スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

0
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『平等ゲーム』桂望実

    平等ゲーム
    平等ゲーム
    桂 望実 2008/8/25発行 幻冬舎 P.346 ¥1,575
    ★★★★★
    「平等だと幸せなんでしょうか?」
     息を呑み、僕は途端に不安になった。
     わからない。
     平等であることが幸福の条件だと思っていた。だが……。

    住むところも食べ物も、仕事さえも与えられ、島民全員が何不自由ない暮らしができるユートピア、瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。

    人口1600人の小さな島では、代表者は存在せず、どんな小さな決まりごとでも、何もかもが島民の投票による多数決で決定され、そこに住む人たちはみんな、本土の人間から「いい人」と呼ばれ、争いも妬みも、もちろん格差もなく、誰もが平等。

    そんな楽園のような「鷹の島」から、「勧誘係」の仕事で本土に渡ったのは、生まれてから34年間、ずっとこの島で暮らし、この小さな島を誰よりも誇りに思う、芦田耕太郎。

    島民の補充のため、抽選で選ばれた本土に住む「対象者」に島の素晴らしさを懸命に伝えようとする耕太郎。

    ところが、一度は「鷹の島」での暮らしを希望していた「対象者」たちの中には、島での暮らしを拒む者も…。

    そんな対象者たちの島での暮らしを望まないという気持ちが理解できない耕太郎が、「対象者」に近づくために習い始めた「華道」をきっかけとした様々な人達との出会いから、「達成感」や「敗北感」、そして「悪意」といった、島ではおよそ知ることのなかった感情を知ることに。

    そうして島に戻った耕太郎は、不正のないはずの島「鷹の島」の真実の姿を目の当たりにし……。

    『瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。そこでは1600人が、全員平等。果たしてそこは楽園か、それとも……?現代社会に蔓延する「平等幻想」をテーマに描く傑作エンターテインメント長編。』だ、そうで。


    実際にこんな島があって、住みたいかと聞かれれば、私もあんまり魅力を感じないかも(もう少し歳取ってからなら、多分住みたいと思うかもだけど)。

    ここに出てくる女性のように、特に誰かと比べて、より良い暮らしというのを望んでるわけではないし、ごくごく普通でいいと思っているけど、その普通がなかなか難しいのも現実かな…、でもやっぱり運動会でみんなでお手つないでゴール、みたいな社会は面白くないなと思えてしまうし。

    「格差」があまりにもありすぎるのは嫌だけど、「平等」もどうなんだろう…と、ものすごく考えさせられてしまったかも。

    いい歳の大人のはずの耕太郎が、本土の人たちとの出会いによって、どんどん成長していく過程は興味深いし、人間の成長に「挫折」が必要というのも、ものすごく納得。

    その人のエピソードを知って、似顔絵が変わるというのも、興味深いお話で。

    今回一番魅力的なキャラの、船員の柴田さんの「だいたい、その守らなくてはいけないルールって本当に完璧なんでしょうか? 最善で最高のものなんでしょうか?」という台詞も、すごく良くわかるし、融通の利かない「正しい」とはいったい何ぞや?というか…。

    不正を許そうとしなかった耕太郎もだけど、過ちばっかり繰り返している私みたいな人間も、きっとユートピアには住めないのだろうなと、つくづく。

    JUGEMテーマ:読書

    0

      『女たちの内戦』桂望実

      女たちの内戦
      女たちの内戦
      桂 望実 2007/11/30発行 朝日新聞社 P.262 ¥1,470
      ★★★★
      今年中に絶対結婚してやる。私はこの目標のためだけに生きている。こんなにかわいい私が、幸せな結婚をできないわけがない。もし、万一、できないとしたら、それは私が美し過ぎるから。アプローチする前に諦めてしまうほど、私は最高級の女。私に相応しい最高級の男を、必ずゲットしてやる。    〜『真樹 二十九歳の戦い』より〜

      30歳までに結婚してやる!と息巻いて、クレジットカードで男好みの服を次々と買いあさり、精一杯めかし込んでは合コンにあけくれるものの、やって来るのは「はずれ」の男たちばかり。自分よりも容姿が劣るはずの友人や姉には素敵なダーリンがいるのに、どうして自分には「運命の人」が現れてくれないのだろうかと、自分自身を一切省みず、相手に求めてばかりの「自分大好きOL」…『真樹 二十九歳の戦い』

      同級生の中では比較的早くに結婚して子供を産んだ専業主婦。久しぶりの同窓会でバリバリ働くかつての友人たちを目の当たりにし、自分も「なにか」を始めたいと思うものの、その「なにか」がなかなか見つけられない「世間知らずの主婦」…『佳乃 三十四歳の戦い』

      そんなつもりで付き合っていなかった9歳年下の恋人から、突然プロポーズされてしまい、「結婚」の二文字を重く感じる、キャリア志向ではなかったはずなのに、気がつけば重要なポストを任されていた「気のつきすぎる女」…『めぐみ 三十九歳の戦い』

      二人の子供の親権を夫に渡し、離婚後がむしゃらに働いて、ようやく自分の店を持てるまでになったものの、資金繰りに行き詰まり、元彼たちに金の無心を企む「規格外の女」…『治子 四十五歳の戦い』

      「女たちの戦いは終わらない――。
      キャリアウーマン、専業主婦、バツイチ、OL……20代から40代、理想と現実の間をさまよう4人の女たちの内なる戦いを描く連作短編集。」だ、そうで。


      アマゾンでの評価が良くなかったので、あんまり期待せずに読んだら、これが意外や意外、読み始めると止まらなくなってしまった。

      ただ、主人公たちよりも、その周囲の友人・知人に共感しまくったかも(特に専業主婦「佳乃」さんの友人たちには…)。

      自信過剰のOL「真樹」は、自分からは何もせず、それでいて何でも人のせいにしてしまうつまらない女なのに、何でこんなに自信があるのか不思議で仕方ないけど、この人の心理描写はすごく面白い、かも(女だなぁ…というか、自分に冷たい男にはとことん毒をはくところが、なんとも)。

      専業主婦「佳乃」さんは、しょっちゅう出歩いてて、「ヒマだなぁ」という印象。でも、自分自身を認めてしまうところが、にくめないし、結婚にものすごく向いてるタイプだなと。そんなにお金にいとめもつけず、がばがば買い物できる今の生活の何が不満なのか…私からすれば羨ましい人、という感じ。

      一人が長い、39歳の「めぐみ」さんの「結婚」を躊躇する気持ちはすごく良く分かるし、必要なときだけ、側にいてくれる人…は、理想だけど、相手が「結婚」を望む人なら、さっさと別れてあげなければ、相手が可哀相なんじゃないのかなと…少し勝手過ぎる気がしてしまうかな。

      最後の「治子」さんは、本当にじゃあ何で子供を産んだのか?ちょっと理解できないし、離婚後の元彼たちも最低。「しゅっぱい」の幼児言葉にドン引きしてしまったし、その後の借金の理由も「あほか、こいつ」としか思えなくて、「治子」さんの子供以外に向けられる母性愛が不思議な感じ…。

      そして、物語を繋ぐキーマンのような役割の足ツボマッサージの店主、舞子さんのところに置いてある「運命の人を見分けるネックレス」、舞子さんは年齢は関係ないと言うけれど、やっぱり若い頃なら欲しいと思ったかも…。

      ともあれ、どれもラストが前向きで、女のズルさや逞しさがすごく良く描かれてて、何となく読み終わった後にほっとする一冊かなと(自分だけじゃないんだと…)。

      JUGEMテーマ:読書
      0

        『ボーイズ・ビー』桂望実

        ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫 か 23-1)
        ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫 か 23-1)
        桂 望実 2007/10/10文庫化 幻冬社文庫 P.264 ¥520
        ★★★★★
        「僕も本当はよくわかってないんだ。死ってこと。」
        ……
        「二度と会えないってことはわかってるけど――直也が目を閉じて母さんと話したって聞いて、同じことをやってみるんだけど話せなくって。直也はかわいがられてたからかなって、ちょっと羨ましかったんだ。僕が母さんを焼くのをやめてって父さんに言ったとき――母さんは心のなかにずっと生きているんだからって言われた。それもよくわからなかった。心のなかに生きてるってどういうこと?」

        歳のせいなのか、昔のように納得のいく靴が作れなくなった自分に苛立ち、アトリエを構える同じビル内で働く仲間にも悪態をつき、面倒な他人との関わりを極力避けて生きる孤独で頑固な靴職人、園田栄造、70歳。

        栄造のアトリエのあるビル内の絵画教室に通う小一の弟直也の帰りを、一人宿題をしながら栄造の部屋の前で待つうちに、いつしかアトリエ内への出入りを許されるようになった小学6年生の隼人。

        この夏、母親を病気で失ってからは、消防士として忙しく働く父親に心配をかけまいと、母親代わりに甲斐甲斐しく弟の面倒を見、自分自身の寂しさは後にする隼人の健気さに、誰も寄せ付けようとしなかった頑なな栄造の心も次第にほぐれてゆき、父親にも誰にも相談できないことを栄造に話すうち、隼人にとっても栄造の存在が頼もしくなっていくことに…。

        そして、まだ母親の「死」を理解できず、母親の姿を追い求める幼い弟のために心をくだく隼人と深く関わるうちに、気がつけば栄造のアトリエには、これまで寄せ付けなかった人々までもが集まるようになってきて…。

        「出会うはずのない二人、出会っても通じ合うはずのない二人。
         そんな彼らが、徐々に心を通わせていく。衝突を通して成長する二人の姿が胸を打つ感動のロングセラー。年齢差58歳の、不器用な友情。」だ、そうで。


        これまで読んだ桂さんの中で一番好き、大好き(『死日記』は、絶対忘れられない本だけど、これはまた、心の別の場所を鷲掴みされたというか…)。

        プリンの作り方一つで、そこまで少年の心の変化をうまく描けるかと、桂さんの少年の心理描写の上手さにつくづく惚れぼれ。
        70歳でアルファロメオを乗りこなし、お洒落にも気を抜かない栄造さんにも惚れぼれしてしまったし。

        利発な少年と頑固な老人…このパターンは、大好きな宮部さんもお得意なところだけど、この物語では、二人がちょっとダメダメなところが、より身近に感じられると言うか、愛しくなるというか。

        ダメダメで人間味溢れる二人が、お互いの存在を認め合ってお互いに成長(?)していく姿が、何とも微笑ましくて、本当に素敵な物語。

        栄造の生い立ちも、隼人の学校での話も、どちらも胸を打つお話で良く出来てるし…読み終わるのが寂しいと、久々に思わせてもらえる物語に出会えて良かったなと。

        人はひとりぼっちでは生きられないということ、そして自分自身が優しくなれれば、他人も自分に優しくなるというようなことを、改めて教えられるような、とてもためになるお話でもあったのかも。

        これを読み終わってしまって、明日から読む本がないから本屋さんで探してみたけど、どの本にも全くそそられなくて(文庫のみだけど)…こんなの初めてなので自分自身に驚愕してしまった。
        それくらい、これ良すぎたかも。

        0

          『明日この手を放しても』桂望実


          明日この手を放しても
          桂 望実 2007/6/20発行 新潮社 P.253 ¥1,365
          ★★★★★
           大嫌いなんだ。同情してますって顔で近づいてくるヤツが。障害者の妹がいるってだけで顔を曇らせたり、親父やお袋の話を聞いた途端に優しい声を出すヤツら。
           俺の気持ちを想像してるのか? 想像なんかすんな。
           誰にもわからない。
           常に抱えている痛みをどうにもできなくて、困ってる。
           痛みだけじゃない。耐えられないほどの、強烈な虚しさをずっと抱えてる――それが、俺だ。凛子だ。

          大学二年生の夏、原因不明の病気から突然全盲となってしまった篠田凛子。

          それからは外部との接触を避け、引き篭もる生活を送っていたものの、半年前に篠田家の精神的支柱であり、収入源であった母親を事故で亡くし、父親と兄との暮らしのなかで、あまりの部屋の荒み具合に耐えられなくなった潔癖症の凛子は、掃除道具を揃えるために一人で外へ出る事を考え始めることに。

          凛子がようやく前向きに生きようと考え始めた矢先、今度は漫画家だった父親が突然謎の失踪をしてしまい、その日から、凛子が思うところの「だらしない兄」真司との二人きりの生活が始まった。

          自分にふりかかる何もかもを誰かのせいにして、不満ばかりを口にし、常に怒りをぶちまけてばかりいる兄、真司。

          世の中の全てのことを客観的に捉え、真司の激昂にも冷静に対処する妹、凛子。

          そんな全く対照的な性格の「仲の良くない兄と妹」が、父親の仕事を引き継ぐ形で始めた漫画の連載を共同作業でこなしていくことで、お互いの欠点や長所を認め合いながら、12年の歳月は流れ……。

          『恋人でも友達でも親でもないけど、でも、やっぱりすごく大事な人……。
          こんなのと血が繋がってるなんて、最悪!――十九歳で途中失明して夢を失った「可愛く」ない妹・凜子と、短気な上に自分勝手で「文句ばっかり」の兄・真司。漫画家の父親がいきなり失踪した日から、二人きりの生活が始まった。一番近くにいても誰より遠い二人の未来に待っているのは? 家族の愛がぎっしり詰まった感動の長編小説。』だ、そうで。


          兄、真司の分かりやすい性格がなかなか面白くて、最初のうちは冷静すぎる凛子の、兄に対する見方があまりにも冷たいような気がしたけど…(変に優しい人より、よっぽど好感が持てたし、いつの間にかちゃんと、時計に合わせて物のある場所を教えること学んでたりするし、兄なりに見えないところで努力してたんだなぁというか)。

          お互いに、自分にないものを持ってる相手のことを認め合って、自分の欠点を補っていくところは、何だか恋人同士のようでもあり、こんな風にならなければ、一生もしかしたら嫌いあってたのかなと思うと、二人きりの兄妹なんだから、こうなって良かったのかなとも。

          ただ、父親の失踪の件がどうにも不可解だし、中途半端な感じがしてしまった。
          編集者の西尾の変貌も(と、いうか最初からそんな人だったのか…)後味が悪くて。

          装丁の表が凛子だとすると、裏は真司なんだろうけど、あまりにかっこ良すぎるので、そのイメージで読んでしまったから、女に振られてばかりいるのが納得できなかったりもするし(振った女の方にかなり問題もありそうだったから、結局は真司に見る目がなかっただけなのか)。

          タイトルがなかなか好きな感じだったので、期待しすぎたのかもだけど、もう少し先を読んでみたかったような……ちょっと残念。

          0

            『Run!Run!Run!』桂望実

            RUN!RUN!RUN!
            RUN!RUN!RUN!
            桂 望実 2006年 文藝春秋 P.300
            ★★★★★
            優は周りのヤツらの顔を眺めた。出走しない部員まで緊張した顔をしている。意味ないのに。学内選考に落ちる程度の能力しかないヤツらが、なんで出走選手たちと同じ顔をしてるんだ? なぜここにいる? なぜ陸上をやめない? なぜ走る?
             ……答えられるヤツはいないのかもな。

            父親の叶えられなかった夢を背負い、父親の期待を一身に受け、幼い頃から走ることを強いられてきた岡崎優。

            大会に出れば、記録を次々と塗り替え、不敗神話を欲しい儘にする、走るために生まれてきたかのような優の目標は、あくまでもオリンピックに出場し、金メダルを獲ること。

            そのため、アプローチしてきた多くの大学の中から、開校3年目にして箱根駅伝で準優勝を果たし、最先端のスポーツ科学をベースにした運動選手のバックアップ体制が充実するS大学を選び、ここでの四年間の目標は、とりあえず箱根駅伝に出場することと定め、走ること以外のことには決して興味を示さず、誘われた飲み会にも参加せず、友達も作らず、声援を送ってくれる仲間をすら蔑み、優のために組まれた特別な練習メニューを黙々とこなす日々。

            大学に入学してから初めての大会を目前に控えたある日、優の携帯に父からの急を要する電話が入り、不安に駆られる優がやっとのことで辿り着いた病院で知らされたのは、二つ上の兄の突然の訃報。

            そして、兄の死によって、優のこれまでのアスリート人生を揺るがすような真実が明かされ、優の苦悶に満ちた日々が始まる…。

            「アスリートとして最高の資質を持つ主人公が知った事実とは。箱根駅伝に懸ける仲間と走るうちに、閉じかけていた世界が開いていく。
            映画にもなった『県庁の星』の大ヒットで、今大注目の著者が、過酷な運命を背負わされた青年の友情と成長を熱く爽やかに描く。」そうで。


            自分より劣る者を平気で切り捨てる優の傲慢な性格…その裏側にある母親への思慕と寂しさ…。

            何かもっと酷い人かと思ってたけど、過去を手繰ると、案外そこは普通の人なんだと、可哀相に思えてしまった。

            徹底した自己管理の姿勢とか、ストイックなところは、何となく昔のイチローっぽいような。

            自分では、そうじゃないと自問自答しながらも、結果的に周囲から見れば「いい奴」っぽくなっていく過程が面白くて、時間を忘れて読み耽ってしまった。

            そして、優がどれだけ突き放しても、優に心酔し、優を庇い、仲間から離されないように気遣う同級生の「岩ちゃん」の存在が、ものすごく心強くて「お願いだから見捨てないでね」と祈ってしまった。

            「チーム岡崎」を自らの提案で発足させた後の、「そのうちロッカー岡崎…」という仲間の皮肉には笑ってしまったけど、それでも、まだ、この大学の部員の皆はめちゃくちゃ優しいなと思えてしまった。

            母親も父親も自分勝手すぎて、腹が立ったけど、そのために失ったものの大きさに、いつか気付くのかな…。

            箱根駅伝のシーンも、三浦さんの『風が強く吹いている』とは、また別の意味での感動があって、やっぱり涙してしまった(箱根駅伝に対するアプローチが全く別物なので、公平に★五つ)。

            桂さんの本に出てくる「女性」は嫌いだけど(母親にしても、保健師さんも…言ってることはすごく感動的だけど、キャラが好きでない)、「男の子」を書かせたらすごいんじゃないかなと思える。

            箱根駅伝まで、ほぼ、あと一ヶ月…、来年はこれまで以上にいろんな意味で、興味を持って見れそうな。
            0

              『Lady,GO』桂望実

              Lady,GO
              Lady,GO
              桂 望実 2006年 幻冬舎 P.405
              ★★★★★
              どうやって子どもは大人になっていくんだろう。もう私はちゃんと大人になっているんだろうか。なってる。十六歳の時に私は大人の世界に押し出されたんだから。だったらどうして、いまだに突然哀しくなったり、涙が出たりするんだろう。孤独と私は上手に付き合えているはずなのに、時々負けそうになるのはなんでかな。

              真夜中のファミレスに呼び出され、二年も付き合った彼氏から唐突に別れを突きつけられた、地味で暗い女、南玲奈、23歳。

              ただでさえ落ち込んでいるところに、派遣会社から回される派遣先の仕事の契約も打ち切られ、次の派遣先も決まらないまま、わずかに残っていた貯金は別れた彼氏のせいで底をつき、買い置きのインスタント食品で細々と食い繋ぎ、来月に迫った、アパートの契約更新料の支払いに、頭を悩ませる。

              誰かに頼ろうにも、玲奈が高校生の時に離婚した両親は、それぞれに新しい家庭を築き、たまに思い出したようにしか連絡を寄越さない。
              それに玲奈本人も、最悪、最低、人生最大の危機の時にしか、両親に頼らないと心に決めていて、今は、まだその時ではないらしい。

              そんな時、高校のクラスメイトの姉、現在は六本木でキャバクラ勤めをしているという、以前より数段綺麗に変身した麻生泉にばったり出会ってしまった。

              思わず、現在の困窮した生活状態を打ち明ける玲奈に、泉は「それなら店で働いてみない?」と持ちかける。
              以前に一度知り合いの紹介で「タイニュー(体験入店)」経験済みで、「自分には無理だ」と、懲りていた玲奈だが、いくら待っても派遣会社からの長期の仕事はなく、寒さの厳しくなる中、エアコンまでもが故障してしまい、取り敢えず、「タイニュー」で貰える現金二万円を手に入れようと、泉の携帯に連絡を入れた。

              その日から「みなみ」の名前で、「給料日までの二週間だけ」と、期限を決め、キャバ嬢デビューを果たした玲奈だが…。

              男にフラれ、仕事もなく、夢もなく「ネクラだし、かわいくないし、嘘もつけないし…できるわけないよ、こんな私がキャバ嬢なんて」とすぐに落ち込む、「自分大嫌い女」の自分探し?の物語。


              六本木のキャバクラの店には、ヘアメイクさんもスタイリストさんも付いてて、「みなみ」の地味な見た目を、ぱっと明るく変身させてくれる。
              私は人が化粧とか、髪型とか、服装で、変身して綺麗になっていく姿を見るのがとても好きなので、ちょっとわくわくした。

              そして、ここのスタイリストの、「チビ、デブ、ハゲ」のおかまキャラの「ケイ」さんは、すごく魅力的で、こんな友達がいたらいいなぁと思うような人物。
              「ケイ」さんの言う、男の人は直線より、曲線が好きっていうの、多分本当だと思う。

              店長さんは、長島さんみたいに、たまに変な英語が会話に挿入されるけど、なかなか好人物で(裏ではいろいろありそうだけど)、良い店で、良いお客さんで。

              「美香(泉)」さんの、結婚詐欺師から学んだ客をひきつけるテクニックは、なかなか学ぶところがある。

              そんな周囲の人達のお陰で、どんどん時給もアップし、欲しい物を次から次と買えるようになって、生活が変わっていくのも、何か「女」だなぁと…。

              そして、欲しい物を全て手に入れた後、何も欲しいものがないっていうのも、よく分かるような気がした。

              明日から、「ありがとう」と「ごめんなさい」の言葉を一日に何回使うか、数えてしまいそうな…。

              0

                『死日記』桂望実

                死日記
                死日記
                桂 望実 2006年 小学館文庫
                ★★★★★
                子供は親を信頼し、愛するようにインプットされてこの世に誕生するんです。なのに生れ落ちた家に信頼や愛情がないと――予定外の状況に対応できなくて、困ってしまう。私はそんな風に思っています。子供を苦しめないでくださいよ。お願いですから。

                酒を飲むと母に暴力を振るっていた父親、そんな父親が交通事故で死に、少年は母親と二人きりになった。
                前よりは幸せな暮らしが送れると、少年は思っていた。
                けれど母と二人きりの生活は長くは続かなかった。
                すぐに母親の友達だという男が家に転がり込んできた。
                少年とその男は、お互いの存在を無いものとして、一つ屋根の下で同居していた。
                母親も、その男も働くことはなかった。
                男もまた、酔うと母に暴力を振るった。
                ギャンブルに明け暮れ、酒ばかり飲み、二人でふらりと何日も家を空け、少年を置き去りにする。
                少年は一人取り残される。
                誕生日も、クリスマスも、正月も…。
                少年の存在は、母親の心の中から消えたようだった。

                文章を書くのが得意だった少年は、中学三年生になったころから毎日、日記をつけ始める。
                日記には、少年の日常が淡々と飾ることなく、綴られている。
                友達と過ごした日々、修学旅行や、お祭りや、文化祭や、進路についての悩み、嬉しかったこと、悲しかったこと…。

                二、三行の日もあれば、書けなかった日も…。それでもくる日もくる日も少年は日記に思いを記し続ける。
                母親への思慕と、母親を不幸せにする男に対する嫌悪と。

                そしてある日を最後に、日記は閉じられる。
                少年のほぼ一年間に渡る、他愛もない日々の記録の先に、いったいどんな深淵が待ち受けていたのか…。


                フィクションなのに、とてもそのつもりでは読めなかった。
                小説を超えてる…。

                こんな母親のために…。

                何もかも諦めているつもりでも、誕生日には「もしかして…」と期待して、落胆する少年を見るのは辛かった。
                新聞配達でもらったお金を、自分のことには一切使わず、食べ物がなくなったときのために残しておかなければ…これで、もう水だけで過ごさなくて済む、などと、わずか14 歳の少年が思わなければならなかった母親との生活とは、いったい何だったんだろう。

                周囲の人間が優しければ優しいほど、母親の冷酷さが余計に悲しくなってしまう。

                子供は親を選ぶことができない。
                でも、思わずにいられない。
                少年が、親友の小野の家の子なら良かったのに、専売所のおじさんの家の子なら良かったのに、先生の家の子でも、富山のおばさんの家の子でも…なぜこの母親の子供に生まれてしまったのか…。

                読んだ後も、彼のことを思って辛くなるなんて、小説でこんなにいつまでも、ひきずるのは初めてかも…。

                『県庁の星』は、あんまり好きでなかったけど、この本は目があったときに「読め〜」と訴えてる気がして、ついつい買ってしまった。
                買って良かった。読めて良かった。


                0

                  『県庁の星』桂望実

                  県庁の星
                  県庁の星
                  桂 望実 2005年 小学館
                  ★★★★★
                  慣例、前例って言うんでしょ。能力がないからじゃないの? 人を見る力がないから、書類の数字を引っかき回してるんじゃないの? 責任取りたくないから、前回と同じことばっかりやりたがるんでしょ。責任取ったらいいじゃない。誰の顔色も窺わずに、自分の思い通りのことをして、きっちり責任取るって格好いいじゃない。今やってることに疑問持ちなさい。まずはそこから

                  自分で言うのもなんだが…といいつつ、自慢たらたら、自信満々の(なのに合コンでは何故か女に相手にされない)エリート公務員、野村聡31歳。
                  彼は、Y県での始めての試みである、人事交流計画の一期生として、このたび一年間の民間研修に派遣されることとなった。
                  研修の目的は、現場のなかに身を置くことで、ニーズや問題点を肌で感じるため、だそうだ。
                  一年間の研修を無事に終えた暁には、彼には、一つ上のポストが約束されている。

                  そんな彼の派遣先は、鄙びた田舎町のスーパー・マーケット。
                  彼の指導にあたるのは、社員の誰よりもこのスーパーを知り尽くし「裏店長」と呼ばれる、ベテランパート従業員の二宮さん。
                  ぱっつんぱっつんの制服に、いまどき流行らないソバージュ頭の年齢不詳のおばさんだ。
                  「パートが僕を指導する?」
                  訝しがる彼に、二宮さんが案内した先は、この時期、閑散としている「寝具売場」
                  「暇な売場では研修にならない」という野村。
                  「忙しい売場でお客さんに迷惑かけられちゃうと、こっちが困るのよ。」と答える二宮さん。
                  接客マニュアルも、売場での諸注意も与えられず、呆然とする彼に「頭いいんだから、自分で考えろ」と、言い放つ二宮さん。
                  何もかも慣れないことだらけ、失敗だらけの野村だったが、一応売場のレイアウト(二宮さんに却下されるが)を考えたり、健気ではある。
                  みんなは彼のことを「県庁さん」と呼ぶようになっていた。

                  ようやく何とかかんとか慣れた頃、彼は「惣菜売場」に回され、このスーパーで日常的に行われている、ある不正を正すべく(全ては自分自身の身を守るためなのだが)、ある戦いに挑むのだが(そんな大層なものじゃないけど)…。


                  映画が面白そうだったし、ほぼ新品みたいな本が、BOOK OFFのレジの横に置いてあったので、つい買ってしまった。

                  県庁さんと、二宮さん、二人の話が交互に語られてるみたいなんだけど、話が唐突というか、誰がどこで、何をしているのかが、よくわからなかったりする。

                  県庁さんの性格もいまいちよくつかめない。
                  (彼女とのエピソードは、この人の馬鹿さ加減を表しているのか、それとも心が広い人なのか…)
                  ただ、女にぽんぽんと物を買い与える、気前の良い人だと思った。
                  31歳にしては、世間知らずというか…。
                  そういう人物像なのかな。

                  二宮さんも、よくわからない人だった。
                  人間味があまり感じられないというか…。
                  誰に対しても、厳しい人、なんだろうけど、少し子どもが気の毒になった。
                  (すずこさんに言われてからは、少しは、ましになったんだろうけど…)

                  お弁当競争も、お弁当の中身があまりよくわからなくて、美味しいんだか、どうなんだか。
                  お弁当作りに参加する人達のことも、いまいち誰が、誰かよくわからないし…。
                  いきなり、ミニモニって、人数と大きさ言われても…。
                  (まあ、どうでもいい人達なんだろうけど)
                  社員の、いつも売場から消える人も、最初倉庫みたいなとこで、何かいけないことしてたみたいなのに、最後の方では、実はこんなことしてました、みたいなのも、よくわからなかった。

                  映画はきっと、色んなとこ脚色されて、しかもパートさんと県庁さんは、何となく恋愛しそうだし、きっと面白くなってるんだろうなぁとは思うけど…。
                  小説は、どうなんだろう。

                  どこかに書いてあったような「抱腹絶倒」は…なかったな。
                  とりあえず、軽く読めて、まあまあ面白かった、というのが正直な感想かな。
                  0

                    1

                    calendar

                    S M T W T F S
                         12
                    3456789
                    10111213141516
                    17181920212223
                    24252627282930
                    << September 2017 >>

                    読書メーター

                    uririnの最近読んだ本 uririnの今読んでる本

                    新刊チェック

                    selected entries

                    categories

                    archives

                    recent comment

                    • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                      uririn
                    • 『痺れる』沼田まほかる
                      uririn
                    • 『絶望ノート』歌野晶午
                      uririn
                    • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                      いちれん
                    • 『痺れる』沼田まほかる
                      くり
                    • 『絶望ノート』歌野晶午
                      智広
                    • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                      uririn
                    • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                      苗坊
                    • 『永遠の0』百田尚樹
                      uririn
                    • 『永遠の0』百田尚樹
                      苗坊

                    recent trackback

                    recommend

                    recommend

                    recommend

                    recommend

                    recommend

                    recommend

                    悪人
                    悪人 (JUGEMレビュー »)
                    吉田 修一
                    読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

                    recommend

                    しずく
                    しずく (JUGEMレビュー »)
                    西 加奈子
                    サイン本買っちゃった。

                    recommend

                    recommend

                    たぶん最後の御挨拶
                    たぶん最後の御挨拶 (JUGEMレビュー »)
                    東野 圭吾
                    猫なんです…。

                    recommend

                    recommend

                    recommend

                    ねこの肉球 完全版
                    ねこの肉球 完全版 (JUGEMレビュー »)
                    荒川 千尋,板東 寛司
                    たまらん。

                    recommend

                    ニャ夢ウェイ
                    ニャ夢ウェイ (JUGEMレビュー »)
                    松尾 スズキ, 河井 克夫
                    たまらん…

                    recommend

                    recommend

                    僕たちの戦争
                    僕たちの戦争 (JUGEMレビュー »)
                    荻原 浩
                    とにかくお薦め。

                    recommend

                    出口のない海
                    出口のない海 (JUGEMレビュー »)
                    横山 秀夫
                    たくさんの人に読んでほしい…

                    links

                    profile

                    search this site.

                    others

                    mobile

                    qrcode

                    powered

                    みんなのブログポータル JUGEM

                    使用素材のHP

                    Night on the Planet フリー素材*ヒバナ *  *

                    PR