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    『バスジャック』三崎亜記

    バスジャック
    バスジャック
    三崎 亜記 2005/11/30 発行 集英社 P.228 ¥1,365
    ★★★★
    誰かを「失う」ということ、これからも「ずっと続いていく」と思っていた日々を突然失うということ、それは、鋭利な刃物で切られた傷跡のようなものではないか。いつまでも塞がることなく血が流れ続けるのだ。   〜『送りの夏』より〜

    引っ越して2年になる町に住み、妻の不在中に見知らぬ隣人に怒鳴り込まれ、慌てて「二階扉」を取り付けることにした「私」。

    改めて町内を見回してみると、何の役に立つのか分からないものの「二階扉」をつけていないのは「私」の家だけらしく、さっそく見積もりを出してもらうために工務店に電話をかけることに。

    そこでは邪険にあしらわれてしまい、「二階扉」専門に請け負う業者を何件か当たってみると、見積もりにやって来るのは、どこの会社に電話をかけても同じ男で…『二階扉をつけてください』

    他『しあわせな光』、『二人の記憶』、『バスジャック』、『雨降る夜に』、『動物園』、『送りの夏』の7編から成る、まるで異世界を垣間見るような、とても不思議な雰囲気を醸し出す短編集。

    「驚愕のベストセラー『となり町戦争』の新鋭作家最新作(2005年11月時点での)。奇想炸裂の快作から、胸を打つラブストーリーまで。日常を揺るがす驚きと感動の全7編。」だ、そうで。


    星新一さんを彷彿させるようなショートショートや、「死」について向き合うような少し長めの短篇などなど、SFっぽくもあり、現実的でもあり…。

    『二階扉をつけてください』は、『となり町戦争』のように、住民に有無をも言わせない御上からの命令ものかな。ラストがとてもブラックで…。

    表題作の『バスジャック』も、有り得ないようでいて有り得そうな、何でも流行りにのっかる人間の愚かしさと、ラストの意外な展開が面白い。

    『しあわせな光』の丘の上から見る「僕」の家の風景は、見られるものなら私も見てみたいし。

    『二人の記憶』、『雨降る夜に』、『動物園』の3編は、ちょっと切ない恋愛ものかな?

    「今この檻がなくなってしまったら、ヒノヤマホウオウはどうするのだろうか?……きっとホウオウは、無限に開かれた自由な空を見上げて、一度だけ羽を大きく広げるのだ。そうして、いつでも飛んでいけることを確かめて、やっぱりここにとどまるのだろう。…」という『動物園』の、「私」とヒノヤマホウオウをなぞらえた気持ちがとても良く分かるような…。

    一番気に入ったのは『送りの夏』の、夫婦と親子の関係。
    こんな夫婦になれるのなら、結婚してもいいかもと思えるし、小学生の娘へのきっぱりとした教えにも、すごく感心してしまった。

    「独りよがりの優しさじゃだめ」だなと…本当にそう思えるし、小学生のしっかり者の麻美ちゃんに、私も叱られてしまったかも。

    なんだか三崎さんの頭の中には、次々と未来の道具を取り出す「ドラえもん」が住んでいるとしか思えないような…。

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      『失われた町』三崎亜記

      失われた町
      失われた町
      三崎 亜記 2006/11/30発行 集英社 P.428 ¥1,680
      ★★★★★
      僕は失われる そして町の人々も だけど人々の想いまでが失われるわけではない 明日へと望みを繋げていくために 残りの日々を僕たちは精一杯生き続ける
      〜『エピソード6 隔絶の光跡』より〜

      およそ30年に一度、何の前触れも因果関係もなく、この国のどこかにある一つの町の住民が忽然と姿を消す。

      それは100年以上も前から続く、誰にも止められない現象。

      まるで何かの代償であるかのように失われてしまった町に対して、人々が出来ることは、消滅した町の痕跡を消し去ることだけ。

      「失われた町」に関わることが、一種の「穢れ」として国民の意識に浸透し、町の消滅に関することや話題にすることすら忌み嫌われ、町の消滅後、管理局の手による汚染対象物の供出と回収が済めば、最初から「無かった町」として認定され、名前すら失われ、地図からも姿を消す、確かに存在していたはずの「町」。

      けれど、その町に人々が住んでいたという事実は、消滅した町に暮らしていた人々と密接な関係にあった人間の心からは決して消し去られることはなく、そのために取り残された者たちは、深い喪失感だけを抱えたまま生きることに…。

      プロローグ、そしてエピローグ
      エピソード1 風待ちの丘
      エピソード2 澪引きの海
      エピソード3 鈍の月映え
      エピソード4 終の響い
      エピソード5 艫取りの呼び音
      エピソード6 隔絶の光跡
      エピソード7 壷中の希望
      エピローグ、そしてプロローグ

      から成る、前回の町の消滅を心に刻んだ人々、町から取り残された人々が、次の町の消滅で起こる哀しみを最小限に食い止めるために、それぞれの立場で闘った、30年にも及ぶ長きに渡る物語。

      『この思いを伝えたい。たとえ明日すべてが失われても。
      30年に一度起こる町の「消滅」。
      忽然と「失われる」住民たち。
      喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。
      「となり町戦争」の三崎亜記がついに本領発揮!!デビュー後初の長編』だ、そうで。


      正直『となり町戦争』がイマイチだったので、あまり期待せずに読んだら、これが凄かった…参りました…という感じ。

      最初に『プロローグ、そしてエピローグ』を読んでるときにはちんぷんかんぷんで、何じゃこりゃ?と全く頭に入ってこなかった言葉の羅列が、読み終わった後にもう一度読み返すと、ああこういうことだったのか…と超感動ものの、意味のある言葉に変化しているのが素晴らしいなぁと。

      「知ってる人」と、「知らない人」の間には、こういう差があるのかと、感心させられてしまった。

      それぞれのエピソードが終わるごとに号泣し、最後に『プロローグ、そしてエピローグ』を読み返して、また号泣し…、一体どのくらい涙を流したのか(塩分出しすぎたかも)。

      登場人物が誰一人として置き去りにされてないことが、ものすごく良かったし、それぞれのエピソードの主人公たちが、こう繋がり、大きな存在になっていくのか…と驚かされた。

      『となり町戦争』では、人々が生きている感じが伝わってこなかったけど、今作では、命の温かみを感じ、人間の体温を感じることができたような。

      聞きなれない日本語や、「分離者」とか、通常の概念にない言葉がたくさん出てくるけど、それらもすんなりと受け容れることができてしまう、不思議な力を持っている物語。

      「…いちいち何のためにとか思いながら自分のやることを決めるの?自分がそれをやりたいかどうかが大事なんじゃないの?」という「ひびき」の台詞が心につきささるし、ああ、あの時の家族の絵の意味はこういうことだったのか…と、ディテールの細かさに、また感動。

      「死」ではなく、「失われる」というこの不思議な感覚と、突然にそれがやってきたときの「失った」側のやりきれなさ、そして人を信じる心の強さと、そのためにできること、そして強く願うことで、何かが変えられること、そういったものが良く描かれていて、歌の歌詞じゃないけど、私の心の「柔らかい場所」を締め付けられてしまった。

      「のぞみ」を次の世代へと繋げることの大切さも…。

      小学生の頃に眉村卓さんのSF小説にさんざんはまっていたから、このシチュエーションもすんなり受け容れられたのかもしれないけど…。
      そういえばNHK少年ドラマシリーズに眉村卓原作の「その町を消せ」というのがあったなぁと、しみじみ(あれもかれこれ、30年ほど前なのかも…歳取ったもんだ)。

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        『となり町戦争』三崎亜記

        となり町戦争
        となり町戦争
        三崎 亜記 2005年 集英社 P.196
        ★★★★★
        もし今、遠くで銃声でも聞こえたなら、かすかな硝煙の匂いをかぐことができたなら、僕はそれで納得して、今現在、自分が「戦争の只中」にあるということを、ある意味「覚悟」することができるのかもしれない。
        だが夜の町はどこまでも静まっていて、何の解答も与えてくれようとはしなかった。

        毎月二回役場から発行される「広報まいさか」に載せられた小さな記事。
        そこに書いてあったのは、9月1日に開戦するという【となり町との戦争のお知らせ】
        郵便受けに入れられたそれを見て「僕」がまず心配したのは、となり町の向こうにある職場への経路のこと。

        けれども僕の心配をよそに、9月に入っても、変化は何も訪れず、職場での話題にもならず、ニュースでは「通り魔事件」のことばかりやっている。
        唯一「僕」が戦争を実感できるのは、「広報まいさか」に記載される、確実に増え続ける「戦死者」の数でだけ…。

        戦争が始まってからも、何一つ変わらない生活を送っていた「僕」に、ある日町役場から届いた「戦時特別偵察業務従事者」の任命通知書。

        「戦時特別偵察業務従事者」とやらになってみれば、この戦争が見えてくるのかもしれないと、ある種の期待を抱いて役場を訪れる「僕」を迎えたのは、急ごしらえで作られた「となり町戦争係」の「香西」という女性。

        そして次に「僕」に与えられた任務は、「香西」さんと「夫婦」として、となり町に潜入すること。

        やがて、時は過ぎ、たった一本の電話で告げられる戦争の終結…。

        「『清澄な悪夢』『傑作』と選考会騒然の衝撃作! 第17回小説すばる新人賞受賞作。」だ、そうな。


        ここに出てくる戦争の概念が、難しすぎて、私には良く理解できなかった…。
        私の頭の中にある戦争のイメージとは、かけ離れていて。

        でも、やっぱり戦争なので「僕」の知らないところで、人は確実に死んでいく。
        そうして、死体となった人たちを運んだ場所が、とても嫌だった。

        「今も、この町のどこかで、となり町との戦争が行われていて、誰かが血を流し、誰かが大地に倒れているのかな」
        「そうです、こうしている今も、確実に」

        それは「この町」でなくても、今こうしている間にも、遠いどこかの「国」でも、そしてそれは、私が知らないというだけで、何もなかったことにしてしまっているだけで…。

        家族を戦争で失った遺族への「弟を殺した誰かを、恨む気持はあるのか」という問いに
        「弟は、誰かに殺されたわけではなくって、戦争で死んでいったのですから」
        と答えた台詞が、とても心に残る…。

        そうやって納得させるしかないなんて、悲しいなと思う。
        どこかで誰かが始めたことで、ただ黙って耐えるしかないのは、辛いなと…。

        に、してもいたるところで「お役所」らしさがすごく出てて、文書の形式見てたら、むかむかしてしまった。
        作者が公務員なのか…納得。

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