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    『空白の叫び』貫井徳郎

    空白の叫び 上空白の叫び 下
    空白の叫び 上
    空白の叫び 下
    貫井 徳郎 2006年 小学館 上 P.582  下 P.572
    ★★★★
    なぜこんなことになってしまったのか、原因がよくわからない。どこで選択を誤ってこのような事態になってしまったのか、いくら考えても思いつかなかった。ただわかるのは、もう引き返すわけにはいかないということだ。搾取される側に回るくらいなら、犯罪者になった方がいい。そのせいで警察に捕まったとしても、後悔だけはしないと己に固く誓う。これは、自分を守るための闘いなのだ。内なる声がそう言い続ける。

    ごく普通の家庭に育ち、構いすぎる母親に、息子に無関心な父親、ぱっとしない成績と運動能力…自分を取り巻く何もかもが凡庸であることを嫌悪し、この先何十年生きようと、楽しいことなど何もないと考える久藤。

    祖母と叔母の三人で暮らし、静まり返った広い家で、学校が終わってからの長い時間、二人の帰りを待ち侘び「どうして、僕だけ…」と己の身の不幸を嘆く、母親に見捨てられた、神原。

    使用人を雇うほど裕福な家庭に生まれながらも、その恵まれすぎた環境や、端正すぎる顔立ちにコンプレックスを抱き、自分自身を嫌悪する、葛城。

    生まれも育ちも、考え方も、生き方も、全く異なる三人の少年たち。

    虐められる者から、虐める側へ変貌を遂げ、それでも、始終ざわつく心を抑えきれず、金で女を買っても、心が満たされないことに苛立ちを覚える、久藤の前に現われた新任教師。

    祖母が亡くなった後、叔母に転がり込んだ遺産を、汚い手を使って搾取しようとする、神原の実の母親。

    我が物顔で屋敷に出入りし、葛城に嫉妬し、寄生虫のようにまとわりつく、葛城の幼馴染でもある使用人の息子、英介。

    まだ、たったの14歳の三人の生活を脅かす者たち…。

    一線を越えてしまった三人が、送り込まれた少年院で、受ける惨い仕打ち。
    そして、10ヶ月の入院生活の後…。

    「殺人者となった少年は更生できるのか
    後悔はしていない。罪を償ったとも思っていない――再スタートを切った三人の挫折を鮮やかに描き出す新機軸ミステリー」
    舞台が少年法改正以前ということで…。


    ものすごく読み応えのある本だった。

    三人の少年たちが、それぞれに何を思い、どうして人を殺してしまったのか、そこまでの過程が丁寧に書かれていて、読んでてすごく引き込まれる展開で…。

    でも、中学生相手に「性」を貪ろうとする、いい歳した女の人たちって…いるのかな?

    まともな大人が出てこない。

    特に上巻の、少年院に送り込まれてからの三人の入院生活の部分は、すごくリアルで怖かった。
    本当に少年院の中ってこんなんなのかな。
    まあ、二度と入りたくないと思えるような所でないと困るんだけど、にしても…葛城の受けた仕打ちは、あまりにも可哀想な気もした。

    いっそ植物のように生きたいという気持は、良くわかる。

    退院後の展開は、まあ、そうなんだろうなぁ。
    罪を犯した人間に対する世間の目も、遺族の思いも。
    (ちょっと突飛な気もしたけど…)

    成長するに従って、どんどん人間らしさを失っていく一人の少年の変化が、一番恐ろしかった。
    彼だけが、具体的にイメージできなかったのは、あまりにも「普通」すぎたからかもしれない。
    なので、このラストは仕方ないのかな、とも思える。

    少年院の生活のとこ読んでるときに、昔のドラマ「不良少女と呼ばれて」を思い出してしまった。
    あれも、確か少年院の中で結構な虐めにあってたなぁと…。

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        コメント
        こんばんわ。
        どーしようもなく重い物語でしたよね。でも、これだけの重厚感は貴重です。分量的にも、覚悟していたんですが、思いのほか、あっさり読めました!個人的に、上・下巻で反転する世界観がとても胸にきました!一読の価値のある本だと思います。最後に救いは欲しかったですけどね・・・
        • KORO
        • 2006/10/08 9:13 PM
        KOROさん、
        重かったですね〜(本も中身も)。
        私も「白夜行」を最初に読んだ時に感じた、鳥肌ものの何かを感じました(上巻の方、特に)。
        長いのに、飽きさせないところも、すごいですね。
        私も早く先が読みたくて、寝る間を惜しんで一気に読んでしまいました。
        この読み応え感は、なかなか味わえないですよね〜。では、では。
        • uririn
        • 2006/10/09 1:35 AM
        こんにちは。

        > まともな大人が出てこない。

        本当にそうでしたね。
        だって少年院で、彼らを導くべき大人でさえ、
        あのていたらくなのですから・・・。
        あの少年院の描写が本当ではないことを願います。
        ゆうきさん、こんばんわ(^^)
        規則正しい生活になって、シンナーも止めて、ぷくぷく太って、眉毛もぶっとくなって、少年院から出てきた子は身近にいましたが…。
        虐めは、どこに行ってもなくならないのでしょうね。
        先生が生徒を虐める近ごろのニュースを見ていると、この本に描かれている事が事実であったとしても、全然おかしくない世の中だなぁと思わされてしまいました。
        せめて、まともな大人でありたいと思うのですが…。では、では。
        • uririn
        • 2006/11/15 2:01 AM
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        読了してから3週間くらい経つのですが、この傑作の感想を。 貫井徳郎は好きな作家の一人で、このブログでも『愚行録』などを取り上げてきましたが、本作も上下巻で計1150頁、著者渾身の2100枚と読み応えのある小説です。
        • 音次郎の夏炉冬扇
        • 2006/10/11 12:22 AM
        ≪採点(読むなび!参照)≫ 合計:89点 採点内訳へ ≪梗概≫ 「普通の中学生」がなぜ殺人者になったのか? 久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城
        • 読むなび!(裏)
        • 2006/10/08 9:11 PM
        空白の叫び 下posted with amazlet on 06.09.17貫井 徳郎 小学館 (2006/08/25)Amazon.co.jp で詳細を見る 空白の叫び 上posted with amazlet on 06.09.17貫井 徳郎 小学館 (2006/08/25)Amazon.co.jp で詳細を見る 貫井徳郎さんの最新作で超大作の『空白の叫び』を読み
        • momo☆彡のスタイル。
        • 2006/09/18 7:15 AM
        著者:貫井徳郎 空白の叫び 上価格:¥ 1,785(税込)発売日:2006-08
        • たこの感想文
        • 2006/09/15 6:20 AM
        空白の叫び 上貫井 徳郎 小学館 2006-08-25売り上げランキング : 3365Amazonで詳しく見るby G-Tools関連商品 空白の叫び 下 名もなき毒 赤い指 愚行録 風の墓碑銘 「普通の中学生」がなぜ殺人者になったのか 久藤美也は自分の容
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        • 2006/09/06 6:20 AM

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