スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

0
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『オイアウエ漂流記』荻原浩

    評価:
    荻原 浩
    新潮社
    ¥ 882
    (2012-01-28)
    Amazonランキング: 18158位

    南太平洋の上空で小型旅客機が遭難、流されたのは……無人島?
    生存者は出張中のサラリーマンと取引先の御曹司、成田離婚直前の新婚夫婦、ボケかけたお祖父ちゃんと孫の少年、そして身元不明な外国人。てんでバラバラな10人に共通しているのはただひとつ、「生きたい」という気持ちだけ。
    絶体絶命の中にこそ湧き上がる、人間のガッツとユーモアが漲った、サバイバル小説の大傑作!
    久方ぶりに本屋さんをうろうろしていて、荻原さんだし、帯に「爆笑と感泣を保証します」とまで書いてあったので、期待を込めて買ってみた。
    家に帰ってアマゾンのレビューを見たら評価が意外に低いので「あれれ」と驚いた。
    とりあえず読み始めたら、「え?全然面白いよこれ」という感じ。

    無人島に来てさえも部長たちにあごでこきつかわれ、取引先の御曹司に気を遣わねばならない平社員の塚本君の涙ぐましい努力とか、取引先のお馬鹿な二代目にへこへこする「螢僖薀瀬ぅ硬效漏発」の部長、課長の図式も分かりやすくて、この関係性がなかなか崩れないのが、日本人の悲しい性というか、会社に戻った時のことを考えるあたりは楽天的なのか。

    昔取った杵柄、でサバイバル生活に大活躍の、たまに生きてるのかどうなのかわからなくなるおじいちゃんや、これ以上ないくらいに子どもらしい子供、孫の仁太の可愛さもさることながら、副操縦士代わりの賢いセントバーナード犬や、ぶりぶりキャラだけどブラックな新妻早織さんや、オタクっぽくてキモキャラ夫の昌人の豹変振りや、謎のマッチョな外国人のサイモンさんといい、とにかくキャラが濃くて面白い。

    でも、そこはやっぱり無人島生活。

    安心して読んでたら時々ガツンガツンと頭を叩かれた、みたいな衝撃。
    うーん、そうなったら嫌だなぁ的な展開もあったりして、面白さ半分、読後感は微妙。
    「生きる」ということはそういうことなんだと、仕方ないんだけど…。

    良い意味で、とても荻原さんらしいサバイバル小説、という感じ。

    ちなみに無人島にひとつだけ持っていけるとしたら、ここはやっぱり「醤油」かな。
    0

      『さよなら、そしてこんにちは』荻原浩

      さよなら、そしてこんにちは
      さよなら、そしてこんにちは
      荻原 浩 2007/10/25発行 光文社 P.244 ¥1,575
      ★★★★
       妊娠を告げられた時には、喜んでみせ、すぐに入籍することを約束したのだが、正直に言うと、手放しに嬉しかったわけでもない。何かが終わってしまうかもしれない予感に、内心、動揺していた。……
       しかし、それが不思議なことに、純子のお腹がふくらんでくるにつれて、自分の目の前の景色が変わって見えてきた。    〜『さよなら、そしてこんにちは』より〜

      笑顔を見せてはいけない商売「葬儀社」に勤める、もうすぐ父親になる陽介。普段からの無愛想な顔立ちが、この仕事に向いていると社長からは言われるものの、実は笑い上戸の陽介。そんな陽介が葬儀の最中に意識をそらせるために考えるのは、まだ見ぬ娘とのシミュレーション…『さよなら、そしてこんにちは』

      会社をリストラされ半年間ぶらぶらしていた父親が、農園をやると突然言い出し、東京から3時間離れた、携帯も圏外のど田舎に引っ越すことになった一家4人。「赤毛のアン」や「若草物語」のような田舎暮らしを想像していたものの…『ビューティフルライフ』

      テレビの人気情報番組をくまなくチェックし、翌日の商品の仕入れを決めるスーパーマーケットに勤める食品課係長。ライバル店に負けないように、テレビ番組の情報を事前に仕入れたいあまり…『スーパーマンの憂鬱』

      子ども番組のヒーロー役の彼見たさに、子どもをだしにする専業主婦。後楽園で行われるショーに、憧れの彼がやってくると知り、いてもたってもいられなくて…『美獣戦隊ナイトレンジャー』

      客はといえば、安いネタばかりで長時間居座る常連ばかりの、流行らないすし屋「寿し辰」の典型的な頑固おやじ。ある日店にやってきた一見の客は、どうやらこっそりと取材をしているようで…『寿し辰のいちばん長い日』

      流行の「スローフード」の先駆者として取り沙汰され、一躍時の人となってしまった料理研究家、兼主婦。取材に、テレビ出演に、原稿の締め切りにと、てんてこ舞いになってしまい…『スローライフ』

      クリスマスを家族で祝いたいと、可愛い妻と娘にせがまれた由緒正しき寺の僧侶。
      檀家にばれないようにと、こっそりクリスマスの準備をすすめるのだが…『長福寺のメリークリスマス』の、7編から成る「いっしょうけんめい翻弄される人々」を描いた短編集。

      「いろいろあるさ、人生だもの。
       世のため、人のため、そして家族のため、働き者の悲哀を描く、著者独壇場の傑作集」だ、そうで。


      雰囲気的に奥田さんの『家日和』と同じ匂いがしたような…。

      一番笑えたのは『ビューティフルライフ』の少女ちっくなお母さん(の夢が次々と砕かれるところ。そりゃそうだ、というか、やっぱり外国でも昔は「ぼっとん便所」だったのかな?)。
      そして床下の謎の生物…とても気になる。

      とは言っても、面白いだけじゃなく家族の引越しの本当の理由がなかなか重くて、こんなお父さんお母さん、いいなぁと思える物語(文句垂れの、お姉ちゃんもなかなか)。

      『スーパーマンの憂鬱』は、リアルな話だなぁと(消費者の私は、思いっきり、この手のテレビの情報番組に踊らされてるし…)。
      実際、スーパーで働く人たちは、やっぱりああいうの見て参考にしてるのか、どうなんだろう?と思えてしまった。

      『スローライフ』は、最後のオチがなかなかよろしくて(奥田さんのは「ロハス」だっけかな)、『長福寺のメリークリスマス』は、ああ、もうすぐそんな時期かと、すっかりクリスマスなどご無沙汰になっている私にクリスマスを思い出させてくれたかも。

      『さよなら、そしてこんにちは』の葬儀社の社長の言う「結婚は人生の墓場…」は、実際どうなんだろう。
      そうとも思えるし、ここに出てくる家族は、どれもごくごく普通の幸せな家族だし、そういうの羨ましくもあるし、結婚して家庭を築くのは悪くないのかもなとも(みんな自分以外の誰かのためにだから、一生懸命になれるんだなと)。

      荻原さんらしく、いたるところにユーモアたっぷりで、面白いからさくさく読めるけど、そんなようなことも、つくづく考えさせられるような一冊だったかも。

      0

        『千年樹』荻原浩

        千年樹
        千年樹
        荻原 浩 2007/3/30発行 集英社 P.299 ¥1,680
        ★★★★★
         大きな木を眺めていると、ときどき寿久は思うことがある。生物として彼らのほうが人間より格上なのではないかと。彼らの一族は、人類が誕生するずっと前からこの地上に君臨してきた。人間よりはるかに長寿で、本体を失っても再生が可能な生命力を持っている。それに比べたら、人間は小さくて、ひ弱だ。  〜『郭公の巣』より〜

        今は荒れ社となった、人気のない神社の石段を登りきったとば口で、もともとは雑木林と田畑しかなかった土地を切り拓いて建設された新興住宅地を見下ろすように立つ、大きな「くすの木」。

        神社が建つはるか以前より、その地に根を張り、古くから「子盗りの木」と言い伝えられ、人々から畏れられる存在でもあった樹齢千年の「くすの木」も、やがてその命を終えようとしていた…。
        そんな「くすの木」が千年もの長き年月に渡り、見続けてきた人間たちの暮らし。

        「くすの木」が、この場所に根を下ろすことになった壮絶な物語…『萌芽』に始まり、

        第二次世界大戦中に空襲を受けた村の過去と、少し前の現代の話が交錯する…『瓶詰の約束』

        貧しさゆえに幼くして遊郭に売り飛ばされた女と、遠距離恋愛で久しぶりに会えるはずの恋人を待つ女が、時を越えた「くすの木」の下で男を待ち続ける…『梢の呼ぶ声』

        煩いぐらいに蝉の声の鳴り響く「くすの木」の下で、「切腹」をさせられようとする不運な男と、職場の学校での自分の不遇を嘆き、「くすの木」に怒りをぶつける男の話…『蝉鳴くや』、

        離れ離れになった母の姿を追い続ける山賊と、「くすの木」の根元に死体を埋めようとするチンピラたちの愚かな話…『夜鳴き鳥』

        女の子ばかりを産み続けたために、姑から冷たくされる貧しい農家の嫁と、サファリ・パークへ出かけた帰り道、道に迷い、偶然に「くすの木」の側にある史料館に足を踏み入れることになった、一見幸せそうな四人家族の物語…『郭公の巣』

        大正と昭和のはざ間に生まれ、今まさにその命を終えようとしている祖母の若き日の恋と、現代の孫娘の恋の話…『バァバの石段』

        村を襲われ、幼馴染を侍達に奪われた少年と、「くすの木」には思い出したくない過去を持つ、役所の「あれこれ相談課」に勤める男が「くすの木」の最期を見守り、その後に見えたもの…『落枝』で終わる、

        一本の「くすの木」がこの世に生まれてから、次の世代へと命を繋ぐまでの間に、「くすの木」の下で連綿と続けられる、変わらぬ人間の生の営み8編から成る連作短編集。

        「木は、すべてを見ていた。
        千年を生きたクスノキの物語。
        それは、繰り返された人間たちの物語。」だ、そうで。


        これだけ短いページ数の間で、一体どれくらい過去と現代を行ったり来たり出来たことか…。

        何度も何度もタイムスリップして、その度に悲惨な過去を見せ付けられて、でも現代に戻っても、平和かもしれないけれど、人々の暮らしは決して幸せじゃないことを思い知らされる。

        一つの短編に、千年の間の様々な時代の過去の話と、現代の(といっても、昭和50年代だったり、60年代だったりそれも様々で)話が織り交ぜられていて、それらの繋がり方が絶妙(長くても良いから、もっともっと、この「くすの木」が見た事実を知りたいと思ってしまった)。

        時代がどれだけ変わっても、人間がやってることや、人の思いは変わることなく受け継がれていくのだなと痛感してしまうし。

        昔の話はあまりにも壮絶で痛々しいものが多くて(読んでいて、その痛みも、辛さも自分のことのように感じられるほど、リアルに描かれていて、荻原さんの凄みを感じてしまった)、どれも結構ラストに思わず「ぞくり」とさせられたし、救いがなくて全体的には怖かったけど、少し前の時代の『バァバの石段』の、祖母の昭子さんの話には、ちょっとほっとした。

        普段何気に御所の中を歩いてて、古くからある「木」を見る度に、ここに書かれてあるようなこと思ってしまってたけど、「実は人が癒されているのではなくて…」というのに、これから「木」を見る目が変わってしまうかも。

        最初の物語で「自分の死は覚悟していたが、我が子だけは助けたかった。…」という父親の気持ちが、そのまんま、この「くすの木」の気持ちのようで。

        次の世代へ…という気持ち、現代の人間は、徐々に失いつつあるのかも知れないなとも。
        0

          『押入れのちよ』荻原浩

          押入れのちよ
          押入れのちよ
          荻原 浩 2006/5/20発行 新潮社 P.293 ¥1,575
          ★★★★
          「うぃぃっく」
          「泣くなってば。俺が責任をもって成仏させてやるからさ」
          ………
          「まず、自分がどこで、なぜ死んだのか、それを思い出してみ。それが先だ」
          「あい」ちよがちょこんと頷く。
          「それと、ひとつだけ約束してくれ。出てくる時にはひと声かけて欲しい。やっぱり怖いから」
          〜『押入れのちよ』より〜

          リストラ同然に勤めていた会社を辞め、再就職先の当てもない28歳の恵太が、住んでいたマンションの家賃も払えなくなり、不動産屋の勧めで引っ越した先は、築35年、まるで苔むした巨大な石碑のような家賃三万三千円の『月が丘マンション』。

          そのあまりの安さを不気味には思いながらも、両隣のおかしな隣人たちに挨拶を済ませ、とりあえず落ち着いた恵太の前に現れたのは、この部屋に住み着く、市松人形のような姿の小さな女の子…。表題作『押入れのちよ』

          他、『お母さまのロシアのスープ』、『コール』、『老猫』、『殺意のレシピ』、『介護の鬼』、『予期せぬ訪問者』、『木下闇』、『しんちゃんの自転車』の9編から成るちょっぴり怖くて切ない短編集(荻原さん初の?)。

          「今ならこの格安物件、かわいい女の子(14歳・ただし明治生まれ)がついてきます――。
          ぞくり切ない、9夜の物語。」だ、そうで。


          『押入れのちよ』の、ちよがとにかく可愛い…。
          ちよの言う「はいなるあんさー?」に参ってしまった。
          ちよの背負ってきた哀しすぎる過去にも、ちよの楽しかった思い出の数々にも涙してしまうし、かなり切ない。

          どれもなかなか満足できる作品だけど、特に面白かったのは、筒井さんのに出てきそうな、似た者夫婦を描いた『殺意のレシピ』と、新堂さんばりに「鬼畜」のような嫁が出てくる『介護の鬼』かな。
          どちらも「こわおもしろい」。

          『お母さまのロシアのスープ』は、実際にありそうな話で、少し悲惨すぎて途中からひいてしまった。

          猫バカなので、『老猫』の話の展開はものすごく好きだし、確かに家の猫さんたちは皆「女王様」で、私は完全に下僕だし。

          に、しても『介護の鬼』の嫁は本当に怖すぎる…。
          私が年老いて、こんな風に「ドラえもん」や「オバQ」にされてしまったら嫌だなぁ…と。
          0

            『四度目の氷河期』荻原浩

            四度目の氷河期
            四度目の氷河期
            荻原 浩 2006年 新潮社 P.459
            ★★★★
            地球は氷河期を使って、地上の生物を何度もふるいにかけた。そして、過酷な環境に打ち勝った生物だけに未来を与えた。マンモスやネアンデルタール人がふるいから落ち、クロマニヨン人が救われたように。世界中の人々がてんでばらばらに信じている神様というのは、じつは地球そのもののことかもしれない。

            幼稚園に入園したときから、「普通の子どもとは違う」ことを少しずつ自覚し始めたという、ワタル。
            狭い部屋で、じっとしていることができず、時には叫び出してしまう落ち着きのない子ども…。

            小さな田舎町で暮らし始めた、よそ者の母と、父親のいないワタルに、世間の目はとことん冷たく、人より目立つワタルは、学校でもいじめを受けることに…。

            小学校の高学年になり、皆より早く第二次性徴を迎えたワタルは、自分の変化に戸惑い、誰にも相談できず、自分の体をもてあまし「自分の父親はクロマニヨン人なのだ」と、自分自身に折り合いをつけ、それからは、クロマニヨン人の子どもとして生きることにした。

            いつかやって来る次の氷河期に備えて、母親と二人で生き延びるために、石槍を手に、ひとりぼっちで、野山を駆け回るワタル。

            そんな孤独な少年、ワタルに訪れた運命の出会い。
            彼女の出現により、少しずつ他人との関わり方を学び、中学に入る頃には、もう、自分がそれ程特別な存在ではないと思えるようになっていくワタル。

            そしてワタルは、自分が何者であるのかを知るために、父親に会いに行く決心をするのだが…。

            「フツーなんかじゃ、この時代を生き抜けない。
            『明日の記憶』の著者が描く、今ここにいることの奇跡。感動青春大作。」だ、そうな。


            「ワタル」という一人の男の子の4歳の頃の記憶から、18歳になるまでの成長の記録が、ぎゅっーっと濃縮されたもののような。

            最初、この子はこのままどうなってしまうんだろう…と本当に心配してしまった。

            小学生にして、「必要な誰かから、必要とされない孤独」が分かってしまうと言うのは、すごく哀しいことだと思う。
            その分大人になるのも早そうだけど…。

            ものすごく切ない話なんだろうけど、そこは荻原さんなので、かなり笑えてしまう。

            男の子って、こうやって成長していくのか…と、すごく良く分かったというか。
            同級生の男の子達を思い出して、あの子らも、なかなか大変な道を乗り越えてきたんだな…と、今さらながら同情してしまった(やっぱり隠れてパンツ洗ったりしてたのかな、とか)。

            中学時代の、異性との付き合い方のぎこちなさとか、高校時代の友人関係とか…小学校から高校生までの自分の記憶と重ね合わせて、すごく懐かしい気持ちで読んでしまった。
            束の間その頃に戻れたような気がして、わくわくしてしまったかも。

            クロマニヨン人(アイスマン)を前にしての、ワタルの台詞は本当に切なかった…。
            でも、その後の行動は…どうなのかなー?(何か急に子どもの頃のワタルが甦ったような)

            「ぼくの心に欠けていたジグソーパズルのピースを、彼女は持っていた。彼女が探していたピースは、ぼくが持っていた。」
            こんな風に思える相手と、この世で巡り会えるって…羨ましいな(たとえ小説でも)。
            0

              『噂』荻原浩

              噂

              荻原 浩 2006年 新潮文庫 P.484
              ★★★★
              携帯を片手に歩く群衆の声、声、声。ひっきりなしに鳴る着信メロディ。街宣車の大音響。スピーカーで神のメッセージを唱える伝道師。ゲームセンターの電子音。店を通り過ぎるたびに変わる店内BGM。  
              不確かな情報、あいまいな伝聞、虚言、妄想。

              渋谷に屯する女子高生達からまことしやかに流された「レインマン」の噂。

              晴れた日でも真っ黒なレインコートを着用する、ニューヨークから来た殺人鬼。
              狙うのティーンエイジの子ばかり。
              逃げられないように、まず足首を切り落とすという残忍な手口。
              でもなぜか「ミリエル」の香水をつけている女の子は狙われないのだという。

              情報の発信源は、女子高生の口コミを利用して、無名のブランド「ミリエル」の販売促進を企む、ある企画会社。
              噂が噂を呼び、またたく間に「ミリエル」の香水はヒット商品となりつつあった。

              多くの都市伝説と同じように、単なる「噂」、「デマ」の一つに過ぎなかったはずの「レインマン」。

              ところが、噂通りに女子高生が殺害され、都心の公園に捨てられた足首を切り落とされた死体が発見され…。

              「都市伝説が渋谷の女子高生たちの間を駆けめぐる。背筋が凍る荻原流サイコ・サスペンス 衝撃のラスト一行に瞠目!」だ、そうです。


              事件を追う、二人の刑事、娘と二人暮しの小暮と、警部補の名島さんのコンビがなかなか良かった。
              いまどきの女子高生の娘と、娘思いの小暮との会話は、本当に仲良さそうで…。

              あと、「コムサイト社」の女社長、なかなか壊れたキャラクターの杖村さんも最後の方はかなり面白い。
              ああ、この人もいろいろと大変なんだな…と。

              実際にこういう売り出し方されてる商品は、世の中に溢れてるんだろうなぁと思う。
              私も口コミには結構振り回されてしまう。
              口コミサイトの「@コスメ」とかで「良い」とされてるものは、信用して結構買ってしまったりする。
              お陰で、それまで全然知らなかったような、良いものにも出会えたりするけど。

              ここに出てきた「噂」の数々は、どれも耳にしたことがあるものばかりで、しかもやっぱりある程度、地元に根ざしたものに脚色されてるのに感心してしまった。

              「牛女」の噂は、4、5年前、うちの高校生から聞いたときには「だるま」で、木屋町の路地をカップルで歩いていると…だったし。

              そして帯にある「最後の一行」に期待して…、読んでる間も「わくわく」してしまったけど、裏切られなかった。

              「BABY DOLL」の小瓶、長いこと持ち歩いてたけど…効果は…まあ、これは本人に問題ありなのか。
              0

                『オロロ畑でつかまえて』荻原浩

                オロロ畑でつかまえて
                オロロ畑でつかまえて
                荻原 浩 2001年 集英社文庫 P.223
                ★★★★★
                「みんな、なにが欲しいのかね」
                ぽつんとマリアンさんが言う。
                「え?」
                「ワタシのママ、よく言ってたよ。裏の庭で見つからないものは、どこ行ったって見つからないってね。でもワタシ、日本に来てしまったけどな」

                奥羽山脈の山麓に位置する、人口わずか300人の過疎の村、牛穴村。

                村の青年会の会長、慎一の営む小さな民宿「米田荘」の一室で、たった8人ぽっちしかいない青年会(青年と呼ぶには少々無理のある…)の面々は、もうじき行われる村祭りの神輿の担ぎ手の人手不足を憂い、村から出て行ったきり戻ってこない仲間たちの都会の暮らしぶりをひとしきり話題にしては、自分たちの村の行く末を案じていた。

                全ては、酒もまわり始め、座も佳境に入る頃「で、これからどうすべ」と話題をふられた、村一番のインテリと、みんなから一目置かれる慎一の口から出てきた言葉「村おこし、すべ」のひと言から始まった…。

                青年会のメンバーから、なけなしの金をかき集め、村おこしのキャンペーンを引き受けてくれる広告代理店を探しに東京へ出てきたのは、唯一村の言葉と東京の言葉を話せる「バイリンガル」の慎一と、酒に酔うと毎度「オラ、東京さ行くだもの〜」と、叶わぬ夢を語っていた幼馴染の悟、の二人。

                新聞の勧誘員と間違われるような、二人の依頼を快く引き受けてくれたのは、社員がたったの3人の、今にも潰れそうな弱小広告代理店「ユニバーサル広告社」。

                「ユニバーサル広告社」の癸押企画と制作の全てを引き受ける杉山が、現地調査の結果、打ち立てた企画は、「ネス湖のネッシー」ならぬ「牛穴湖のウッシー」。

                牛穴湖の謎の生物の出現は、マスコミに大々的に取り上げられ、牛穴村には取材陣が殺到し、村はにわかに活気付き、ワイドショーばかりでなく、とうとうお堅いニュース番組にまで取り上げられるようになるのだが…。

                「第10回小説すばる新人賞受賞、ユーモア小説の傑作」にして、荻原さんのデビュー作だ、そうな。


                さすがに、広告代理店の仕事に精通してるだけあって、各章の業界用語の説明が、なかなか皮肉が効いてて面白かった。

                駅の改札脇の熊のマスコットや、「尾崎」の霊を呼び出す「たまぎり」や、村崎の苦手な「クモタケ」に、ウケてしまった。
                北国、なのに「ラテン系」の牛穴村の人々も…。

                こういう展開になるとは…人生って先がわからないから面白いなぁと…、ものすごく嬉しくなってしまう。

                「オロロ豆」って、本当にあるのかと思って検索したけど、わからんかった…。
                オロロ豆の串焼き、本当にあるなら是非食べてみたい。
                ゴンベ鳥は、さすがに食べたいと思わなかったけど…。
                0

                  『あの日にドライブ』荻原浩

                  あの日にドライブ
                  あの日にドライブ
                  荻原 浩 2005年 光文社
                  ★★★★★
                  もう一度、人生をやり直すことができたら。
                  もう一度、人生をやり直すことができるなら、どこからだろう。
                  叶わない夢を念じ続けた。
                  せめて、自分にあったかもしれない、もうひとつの人生を、ひと目、見ることができたら。

                  順風満帆に出世してきた、大手銀行の元エリート銀行員。
                  支店長に言ってしまった、たった一言があだとなり、自ら銀行を去ることにした牧村伸郎、43歳。

                  キャリアのある自分なら、就職先などいくらもあると高を括っていたものの、現実は厳しく、公認会計士の事務所を開くことを思い立ち、試験に合格するまでの腰掛のつもりで始めたタクシー運転手。
                  交替制の24時間の勤務を終えて家に帰れば、妻の用意した朝ごはんを肴に、一本の発泡酒を飲んで眠るだけの生活。

                  結婚して15年になる妻はスーパーのパートを始め、ゲームにばかり熱中する小学生の息子、今どきの音楽を大音響で鳴らし、睡眠の邪魔をする中学生の娘とは、すれ違いの生活。

                  運転手仲間とは一線を画し、課せられたノルマもなかなかこなせず、「肉体的にも、精神的にも、この仕事は俺には無理だ、早いところ辞めちまおう」と軽い気持ちで乗務し続けていた。

                  「人生は偶然でなりたっている」と、常々考えていた伸郎は、ある日乗せた客を偶然、東京へ出てきた当初住んでいたアパートの近くで降ろしたことから、もし、大学生の頃の彼女とあのまま付き合っていれば…と妄想にふけるようになる。

                  もし、このアパートを借りれることが出来れば、あの頃のように…そう思い立った伸郎は、家賃を捻出するために、売り上げを伸ばそうと、ノルマ達成率癸韻里錣ばタクシーの最高齢運転手「隊長」の後をつけ、そのノウハウをものにしようとするのだが……。


                  あの人と結婚していたら、もし、違う会社に就職していれば…といった「たら」「れば」を妄想しまくり、エリート意識をふりかざし、自分にはもっと違った人生があったのでは…と考え、今の仕事を馬鹿にしているような主人公を、最初は「いやな奴」と思ってたけど…。

                  でも「たら」「れば」と「もし」をのぞいてしまったら、人生には何も残らなくなるに違いない、というのは何となく分かるかな、この歳になれば。
                  妄想する分には、害はないし。
                  きっと家庭を持つ中年以降の男の人なら、すごく共感できそうな。

                  ビールから発泡酒に格下げされるのは、きっと今の日本のどこにでもある家庭なんだろうなぁと身につまされる。

                  そして、荻原さんらしく、やっぱりどこか痛快な場面もあって、裏切らない。

                  何より気になったのは、タクシー運転手仲間の「山ちゃん」のことかも…。

                  タクシーの運転手さんって、こんなに苦労してるのか…というのがとても良くわかった。
                  車の運転が好きだった頃、一度真剣に就職考えたことあるけど…私には、やっぱ無理だなと思い知らされたかも。
                   
                  0

                    『母恋旅烏』荻原浩

                    母恋旅烏
                    母恋旅烏
                    荻原 浩 2004年 双葉文庫
                    ★★★★
                    「家族っちゅうのは、そういうもんやないんや……
                    なんちゅうか、まぁ、一口には言えん…せやなぁ、言うたら、荷物みたいなもんや。旅の荷物やな。重うてかなわん時もある。そやかて捨てるわけにはいかん。荷物あっての旅回りやからな。鳥なんかは子どもに羽根が生えたら、ほな、さいならや。すぐにほっぽり出すけど」ちょっとうらやましそうに父さんは言う。

                    清太郎を家長とするドサ回りの元芸人一家、6人家族の花菱家。
                    現在は、父の十何番目かの新しい仕事、清太郎曰く「家族全員でできるベンチャービジネス」、兄曰く「イメクラみたいなもん」である、擬似家族を派遣するサービス会社「HES」で営業先を回る日々を送っていた。

                    しかし清太郎への客からのクレームが絶えず、会社から仕事をもらえなくなった一家は、独立し、自分たちで「レンタル家族」サービスを始めることに。会社の名前は「花菱エンターティナーカンパニー」略して「HEC」完全に前の会社のぱくりである。

                    そうして始めた「HEC」も、相変わらず仕事はなく、借金取りに追われる一家はバンの中で寝泊りしながらの旅に出ることに…。
                    その間にも、姉や兄は独立し、一人、また一人と家族の元を離れていってしまった。

                    そんな折、15年前、後足で砂をかけるような別れ方をした師匠が、病に倒れたと聞き、(借金を頼むために)駆けつけた清太郎は、行きがかり上、師匠の息子、ロンドン帰りの花之丞が座長代理をつとめる劇団で、また芝居をするはめに…。

                    しかし花之丞が座長代理をつとめる一座の芝居の題目は、清太郎にはちんぷんかんぷんなものばかり、客の入りもめっきり減り、劇場主にも見捨てられ……またもや、ピンチを迎えた花菱一家。
                    一家6人の運命やいかに。


                    お姉ちゃん、お兄ちゃんと、強力キャラが次々と家族から離れていく中、花之丞一座という家族も同然の新メンバーを得て、思う存分力を発揮し始める清太郎。

                    末っ子の寛治も成長著しく…。
                    寛治は、何というか最初は歳の割に本当に幼くて…ものすごくおちゃめで可愛い。

                    てっきり小学生かと思うほど、体だけはでかい、無邪気な17歳だったのが、きちんと周囲を気にするほどに立派になって、思わずおひねりをあげたくなる。

                    舞台に立つとみんながみんな別人のように、しゃんとして。
                    喧嘩ばかりしながらも、ちゃんと家族で…。

                    とにかく登場人物みんながみんな個性的で、面白い。
                    前半のレンタル家族のときのエピソードは、面白すぎた。
                    なんか、体のどこかをずっとくすぐられているような、そんな可笑しさでいっぱいだった。

                    そして、やくざ映画の主人公のような、無口で渋い桂木さんにすっかり惚れこんでしまった。
                    健さんの、女形姿…うーん、想像できないけど。
                    0

                      『コールドゲーム』荻原浩

                      コールドゲーム
                      コールドゲーム
                      荻原 浩 2005年 新潮文庫
                      ★★★★★
                      誰だって変わるよな、四年あればさ。昨日だって、みんな中二の頃なんて石器時代の話じゃないかって顔をしてた。四年前の恨みだなんて言われても、あの頃何であんなことしてたのかなんて自分でもわかんないよ。

                      甲子園出場が夢に終わった高校3年の夏。
                      幼馴染の亮太から携帯で呼び出された光也は、中学時代のクラスメイトが次々と何者かに襲われている、という話を聞かされる。

                      襲われる前には、それぞれの元へ予告通知が送られていた。
                      その手口から、4年前、クラス全体からいじめにあっていたトロ吉の名前が浮かび上がる。
                      ちょうど、トロ吉が受けたいじめに合わせたような仕返し…中学生並みの幼稚っぽさと、高校生とは思えないほど手のこんだ計画性と行動力を併せ持った復讐。

                      トロ吉の復讐だと確信した亮太は、光也たちとともに「北中防衛隊」を結成し、夜を徹してクラスメイト達の近辺を警護して回る。
                      果たして光也の目の前に現れ、すぐに消え去ったトロ吉は、もう昔のひ弱な少年ではなかった…。

                      卒業後のトロ吉一家の引越し先を訪ねても、そこには「殺」と刻まれた文字が残っているだけで、トロ吉は現在行方不明だという。
                      昔とは別人のように変貌を遂げたトロ吉は、卒業してから4年間もの間、虎視眈々と復讐の機会を窺っていたのか…。

                      同志達で手分けをして、トロ吉を探している間にも、光也たちをあざ笑うかのように、次々と襲われるクラスメイト達。

                      トロ吉との直接対決を望む亮太。
                      トロ吉にとっては、亮太こそが最も憎むべき相手であり、おそらくその復讐は死に値すると誰もが胸の中で思っていた…。


                      過去のいじめに対する報復という、とても陰惨な話なのに、そうなってないところがすごいなぁと思った。

                      野球部の監督の言いつけをきっちり守ってた野球少年の光也もさることながら、絵に書いたような不良少年の亮太も、何だか憎めなかった。

                      何より誰より、私が一番気に入ったのは、ラーメン屋の跡取り息子のドカ。
                      「ドカベン」の「ドカ」というあだ名も素敵だけど、性格がめちゃくちゃ「つぼ」にはまってしまった。
                      腹の贅肉をつままれて悲鳴をあげているのも、「ロリコン」と決め付けられて「違うよぉ。偏見だよぉ」と言い返すところも…。
                      話の中でどんどん面白さと、存在感が増した気がする。

                      もちろんトロ吉にも少しは同情する所もあったけれど、いじめた方は、トロ吉のことなんて、すっかり忘れてしまってて、自分達がそんなに悪いことをしたとは思ってなくて…それが一番酷いことかもしれないな。忘れてしまってはいけなかったのに…。

                      に、しても犬の名前に「ペー」と「パー子」って…やっぱり「つぼ」にはまってしまった。「パー子」ちゃんは、可哀相なんだけど…。
                      0


                        calendar

                        S M T W T F S
                             12
                        3456789
                        10111213141516
                        17181920212223
                        24252627282930
                        31      
                        << December 2017 >>

                        読書メーター

                        uririnの最近読んだ本 uririnの今読んでる本

                        新刊チェック

                        selected entries

                        categories

                        archives

                        recent comment

                        • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                          uririn
                        • 『痺れる』沼田まほかる
                          uririn
                        • 『絶望ノート』歌野晶午
                          uririn
                        • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                          いちれん
                        • 『痺れる』沼田まほかる
                          くり
                        • 『絶望ノート』歌野晶午
                          智広
                        • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                          uririn
                        • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                          苗坊
                        • 『永遠の0』百田尚樹
                          uririn
                        • 『永遠の0』百田尚樹
                          苗坊

                        recent trackback

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        悪人
                        悪人 (JUGEMレビュー »)
                        吉田 修一
                        読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

                        recommend

                        しずく
                        しずく (JUGEMレビュー »)
                        西 加奈子
                        サイン本買っちゃった。

                        recommend

                        recommend

                        たぶん最後の御挨拶
                        たぶん最後の御挨拶 (JUGEMレビュー »)
                        東野 圭吾
                        猫なんです…。

                        recommend

                        recommend

                        recommend

                        ねこの肉球 完全版
                        ねこの肉球 完全版 (JUGEMレビュー »)
                        荒川 千尋,板東 寛司
                        たまらん。

                        recommend

                        ニャ夢ウェイ
                        ニャ夢ウェイ (JUGEMレビュー »)
                        松尾 スズキ, 河井 克夫
                        たまらん…

                        recommend

                        recommend

                        僕たちの戦争
                        僕たちの戦争 (JUGEMレビュー »)
                        荻原 浩
                        とにかくお薦め。

                        recommend

                        出口のない海
                        出口のない海 (JUGEMレビュー »)
                        横山 秀夫
                        たくさんの人に読んでほしい…

                        links

                        profile

                        search this site.

                        others

                        mobile

                        qrcode

                        powered

                        みんなのブログポータル JUGEM

                        使用素材のHP

                        Night on the Planet フリー素材*ヒバナ *  *

                        PR