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    『最後の命』中村文則


    2007/6/11発行 講談社 P.207
    ★★★★
     人間が野人のように猿と大差なかった時代、人間は人間を殺したのだろうか。それとも、そうなっていったのは、脳の進化、理性や知性によるものなのだろうか。となれば、進化とは、理性とはなんだろうか。私の考えは乱れた。
     汚い命であっても、それが命であるというただそれだけで自分を悩ませるあの存在に、私は怒りを覚えた。私は自分の行動に、判断を下すのを保留せざるをえなかった。

    17年前、小学生だった「私」と、当時の親友だった冴木が、秘密基地と名付けた工場跡の遊び場近くで、偶然目撃してしまった卑劣な犯罪行為。

    その場から逃げ出してしまった罪の意識からと、恐怖に竦み、通報が遅れたばっかりに、後日遺体となって発見された被害者の女性の叫び声が、視線が忘れられず、その出来事の一部始終が心の中心に置かれたまま数年が過ぎ、別々の高校に進み、疎遠になっていた二人の前に再び現れた、汚らしい犯罪者。

    その時二人がとった行動に苦悩し続け、「死」を間近に据えながらしか「生」を感じることが出来ないと、大人になった今も、線路沿いのアパートに閉じ篭り、無為な日々を過ごしていた「私」。

    そして最後に会ってから7年の歳月を経て、突然「会いたい」と電話を寄越してきた「秘密を共有する唯一無二の存在」である冴木との再会により、「私」は再び深い闇の中へと引きずり込まれてしまうことに……。

    「ある日、帰宅するとベッドの上で女が死んでいた―。欲望の生みだす罪。人は、人を許し、理解することができるのか?深遠なテーマと向きあい、人の心の根源に迫る!芥川賞受賞後はじめての長篇小説。」だ、そうで。


    著者のHPでの本作の紹介文に「……犯罪者的な傾向を持ちながらも、我慢して我慢し続けているような人間、そのような悲しい存在についての小説です。」とあるように、ここに出てくる男のメールでの告白には、嫌悪感を抱きつつも、その心の葛藤には同情してしまえるような側面もあって、なかなか深く考えさせられてしまった(かといって、そういう行為自体は絶対許せることではないんだけど…)。

    まだ性の知識もおぼつかないままに、そういう犯罪行為に一部加担させられた少年二人のその後が、表面的には「善」と「悪」のように全く反対の方向に進んだかのようでいても、根っこのところは同じだったのかもしれないなと(そこら辺は、少々私には難解すぎて読みきれなかったかな)。

    昨今の性犯罪のニュースなんかを見ていて、例えば地位も名誉もあるいい歳をした大人の男が、何で何もかも失うと分かっていながらその衝動を抑えることができないのかと不思議でしょうがなかったけど、その人達の心の中でもこういう苦悩や葛藤があったりするのかなと(全くなかったとしたら、その方が嫌だし)。

    「自分の性が、犯罪でなくては、絶対に満たされない奴がいる。そういう人間が生きていくには……」という男の独白に共感できる男の人は結構いそうで、それはそれで本当に悲しい話かもしれないなと…。

    これを読んで、ドストエフスキーの『罪と罰』も読んでみようかなと(原作は長そうなので、手塚さんの漫画の方で)。
    そういうお話。
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      『遮光』中村文則

      遮光
      遮光
      中村 文則 2004年 新潮社
      ★★★★★
      確かに、不幸っていうのは、他人の同情をひく。お前が悲しんでいれば悲しんでいるだけ、人はお前にやさしくするんだ。でもな、人っていうのは、それが長く続くと、段々うっとうしさを感じたりするもんだ。……乗り越えられないなら、振りだけでもいい。……

      「彼女はアメリカで元気にやっている」
      友達に彼女の所在を尋ねられる度、そう答えていた「私」。
      そう答えれば、本当に彼女がアメリカで元気に暮らしているような気がして、暖かい気持ちになれたから…。

      「私」は、自分が狂っているのかもしれないと考えていた。
      周りの人間から「気味が悪い奴」と思われても、むしろ、その方が良かった。
      彼女の死という現実を受け容れるよりは…。

      そのときどきで、いろいろな何者かの振りをする「私」は、彼女の前では、いつまでも「優しい男」の振りをしていた。
      どこにでもいるカップルたちがするようなデートをし、食事をし、そして一緒に暮らし、彼女の好きな猫を飼って…そういう「典型的」なものに憧れていた「私」。
      彼女を幸せにしたかった「私」。

      そして今「私」は、どこへ行くにも、彼女の「指」を持ち歩いている。

      男の狂気は、どんどん増していき、自分が何者なのか、誰かの振りをしているのか、目の前の誰かが、もう誰なのかさえどうでもいいと……

      「第26 回野間文芸新人賞受賞作
      新世代作家の鋭利な意識が陰影濃く描き上げた喪失と愛の物語。」だそうな。


      主人公の「私」には、心がなくなったみたいな…。
      やることなすこと、本当に酷い。

      喫茶店で、うるさいと感じたおしゃべりに夢中な人達の方へ、火のついた煙草を投げつけたり(誰にも気付かれないけど)、無抵抗な人間を、ただただ殴り続けたり、友達に酷い嘘の話をしたり…。
      本当に頭どうかしてるとしか思えなかった。

      その裏に隠された、彼の過去を知るまでは、本当にそう思った。
      彼を引き取った叔父さんの言葉を聞くまでは…。

      そして、彼女が風邪をひいたときの話、彼が本当に幸せを感じたという瞬間。
      なんだかとても悲しくなった。

      「優しい男の振りをしていた」と彼は言うけど、それって「振り」だったのかなぁ…と思えた。

      大切な人を、そういう形で失くしたことはまだないから、分からないけど、もしかしたら彼みたいになってしまうのかも知れない。

      に、しても何でこの主人公は、喧嘩に滅茶苦茶強いのか…、それがすごく気になってしまった。

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