『陰日向に咲く』劇団ひとり

陰日向に咲く
陰日向に咲く
劇団ひとり 2006年 幻冬舎
★★★★
男は窓際に腰かけ、手入れのされていないアパートの小さな露地庭を見下ろした。日当たりとは無縁のその場所に、板で出来た塀の隙間から陽が差し込み、陰日向を作っていた。そこに、ひっそりと咲いた名前の知らない花を男は見つめた。

ホームレスの放つ「自由」の匂いに惹かれ、ホームレスに憧れる、人生に疲れたサラリーマン。

マイナーなアイドルの追っかけをし、彼女のためなら死んでもいいと、全財産をつぎ込み、彼女を応援し続ける、地味で目立たない青年。

夢がないのが恥ずかしいから、とりあえずみんなに「カメラマンになりたい」と口走ってしまった、20歳のフリーターの女の子。

400万円からの借金を抱える、35歳で独身、キャバクラ好きのギャンブル狂いの男。

本当の自分、を見つけるため、鳥取から東京へ上京してきた18歳の少女。
そして彼女が三年前に一目ぼれした、売れないお笑い芸人の男。

そんな彼らが、それぞれ主人公となって、自分達のストーリーを語り、どこかで誰かと繋がる『道草』『拝啓、僕のアイドル様』『ピンボケな私』『Over run』『鳴き砂を歩く犬』の5編から成る、心暖まる連作短編集。


それぞれの主人公の繋がり方が、すごく面白い。
「ああ、あの時の…」と納得。

どのお話も良かったけど、特に良いなと思ったのが、アイドルの追っかけをする男の話『拝啓、僕のアイドル様』。

握手会のイベントに、たった四人しか集まらないアイドルのために、必死で演出したり、テレビ出演の後、一晩かけて掲示板に書き込みしたり、それが面白くて、すごく笑える話なのに…。
男の、彼女を思う気持ちが、必死で応援したくなる気持ちが、すごく良く分かったから、感動してしまった。

カメラマンを目指す女の子の話『ピンボケな私』は、女の子の心理がすごく良く描けてて、驚いた。
面倒くさい女とか、思われたくなくて、相手に間違った気を遣いすぎて、結局こうなっちゃうって…すごくよく分かる。

ギャンブル狂いの男の話『Over run』の男の言うことも、すごく良く分かる。そして、すごく良い人だ…。

最初の『道草』の男の台詞「自由に憧れていたのではなく、自由に憧れる人に憧れていたんだ。」というの、何か良く分かる気がする。

最初から、最後まで、すごく良く出来たお話だと思った。
売れてるの、分かる。

何ヶ月か前にテレビでやってたウッチャンナンチャンの司会の「イロモネア」で、賞金も一人だけ獲ってたし、今年は「劇団ひとり」の当たり年なのかな。

いつも笑わせる「泣き芸」は、人を泣かせることもできるんだ…。

「電車男」のオタクの役は、すごくはまってて、とうとうスペシャルでは彼の物語、までできてたもんな…。役者としても、作家としても、楽しみかも。
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