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    『草にすわる』白石一文

    草にすわる
    草にすわる
    白石 一文 2006年 光文社文庫
    ★★★★★
    この世界にはたしかに嘘も真実もありはしないのかもしれない。しかしたとえそうだとしても、いや、そうだからこそ、自分がいまここにいるということのみが、ただ一つ確かなことではないのか。いかにそれが錯覚や幻覚であったとしても、それでも、これ以上に確かなものをこの世界で手に入れることは誰にもできやしないのではないか。

    病気のため、職を失ってからは、毎日だらだらと、無為な日々を送っている、もうすぐ三十歳になろうかという男。

    毎日他にすることもなく、ただ本を読み、眠り、映画を借り、戦争映画を見ては虫けらのように死んでいった兵士たちのことを思い、今や自分は虫けら以下だと貶め、お笑い番組や、AVビデオを見ては、その中の人達も大変だよなと気の毒がる。

    「この世界の嘘と真実」について、そんなことばかりを、ただつらつらと考える日々。

    男には5年間待てば、契機が訪れるという根拠のない自信があった。
    けれど、このような生活がもう3年半あまりも、続いている。

    怠惰な毎日を過ごしていても、男は走ることだけは続けていた。
    中、高校時代は、長距離選手として将来を有望され、そのまま行けば一流のランナーになれるはずだった。

    こんな何もないような日常を送る男でも、高校時代の二つ上の先輩でもあり、週に一度だけ会って食事をし、ただ寝るだけの、都合の良い女性がいた。
    そろそろ彼女の部屋を訪れるのも、生きているのも、おっくうに思えてきた頃、彼女もまた絶望の深い淵にいた。

    そして「生きていてもしょうがない」と結論を出した二人は、大量の睡眠薬を酒で流し込み、やがて薄れていく意識のなか…『草にすわる』

    表題作ほか、国内の賞を総なめにしたものの、世界的な文学賞を毎年逃している大家の鬱蒼とした心の闇と、犠牲となった家族との繋がりを通して自分自身の生き方が突然啓かれる『砂の城』

    銀行合併に伴う大スクープを書くために、社内一の嫌われ者、と手を組むことになった新聞社に勤める男が主人公の『花束』の、3編から成る中編集。


    白石さんの本は、『不自由な心』で一度挫折した経験があったけど、これなら読めるのかも…と手にしてみた。

    『草にすわる』は、出だしは何だか以前の印象とは偉く違って、だらだらと男のつまらなそうな心情が綴られていて、引き込まれるように読んでしまった。
    そして、自殺未遂後の心境の変化…。

    タイトルの『草にすわる』とは、ああそういうことか…、と納得。
    あとがきで、執筆したときの心境が書いてあったけど、そういう切羽詰った状況だからこその成せる業だったのかな。

    『砂の城』は、主人公が主人公だから、わざとなんだろうけど、小難しい熟語がたくさん出てきて、読みづらかった。
    印象としては『草にすわる』の、ご年輩版というか…。
    これって実在の人物を皮肉ってるのかな?とも思えるような。

    『花束』は、特に何も…というか、また途中で挫折しそうになった(一応今回は最後まで読んだけど)。

    白石さんは、一度は「合わない」と思ったけど、こういうのなら『僕のなかの壊れていない部分』も読んでみようかな…と思うぐらいに見直した、かも。

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