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    『私たちの幸せな時間』孔枝泳、蓮池薫

    私たちの幸せな時間
    私たちの幸せな時間
    孔 枝泳 2007/5/30発行 新潮社 P.270 ¥1,995
    ★★★★★
    …あのときの温かかった彼の手……どうしてあのとき笑いながら彼の手を握り返してやれなかったのだろう……どうして愛していると言えなかったのだろう……ユンスの言うとおりあまりに簡単なことだったのに、ただ愛せば、それでよかったのに……今はもうその温もりすら消え失せた。
    身体の温もりが冷めるのが死だとしたら、人間の魂から温もりがなくなる瞬間もまた死と言えるだろう。私も彼も、それを知らずに生きていたし、死にたいと考えていた。それがすでに死だったことにも気づかずに。

    韓国の富裕層の家庭で何不自由なく育ち、フランス留学を経て芸術家の道を進み、親戚の経営する大学での専任教授の椅子をたやすく手に入れたものの、人生に退屈しながら周囲の人間誰彼かまわず悪態をつき、アルコールに溺れ、死ぬ意志もないくせに三度も自殺未遂を繰り返す、優秀な一族の鼻つまみ者「ユジョン」。

    三度目の自殺未遂の後、入院中の「ユジョン」の身を案じた、ただ一人の「ユジョン」の理解者であり、「ユジョン」と同じく一族の変り種、修道女として生きる道を選択した「モニカ叔母」が、精神科医である叔父の許しを得て「ユジョン」を連れ出した先は、叔母の慰問先である「ソウル拘置所」。

    そこで「ユジョン」は、死刑執行の日をただ待つばかりの一人の死刑囚「ユンス」と叔母の面会に立ち合い、目前に死を控え「このまま、ただ死なせてほしい」と願う、残忍な殺人犯に興味を抱き、今まで自分が知ろうともしなかった、表向きは美しく発展した国、韓国の「闇の部分」に初めて目を向けようとする。

    そうして最初は渋々ながらの、叔母との約束を果たすためだけの「ユンス」との一ヶ月の面会期間が過ぎた頃、自らの意志で「ユンス」との面会に臨み、「ユジョン」自身がこれまで心の中に抱え込んでいたあまりにも辛い「本当の話」を「ユンス」に話し始める。

    その日から、いつ終わるとも知れない週に一度だけの二人の時は始まり、これまで「死ぬこと」しか願わなかった二人は、自分たちが「生かされている」ことの意味を知り、「生きたい」と願うようになるのだが…。

    『男は3人を殺した死刑囚。女は3回自殺未遂をした元人気歌手。死を切望するふたりが惹かれ合い、初めて「生きたい」と思った時…。蓮池薫訳で贈る、哀絶ラブストーリー。カン・ドンウォン主演映画原作。』だ、そうで。


    何となく韓国映画のイメージから、甘あまなラブストーリーなのかと思ったら、全く違って、どちらかと言えば「死刑制度」についても深く考えさせられる硬派な本、という感じ(男女の恋愛というよりも、もっと広義の人間愛かな?と、私には思えてしまった)。

    最下層の暮らしを強いられ、母親に捨てられ、父親からは虐待され、幼い弟と二人で屈辱的な人生を歩んできた「ユンス」が、最後に残した「ブルーノート」には、あまりにも厳しくて哀しい真実が綴られているけど、結局は育った環境がこうだから、こうなったと言うのは、読んでいても、なかなかやり切れないものがあって。

    一方の裕福なわがまま娘「ユジョン」は、最初、ものすごーーーく嫌な奴(というのも、多分あまりの偏屈さや不器用さが、どこか自分と似ていると思えたからかも)で、その心の変わり様は目を見張るものがあるけど、それでもやっぱりあまり好きにはなれなかったかも(母親との確執もあまりにも子供じみてるような…)。

    ただ「ユジョン」の「死刑制度」への考え方は、結構考えさせられるし、娘を殺害された年老いた母親の、「ユンス」への言葉「許せるときまでは必ず生きていておくれ…」というのが、いつまでも心に残るし(対峙のシーンは圧巻)、こんなことが言える人間になれればいいなと。

    そして最後、「ユンス」の弟への思いが少しだけ報われたことに、心の中から温かいものがこみ上げてきて、やっぱり泣かずにはいられなかったかな。

    愛のあとにくるもの』も美しい文章だと思ったけど、蓮池さんの翻訳のこちらもやっぱり流れるように美しい文章だなと(蓮池さんの翻訳本、結構出版されてるの知らなかったので意外に思えたもので…)。

    「生命」という言葉そのものが、「生きろという命令」という考え方は、まさに目から鱗(そんなこと考えたこともなかったし、言われてみれば、ああそうなのかと)で、そして「愛」の反対語が「無関心」というのも、なんだか納得。

    改めて「本当に生きる」ということ、「自分以外の他者を愛する」ということについて、ものすごく考えさせられてしまうし、ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思えるような一冊だったかも。
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      『愛のあとにくるもの』孔枝泳

      愛のあとにくるもの
      愛のあとにくるもの
      孔 枝泳, きむ ふな 2006年 幻冬舎
      ★★★★
      別れが悲しいのは、別れた後初めてその出会いの価値に気づくからだろう。忘れてしまうのが寂しいのは、存在した全てが、その空いたところで初めて輝くからだろう。愛されないことよりもっと悲しいのは、愛することができないということに後になって気づくからだ。

      7年前、日本に留学し、一人の日本人と愛し合い、一緒に暮らし、すれ違い、そして彼の元から飛び出した韓国人女性、紅(ホン)。
      韓国に戻ってからの彼女の7年間は、ひたすら何かに没頭し、彼を忘れるためだけに費やされた7年間だった。

      彼女は、彼に紅(ベニ)と呼ばれていた22歳の頃の自分を、心の中の決して開かないところに閉じ込めたまま、29歳の紅(ホン)を生きていた。
      そして、ようやく一人でも平気になれたと思っていたころ、日本から呼んだ、一人の日本人作家の通訳として、彼を出迎えに空港へ向かい、奇跡の再会を果たすこととなる。

      日本人作家、佐々江光として韓国へ迎え入れられたのは、忘れようとして、忘れられるはずのなかった、潤吾、その人であった…。
      再会の後、彼女の胸はざわついてしまう。もう少し化粧をきちんとしてくれば…華やかな服を着てくれば…彼の胸が痛み、彼が後悔するような、そんな女性として会いたかったと。

      けれど、今彼女のそばには、東京に行く前から、もっと前の子供の頃から、ずっと紅を待ち続けてくれている俊がいる…。
      そして、潤吾は再び紅の前に現れる。


      「再会の7日間に奇跡は起こるのか?感動のラストシーンまで一気に読ませる、恋愛小説の傑作。
      男の視点を辻仁成が、女の視点を200万人の韓国女性のファンをもつ、韓国1人気女性作家の孔枝泳(コン・ジョン)が描く、愛のハーモニー」
      だ、そうです。
      そして、その女性の視点版の方。

      最初は、韓国の雰囲気というか、舞台が韓国ということに慣れるのに少し時間がかかったけど、慣れればとてもすらすらと進む。
      それこそ流れるような、という表現がしっくりくるような、本当に美しい文章だと思った。翻訳の人の腕もきっとあるんだろうけど…。

      何より、紅の、日本にいた頃の心細さ、どれほど彼を必要としていたか、いつも一緒にいたかったかという思いが痛いくらいに伝わってきて、とても切ない気持ちになった。
      そして、そんなに一生懸命だった彼女が、どうして些細なことで彼とすれ違ってしまったのかも。

      韓国と日本、近くて遠い二つの国。
      ヨーロッパに行ってしまえば、どちらが韓国人で、どちらが日本人などと区別もできないほどに似ているのに、似ているからこそ、反目しあう二人の祖国。

      彼には、彼女の淋しさを、彼女の背後にあるものも全部ひっくるめて、受け止めるだけの優しさがなかった。
      そして、それはやはり日本に来ている韓国人としての紅と、日本で生まれ育った潤吾という日本人の、温度差なのだと思った。

      「わたしが去った後の部屋で、やはり彼もつらかっただろうか」という気持ちの裏側に、そうであって欲しいという切実な願いのようなものが感じ取れる。

      彼との再会の後、彼が降りた車のシート見つめながら、思う「彼がわたしの横に座っていたこと、その記憶を忘れるために、またどれくらいの時間が必要なのだろう。」
      このときの彼女の気持ちが、私の心の中にすぅっと入ってきてしまった。遥か昔に失くした恋心がくすぐられてしまった…。
      そんな気持ちで、別れた人を思ったこともあったのに、と。

      そして、娘の気持ちを察して母親が言った「結婚はね、愛する人とするものではないのよ。それは地獄に落ちるのと同じ。結婚は、いい人とするものよ。」という台詞も、また修羅場をくぐってきた母親ならでわの台詞で。

      特に好きなのは
      「服の裾をつかみ、行かないでと言っても、行く者は行ってしまうのだということを、わたしはわかっているからだ。
       会ってはいけないと千の夜に決心したとしても。会える定めなら会えないことはないということが、この偶然の再会を通して分かったからだ。………」というくだり。
      ここで終わってて欲しかったとさえ思ったほど、素晴らしい文章だったと思う。

      台詞の一つ、動作の一つ、表現の一つ、どれをとっても、どれもこれも本当に美しいと感じた作品だった。

      ただ…ラストが…私には今いち納得できないかも。
      最後の6ページが…。うう。
      でなければ、本当にものすごく感動したまま終わってくれたのにと、ひねくれものの私には思えてしまった…。
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