スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

0
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『明日の記憶』荻原浩

    明日の記憶
    明日の記憶
    荻原 浩 2004年 光文社
    ★★★★★
    人は忘れることで、脳を新陳代謝させる――だとしたら、人間には自分に不要となった記憶を冷徹に消し去る能力があるのかもしれない。二度と入ることのない店、もう会うことのない取引先、もはやこの世にいない人間、あるいはこの世に存在していても自分を思い出してくれない人間――。

    中堅どころの広告代理店の営業部で、仕事に忙殺される日々を送っていた佐伯部長。
    50歳の誕生日を迎えたばかりの彼は、若いクリエイターたちの使う業界用語についていけない、と思いつつも、自分ではまだまだ若いつもりでいた。
    けれど近頃、やけに物忘れが激しい、人の名前がすぐに出てこない。
    同じものを何度も買ってしまう。やっぱり歳なのか…。

    そしてある日、大切なクライアントとの打ち合わせをすっぽかすという、大失態をやらかしてしまう。
    そんなことは、これまで一度もなかった。
    何よりショックだったのは、打ち合わせの日時の変更など、佐伯には聞いた記憶すらなかったこと。

    眠れない日が続き、突然のめまいに襲われ、流石に不安になった佐伯は、妻に促され、躊躇しつつも、睡眠薬を処方してもらおうと、精神科を訪れた。
    そして、幾つかの検査の結果、自分の息子のような若い医師に告げられた病名は「若年性アルツハイマー」。

    父親をその病気が元で亡くしていた佐伯には、他の誰よりも「アルツハイマー」のもたらすものがよく解っていた。
    「言葉や思考に続いて体の機能も奪われていく。体が生きることを忘れていく」
    そして死に至るということも…。

    もうすぐ嫁ぐ娘がいる。
    孫も間もなく生まれてくる。
    長年連れ添った妻にも、まだ十分なことをしていない。

    愛する家族のためにも、自分自身のためにも、アルツハイマーと、残されている時間と、懸命に闘わなければならない…。


    読んでる間、ずっと怖かった。
    身につまされる思いがした。
    「若年性アルツハイマー」の告知を受けた、その日の主人公の葛藤や行動がリアルすぎて、小説とは思えないほど…。

    奥さんの立場で考えてみても、それがどれほど辛いことか解る。
    すがれるものには、何にでも…という気持ちも。
    愛する人に、忘れ去られてしまうことは、自分の存在を消されることは、どれほど辛いことだろうと。

    交差点で、立ち往生してしまう主人公の姿が痛々しい。
    見送る部下の優しさが切ない。
    そんなことをしないと生きていけない人間がいることが、ひどく悲しい。

    それでも重々しくならないところが、荻原さんって凄い。

    映画もすごく観たいけど、映画館だと洟すすってる音聞かれるのが恥ずかしいからなぁ…。


    0

      スポンサーサイト

      0
        • -
        • 23:47
        • -
        • -
        • by スポンサードリンク

        コメント
        「人は忘れることで、脳を新陳代謝させる」からの4行は、、感慨深いですね。最近、中学校時代の同窓会があったみたいですが、HPまでできてて、掲示板にコメントを求められましたが、書く気にはなれなかったです。過去に戻るという感覚が、嫌で、中学から進歩していない気になりました。
        それから弟からの話ですが、コメディー映画を映画館へ行ったら笑いたい場面で、声を聞かれるのがイヤで必死に笑いをこらえたそうです(笑)映画館って自分が面白くない場面で笑う方もおられて価値の違いを感じます。
        タジイさん、
        私も同窓会はあまり好きではないです。
        過去より、これからの方が楽しみなので。
        映画館って、もっと個室っぽくなればいいのに…と思います(あ、なんかそれは怪しい場所みたいか)。
        昔、ドライブ・イン・シアターとかあったけど、今もあるのかな?確かに、笑いとか、涙とか、人それぞれなので、何か興醒めしてしまうというか…。
        • uririn
        • 2006/06/05 12:17 AM
        はじめまして
        ブログ村から遊びにこさせていただきました
        この本を読んでる間 とても怖かったです
        ミステリーが大好きなのでそういう怖さには
        慣れていると思うのですが 自分のことを次々と
        忘れていってしまうという現象 
        自分がもしそうなってしまったら 正気でいられるか
        どうか想像しただけで ぞっとしてしまいました

        読まれている本の傾向が似ていらっしゃるみたいで
        嬉しくなりました(´ー`)
        貫井徳朗さんの新刊が出ているのは知らなかったので
        さっそく読みたいです
        昨日読み終わった 雫井脩介さんのクローズド・ノート
        がとてもよかったです

        また遊びにこさせてくださいねヾ(*'-'*)
        本当に怖かったですね。
        大切なものをどんどん忘れていく恐怖。
        自覚しながらそれでも少しずつ忘れていく。
        誰にでも起こりうることだから、
        本当に怖かったです。
        映画は・・・
        どうでしょう?
        自分も映画館では見ないような気がします。
        まめころりんさん、こんばんわ。はじめまして(^^)
        コメントありがとうございます。
        本当に読んでいる本の傾向、とても似ていましたね。
        なんだかとても親近感覚えてしまいました。
        雫井さんの「クローズド・ノート」どうしようか迷っていたのですが、読んでみたいと思いました。
        では、では。
        私も遊びに行かせていただきますね。
        • uririn
        • 2006/06/05 11:04 PM
        す〜さん、こんばんわ(^^)
        文章が淡々としていて、余計に主人公の恐怖がひしひしと伝わってきた気がしました。普段何も考えずにやっていることが、出来なくなるのは、怖いですね。
        やっぱり、映画はビデオ化されてから、こっそり一人で見て泣いた方が良さそうですね。
        では、また。
        • uririn
        • 2006/06/05 11:08 PM
        こんばんわ。
        ようやく読みました。
        病気については、あまり知りませんでしたが、やっぱり本で徐々に病気が悪化しているのを読んでいくと、
        やっぱり怖いですね。
        主人公の想いがひしひし伝わってきました。
        映画は、怖いけど、やっぱり見たいですね。
        苗坊さん、
        今回のはTBできました(^^)
        体が生きることを忘れていく、というのは本当に怖い病気ですね。
        最近の映画はすぐにテレビでやってくれるので、それまで待とうかな(^^;

        • uririn
        • 2006/07/27 9:32 AM
        コメントする








           
        この記事のトラックバックURL
        トラックバック
        明日への記憶がなくなる・・・。 私自身が私自身でなくなる・・・。 若年性アルツハイマーの50歳の男性主人公の壮絶な病気との闘い。 めまいや頭痛・不眠といった諸症状に始まり、日に日に記憶が曖昧なものになっていく・・・。 そんな恐怖や焦りと共に、自らの
        • 雑板屋
        • 2006/08/10 9:41 AM
        明日の記憶 オススメ! 広告代理店の営業部長である佐伯雅行は50歳のサラリーマン。娘がもうすぐ結婚をする。 最近、私は物忘れがひどくなっていた。 仕事から来るストレスが原因だと思い、病院へ行くと、若年性アルツハイマーという病名を告げられる。 映画化も
        • 苗坊の読書日記
        • 2006/07/26 9:14 PM
        若年性アルツハイマーに罹ってしまった 50歳広告会社営業部部長。 徐々に記憶が消えていく そんな恐怖をしっかりした文章で引き込ませてくれます。 もし自分がそうなったら?
        • My Favorite Things
        • 2006/06/05 10:25 PM
        明日の記憶荻原 浩 光文社 2004-10-20by G-Tools 若年性のアルツハイマーにかかったサラリーマンの主人公の一人称で、物語は進みます。彼の父親も、老人性のアルツハイマーで亡くなっており、彼はその末期的な状況を知っていますから、始まりはショックと、死への恐怖
        • IN MY BOOK by ゆうき
        • 2006/06/04 3:08 PM

        calendar

        S M T W T F S
             12
        3456789
        10111213141516
        17181920212223
        24252627282930
        << November 2019 >>

        読書メーター

        uririnの最近読んだ本 uririnの今読んでる本

        新刊チェック

        selected entries

        categories

        archives

        recent comment

        • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
          uririn
        • 『痺れる』沼田まほかる
          uririn
        • 『絶望ノート』歌野晶午
          uririn
        • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
          いちれん
        • 『痺れる』沼田まほかる
          くり
        • 『絶望ノート』歌野晶午
          智広
        • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
          uririn
        • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
          苗坊
        • 『永遠の0』百田尚樹
          uririn
        • 『永遠の0』百田尚樹
          苗坊

        recent trackback

        recommend

        recommend

        recommend

        recommend

        recommend

        recommend

        悪人
        悪人 (JUGEMレビュー »)
        吉田 修一
        読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

        recommend

        しずく
        しずく (JUGEMレビュー »)
        西 加奈子
        サイン本買っちゃった。

        recommend

        recommend

        たぶん最後の御挨拶
        たぶん最後の御挨拶 (JUGEMレビュー »)
        東野 圭吾
        猫なんです…。

        recommend

        recommend

        recommend

        ねこの肉球 完全版
        ねこの肉球 完全版 (JUGEMレビュー »)
        荒川 千尋,板東 寛司
        たまらん。

        recommend

        ニャ夢ウェイ
        ニャ夢ウェイ (JUGEMレビュー »)
        松尾 スズキ, 河井 克夫
        たまらん…

        recommend

        recommend

        僕たちの戦争
        僕たちの戦争 (JUGEMレビュー »)
        荻原 浩
        とにかくお薦め。

        recommend

        出口のない海
        出口のない海 (JUGEMレビュー »)
        横山 秀夫
        たくさんの人に読んでほしい…

        links

        profile

        search this site.

        others

        mobile

        qrcode

        powered

        みんなのブログポータル JUGEM

        使用素材のHP

        Night on the Planet フリー素材*ヒバナ *  *

        PR