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    『サウスバウンド』奥田英朗

    サウス・バウンド
    サウス・バウンド
    奥田 英朗 2005年 角川書店
    ★★★★★
    世の中にはな、最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあるんだ。奴隷制度や公民権運動がそうだ。平等は心やさしい権力者が与えたものではない。人民が戦って勝ち得たものだ。誰かが戦わない限り、社会は変わらない。おとうさんはその一人だ。

    東京の下町で喫茶店を営む母、広告会社の経理をしている歳の離れた姉、二つ下のおしゃまな妹。
    そして、ぼくは、学校で友達と遊ぶのが大好きで、学校帰りには先生に行ってはいけませんと言われるような、ちょっといけない場所にも立ち寄る、ごく普通の小学6年生の11歳の男の子。

    そんなぼくらの父は、元過激派だったらしい。
    今は自称小説家で、いつも家でごろごろしている。
    区役所の年金課のおばさんが家に取り立てに来れば「年金を払うのが国民の義務だというなら、じゃあ国民やめた」と胸を反らせて言い放ち、学校の先生が家庭訪問にやって来れば「君が代」や「天皇制」について、無茶な質問をして困らせる。
    その返答が気に入ったのか、先生を訪ねて学校まで押しかけ、修学旅行の積立金の高額さに不正を感じ、抗議し、ぼくを困らせる。
    何より「学校なんて行かなくていい」と常日頃から口にする父。

    ぼくは涙ながらにこう思う「普通のおとうさんがいい。会社へ行くおとうさんがいい。」

    そんな父親だけでも悩みの種なのに、ぼくと、ぼくの友達は皆から恐れられている地元の中学生に目をつけられてしまい、小汚いトレーディングカードを渡され、一万円で売り捌けと命令される。言うことを聞かなければ、容赦なく殴られる。

    「不良中学生と、地雷のような父。どっちかにしてくれよと神様に言いたくなる」ほど、心を曇らせる毎日。晴れ晴れとした気持ちで、ご飯を腹いっぱいに食べたいと心から願うぼく。

    そして、父を頼って居候をしていたおじさんの、ある事件をきっかけに家族は東京の家を引き払い、父の故郷である沖縄へと、突然引っ越すことになる。

    不良少年ともきっちりカタをつけ、大好きな友達や、ちょっぴりいいなと思っていた女の子とも別れを告げ、一家は、姉一人を残して、東京の暮らしを捨てて、沖縄の西表島へと移住する。

    電気もガスも通っていない、ジャングルのような廃村の廃屋に住み着いた一家。
    そこでの父は、人が変わったように、朝からよく働き、生き生きとしている。
    母も何だか若返ったように見える。
    近所の住民達からの援助もあって、食べ物には苦労しない。
    ペットに(本当は乳搾り用)、山羊ももらった。
    ようやくここでの生活に慣れた頃、また父の「腹の虫」の治まらない問題が起き、父は自分の信念に従い、闘いを開始するのだが…。


    奥田さんの頭の中って、どうなってるんだろう…。
    何を書いても、面白くて、心に響くし、笑わせて、泣かせる。
    父親の破天荒さもすごいけど、その父にとことんついて行こうとする母親もまたすごい。
    どうして結婚したの?というぼくの問いに「もらってくれたから」と答える母親がとても素敵だと思った。

    東京での友達、黒木や、居候のアキラおじさんや、西表島で出会う、ベニーさんや、巡査さんたちも、みんなみんな魅力的で、大好きだ。

    こんなお父さん、いたら困るかもしれないけど、こんな人間は、たくさんいたらいいなと思う。
    何より、自分もそんな風に生きられたら、いいなとも。
    パイパティローマが本当にあったらいいな。

    最後の「アカハチ」の話の締めくくりに、涙が出てしまった…。

    「南風」といえば、ラッツ&スターの歌の歌詞が真っ先に頭に浮かんでしまうんだけど。
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        コメント
        これ、いいよね。今年の本屋大賞の2位にもなったし。オヤジが破天荒すぎて、爆笑だね。

        奥田英朗は、俺の中でかなりヒットな作家になってます。「最悪」以外のどれを読んでも面白かったぁ。
        うわぁ、楽しみ!
        ちょうど図書館から「順番が着たよ」って電話があったので読むのが今からとても楽しみになりました。読んだらまたTBさせてください。お願いしますっ。
        元過激派のお父さんの登場ですか。。面白そうです。東京の下町の日常のまま進むのかと思っていたら、何と沖縄へ引っ越しするんですね。
        少し父と似てるような。。
        昔、日本史の試験問題を見て、年代と短絡的な()を埋める試験問題に父は怒り、「こんな意味のない試験勉強ならせえへん方がええ」と叫んだ時がありました。過激派では無いのですが元某A新聞記者でした(ここだけの話ですが)。
        通りすがりさん
        「最悪」は何で嫌いなの?
        • uririn
        • 2006/04/18 12:40 AM
        musagoroさん
        すごい、タイミング良かった、かな。
        すごく面白いし、読み応え十分です。堪能して下さい(^^)TBお待ちしております。
        • uririn
        • 2006/04/18 12:42 AM
        タジイさん
        まあ、このお父さんのイメージ自体が、何となくタジイさんっぽい気が、勝手にしてるのですが(^^;
        • uririn
        • 2006/04/18 12:44 AM
        大分前に読んだから覚えてないんだけど、すごいつまんなかった覚えがある。確か奥田英朗の作品ではじめて読んだのが「最悪」で、タイトル通り最悪だったんだけど(しかも当時、「最悪」が話題で売れてたのよ)、それからまた読んでみるかってなったら、他どれも最高で、見直したって感じですね。バイト先の人は、「最悪」は最高だったって言ってましたけどね。
        読もうかどうか考え中です。。
        引っ越しする点まで自分の環境とカブりそうで。読むとアツくなってヒートアップしたら絶対にブログに紹介しそう。感情に流されやすい単純男です。uririn さんは毎日1冊の本を紹介されてはるので、関東にいる小説好きの弟にも教えたら、このブログの人は凄いのうって返事がきました。ランキングバナーを貼ったり一発太郎などに登録されておられるのでしょうか。これだけ濃密なブログ、、、多くの方に読んで欲しいと思います(実は多いのでしょうね?、、、ブログペットさんのみぞ知るですね)
        通りすがりさん
        私はこれか「邪魔」が最初の奥田さん作品だったけど、どっちにしても「最悪」の状況の時に読んだのが、良かったのかもね。でも、私の一番はやっぱり「ララピポ」なんだけどね。
        • uririn
        • 2006/04/18 11:54 PM
        タジイさん
        是非、読んでください。多分タジイさんはこのお父さんに共感されることと思います。そして、ブログで紹介して下さい。楽しみにしております。小説書いておられる弟さんにも「ありがとうございます」とお伝え下さい。
        これからもひっそり、こつこつと地道に本の紹介していければ良いなと思います。タジイさんのコメントには、本当に感謝してるのですよ。
        • uririn
        • 2006/04/19 12:03 AM
        ララピポももちろん最高だけど、でも一番はやっぱ、伊良部シリーズでしょ。「インザプール」「空中ブランコ」と来て、最近最新刊「町長選挙」が出ましたよ〜。ほ、ほしい!
        • 通りすがり
        • 2006/04/19 1:48 AM
        今読んでる(^^)うしし。やっぱ面白いわ。
        • uririn
        • 2006/04/19 6:39 AM
        uririnさんこんばんは。

        皆さんのコメントみて、読んで見ようと思って
        図書館に予約入れたんですけど
        89人待ちです〜
        待ちきれなかったら本屋さん行きます。
        89人待ちですか〜。凄い人気。図書館で東野圭吾の「さまよう刃」を数カ月前に予約しましたが、まだ順番待ちでした。uririnさん、いま私用で習い事しててなかなか休みがとれないので落ち着いたら読んでブログに書きたいです。しばしお待ちを。
        こぱんさん
        89人…すごい人気なのですね。
        そういえば、BOOK OFFにも、奥田さんの作品はなかったような…。でも、楽しみは、先にとっておくのも良いかもです。
        • uririn
        • 2006/04/20 12:53 AM
        タジイさん
        はい、お待ちしております〜。謎の習い事、頑張ってくださいね。
        • uririn
        • 2006/04/20 12:55 AM
        こんにちわ。
        読み終わりました^^早速TBさせてください。
        この話に出会えてとってもとても幸せ。本当に読み応え十分でした。
        あのお母さんは本当に素敵でカッコいい。私もあんな生き方をする人見習うぞー。
        でしょ、でしょ(^^)
        私も、あのお母さんみたいに、強くなって、このお父さんみたいな素敵な人に出会いたいと思いました。
        • uririn
        • 2006/04/26 12:17 AM
        是非読ませてください。御拝借させていただけませんか?奥田先生の大ファンです。
        • 旧良友のさんちゃん
        • 2006/09/15 5:09 PM
        旧良友のさんちゃんさん、
        お会いする機会があれば、お持ちしますよ(^^)
        • uririn
        • 2006/09/16 12:01 AM
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        • 2006/04/18 10:46 AM

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