護を頼む坂木。

    そして再び真相を確かめるために動物園を訪れた彼らの前に、一匹の様子のおかしな猫が現れ……。

    「一度傷ついた翼を再び広げる勇気。その姿の美しさを僕は誰よりも知っているのだから
    ひきこもり探偵シリーズ完結編 文庫版特別付録付き」


    最初は、猫が虐められるなんて…と、このシリーズにしては、気が進まずに読んだけど、後半からの展開は、涙が次から次溢れてきて困ってしまった…。

    この人達にも、そんな心の傷があったのかと驚くことばかりで。

    「人間の優しく強い部分を見ると、我知らず涙がこぼれてしまうのだ。まだ信じられる。まだ、人はこんなにも美しいのだと思うことで、僕は救われているのかもしれない。」という坂木の、涙脆くなった理由も良く分かったし、私も人の優しさに触れると、すぐに「うるうる」してしまうのは、こういうことなのかと納得。

    「世の中には言葉の通じない人間がいる」
    これはもう、致し方ない真実。
    そういう人とはなるべく接触しないように生きていきたいけど…そういう人に対しても、きちんと話し合いをする鳥井たちを尊敬してしまう。

    栄三郎さんの「責任」の話もすごく深くて、どこかで講演会でも開いてもらいたいぐらい。

    「嫌われてもいいわ。だって、好きじゃない人に嫌われても私、へっちゃらだもの。」という、滝川の妹、美月ちゃんの台詞は、大人になると、そうは思っていてもなかなか言えなくなるかも。

    坂木が、鳥井との真の関係を認めてしまったとき、二人の関係がどうなっていくのか…大人になるって、そういうことなのかな…。

    大人だって、弱いし、寂しいし、一人で膝を抱えて泣くこともあるし…自分一人だけでは絶対に生きて行けないこと分かり過ぎてて…、だから時には誰かに依存することを、自分自身にも許してあげよう、と思ってしまう。

    『青空の卵』『子羊の巣』に続く、ひきこもり探偵シリーズの完結編…なんだけど(特別付録もついてて嬉しかったけど)、読み終わって、ものすごい喪失感に襲われてしまった(おおげさでなく)。

    本自体は、いつでも読めるし、読めばこの人たちに会えるけど…これから先もずっと、一緒に居たいので、できれば続編もあったらいいなぁ。

    このシリーズを読むきっかけとなったブログ『黒夜行』の通りすがりさんには、めちゃくちゃ感謝してしまう。
    今年はこれまでになく仕事で辛いことが沢山あったけど(やっぱり大殺界のせいかも…)、このシリーズのおかげで、束の間ものすごく癒されたので。

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        コメント
        uririnさん、こんばんは。

        シリーズ物なんですね、最初から読んだ方がいいかしら?
        こぱんは依存心の塊かも…いつも反省の日々ですが、
        この本読んだらそんな自分も好きになれるかな?

        あと、いつも気になっていたのですが
        ←「ねこの肉球」、こぱんも表紙見ただけでたまらんです(笑)
        こぱんさん、こんばんわ(^^)
        できれば、『青空の卵』から順に読んでみてください〜。
        心が洗われるような素敵な本なので。
        ほんと「ねこの肉球」のぷにぷにさは、たまらん、としかいいようがないです(^^)。
        では、では。
        • uririn
        • 2006/10/16 12:07 AM
        動物虐待って絶対ヒドイと思ってましたが
        虐待する側も重たい傷を背負っているという事
        かもしれないと感じます。
        昔、猫をダンボールにいれて
        川に捨てる主婦が近所に住んでました。
        必死で泳いで戻ってきた猫をまた川に流して
        あの主婦は猫のバチが当たると思いましたが、
        傷ついた方なのかもしれないですね。
        タジイさん、
        その人にどんな過去があろうが、動物や、自分より弱い者にそのエネルギーを使うのはいかがなものかと…。
        できることなら、直接自分を苦しめた相手にぶつけてもらいたいものです。



        • uririn
        • 2006/10/22 1:56 AM
        お邪魔します。
        実をいうと、ぼくにとってこのシリーズはいまいち「泣けない」作品でした。というのも、ぼくの感情が高まるより先に登場人物たちが盛り上がってしまうからです。それは、相手に先にキレられるとかえって冷静になってしまうのと似たような感覚かもしれません。
        それでも気になって、3冊目まで読んでしまったのは、そんな都合のいい話があるかよとか思いながらも、主人公たちの成長を見守りたいような気持ちにさせられたからだと思います。ぼくは男なので勘違いかもしれませんが、なんとなくこれは母性本能をくすぐる作品なんじゃないかなという気がしました。
        りりこさん、こんばんわ(^^)
        おっしゃる通り、この作品には母性本能をくすぐられます(私にそれがあるのか不安だけど)。
        何かこんな世の中だから、ここまで良い人ばかりが揃う、嘘のような話に浸りたいというのもあるかもしれません。
        私は「もらい泣き」してしまうたちなので、二人が泣くのに合わせて泣いてしまいます。ちよっと人には見せられないぐらい泣きます。
        この物語の持つ「優しさ」や「思いやり」が、自分には欠けているから泣いてしまうのかも…。
        では、では。
        • uririn
        • 2006/11/04 12:34 AM
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        動物園の鳥 坂木 司 「青空の卵」「仔羊の巣」の完結編。 大人になったら、強くなるんだと思ってた。 大人になったら、もう今みたいに泣かないんだと思ってた。 寂しくて、誰かにかまって欲しくて。 1人部屋の中で涙を流すことがあるなんて、もう絶対ない
        • ♪郵便箱♪
        • 2006/12/04 1:04 AM
        坂木司『動物園の鳥』を読んだ。 シリーズ3部作の最終巻、最後まで青さの残る作品だ...
        • 書評風-読んだら軒並みブックレビュー
        • 2006/11/02 1:18 PM

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