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    『日本以外全部沈没』筒井康隆

    日本以外全部沈没―パニック短篇集
    日本以外全部沈没―パニック短篇集
    筒井 康隆 2006年 角川文庫 P.356
    ★★★★★
    「SFは法螺話だと思っている。同じホラ吹くなら、でかいホラほどいいわけで、シリアスなSFというのは真面目な顔してヨタとばすあの面白さに相当するのだろう。とにかく物ごとは徹底していた方がいいと思う」
    〜解説より〜

    世界規模の地殻変動により、沈んでしまった中国大陸の上に乗り上げた日本列島を除くほとんどの陸地が海没してしまい、世界各国から難を逃れた外国人たちが大挙して日本に押し寄せた。

    人口は五億人に膨れ上がり、食糧不足も深刻化し、物価は高騰し、カレーライスが五万円に…。
    日本政府により、三年経っても日本に馴染まぬ外国人は国外追放されるという方針が打ち出され、フランク・シナトラはクラブの小さなステージで「赤城の子守唄」を歌いだす。

    アラン・ドロンは高円寺のスナックで、ボーイとして働き、チャールズ・ブロンソンは八百屋で大根を運び、ショーン・コネリーとボンド・ガール達は、ポルノ映画で活躍し、そして、エリザベス・テイラーが、オードリ・ヘプバーンが、ビートルズが、蒋介石が、毛沢東が…生き残りをかけ、必死で日本語を覚えようとする世界のセレブ達…。

    「昭和40年代前後の、筒井康隆が、エッセンスとして詰め込まれたコレクション」『日本以外全部沈没』『あるいは酒でいっぱいの海』『ヒノマル酒場』『パチンコ必勝原理』『日本列島七曲り』『新宿祭』『農協月へ行く』『人類の大不調和』『アフリカの爆弾』『黄金の家』『ワイド仇討』の11編から成るパニック短編集。

    これから、毎月一冊ずつ筒井さんの短編集が刊行されるそうな。


    やっぱり面白い。
    このあり得なさといい、滅茶苦茶さ加減といい、狂気じみたドタバタさといい、差別もへったくれもないところといい、痛烈な社会批判といい、筒井さんだから、許されるような…。

    『ヒノマル酒場』に出てくる、「どっきりカメラ」と思われて、てんで相手にされない、通天閣に現れた宇宙人はものすごく気の毒。
    『日本列島七曲り』の、ハイジャック犯たちも、乗客たちに逆にいじめられて、気の毒だし、『農協月へ行く』の宇宙船の操縦士も、とんでもない成金の農協ツアーの客に翻弄されて気の毒だし…。

    そういう時代もあったなぁ…としみじみしてしまった。

    『人類の大不調和』のラスト一行には、本当に「ぎょっ」としてしまう。

    『ヒノマル酒場』での、客の一人の台詞「これが茶番か、ほんとの出来事か、そんなことはあんたらが勝手に決めたらええことやおまへんのか。マスコミが今さらわたしらの意見聞くのはおかしい。今までマスコミは意見をわたしらに押しつけてきたし、わたしらは押しつけられるのにええ加減うんざりしてた。今度は嘘か本当かわからんような情報をわたしらに押しつけた。その押しつけ方によってわしらが茶番やと判断したのがなんで悪い。」は、全くごもっともで。

    何かつい最近、こういう気持になったような…。

    でも、宇宙人はやっぱり気の毒で…。

    滅茶苦茶さの中に込められた、現代社会への警鐘というのは、やっぱりすごいと思う。
    この本のタイトル、考えたのが星新一というのが、またすごい。

    に、してもアラン・ドロン様、最近見ないけど元気にしてるのかな。
    子供の頃、世界一の男前と思っていたような…。

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      『家族八景』筒井康隆

      家族八景
      家族八景
      筒井 康隆 1975年 新潮文庫
      ★★★★★
      彼女の想像では異端者のたどりつくところはいつの時代でも同じの筈だった。すべての『普通人』から憎まれ、恐れられ、嫌悪された末には何が待っているのだろう、まさか死刑にはならないとしても、解剖、見世物、隔離といったことが考えられたし、それは七瀬にとって死刑より恐ろしいことだった。
      18歳の火田七瀬は、人の考えが読めるという能力が備わった、テレパス。
      一定の地に長くとどまることで、その能力が周囲に露見してしまうことを恐れる七瀬は、愚鈍な娘を装い、住み込みのお手伝いをしながら、他人の家を渡り歩く生活を選んだ。

      尾形家。
      見せかけだけの団欒を演じる父親と長男、長女、そして唯一考えの読めない母親、の4人家族。
      表面的には当たり障りのない会話をしていても、七瀬にはみんなの考えていることが全て分かってしまう…。
      表面上だけ取り繕う家族に、耐えられなくなり、七瀬は一石を投じることに…『無風地帯』

      神波家。
      13人という大所帯の神波家で、七瀬は耐え難い悪臭に悩まされる。
      一家の主婦のずぼらさからか、溜まりに溜まった洗濯物、散らかしっぱなしでろくに掃除していない部屋。
      とりあえず臭いの元を絶とうと、子供たちの部屋を片付けて回る七瀬。
      しかしそのことが、彼らの反感を買うことになるとは、七瀬は思ってもみなかった…『澱の呪縛』

      河原家。
      七瀬は強烈な個性の持ち主である河原家の妻に影響を受けていた。
      妻の行動には無関心を装う夫。徹底的な個人主義を貫く夫婦。
      七瀬は妻の強烈な思考を、どれほど距離が離れるまで読み取れるか、と試していた。
      前の晩、夫と言い争いになり、いたく傷つけられた妻は、夫が「若者向けの」と罵った車を猛スピードで走らせ、若い愛人との待ち合わせ場所へ向かい、その思考を七瀬は追いかける…『青春賛歌』

      桐生家。
      55歳で定年退職を余儀なくされ、暇を持て余す桐生家の主人勝美は、息子の嫁にさえ、性的な感情を抱いていた。
      家族から邪魔者扱いされ、自分でも自信をなくしつつあった勝美は、七瀬を思い通りにすることで自分の威厳を保とうと考え、家族の留守を見計らって七瀬の部屋にしのびこむのだが…『水蜜桃』

      根岸家。
      近所では、上品でおとなしそうな奥さんと評判の根岸家。
      貞淑さや温厚さは全て彼女の計算ずくのお芝居に過ぎなかった。
      生まれて間もない赤ん坊を抱える妻は、夫の浮気のことだけは世間に知られたくないと考えている…『紅蓮菩薩』

      高木家。
      医院を営む高木家で働いていた七瀬は、この家の主人から隣家の手伝いを頼まれる。
      気ばかり強くて、我儘な妻に辟易していた夫は、隣家の妻が自分の妻だったら…と考えていた。
      妻は妻で、隣家の夫を気にかけている様子。
      七瀬は二組のカップルで、ある実験を試みようとする…『芝生は緑』

      竹村家。
      格式高い竹村家の妻は、はなから七瀬を見下していた。
      日本画の大家を父に持ち、平日はサラリーマンながら、日曜画家を名乗る夫、天洲。
      けれど、父親ほどの才能はなく、画家として独立できないことが妻にとっても、息子にとっても不満の種であり、憎しみの元となっていた。
      七瀬は二人からの攻撃に耐えるおだやかな天洲に、かつて見た事のないような意識を読み取り、凡人離れした天洲に好意的な感情を抱くが…『日曜画家』

      清水家。
      夫がマザコンの清水家。
      母の葬儀の席で、人目を気にせず号泣し、泣き崩れる夫をもてあます妻。
      会社では、エリート意識をふりかざし、気に入らないことがあると母親に言いつけ、父親の威光で解決してきた息子は、死んでしまった母を恨む…『亡母渇仰』

      八家族の猥雑な裏面を描いた短編集。
      七瀬は、さまざまな家庭で、家族全員の、その心の内の醜さ、汚さを、嫌というほど感じ取り、自らも傷付き、他人をも傷付けてゆく…。


      小学生の頃に見たNHK少年ドラマシリーズで「七瀬ふたたび」のファンになってから、何度「七瀬三部作」を読み返したことか…。
      でも、何十年経とうが、やっぱり面白い。

      『青春賛歌』で夫が思う(若者のための文化しか認められないこの現代という時代で…)のくだりは、まさに現代にもあてはまるし、妻の「いつまでも若く」というのも、女性の永遠のテーマのような…。

      『紅蓮菩薩』のラストは、ぞくっとする。

      ( )で括られる人間の深層心理は、実はみんな心の中でこんなこと考えてるんじゃないかなと、本当に思えて、人間不信に陥ってしまいそう…。

      人の心は読めない方が絶対にいい、と思う。
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        『銀齢の果て』筒井康隆

        銀齢の果て
        銀齢の果て
        筒井 康隆 2006年 新潮社
        ★★★★★
        なあ。おれたちゃもっと強い世代だった筈だろ。もっと若いやつに嫌われて、恐れられてりゃあ、こんなことにはならなかったんだとおれは思うがね。どうだい。どう考えたって、あんたはいずれ誰かに殺されるんだ。この辺でひとつ強さを取り戻して、おれたちの迫力見せつけるいいチャンス作ってくれた国家に、最後のご奉公といこうじゃないか。

        「老人は老人であることそのものが罪である」という無茶苦茶な思想のもと、二年前から全国で実施されている老人相互処刑制度、俗に言う「シルバー・バトル」。

        今や老人人口は爆発的に増大し、若者ひとりあたりが、平均七人の老人を養わなければならないという事態に陥っていた。
        そのため、破綻寸前の国民年金制度を維持し、同時に少子化を相対的解消に至らしめるための、政府公認の、老人達の老人達による殺し合いが開始されたのである。

        選ばれた地区では、七十歳以上の老人達が、一ヶ月間、最後の一人になるまで殺し合いを続け、もし、何人かが生き残っていれば、全員が政府の処刑担当官によって処刑されてしまうという。

        今回バトル地区に選ばれたのは、日本全国で九十ヵ所。
        そのうちの一つ、宮脇町五丁目に住む、今年七十七歳になる、老舗の和菓子屋「蔦屋」のご隠居、宇谷九一郎は、バトル開始後、同じ町内に住む、囲碁仲間の友人宅を訪れていた。
        そして、友人を手にかけた後、手を合わせ、黙って去ろうとする九一郎に、友人宅の嫁が「ご苦労様でした」と声をかける。
        全ては、仕方のないことなのだ…。

        そして、老人ホームという限られた空間でも、過疎化の進んでいた農村地区でも、いたるところで、次々と老人同士の文字通り、命がけの闘いが始まった。
        なかには、武器を揃え、殺戮を楽しむ者、家族のために生き残ろうとするがゆえに、次々と相手を殺していく者、自ら死を選ぶ者、夫婦で刺し違える者、さまざまな場所で、さまざまな死闘が繰り広げられていく。


        ご本人のインタビューでも書いてあったけど、バトル・ロワイアルのパロディのようなものだそうです。
        筒井さんご自身が、70歳になったから書けるようになった…みたいなことが書いてあった。

        やっぱり本家の「バトル・ロワイヤル」と比べると、痛々しく思えてしまった。
        どっちもどっちかもしれないけど。
        ご隠居さんが、最初に友達を手に掛ける理由は、よく分かるし、私もその友人なら、そうして欲しいと思う。

        「日本なんて、こんな国、年寄りの生きていける国じゃないわ。」
        という、一人の老人の台詞は、つくづくそう思う。
        九一郎が、家族から大切にされているのも、同じ場所にいないようにしているからで…。
        距離を置かなければ、邪険にされるというのも何となく分かる。

        そして「まだ歩ける老人に車椅子を与えて、歩けないようにしてしまう。自分で自炊ができる老人に飯を作ってやって、自分で炊事ができないようにしてしまう。」という台詞にも、納得。
        そう言われてしまえば、そうなのかもなぁ…と考えてしまった。

        いざ、お婆ちゃんが殺されるときに、普段は「うざい」とか言っていた高校生の孫が、必死で抵抗したのは、ちょっと良い話だった。

        荒唐無稽な物語のようだけど、まあ、昔は姥捨て山とかあったわけで…。
        私が老人と呼ばれる頃には、本当にどうなってるんだろうなぁ。

        久しぶりに、筒井さんの本読んだけど、やっぱり昔ほどの面白さは感じられない気がした。
        もっとはじけてたと言うか…。
        「くたばれPTA」とか、好きだったなぁ。
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          七瀬ふたたび

          七瀬ふたたび
          七瀬ふたたび

          筒井康隆 1978年
          ★★★★★

          テレパス。他人の心の中が全て読めてしまったとしたら…。
          生まれながらに人の心を読むことのできる超能力を持つ火田七瀬。
          彼女の心の中には、たえず周囲の人間の悪意が流れ込んでくる。
          聞きたくなくても、流れ込んでくる。
          ある夜、七瀬は旅の途中の汽車の中で、自分と同じ超能力を持つ少年、ノリオと出会い、心で会話する。
          ノリオは実は今一緒にいる母親からこの能力を気味悪がられ、虐待されていた。
          そしてもうひとり、この汽車に乗り合わせたのは、予知能力を持った青年、恒夫。
          恒夫の心を読んでしまった七瀬は、この汽車がもうすぐ落石事故に遭い、多数の死者が出ることを知ってしまう。
          七瀬はノリオとともに汽車を降り、事故を免れる。
          そこからの二人の生活の始まりは、新生人類である超能力者を抹殺しようと企む特殊警察との戦いの始まりでもあった。

          NHKの「僕らの少年ドラマシリーズ」(こんなタイトルだったかな?)でドラマ化された多岐川裕美=七瀬が大好きになった。
          超能力者にあこがれていた…。
          20年以上前の話なのに今だに心に深く残ってるとは…。
          そして10年ぐらい前に「木曜の怪談」というテレビ番組の中で「七瀬ふたたび」にふたたび出会った。
          面白いものは、どれだけ時を経てもやっぱり面白い。
          でも、大人になった今の私は、人の心は絶対読めない方がいいと痛いほど思い知らされている困惑
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