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    『椿山課長の七日間』浅田次郎

    椿山課長の七日間
    椿山課長の七日間
    浅田 次郎 2005年 朝日文庫
    ★★★★★
    自分は愚かなのかもしれない、と思った。講習会で迷わず「反省ボタン」を押し、さっさとエスカレーターに乗ってあの世へと向かった死者たちはみな、人間としてのあらゆる不幸のみなもとが生命そのものであると知っていたのだ。

    46歳にして、デパートマンの花形である、本店の婦人服課長になった椿山課長。
    高卒からのたたきあげで、働きづめに働いて、今のポストをようやく手に入れた苦労人である。
    若くて美しい妻の夫、そして幼稚園に通う、まだ小さな男の子の父親でもある。
    そんな椿山課長が、ぽっくりと逝ってしまった。
    上半期の天王山である、初夏のグランド・バザール初日である。
    忙しすぎたのである。働きすぎたのである。

    そして気が付くと椿山課長は、あの世とこの世の中間という場所で、あの世へ旅立つための、ある講習を受ける順番待ちの列の中にいた。
    この世で犯した罪をここで反省するための講習。
    彼の犯した罪は五戒の中の「邪淫の罪」。
    何かの間違いである。自慢じゃないが全くといっていいほどモテたためしがない、ソープやフーゾクも大嫌いだ。
    肉体の快楽に溺れたことはあるが、全て正常な性行為だったはずである。

    「邪淫の罪」にどうしても納得いかない椿山課長は、担当者に詰め寄り、とりあえず、どうにかこうにか、この世に帰してもらうことに成功する。
    そして、この世で目覚めた椿山課長は、若く、美しい女の姿に変わり果てていた。
    この世で残された時間は、残り4日間。
    わずかな時間でしなければならないことは、この世での「思い残したこと」を整理すること、そして「邪淫の罪」を晴らすこと。

    椿山課長には、デパートに入社したときからの、時には親友として、お互いに相手がいないときのセックス・フレンドとして、付き合いがあった女性がいた。
    椿山課長の結婚を機に、お互いにただの友達に戻ったと思っていた。
    それが「邪淫の罪」とは、一体どういうことなのか。
    彼女に問いただしてみなければ…。

    そして、椿山課長と同じように、別の肉体を借りて、この世に束の間戻ることを許された、やくざの親分と、小さな男の子。
    この二人も、それぞれ、この世でやり残した、この世に戻る「相応の事情」を抱えていたのだが…。


    私は、泣かなくていいときは、あんまり泣きたくないので、泣きたくなるような本はなるべく読まないようにしている。
    なので、浅田次郎=『鉄道員』=号泣、のイメージが強くて、これまで読んだことがなかった。
    でも、この本はとても面白そうで、泣かなくて済むような本だと思ったので、読んでしまった。
    しまった…。泣かないわけなかった…。

    椿山課長の「邪淫の罪」の、もととなった女性のことも、やくざの親分の、子分達を思う気持ちも、子分達の気持ちも、小さな男の子が胸をいためていたことも、どれもこれも…心が痛くなる。
    何より、椿山課長の、年老いた父親の気持ちを考えると…。
    どうして、父親がここまでするのか、という理由も、なるほど、この年代の男の人なら、こうなんだろうなぁと思う。
    やっぱり人生を積み重ねた人は、心意気も違うのだ。

    恋愛小説は苦手だけど、こういう「愛」の物語は、とても好きです。
    誰かを幸せにするために、生きられればいいなぁと思う。

    そして父親の「男とは本来こういう生き物なのだと思ってくれ。」の台詞は、やっぱり、健さんによく似合いそう。

    私の中では、浅田次郎の作品=高倉健、になりつつあるかも。

    また、泣くエネルギーあるとき、他のも読んでみたいと思った。


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