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    『死神の精度』伊坂幸太郎

    死神の精度
    死神の精度
    伊坂 幸太郎 2005年 文藝春秋
    ★★★★★
    そう言えば、くだんの床屋の主人は、「死ぬのが怖い」と言ったこともあった。私はそれに対して、「生まれてくる前のことを覚えているのか?」と質問をした。「生まれてくる前、怖かったか?痛かったか?」
    「いや」
    「死ぬというのは、そういうことだろう。生まれる前の状態に戻るだけだ。怖くないし、痛くもない」

    人間の形に姿を変えて、情報部からの指示に従い、選ばれた調査対象に近づく死神。
    あるときは、モデル雑誌に出てきそうな青年だったり、あるときは四十代の中年男性だったり、調査対象に合わせて、年齢も姿かたちもその都度変わる。

    死神の仕事は、調査対象者の死が実行される一週間前から、二、三度彼らと会い、話を聞いて報告書に「可」もしくは「見送り」と書くこと。
    そしてよほどのことがない限り「可」の報告がなされ、調査開始の七日後、選ばれた人間の死は、突然の事故や、事件に巻き込まれることで実行される。
    そうやって、世界のバランスは保たれているのだという。
    実行された死を見届ければ、死神の仕事は終わる。

    「死神の精度」では、偏執的なクレーマーに気に入られた苦情処理係の、自分には何もとりえがないと思い込む若い女性。
    「死神と藤田」では、いまどき流行らない、情に厚いやくざ。
    「吹雪に死神」では、息子に先立たれた母親。
    「恋愛で死神」では、自分の容姿に変にコンプレックスを感じているブティックに勤める青年。
    「旅路を死神」では、母親を刺し、無関係の人間をも刺してきたばかりだという犯罪者。
    「死神対老女」では、周囲の人間に次々に先立たれた美容師の老女。
    が、調査対象者となる、5編から成る連作短編集。


    殴られても、何をされても痛みを感じなくて、殺されても死なない死神。
    ミュージックが何より好物で、暇さえあればCDショップに入り浸るのも、世間に疎くて、調査対象者たちにしばしば変な質問をするのも、面白い。

    自分に自信のない女性が「私醜いんです」と言うと「見にくくはない」とズレたことを言う。
    だけど、この言葉すごく優しいと思った。

    犯罪者との食事の場面でも「死んだ牛はうまいか」と言ってみたり、食事には興味がないものの、相手に合わせて「やばいくらいにうますぎる」と、人参をほめてみたり…。
    とにかく会話が洗練されすぎてて、すごいとしか言いようがない。
    「幻滅」という言葉の説明にしても…。

    そして物語の随所に張られる伏線が、すごく生きてて、やっぱりすごい。
    人を救わない死神が、最後の話の老女の頼みごとをきいてあげるのも、その頼みごとの意味も、物語のラストも、優しくて清々しくて、そして驚いた。
    なるほど…。
    もう唸るしかない。

    死神のイメージと言えば「悪魔の花嫁」のマンガにも出てくる、マントを羽織って、大きな鎌を振り上げる、骸骨みたいなのだけど、こういう普通の死神も、いいなと思った。

    私は何でも信じていたい性質なので、死神も、いればいいなと思ってしまう。
    生まれ変わったら、死神になりたいと思った。
    でも、何千年も生き続けるのは、やっぱり嫌かな。
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        コメント
        「死神対老女」が一番良かったですね。
        ラストで時間軸のからくりにびっくりしましたが・・・。
        なるほど・・・そうだったのか、と感激しましたね。
        ついでにあの小説に出ていた人も出てるし、
        その後千葉は「魔王」にも出てますしね。
        いいっすよ、この作品は。
        大好きです。千葉さん^^
        こんな死神だったら、いてもいいですよね!
        かっこよくて、でも少し抜けていて。
        私の側に来てほしいなぁ^^
        死んでしまうのは嫌だけれど。
        「見送り」にしてくれるのなら、来てほしいです。
        SFコミックのような面白そうな本ですね。
        水木しげるの「河童の三平」では、主役が大事な育ての親に寿命がきて、やってくる死神を田んぼに落としたりして守りますが、死に神も「これは仕事ですし私にも嫁と子供を養わなければ死に神をクビになるんよ」と言ったので泣きながら死神に同意した話を思い出しました。。

        人参の「やばいくらいにウマすぎる」には笑えました。
        す〜さん
        「魔王」にも出てたのですね。気づいてなかったです。
        探してみます(^^;

        苗坊さん
        何か、イメージすると死神は伊坂さん自身のような気がします。どうかな?

        タジイさん
        ほんとに、会話が全部そんな感じで、抜けてて面白いのです。死神も、大変ですね(^^;
        • uririn
        • 2006/05/16 1:02 AM
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        死神の精度 (文春文庫 (い70-1))(2008/02/08)伊坂 幸太郎商品詳細を見る 私は、人間の死についてさほど興味がない。人の死には意味がなく、価値もな...
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        • 2008/05/21 1:13 PM
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        • 新・たこの感想文
        • 2008/04/12 8:42 AM
        主人公は死神の連作短編集。 事故死や不慮の死というのは、死神が7日間の調査の元に「可」or「不可」と決定するもの、ということにこの物語ではなっている。 死神が死神であるという物語の本筋にはそれほど目新しいものは無いのだけど、死神の浮世離れた(
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        死神の精度 オススメ! 自殺や病死以外の人間は、死神によって「死」か「生」かが決まる。 「死神の精度」 死神は、人間の世界で名前を持ち、自分の担当となる人の所へ現われる。 そして、その人間と会って「可」か「見送り」かを決める。 死ぬか、生き延びるか
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        • My Favorite Things
        • 2006/05/14 11:58 PM

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