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    『少し変わった子あります』森博嗣

    少し変わった子あります
    少し変わった子あります
    森 博嗣 2006年 文藝春秋 P.246
    ★★★★★
    私は一人微笑んだ。面白いものだなあ、人生とは……、少なくとも生きているうちは、止まることはない。戻ることも、繰り返すこともできない。できないことばかりをいつも振り返って、しかたなく、前に進む仕組みなのか。

    後輩の荒木が一月ほど前から、行方知れずとなってしまったという話を聞いて、思い出したのは、以前、荒木との酒の席での会話に出てきた「おかしな店」の話。

    名前どころか、場所さえも決まっておらず、連絡するための電話番号があるだけの料理店。
    そこに行けば、姿を消した荒木の手がかりが、もしかしたら見つかるのかも知れないと、漠然と考え、その「おかしな店」に行ってみることにした、小山。
    予約は簡単に取れ、職場まで迎えの車を寄越してくれるという。

    そして連れて行かれたのは、看板もなく、ぽつんと灯りの灯る路地の奥の小さな店。
    迎えてくれたのは端正な顔立ちゆえに、これといった特徴のない「おかみ」。
    荒木に教えられたように注文をすると、やがて一人の女性が現れ、前の席に座り、共に食事をすることに…。

    所作の美しさ以外は、とりたてて何もない女性。
    料理も美味しいという以外、これといって変わったものではない。
    普段着姿の、どちらかと言えば目立たない、大人しそうな女性と、たわいもない会話をし、デザートが終わると、「それでは」と女性は席を後にする。

    食事の相手は毎回変わり、女性のことは、詮索してはいけないし、外で会ってもいけない。

    若い女性との食事なら、職業柄、相手には事欠くことはない、なのに、ふとした拍子に思い出したように、行ってみたくなり、そして何度も足を運ぶうち…。

    「上品で美味しい孤独をどうぞ。
    圧倒的な余韻を残す森博嗣、衝撃の新境地」だ、そう…。


    本当に不思議な余韻に浸れる話。
    「孤独」というものについて、ものすごく考えさせられる。

    二人きりの空間、二度と会うことのない相手と、食事をするというだけの、静かな時間。
    「孤独増幅器」のように働きかける店に、何度も足を運びたくなる気持ちは、何となく自虐的というか…。

    私は「孤独」という状況が割と好きだけど、それはあくまでも一人きりでいるときの「孤独」であって…。

    「人間って不思議ですよね。混み合った電車に乗ったときも、もの凄く他人と接近するのに、お互いに知らん顔をするんです。声をかけたりしたら失礼だと思われる。息を殺して、自分だけの世界に集中する。まるで周りにいる人間たちが皆、植物みたいに思い込めるんです。」
    という、ある女性の話に、すごくうなづけてしまった。

    しらじらしいほど、周囲の人間と目が合わないように努めてしまうけど、つくづく電車の中って、変な空間だなぁと、毎朝思う。

    これって、下手すれば、下品な話になりそうなのに、とても美しく上品に仕上がってるのは、やっぱり森さんの文章が美しいからなのかな…。
    なかなか「変わって」て、すごく面白いと思えた。

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        コメント
        uririnさん、こんにちは。
        不思議な余韻が残る小説でしたね。
        こういう奇妙な感じ…
        むかし読んだ、阿刀田高さんの作品を思い出しました。

        森さんはだいぶ読んできたのですが、
        今回のはかなり「変わって」ました(笑)。
        藍色さん、こんばんわ(^^)
        阿刀田さんの『ナポレオン狂』のラストが大好きでした(^^)
        森さんは『すべてがFになる』で一度挫折してしまったのですが、『スカイクロラ』や、こういうのはすごく好きです。独特な雰囲気がすごく良いですね。
        森さんの良さが分かる年頃になったってことなのかな(遅い)?
        では、では〜。
        • uririn
        • 2007/01/12 2:04 AM
        変わった話でした。
        こんな料理店に行ったら
        僕はおかしくなりそうです。
        謎が謎のまま残ってしまったので
        続編出してもらって解決してもらいたいくらいです。
        す〜さん、こんばんわ(^^)
        不思議な余韻の残る本でした。
        こういう奇妙なお話は好きなので、私も続編楽しみです(次は主人公も代わってるのかな?)
        では、では。
        • uririn
        • 2007/01/15 12:52 AM
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                後輩の荒木から勧められた一風変わった名前のない店。 おすすめは、二人で食事をすること。メニューもなく食事をする相手は 店がどこからか調達して来る。話が進んでいくうちに主人公が別の男に 変わっ
        • こみち
        • 2011/11/04 11:55 PM
        装画・挿画は、あずみ虫。装幀は鈴木成一デザイン室。 別冊文藝春秋第二五一号から第二六三号まで不定期掲載。 主人公で語り手の私、大学講師(助教授?)の小山は、失踪した後輩、荒木の行方を捜すため、彼が通っていた一風変わ
        • 粋な提案
        • 2007/01/11 12:38 PM

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