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    『摂氏零度の少女』新堂冬樹

    摂氏零度の少女
    摂氏零度の少女
    新堂 冬樹 2007/11/25発行 幻冬舎 P.324 ¥1,575 
    ★★★★★
    私は、あなたのように誰かを愛したこともなければ、あなたのように誰かを恨んだこともない。
    私は、あなたのように誰かを尊敬したこともなければ、あなたのように誰かを軽蔑したこともない。
    私は、あなたのように誰かに手を差し延べたこともなければ、あなたのように誰かを突き放したこともない。

    名門の進学校に通い、成績は常にトップクラスで、それを面白く思わないクラスの男子生徒たちからは「いじめ」の標的とされるも、「いつでも殺せる」けど「殺す価値もない」と、彼らを蔑み、意にも介さず自分だけの独自の世界で、様々な生き物たちを相手に何時間でも一人過ごす、周囲から孤立した女子高生、涼子。

    家族の前では典型的な「いい子」を演じ、母親思いの優しい子として、祖母や母親からの信頼も厚く、将来は医師になることを嘱望される優等生、涼子。

    幼い頃に愛犬を失ったトラウマから、生き物に対して歪んだ愛情を注ぐようになった涼子は、インターネットで薬を手に入れ、ついには「この世で最も愛する母親」への「悪魔の実験」を開始することに。

    そして家族をそれぞれ「ライオン」「老ライオン」「野ネズミ」「豹」と密かに名付け、初恋の相手の名前をハンドルネームに使用した自身のブログで「悪魔の実験」は公開され、やがては涼子の姉、京子の知るところとなり……。


    「名門進学校で一流大学の医学部合格の太鼓判を押されている桂木涼子がある日始めた“悪魔の実験”。それは、人知れず最愛の母親にタリウムを飲ませることだった……。
    善悪ってなに?いったい、なにを基準に誰が決めるの?
    彼女を狂気に駆り立てた理由とは?
    クライムノベルのエキスパートがまたもや猟奇犯罪に深く切り込んで見せた。現代ミステリーの新機軸!
    少女の心の闇は、身震いするほど不気味で切ない。」だ、そうで。


    1ページ目で「ああ、あの事件か…」と、すぐに思い出せるほど、結構衝撃的な事件だったような(2年も前のこととは思えないほど)。

    同じような新堂さんのクライムノベルの『砂漠の薔薇』では、主人公の母親が追い詰められていく気持ちが多少なりとも理解できたけど、これはちょっと…(主人公との年代の差なのかもしれないけど)。

    頭の良過ぎる(?)彼女は、彼女だけに通じる理屈で次々と生き物を手に掛けていく(この辺の下りは読んでて本当に嫌だったけど、『動物記』や昆虫の本を書かれるほど、新堂さんが人間以外の生物に対して人一倍愛情を持っておられると確信しているので(たぶん…)、この物語には必要なんだと諦めて読んだ)けど、そこはまあ、何とか理解できるような部分もあって(そうなって生きているのが動物達にとって「幸福」なのかどうかというのは、私にも分からないし、かといって、やっぱりそれはあんまりだとも…)。

    ただ、母親へのそれは全く別物というか、理解できないことだらけで。

    この物語に出てくる母親も母親だし。
    そこまで見た目にも悪化してるのに、たかが「子供の頃の注射が痛かったから」くらいの理由で、病院にも行かないというのは理解に苦しむし、そんだけ仕事休んでるのに「病院に行く時間がない」というのは、もう好きにすれば…としか。
    最後の方は壮絶すぎて、よくそれで動けてるなと感心するぐらい(それもこれも、一家の大黒柱としての責任感なのか…)。

    何にせよ天童さんの『家族狩り』然り、家族って一歩間違うと本当に怖ろしいなと思えてしまうし。

    読み終わってから、これの元となった事件のこと少し調べてみたけど、結局この本の終わり方と似たような感じなのかな。

    この本のタイトルが、全てを物語ってるのかもしれないなと。

    JUGEMテーマ:読書
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      『あなたに逢えてよかった』新堂冬樹

      あなたに逢えてよかった
      あなたに逢えてよかった
      新堂 冬樹 2006/10/5 発行 角川書店 P.414 ¥1,680
      ★★★★★
      たとえ思い過ごしでなくても、この腕を離しはしない。もし彼が暗闇に囚われているのならば、私が光となり導くつもり。
       それでもだめなら……光でいることよりも闇になることを私は選ぶ。
      後悔はしない。
      私にとっては、純也さんのいない世界以上に、深い闇は存在しないのだから。

      人を疑うことを知らない、素直で無垢で、太陽のように明るい女の子、夏陽、22歳。

      父親の遺してくれた紅茶専門店で働く夏陽は、近ごろ頻繁に店に来るようになった、一人の男性客のことが気になってしかたなく、思い切って声をかけることに…。

      「作業療法士」をしているという純也とは、それからは顔を合わせば他愛もない会話を交わすようになり、純也の来る日を心待ちにする夏陽。

      そしてある日、純也からデートに誘われ、告白され…、恋人同士になった二人の幸せな日々が始まるはずだったのだが…。

      『衝撃のラスト12ページにあなたは号泣せずにいられるだろうか。
      もし、かけがえのない人が自分の存在を忘れてしまったら?
      記憶障害という過酷な運命の中で、
      二人はひたむきに生きてゆく。
      心に深く刻まれた“あの思い出”に願いをこめて――
      新堂冬樹が“絶対の愛”を真正面から描いた「忘れ雪」「ある愛の詩」に続く
      純愛小説3部作、完結篇!』だ、そうな。


      なんか30年ほど前の『りぼん』に掲載されてた、太刀掛秀子さんとか、陸奥A子さんとかの少女漫画を読んでいるような…。

      台詞がクサすぎると言うか、今どきこんなこと言う奴おらんやろう…と突っ込みたくなる場面が満載で、何度も鳥肌がたってしまった(甘ーーーーーい)。

      帯を読む限りでは、もっと大人の物語なのかと思ってたので、読み始めてすぐに、なんだこのきゃぴきゃぴしたムードは…と、読む気が失せたけど、それでも読み続けたのは「衝撃のラスト12ページ」に期待したからで…。

      まあ、結局は泣いたんだけど(最近は涙腺ゆるゆるなので…)。

      でも、このテーマで、新堂さんなら、もっと重いのが読みたかった。
      「忘れ雪」も「ある愛の詩」も読んでないけど、こういうのなら「白新堂」さんは苦手かも。

      ネットで見つけた新堂さんの、この作品でのインタビュー記事に、

      「ただ、私の中では白と黒の区別はないんです。例えば、白系作品に出ている主人公も環境が変われば黒系作品の主人公になりえると思うんですよ。純粋で素朴な人だからこそ、環境に染められやすい。そういう意味では、作品作りに難しさを感じることはないですね。この作品を書いていた時も、同時進行で黒系のノワール色の濃い作品も含めた、14本の連載をこなしていましたから」

      と、あったけど、『溝鼠』の鷹場や、『吐きたいほど愛してる』に出てきた毒島なんかが、例えば「白新堂」と言われる方の小説に登場したら、どんな風に純愛してくれるのか是非とも見てみたいなと…(毒島の場合は、ど痛い勘違い男なだけで、本人は純愛してたのかもしれないけど…)。

      タイトルだけはやけに頭に残ってしまったから、キョンキョンと和田アキ子の歌が交替交替で、頭をぐるぐる駆け巡って、離れなくなってしまった。

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        『底なし沼』新堂冬樹

        底なし沼
        底なし沼
        新堂 冬樹 2006年 新潮社 P.485
        ★★★★★
        どんな理由があろうと、死を選ぶのは負け犬だ。
        死んだら、残るのは喉仏と灰だけだ。
        蔵王は、誰かに裏切られ死を選ぶぐらいならば、誰かを嵌め、死に追い込む道を選択したかった。

        優しすぎだがために、情けをかけた債務者たちに裏切られ、果ては自ら死を選んだ父親を反面教師にして育ち、世の中の「債務者」たちを地獄に叩き落すことを心に誓った蔵王金光。

        父親の死後、荒みきっていた蔵王は、闇金業界の黒幕的存在であるヤクザの組員、市之瀬に拾われ、金貸しのノウハウを叩き込まれ、メキメキと頭角を表し、今では同業者からも畏れられる存在に。

        「債権回収機構」を立ち上げ、独立した蔵王のシノギは、サラ金業者から債権を買い取り、完済しているはずの借金をさらに払わせる「二重取り」。

        相手が老人であろうと、障害者であろうと、死体であろうと、その取り立ては容赦なく、驚異の回収率を誇る泣く子も黙る(黙ったあとにもう一度泣くという)「取り立て屋の帝王」蔵王にたてつき、怒りを買うことになるのは、部下の借金の保証人となったことから一度は地獄に突き落とされたものの、借金を完済し、地獄からの生還を果たし、再び冨を成した結婚相談所の社長、日野。

        蔵王の女が働くキャバクラで、客として来ていた日野に一方的に恥をかかされた蔵王は、日野の過去を調べ上げ、日野から一億を毟り取ることを画策するのだが…。

        「借金で借金を返す這い上がれない無間地獄。返せないのに、なぜ借りる!
        真の闇金をえぐる極悪金融小説、迫力のノンストップ・パワープレイ!」だ、そうな。


        そう言えば何年か前に、初めて『ミナミの帝王』と出会ったのも、こんな年の瀬だったなぁと、しみじみ。
        蔵王のキャラは、萬田銀次郎とは、似ても似つかないけど、父親のこととか、取り立ての「エグさ」は少しかぶるかも。

        完済してる借金の取り立てなんて出来るのか?と、疑問に思ったけど、なるほどこんな仕組みがあったのかと…闇金ならでわの恐ろしさに震え上がってしまった。

        日野が経営する結婚相談所のシステムは、なかなか良くできていて(もしかして、どこもそうなのかな)。
        金儲けする人間は、こういうこと考えてるのかと、ものすごく勉強になったというか、世の中が信じられなくなったというか。

        なので、日野と蔵王の頭脳戦(?)のあたりまでは、結構面白かったけど、後半に進むにつれ、事が大きくなってからは、新たな登場人物が次から次へと現れて、これ誰よ?と、整理しきれなくなってしまった。

        そして、ラストの展開には、ただただ唖然、呆然。
        「んな、あほな」としか…。
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          『誰よりもつよく抱きしめて』新堂冬樹

          誰よりもつよく抱きしめて
          誰よりもつよく抱きしめて
          新堂 冬樹 2005年 光文社 P.271
          ★★★★
          危機状態に陥った男女の関係は、とりわけ夫婦関係は、森に迷い込んだ子供のよう。
          ……もうちょっと、を繰り返しているうちに、いつの間にか道を見失い、焦れば焦るほどに深く複雑な迷宮に導かれ、最後には、いま自分がどこを歩いているのかさえわからなくなる。

          児童書専門店「夢の扉」を営む妻、33歳の月菜と、童話作家の夫、良城。
          夫の作品、『モジャ』の童話をきっかけに知り合い、結婚して8年目を迎えた二人は、まるで新婚夫婦のように仲睦まじい夫婦。

          たとえ7年間、夫が妻に触れようとはしなくても…。

          ある事情から、強迫的な潔癖症を患ってしまった夫は、触れる物すべてに細菌が付着しているような強迫観念に囚われる「不潔潔癖症」と、眼につく物が少しでも不完全な形をしていると元通りにしないと気が済まない「不完全潔癖症」に、長年苦しめられていた。

          心の底から良城を愛する月菜は、病に冒されてしまった夫を思いやり、夫の病を理解しようと懸命に努め、心に憂いを抱えながらも、夫の前では健気にも明るく振舞う。

          そんな月菜の前に突然現れた、月菜に好意を抱く年下の美青年、克麻。
          克麻もまた他人には言えない秘密を抱え、月菜を必要とする…。

          「本当に想っている人から愛され、抱き締められたい。」と強く願う月菜と、「本当に想っている人のことを、罪の意識なく愛し、この手で抱き締めたい。」と、決して叶うことのない望みを持つ克麻。

          一度は、克麻の言葉に屈辱を感じ、きっぱりと拒絶する月菜だが…。

          「結婚して8年。
          強迫的な潔癖症を患う夫とは7年間セックスレス。
          あなたなら、どうやって愛を確かめますか?」と、これは帯の文句。


          私にとっての、初の「白新堂」さんだけど、こっちもなかなか良いかも。

          物語の間に何度か挿まれる『モジャ』の童話がすごく心に沁みる。
          ラストの手前で、その後の展開を想像して、涙が溢れてしまった…。

          去っていく夫の背中に、何度も名前を心で呼びかける、月菜の気持ちが痛いほど伝わってきて、でも、どうしようもない現実というのも理解できる。

          「愛する人と暮らすことと、自分らしく生きることが必ずしもイコールではないということに気づいた。」という月菜の台詞も、何となく分かる。

          お互いに、好きで好きで仕方ないのに、相手に触れることさえできないのは、とても哀しいことだと思う。

          でも、私なら、好きな人が近くにいてくれるだけで、ものすごく幸せだと思えるんだけど…(好きな人さえ、どこにもいない今となっては)。

          これ読んでて、昔ものすごく嵌って、最終回をビデオで何度も見たドラマ『ミセス・シンデレラ』を思い出してしまった(内容は全然違うんだけど、何となく…)。

          どちらも、大人のおとぎ話かな。

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            『黒い太陽』新堂冬樹

            黒い太陽
            黒い太陽
            新堂 冬樹 2006年 祥伝社 P.552
            ★★★★★
            本人の意思とは関係なしに、夜の世界でしか生きてゆけない者がいる。まるで、黒い太陽に向かって歩いているようにな

            病に倒れ、病院で寝たきりとなってしまった父親の入院費を稼ぐため、高校を中退し、池袋のキャバクラ「ミントキャンディ」で働き始めた立花。
            働き始めて2週間が経ち、ホールの仕事が板についてきたことに嫌悪する立花。

            母親の影が重なり、水商売を嫌う立花だが、我が儘なキャスト達の中では、異色な存在の、この店のナンバー1キャスト、千鶴のことだけは、密かに気に掛けていた。

            その千鶴に、しつこく迫る客を見かね、思わず手を出してしまい、この店のオーナー、藤堂から、謹慎処分を言い渡された立花。
            クビも覚悟していた立花に、藤堂は、謹慎処分が解けた後、ホール長に昇進させるという。

            若くしてこの世界で成功を収め「風俗王」の異名をとる藤堂に見込まれ、藤堂が後継者として育てているという長瀬のライバルとして、指名された立花が、次第に夜の世界に呑み込まれていくことを危惧する千鶴。

            たった2週間あまりで、ホール長に昇進した立花に対する、店の同僚達からの執拗な嫌がらせ…。

            父親の借金を背負う千鶴をこの世界から救い出すために、と嫌がらせにも耐え、懸命に仕事に打ち込む立花。

            しかし、千鶴から藤堂との過去の話を聞かされ、千鶴から見放された立花は、いつか藤堂を見返すことを心に誓い、「ミントキャンディ」から去っていく…。

            そして、半年後、渋谷に新たな一軒のキャバクラが誕生した…。


            《風俗業界に激震!「ここまで書かれると商売がやりにくい!」新宿歌舞伎町のキャバクラ店長も絶句したリアリティ》だ、そうだけど…。


            ドラマ化された「黒い太陽」を先に見てしまっていたので、あまりの分厚さに読むの躊躇してたけど…ドラマとはかなり設定が違ってて、原作の方が大人しく思えてしまった。新堂さん、なのに毒がない。

            若干19歳で、人脈もなくて、ここまでやれるのかな?という疑問はさて置き、店のキャストの引き抜き合戦だとか、キャスト同士のいがみ合いなんかは、結構面白かった。

            前半に、キャバクラの裏事情みたいなのの説明部分がかなりあって、なかなか勉強にもなった。

            でも、最後がちょっと尻すぼみというか…。

            立花に利用され、切られていった女の子たちの、その後が気になる。
            まだまだ若過ぎる立花が、これから先、どう這い上がっていくのか、それも見てみたい気もする。

            でも、男の人って何で「擬似恋愛」を求めて、大金はたいてキャバクラに通うんだろう?
            不思議な生き物だと、つくづく思ってしまった。
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              『三億を護れ!』新堂冬樹

              三億を護れ!
              三億を護れ!
              新堂 冬樹 2004年 徳間書店 P.469
              ★★★★
              もともと夫婦仲が悪かったとはいえ、文江と取っ組み合いの喧嘩をしたのも三億が原因。
              人間が欲望の生き物だということが、よくわかった。
              いまでは真剣に思う。こんなことならば、三億など当たらなければよかったと……。

              教材販売会社の、落ちこぼれセールスマン、営業成績は常にビリ争いの冴えない中年男。
              上司からは罵倒され、同僚たちからは嘲笑され、事務の女の子にまで蔑まれる河内雄三、42歳。

              家に帰れば、醜く太った妻に、父親に冷たい視線をなげかける娘。
              そんな家族でも、一時は職を失い、妻をパートに出し、これまで何も父親らしいことができなかったことを申し訳なく思い、一矢を報いたいと考える河内に起こった大晦日の奇跡。

              一日3百円のわずかな小遣いをやりくりし、昼はデパートの試食コーナーで済ませ、同僚たちから煙草をせびり、こつこつと貯めたお金で買った、年末ジャンボ一等一億円、前後賞合わせて三億円の当選番号をトイレでこっそり確認し、意識が遠のく河内。

              そして、河内の当選金に目をつけたのは、雨宮率いるプロの詐欺軍団。
              銀行のつてを頼って、高額当選者を探し出し、最もカモになりそうな河内に白羽の矢を立て、二重三重の罠を仕掛け、河内から三億円を騙し取ろうと企む雨宮。

              妻や娘には、誰にも言うなよと、釘をさしたにも関わらず、河内が当選したことはあっという間に、親戚や近所のみんなの知るところとなり、あちこちから金の無心をされる河内。

              そしてある日の会社の帰り道、道端で何かを探し、困っている様子の、清楚な女性に出会い、心奪われた河内はたちまち彼女にのめりこみ…。

              「全ての文学賞に背を向けた超問題本。
              奪うか?護るか?宝くじの三億円は誰の手に!
              底なしのバカ三億円長者vs非情の詐欺師軍団の壮絶な闘争」だ、そうな。


              面白いだろうなぁとは思ってたけど、やっぱり面白かった。
              なるほど三億円も当たってしまうと、人間関係はこうなるのか。
              まあ、ここまで二転三転の、壮絶な奪い合いには、なかなかならんとは思うけど…。

              気の毒になるぐらい超ダメ人間、河内の、決して同情をひかないキャラもいいけど、詐欺師軍団の手下、ざ・たっちを陰気にしたような双子のヒットマン倉持兄弟と、勘違い中年アイドル、ナッキーこと直蔵が、とんでもなくキモくて最高。

              七三分けに、鼠色のジャンパー姿の陰気な双子のハモる「あずさ二号」は是非、生で聞いてみたいと切実に思った。


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                『ぼくだけの☆アイドル』新堂冬樹

                ぼくだけの☆アイドル
                ぼくだけの☆アイドル
                新堂 冬樹 2006年 光文社 P.239
                ★★★★★
                みーちゅんを知って、三年が経つ。
                その千九十五日間は、僕にとって、寝ても覚めても、御飯を食べているときでも、カブトムシの糞尿を掃除しているときでも、俊哉につき合って仕方なく女の子をナンパしているときでも、安西にいわれのない理由で説教を食らっているときでも、いつだって、みーちゅん一色の日々だった。

                下膨れの頬と垂れた眉毛
                ぽっちゃりとした胸と甲高い声
                生白い肌やぽっこり突き出たお腹に毛深い脛
                という外見の持ち主、「あきおくん」は昆虫ショップ「ムシムシワールド」で働く、夢見がちな27歳(ついでにマザコン)。

                有楽町の銀座ブックボックスで初めて出会い、一目ぼれした「みーちゅん」こと美千との一ヶ月ぶりのデートに、いそいそと今日も勝負服を着て、彼女の待つ新宿の文左衛門書店へと急ぐ…。

                「めざせ、第二の『電車男』!絶対に無理だとわかっていても、アイドルに真剣に想いをよせたって、いいじゃない。ファンタジック・ニート青春小説。」だ、そうな。


                連載中は『あきおくんのユカイな日々』というタイトルだったのが、単行本化にあたり改題されたそうだけど、もとのタイトルの方がしっくりくるような…。

                まさしく「あきおくん」の日々の生活、職場での出来事や、キャバクラに行ったときの話や、アイドルのコンサートに行ったときのことや、ライバルとのバトルやら、恋の話や、あれやこれやの面白話(まあ、本人にとっては、大概悲惨な結末なんだけど)。

                最後の展開は、ちょっとびっくりしてしまった…。

                「あきおくん」は、これでも、女性からラブレターをもらったり、ナンパをしたり(それもくどいけど)、デートに誘われたり(まあそうなるように仕組んだというか…)と、なかなかイケてる(この言葉が「あきおくん」は好きらしい…)。

                アイドルのおっかけを見て「ファンというものは概して思い込みの激しい生き物であり、妄想と現実の区別がつかない輩がいる」と、他人のことは、冷静に分析できるのに…。

                まわりに「おたく」な知り合いがいないから良く分からないけど、多分こういう人達なんだろうなぁ…という感じはする。

                そう言えば新堂さん、昆虫のDVDとか出してたなぁ…と思いつつ、カブトムシとかクワガタに、そんなたくさんの種類がいて、種類によって性格まで違うのかと感心した。
                本当に好きなのね。
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                  『砂漠の薔薇』新堂冬樹

                  砂漠の薔薇
                  砂漠の薔薇
                  新堂 冬樹 2006年 幻冬舎 P.349
                  ★★★★
                  後悔?そんなものが、私の中にあるはずもなかった。
                  中西のぶ子という人間がこの世に生まれてきた以上の後悔など、存在しないのだから。

                  庶民的な都営住宅に住む、教材販売会社に勤めるサラリーマンの妻、のぶ子。
                  のぶ子には、3歳になる娘を、どうしても国立聖星女子大学付属幼稚園に入園させたいという、強い願いがある。

                  「子供のためにどれだけの時間を割き、また、どれだけのお金をかけたかで、すべてが決まってしまうと言っても過言ではない。」と考えるのぶ子。

                  そのために、自分のことには一切お金をかけず、生活費をきりつめ、苦手な母親同士の付き合いも、大切な情報交換の場として、聞きたくもない自慢話や、のぶ子に対する皮肉や中傷に傷付きながらも、聞き流す術を身に付け、できる限り上手くやってきた。

                  全ては、娘を薔薇園の薔薇として咲かせるために…。

                  そして、周囲のお受験ママはセレブばかりという人間関係から、ともすれば浮きがちなのぶ子を、何かと気にかけ、擁護してくれるのは、幼馴染であり、今は、同い年の娘の幼稚園受験を控える母親同士として、付き合いのある十和子。

                  大手弁護士事務所を経営する夫、豪華なマンション、出来のいい娘。
                  周りの人間から、向日葵のようだと例えられ、生まれながらの優雅さを身にまとう、非の打ち所のない女性。

                  のぶ子とは対照的な十和子。

                  のぶ子は、十和子が娘をピアノ教室に通わせると聞けば、密かに教室の場所を探し出し、偶然を装い、同じ教室に娘を通わせたりと、十和子に気付かれないように、十和子を真似、受験に備え、最善を尽くす。

                  お受験ママの仲間の一人、芳江の弱みを偶然握り、蹴落とすことにも成功する。

                  そして、母親達にとっての運命の日、幼稚園の抽選会の後、十和子が目を離した隙に、十和子の娘はのぶ子に連れ去られ……。

                  「競争社会の暗部をあぶり出し、すべての大人たちに幸福の意味を問う畢生の問題作。
                  平凡な主婦を殺人へと駆り立てた日常生活に潜む狂気を描く衝撃のクライム・ノベル!」だ、そうです。


                  新堂さんは、こういう普通なのも書くのか…と再認識した。
                  女性特有のいじわるな部分、卑屈な心理、よく書けてるなぁと。

                  実際にあった事件なだけに、読んでいてとても辛くなる。
                  そういうことも、もしかしたら、あったのかも知れないなと…。

                  のぶ子の一生懸命さと、娘に託す思いの強さはよく分かるけど…。
                  やっぱり人間、身の丈に合った生活をしないといけないなと、思った。

                  幸い、類は友を呼ぶで、私には、セレブな友達が一人もいなくて良かったな、と。
                  0

                    『銀行籠城』新堂冬樹

                    銀行籠城
                    銀行籠城
                    新堂 冬樹 2004年 幻冬舎 P.266
                    ★★★★★
                    神は、たまたまという都合のいい言葉を使い、罪のない人間を地獄へ叩き落す。
                    自分の望みは、ささやかなものだった。人間らしい生活を送りたい、人間らしい扱いを受けたい……たったそれだけの願いを、神は叶えてくれなかった。

                    あさがお銀行中野支店 午後三時の閉店間際。
                    シャッターが閉まる寸前に姿を現した男の存在を、誰一人訝しがる行員はいなかった。
                    そしてシャッターが降りきった直後、男は豹変する。

                    案内係の男のこめかみに銃口を突き立てる男の姿を見て、客達は泣き喚き、逃げ惑う。
                    そして、一人の男性客が最初の犠牲者となった。
                    水を打ったように静まり返る一階フロア。

                    男は、この日のために、二ヶ月も前から足繁く通い、入念な下調べをしてきた。

                    二階のフロアと合わせ、34名の行員、そして、たまたま居合わせただけの不運な客8名、合わせて42名の、従順なるしもべ達。
                    一秒でも男の指示に遅れると、容赦なく撃ち抜かれる人質達。

                    人質達を全裸にし、人間バリケードを作り、行内に立て篭もる男。

                    篭城して二時間…。
                    自らを「五十嵐」と名乗り、一人の刑事を指名し、犯人は前代未聞の取引を持ちかけた。

                    人質の命を救いたければ、自分の頭を銃で撃ち抜くこと。
                    そして、テレビカメラの前で、全国の視聴者の目の前で、また一人の犠牲者が…。

                    ベテラン刑事の鷲尾でさえ、いままでに遭遇したことのないという、恐ろしく冷徹で非道な犯人…何を要求するでもなく、ただ人質を盾にして銀行に篭城する男。
                    誰もが驚愕するほど「冥く冷たい目をしている」という男の、真の目的とはいったい何なのか…。


                    誰かの命と引き換えに、己が助かろうとするのか、それとも自らを犠牲にしても、誰かの命を救うのか…。

                    殺されていくのは、一度は正義漢を振りかざし、男に歯向かおうとする人質達。
                    そして、毀れてしまった者。

                    「愛だ思いやりだとほざく輩も、恐怖の極限状態に置かれれば、なにより優先するのは保身であることを。善人を気取る輩ほど、ひと皮剥けば自己愛に塗れた薄汚い偽善者であることを。」

                    犯人の男にとって、世間とは、そういうものだと思い知らされている。
                    そういうことを、ここにいる全員にも、思い知らせようとしている。
                    ここでも、誰もがそう…そして、男は人間の本性を暴き、晒し出す。

                    かなり、はらはらしながら読んだけど、たった一つ、ほっとした瞬間があった。
                    そこにほんの少しだけ、男の真の姿を垣間見た気がして。

                    最後の一言には、子供のまんまなんだな…と、少し、涙してしまった。
                    で、「え、それだけのことのために、こんな大勢殺したの…?」と唖然。

                    新堂さんの作品にしては、まともというか、普通というか…、期待しすぎたかな、これは。

                    良いのか悪いのか、しばらく読まないと禁断症状が出てしまうほど、新堂さん中毒になってしまった…。
                    0

                      『溝鼠』新堂冬樹

                      溝鼠
                      溝鼠
                      新堂 冬樹 2005年 徳間書店
                      ★★★★★
                      金にきれいも汚いもない。聖者が持っていても一万円。犯罪者が持っていても一万円。金は、人を差別したりはしない。金は、人を選んだりはしない。手に入れた者のために、従順に使える僕――金は、人を裏切ったりはしない。

                      受けた恩は三分で忘れるが、受けた屈辱は三十年経っても忘れない、根深く、屈折した性格、屈折した性癖、汚穢にまみれた人生を這いずり回り、究極の拝金主義者、金の亡者、守銭奴と成り果てた鷹場英一。

                      たとえそれが依頼人の逆恨でも、報酬になるのなら殺人以外はどんな依頼でも引き受ける復讐代行屋、社員3名を抱える「幸福企画」の社長である英一に持ち込まれた、今回の依頼は、男を手玉に取るデート嬢に、最大の屈辱と底無しの絶望を与える、というもの…。

                      首尾よく仕事を済ませ、依頼人からの報酬を受け取った英一を事務所で待ち受けていたのは、9年ぶりに再会した、鷹場源治。
                      英一と姉の人生を滅茶苦茶にし、姉との仲を引き裂いた、英一が譲り受けた性格そのままの、実の父親その人であった。

                      ある男に怨みを抱き続ける、執念深い源治が、英一に持ち込んだ話は、自分が握っている病院の院長の弱みをネタに、2億円を脅し取るというもの。
                      7千万の分け前を餌に、片棒を担がせようとする源治は、英一が決してこの儲け話を蹴ることができないよう、周到な根回しも怠らなかった。

                      しかし、その儲け話は、構成員一万四千人を誇る広域組織宗像連合の直系団体、宝田組の組長、英一の姉、澪を源治の借金のカタに連れ去り、愛人として側に置く、英一にとって憎むべき相手、宝田の描いた絵でもあった。

                      やくざを出し抜き、シノギを掠め取るという危険を冒してまでも源治の話に乗ることにした英一の目的は、実の父親、源治への報復――。

                      「助かりたいがために、嘘で娘を陥れようとする父。
                       助かりたいがために、嘘で父を陥れようとする娘。」
                      己が生き残るためならば、たとえそれが親でも、娘でも、敵に差し出すことなど意に介さない、酷似した親娘。

                      そして、愛する姉をやくざの元からも、父親からも救い出し、二人で生きることを夢見る英一。

                      三者三様の思惑を秘め、手を組んだ親子三人の先に待ち受けているのは、楽園か、地獄か…。


                      このストーリーに、新堂さんテイストが加わると、こうなってしまうのか…と感心するほど、おぞましかった(嫌いじゃないけど)。

                      暴力につぐ、暴力、陵辱、恥辱、侮辱、サディストと倒錯者のオンパレード。
                      これでもか、これでもかと突きつけられる汚辱シーン。

                      それでも読む手が止まらなかったのは、あまりの馬鹿馬鹿しさというか、漫画ちっくな表現や、例えのユニークさというか…独特な言い回しが面白すぎて…。

                      ○○フェイス、○○ボイスとか、一体何種類出てきたかな…。

                      そして、あまりの英一の超ドけちっぷりや、執念深さの例えは、ものすごくわかりやすくて(どんなに儲けていても、シャワーは週二回とか…、道で十円玉を拾うとか、タクシー代を相手に払わすテクニックとか…)、何かまぬけで、子供っぽくて…。

                      窮地に陥っても、何とか相手を出し抜こうとする父と娘の狡猾さと、でたらめさ。
                      こんな場面でもまだ、こんなこと考えるのか…ぐらいの姉のある種楽天的な性格は、もう、何と言ってよいのか。

                      そして、姉と弟が、同じ時、同じ場所で、別々に考えていたこと。
                      二人のあまりの温度差に、弟が気の毒にもなったりもしたけど…。

                      まあ、最後はそういうことなのね、という感じかな。

                      みんな凄かったけど、登場人物の中で、一番気持ち悪くて、怖くて、あほらしかったのは「幸福企画」の社員の八木かも…。

                      あの場面に「磯野波平カット」って…。

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