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    『桐畑家の縁談』中島京子

    桐畑家の縁談Amazonで購入livedoor BOOKS書評/国内純文学
    ★★★★
     ジャングルに見えようと砂漠に見えようと、佳子はしなやかな動物みたいに、自分の道を見つけてしまう。あんなに泣き虫で、あんなに気が小さいのに、佳子は欲しいものをちゃんと手に入れる。
     露子を脅かしている感覚、自分が砂粒に紛れこんで見えなくなってしまうような感覚など、彼女はけっして持たないに違いない。

    人間関係に疲れて名のある会社を転々とし、最後に勤めていた会社が倒産してからは、働きもせずふらふらしていることで実家にもいづらくなり、一人暮らしをしていた妹、佳子のアパートに転がり込んだ姉、27歳の露子。

    何年も付き合っている恋人がいるにも拘らず、いつまでもふらふらしている姉とは違い、自分の選んだ道を着々と歩み、地味で堅実な生活を送る妹、佳子が誰に相談するでもなく「結婚することにした」と、ある日姉に告げた相手は、職場で知り合った台湾からの留学生。

    得体の知れない日本語学校で働く妹、佳子と、結婚相手となるウー・ミンゾンとの馴れ初めから、普段姉妹が口を聞くこともなかった、あまりにも寡黙すぎる父親、それとは反対に饒舌な母親、そして一風変わった遠い親戚の叔父さんをも巻き込んでの、結婚に至るまでの過程に、姉の過去の辛い恋の傷跡と、現在の結婚観とを織り交ぜて、面白おかしく、そして切なく描かれた「結婚騒動記」。

    「昔はどこへいくときも後ろからついてきて
    うっとおしかった妹が、
    いつのまにやらズンズン前を歩いている―。
    不器用な妹と、さらに不器用な姉。
    どうしたいの?露ちゃん。
    『さようなら、コタツ』の著者がもどかしいほどの姉妹の人生を、ユーモラスな視点で綴った作品。」だ、そうで。


    子供の頃はいじめられっ子で、いつも姉に庇ってもらっていた気弱な妹が、初めて家に連れてきたという、アメリカ人の恋人とのエピソードも笑えたけど、今回の結婚相手との馴れ初めもまた爆笑で…(普通そこまで我をなくすか…というか、恋ってそうなっちゃうものなのね、というか、ものすごく可愛く思えるんだけど、やっぱり可笑しい)。

    照れ屋で口下手で、愛想もなくて、夜遅くまで黙々と働き、六本木に行きたい店などないと憮然として答える妹が、「毎日、アイシテルって言ってくれるから」という理由で結婚を決めた、という気持ちは、ものすごく良く分かるかも(日本人相手では、絶対それ無理そうだし)。

    知ったかぶりの誤った知識をひけらかしては、周囲から失笑をかう、というとぼけた一面があるものの、多分、妹よりも何でも器用にこなせて、もてもてだったはずの姉の、今の宙ぶらりんな気持ちも、過去の恋をいつまでもひきずっているところも、何となく分かる…かな。

    申し分のない今の彼氏との結婚になかなか踏み切れずに、かといって、彼がもし他の女性と結婚してしまったら…という複雑な気持ちも、良く分かる。

    そして、娘たちとの付き合い方に不器用な父親の、嫁に行く娘への複雑な気持ちも、初めて挨拶に訪れたウーさんの家族との母親のやり取りも、何か普通にどこの家にでもありそうな…。

    露子が偶然出会った、父親の会社の会長さんの「人間、生きてりゃ迷います。迷って選んでもまちがえます。それで、よせばいいのに後悔します。やっかいなもんです。まあ、やっかいですが、楽しまれることです。」という言葉が、露子と同じく、今の私にもなかなか身に沁みてしまった。
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      『均ちゃんの失踪』中島京子

      均ちゃんの失踪
      均ちゃんの失踪
      中島 京子 2006年 講談社 P.224
      ★★★★★
       けれども、この男を慰める女は、自分のほかにもいるのだろうと瞬時に思い直した。
       思い直してから、もう一度、だけどほんとにそんな女がいるんだろうかという疑問が、頭をかすめた。
       そして、景子先生が何度か口にした、「それが均ちゃんの、かわいそうなとこやね」というセリフが胸に浮かんだ。
       かわいそうなんだか、かわいそうと思わせるのがうまいんだか、それともやっぱりかわいそうなんだか……

      その家の主である「均ちゃん」の失踪中に泥棒が入り、警察に呼ばれたのは「均ちゃん」と関わりのあった三人の女達。

      一番最後に「均ちゃん」の家を訪れた、ティーン向け雑誌の編集者をしている二十代の片桐薫、外資系の製薬会社で重役秘書をしている三十代後半の木村空穂、そして「均ちゃん」の元嫁であり、今は「均ちゃん」の住む家の大家でもある五十前後の女子高の美術教師、梨和景子。

      被害者である内田均の行方を捜しているという警察に、誰一人として「均ちゃん」の居場所を答えられず、お役御免となった三人は、その後、空穂の提案で、何故か一緒に温泉旅行に行くことに。
      そこに、薫の家を訪れていた「均ちゃん」のゲイの弟までくっついて来て…『均ちゃんの失踪』

      「均ちゃん」の失踪を「ああ、また例の癖が出た…」と慣れっこになっていた、別れて9年が経つ、元嫁の景子。
      「更年期」に脅えつつ、いつもと変わらぬ日常を送る景子は、学校の帰り道、わざわざ遠回りをして、警察に呼ばれた日に車で家まで送り届けてくれた定年間近の刑事「高木ケイブホ」が時々行くという、近所の小料理屋『うがき』を覗いてみることに…『のれそれ』

      「均ちゃん」は実は二番手で、別に本命の男がいるという空穂。
      「妻とは離婚する」と言い続ける本命の男との関係をずるずると続ける空穂に、ある日知人から届いた手紙の内容は…『彼と終わりにするならば』

      そして「均ちゃん」が失踪するに至った『お祭りまで』と、それぞれの結末『出発ロビー』の5編から成る連作短編集。

      「均ちゃんはイラストレーターで、ガールフレンドが何人かいて、ふらふら失踪する癖があって、ともかくろくでもない男。その均ちゃんが失踪中に空き巣が入った。そして、三人の女が関係者として呼ばれた。均ちゃんの行方は?三人の女たちの恋の行方は?『FUTON』『イトウの恋』の中島京子が描く最新連作短編集。」だ、そう。


      「均ちゃん」は、若い頃の火野正平のような人かな(最近は週刊誌も読んでないから知らないけど)。

      年代も、職種も何も接点のない三人の女性たちが、「均ちゃん」を通して何故か仲良くなってしまって…て、何か分かる気がする。
      「均ちゃん」を見る目が、それぞれの年代らしいのも、すごく面白い。
      若ければ若いほど「均ちゃん」がいなくなったことを悲しむというのが…。

      三十代後半の空穂さんの、本命の彼氏へのキレ方も、リアリティがあるというか。

      それでも、三者三様に「均ちゃん」がいなくなったことで、それぞれの新しい道を見つけて「均ちゃん」がいなくても…というのが、とても痛快。
      本当にそんなもんだと思う。
      いればいたで、それでいいけど、いなくなればいなくなったで、それもいいと言うか…、男とは、そういうものかなと。

      中島さんの本は、この前の、不思議な読後感の残る『TURE1989』を読んだだけだったけど、こんなに面白いの書く人だったんだと、見直してしまった。
      東京生まれなのに、景子先生の関西弁の使い方もお上手で、景子先生の「はんなり」とした性格が良く表わされているような。

      あと、突然勃発する兄弟げんかのシーンも、かなり笑えてしまった。

      均ちゃんが嵌りかけた「オレオレ詐欺」ならぬ、「あんたが父親でしょう作戦」は、なかなか使えそうで。

      結局逃亡願望の強い「均ちゃん」は、だらしないのか、優しすぎるのか…そこんとこは良くわからないけど、きっと一生そのまんまなんだろうなぁ。
      まあ、最後は「ざまあみろ」という感じ。

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        『TOUR1989』中島京子

        ツアー1989
        ツアー1989
        中島 京子 集英社 2006年 P.218
        ★★★★★
        自分は、何かを、旅先に、置いてきた。
        これが、『迷子つきツアー』が参加者に与える、もっとも豊かな旅土産になります。

        ノンフィクションライターを夢見ていた男は、とりあえず、始まりにふさわしい地として近場の海外、香港へ旅立った。
        一日目にしてパスポートを紛失してしまい、とんぼ返りする羽目になった男は、ある男から、一通の手紙を託される。

        中身は、片想いの女性へ宛てたラブレターらしきもの。
        どうやら手紙の差出人の青年は、今から13年前、ツアー旅行の最後の夜、アクシデントに遭い、そのまま日本に帰ることができなくなってしまったという。

        「男は『迷子つきツアー』の迷子。帰国せず。『迷子つきツアー』は一九八九年から一九九二年にかけて、各旅行代理店が実施」とだけ書いた紙片とともに、どこを巡り巡ってか、男の元に辿り着いた手紙。

        今回のまぬけな香港旅行の意味づけに、ラブレターに書かれている女性を探し出すことにした男は、2年の月日を費やし、手紙を渡すことに成功した。
        けれど、手紙を受け取った女性は、差出人の青年にはまるで覚えがないという。

        15年前のツアーに参加し、いなくなった男と行動を共にしていたサラリーマンは、昔の日記を読み、その当時のことに思いを巡らせる。

        そのツアーを最後に、仕事を辞めてしまった、15年前のツアーの添乗員の女は、当時の「自分と彼のこと」が鮮明に書かれている、1989年の日付の不思議なブログを偶然見つけ、愕然とする。

        1989年の香港へのツアー旅行で消息を絶った男に纏わる様々なエピソード。
        そして、男の現在の行方を捜し始めた若きフリーライターは、再び香港へ…。

        「記憶はときどき嘘をつく。
        香港旅行の途上で消えた青年は何処へ。15年前の4日間をめぐる4人の物語。」だ、そうな。


        そんなことが、人々の心に余韻を残したのかどうか…。
        当時、本当にそんな不思議なツアーが企画されていたのかどうかは知らないけど、バブルの頃ならあり得たのかも。
        そして「香港」だから、何となく誰かが消えてもおかしくないような気もする。

        まさしく15年前、慰安旅行で香港に行った時、レストランに入る前に写真撮られて、後で変な写真入キーホルダーに加工したものを結構なお値段で売りつけられたこと、思い出してしまった。
        ごちゃごちゃした裏通りと、デンジャラスな思い出だけ残ってるかも。

        フリーライターを名乗る20歳の男は、自分ではいなくなった青年に似ていると言うけど、銀行のおばさんに色目を使われたり、旅行代理店の男に誘われたり、結構存在感ありそうな…。

        冒頭の挿話、団体ツアーの起源がそんなところにあったとは、ちょっと驚き。

        に、してもどんなラテン語の意味があろうとも「たらこ銀行」のネーミングは、いかがなものかと…。

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