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    『マドンナ』奥田英朗

    マドンナ
    マドンナ
    奥田 英朗 2005年 講談社文庫
    ★★★★★
    これまで思いきったことは何ひとつしてこなかった。周囲がそうするように大学を出て、会社に就職した。結婚して家を建てた。口では自分を一匹狼タイプだと言っていたが、そんなものは嘘だ。結果を恐れ、欲望を抑えてばかりいたのだ。これを言うと、あとが気まずくなるとか、人間関係が壊れるとか……ぶち壊してみたい。痺れた頭で思った。どうせ人に語られるような人生ではないのだ。大事に生きてどうなるというのか。

    荻野春彦42歳、営業三課課長。
    結婚して15年になる彼は、これまで三度、部下になった女子社員に恋をしたことがある。
    ただし、一度もそういう関係に至ったことはなく、ただ夢想をして楽しむにすぎない。頭の中で恋愛をして楽しむ、罪のない遊び。
    決して妻が怖いからではなく、ただ、勇気がないのだ。
    そして今回、定期人事異動で三課にやってきたのは、完全に彼好みのタイプの女の子。
    しかも、部下の一人も、どうやら彼女に気があるらしい。
    飲み会の後、同じ方向のタクシーに乗り込む部下と彼女を見送り、家に帰ったあとも、二人のことを考え、悶々とする。
    「好きになってはいけない」自分に言い聞かせる。けれど、好きになってしまった。この気持ち、どうすればいいのか…『マドンナ』

    田中芳雄46歳、営業四課課長。
    高校二年生になる息子が「大学へは行かない。ダンサーになる。」と言い出した。
    ダンスなんかで食っていけるものか。
    同期の五課の課長のことでも頭を悩ませている。
    運動会や、社員旅行に参加せず、部下にも自由にさせているこの同期の存在を疎ましく思う上司から、何とかしろと釘を刺されているのだ。
    芳雄の片付けなければならない問題は二つ。
    息子に、大学受験をさせること。
    同期の男を、会社の方針に従わせること。
    けれど、心のどこかでは、そんな彼らがちょっぴり羨ましかったりする…
    『ダンス』

    恩蔵博史44歳、総務部第四課課長。
    彼には、二年後に局長のポストが待っている。
    局長候補は、一旦現場から外すのが彼の会社の習わしとなっており、彼にとっては初めての事務系部署への異動だった。
    営業とは全く勝手の違う、ぬるい総務の雰囲気に戸惑いを隠せない。
    しかも、何やら業者と癒着があるらしい。
    契約書もなしに、ただ同然の場所代で、地元の商店に購買部を任せているという。
    業者からの袖の下もつっぱね、これまでの慣例を打ち破ろうとする彼に、周囲の人間は何とか懐柔しようとするのだが…『総務は女房』

    田島茂徳44歳、鉄鋼製品部・第一課課長兼部次長。
    前任者の部長の異動に伴い、次は自分が…と一人小躍りしたのも束の間、新しい部長は、他の部署から抜擢された、同い年の女だった。
    外資系の銀行を経て、中途採用でこの会社に入社した新しいボスは、海外勤務が長かったため、ほとんどの社員が顔も知らないような人物。
    「中途採用の女より、自分の評価は低いのか」と、予想もしなかった事態に、一人毒づき、ため息をつく。
    しかも新しいボスは、美人で、切れ者で、結婚もして、子供までいて…。
    その女には、まるで隙がなかった…『ボス』

    鈴木信久45歳、営業推進部第一課課長。
    彼の勤める土地開発会社が手がけた巨大プロジェクト「港パーク」。
    蓋を開けると、オフィスビルや、高層アパートは完売したものの、お台場に人気をさらわれ、土日には人が集まらず、ゴーストタウンと化してしまう街。
    彼のオフィスから見下ろせる、港パークの店舗テナントはいつも閑古鳥が鳴いている。
    そんな閑散とした、店舗の中庭のベンチで、いつもゆったりと本を読む老人。
    その風貌から、密かに「おひょいさん」と呼んでいた。
    彼には、その老人の姿が、自分の父親と重なり、ある時、つい声をかけてしまう。
    次の日から「おひょいさん」は中庭に姿を見せなくなってしまった…『パティオ』
    の、5編から成る短篇集。


    「上司の事、お父さんの事、夫の事を知りたいあなたにもぴったりの一冊です。」と書いてあるように、40代半ばの中間管理職の気持ちが、すごくよくわかる。

    部下の女の子に恋をしても、何とか自制しなくてはならず(そうでない人もいると思うけど)、子供の将来に頭を悩ませ、親の老後を心配し、部下にも、上司にも気を遣い、あげく妻からは邪険にされ…。
    なんだかほんとに一番大変な時期なのかもしれないな…。
    ストレス溜まりそうで、可哀相。

    しかも、出てくる女子社員や、妻や、女性の気持ちもすごくよく描かれててびっくりする。
    可愛がってくれる上司には、多少お愛想をふりまくし、かといって踏み込まれては困るし、そのさじ加減は難しい。
    家に招いて、きちんと釘を刺す妻も、賢くて…。

    『ダンス』の、女子社員に人気のある「スナフキン」と呼ばれる、五課の課長みたいな人、実際に身近にいて、確かにそういう人、私も好きなので笑ってしまった。
    『パティオ』に出てくる「おひょいさん」も好き。
    私も年を取ったら、こんな風になりたいと思った。

    職場の、40代の男の人達に、これからは少し優しくしてあげようかな、と思わせるような本。
    まあ、人にもよるんだけど…。

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        コメント
        ううっ、私も40代に突入です。
        今日はGW帰りの弟と書店に行きました。
        「サウスバウンド」を求めに行きましたが
        「お取り寄せになります」でした。
        「お取り寄せなら結構です(笑)」
        ほんとジュン○堂のレジのバイトを思い出しました。
        奥田 英朗さんは人気本ですねえ。。。 
        40代は働き盛りですね。でも、周りの40代の男の人、頼りないのばっかりなんですけど…。
        GW前に、いろんな本屋さん行きましたが、結構どこも人が多くて、休みの間、本読んで過ごす人、案外多いのかな、と思いました。
        私もそうなんだけどね。
        • uririn
        • 2006/05/04 12:36 AM
        こんにちわ。伊良部先生シリーズに続き、奥田作品読みました。軽快なテンポと絶妙な展開は、相変わらずで楽しめました。それにしても、営業マンをやっていたんじゃないかっていうほど、描写がうまいですよね。周りの女性の対応もリアリティあってとても良い感じでした。次は、何に手を出そうか考え中です。
        • KORO
        • 2006/06/02 10:46 AM
        もしも未読なら『ララピポ』を是非是非読んでみてください〜。大大大好きなのです。特に、最後の主人公が。
        • uririn
        • 2006/06/03 12:53 AM
        はじめまして、sakurakoです。
        奥田英朗さんの作品はどれもおもしろいですね。
        これからもいろいろな作品を読んでいきたいです。
        また、遊びにきます。
        sakurakoさん、はじめまして(^^)
        コメントありがとうございます。
        奥田さんの本の面白さは別格ですね。そしてはずれがないような気がします。
        是非いらして下さい、お待ちしております。
        私も行っちゃいますね。
        • uririn
        • 2006/06/04 10:16 AM
        >なんだかほんとに一番大変な時期なのかもしれないな…。
         そう、大変なんです。

        >ストレス溜まりそうで、可哀相
         そうそう、溜まるんです。

         すいません、ただのグチになってしまいました。(^^; でもこの本を読んだ後は、少しだけ元気になれた気がします(あまり持続はしませんが…)。
        higeruさん、こんばんわ(^^)
        higeruさんは、私のイメージでは「スナフキン」ぽいので、ストレスとか関係なさそうな(^^;実は…なのですね。この本はほんと読んだあとちょびっと元気が出る本だと思います。私たち世代の、男の人に特にオススメですね(^^)。
        では、では〜。
        • uririn
        • 2007/12/16 11:24 PM
        こんばんは。TBさせていただきました。
        ガールは面白く読んだのですが、こちら40代の課長さんのお話を集めたこちらはちょっと物足りない感じでした。
        でも若い子に妄想で恋しちゃう課長さんとか可愛かったですけどね。私的にはマドンナの奥さんが大ヒットでした。
        masakoさん、こんばんわ(^^)
        『マドンナ』の奥さん、見習いたいものですね。普通のおじさんたちってこんな感じかなぁと、何となくほっとする一冊でしたね。では、では。
        • uririn
        • 2008/07/18 8:17 PM
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        マドンナ (講談社文庫)/奥田 英朗 ¥620 Amazon.co.jp 部下に恋をする。息子がダンサーになりたいと言い出す。同い年の女性が上司になる−今、日本で一番大変なのは「課長さん」。注目の大薮春彦賞作家が、愛をこめて「課長さん」を描く短編集。 最近新刊
        • 映画な日々。読書な日々。
        • 2008/07/10 12:23 AM
         次に読む奥田作品はこれ、と思っていたのだが、思いがけず『サウスバウンド』が文庫落ちしたのでだいぶ遅くなってしまった。シリーズ物という訳ではないが、『ガール』、『ララピポ』と合わせて「人生いろいろ三部作」と勝手に呼ばせてもらおう。 講談社文庫 2001/
        • higeruの大活字読書録
        • 2007/12/15 1:34 PM
        奥田 英朗 マドンナ [要旨] 42歳の課長さん、17歳年下のキャリアガールに恋をする。おたくの職場、どうよ?ユーモアとリアリティ。新オフィス小説。? やぎっちょさん のところから拾ってきました。 本の趣味があうらしく、よく拾わさせていた
        • 乱読日記
        • 2006/11/01 8:58 PM
        マドンナ この本は 「まったり読書日記」のエビノートさん 「じゅずじの旦那」のjuzjiさん 「新けろりーな王国」のけろりーなさん に勧めてもらいました。 ありがとうございました。 ■やぎっちょ書評 「ガール」を先に読んでOL気分を味わったのだけど、今回
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        • 2006/09/11 2:44 PM
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        • ぱんどら日記
        • 2006/08/08 2:48 PM
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        • おいしい読書生活
        • 2006/06/10 12:26 PM
        ≪採点(読むなび!参照)≫ 合計:69点 http://koroxkoro.web.fc2.com/ ≪梗概≫ 42歳の課長さん、17歳年下のキャリアガールに恋をする。おたくの職場、どうよ?ユーモアとリアリ
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        • 書庫  〜30代、女の本棚〜
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