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    『落花流水』山本文緒

    落花流水 (集英社文庫)
    落花流水 (集英社文庫)
    山本 文緒 2002/10/25文庫化 集英社文庫 P.256 ¥500
    ★★★★
    私は最後の夫となった正次郎さんを愛していたわけではなかった。そして最初の夫も、マーティルも、今思えば誰も愛してはいなかったように思う。……だからこうして一人きりになってしまったのかもしれないと、私は仏壇の前でぼんやりと考えた。……
     何故こんなにも穏やかな気持ちなのか分からない。だが悲しい時はその理由を考えるが、幸福なのに理由を考える必要は特になかった。ちん、と鉦を鳴らして、私は風呂に入りに行った。   〜『また夢をゆく 2017年』より〜

    祖父と祖母を実の両親だと信じ込まされ、何不自由なく、我がまま放題に育てられた「手毬」。
    そんな「手毬」が七つの時、母親(祖母)の死をきっかけに、実の母親である「姉」に引き取られることになったことから、「手毬」の人生は大きく変わり始め…。

    男にだらしのない母親が、生活の安定のためにと再婚した相手を実の父親以上に慕い、父親と同じ会社に勤める、父親似の真面目な男と結婚し、一人娘を授かり、ようやく穏やかな暮らしを手に入れた「手毬」の前に突然現れたのは、「手毬」の幼少時代、隣家に住んでいたハーフの少年「ジョン」こと「マーティル」。

    そして、30年ぶりの再会を果たした初恋の相手「マーティル」は、「手毬」の娘を人質に取り、「手毬」にこの先の人生の選択を迫るのだが……。

    『夏の音 …1967年…』、『もう行かなくては …1977年…』、『濃密な夢 …1987年…』、『落花流水 … 1997年…』、『ムービー・ムーン …2007年…』、『また夢をゆく …2017年…』、『葵花向日 …2027年…』の、「手毬」の7歳から67歳までの人生を、「手毬」自身、初恋の相手「マーティル」、「手毬」の「実母」、「手毬」の「義弟」、「手毬」の「娘」の視点から、10年ごとに描いた長篇小説。

    「甘ったれでわがままな7歳の少女、手毬。家族に愛され、平穏な日々をおくるはずだったのに…。17歳、かつては姉だった人を母親と呼ぶ二人だけの暮らし。27歳で掴んだ結婚という名の幸せ。その家庭を捨て幼なじみと駆け落ちした37歳。そして…。複雑に絡みもつれる家族の絆、愛と憎しみ。運命に流されるひとりの女性の歳月を、半世紀にわたって描く連作長編小説。」だ、そうで。


    これは、なかなかすごかったかも。

    「手毬」という一人の女性の、お話の中の人物の60年間だけど、その60年間の重みがひしひしと伝わってくるような。

    波乱万丈とひと言で言ってしまえば、そうなんだけど、そこはまあ、普通では有り得ないような展開があったりして、この話の最終章が、まだ現時点ではなくて、20年後の未来の話というのが結構面白かったりする(大して生活は変わってはないけど、そんなもんかなと思えるし)。

    特に好きだったのは、17歳の「手毬」が、母親と暮らすアパートを出て行けない理由…。
    そして、37歳の「手毬」の決断と、その後の生活も、ちょっぴり羨ましいというか、こういう生活には憧れるかなと。

    ものすごく現実的でもあり、有り得なくもあり…不思議な感覚に包まれて、でも最後はやっぱり現実に引き戻されてしまいそうな、ちょっと大人なお話なのかも。

    「手毬」の、どこか醒めた生き方には、とても感銘を受けてしまったし、人生の最後って案外こんな感じなのかもなと。

    でも、私は「手毬」の母親のような老後を送るのが理想かな、と(やっぱり、いつまでも「女」でいたいなと)。

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      『ファースト・プライオリティー』山本文緒

      ファースト・プライオリティー
      ファースト・プライオリティー
      山本 文緒 2005年 角川文庫 P.317
      ★★★★
      一番大切なのは、何をする時間ですか?今、一番したいことは何ですか?絶対手放せない、私の最優先(ファースト・プライオリティー)なこと。それは、人が見れば笑ってしまうようなこだわり。

      『偏屈』 『車』 『夫婦』 『処女』 『嗜好品』 『社畜』 『うさぎ男』 『ゲーム』 『息子』 『薬』 『旅』 『バンド』 『庭』 『冒険』 『初恋』 『燗』 『ジンクス』 『禁欲』 『空』 『ボランティア』 『チャンネル権』 『手紙』 『安心』 『更年期』 『カラオケ』 『お城』 『当事者』 『ホスト』 『銭湯』 『三十一歳』 『小説』

      の、それぞれのタイトルがそのまま、31歳、31人の女性たちの「最優先なこと」を示す、ショートショート集。

      「恋だけでも家庭だけでも、仕事だけでもない。三十一歳、初めて気づく、ゆずれないことの大きさ。そこに、本来の自分を形成するものが見えてくる。はたして人は、大事なものだけで生きられるのか?揺らぎ惑う大人たちを描く、山本文緒の世界。」だ、そうな。


      ざっと、印象に残っているのだけ…。

      『偏屈』の、主人公のように、私も仕事中に耳栓しちゃおうかな…と真剣に考えてしまう(実際昔の上司は、そうしてた)。

      『処女』の姉妹は、江國さんの『間宮兄弟』の女版という感じで、いかにも、もてなさそうな姉妹の話。
      すごく面白いし、これなら結婚しなくてもいいかな…と思えてしまいそうな。
      おまけにこっちは職場まで同じで、ついたあだ名が「ゴジラ」と「ミニラ」って…。

      OL達の陰口を偶然トイレで聞いてしまう、『社畜』のOL、「もっさりしたところがお嬢様っぽい」というのは、何となく想像がつく。

      12歳の頃からの片思いの相手とばったり出会って、ホテルに誘われて…の『初恋』に出てくる男は、最も嫌いなタイプ。

      応援する野球チームのテレビ中継を見出すと、決してチャンネルを譲らない男『チャンネル権』の最後の、男の人の台詞が可愛らしかった。
      このまま、ずっと謙虚でいればいいのに。

      お気に入りの作家に、ファンレターを書く『手紙』の勘違い女には、背筋がぞっとした。
      手紙の途中から、どんどん話がずれていって…狂気じみてて怖かった。

      友人が、過去に起きた飛行機事故の被害者となったことで、それ以来、ニュースも新聞も見なくなったという、バーテンダー『当事者』は、最後のおじさんの台詞がすごく良くて…。

      改めてタイトル見て、ぱっと出てくるだけでも、結構、たくさん印象に残ってるかも。

      短い中にも、ぎゅーーーっと中身の詰まった読み応えのある本。
      色んなことに疲れてる時に、ちょこちょこっと読んで、なかなか癒されてしまった。

      20歳ぐらいのときには、31歳なんて、ものすごくおばさんに思えたのに、今となっては、「若いなぁ…」という感じだし。

      でも、今よりも31歳の頃の方が、疲れてたような気もする。
      やっぱり「まだまだ…」と、「もう」の、揺れの時期だったからかな。
      それ過ぎると、すごく楽になるような…これは一種の「諦め」かな?

      私にとっての「最優先なこと」って、何だろう…。
      やっぱり猫…。
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        『紙婚式』山本文緒

        紙婚式
        紙婚式
        山本 文緒 2001年 角川文庫 P.252
        ★★★★★
        彼女は怒っているのだ。憎しみに近いほど僕に腹をたてているのだ。これが彼女の憎悪の表し方なのだ。
        これまで二度、妻に土下座をしてきた夫。
        最初は、結婚前、50万は下らない成人式の着物に「キムチ」をぶちまけたとき、二度目は、プロポーズのとき。
        そして、毎晩家に帰るのが恐ろしくなった夫は…『土下座』

        相手はカードではなく、血の通った人間なのだ。
        親の決めた結婚相手と「政略結婚」をし、思いもよらず、夫からは愛され、そこそこ裕福な暮らしをしていた妻は、生きた毛ガニも、死んだ魚も、怖くて近寄れない。
        そんな妻が最も恐れているのは…『子宝』

        恋は必ず終わるものなのだから、永遠の誓いなどするのはおかしいと思っている私の方がきっと間違っているのだろう。
        いつまでも新婚のように仲の良い兄夫婦。
        四六時中一緒にいても、甘い言葉をかけあう兄夫婦を信じられない思いで見ている妹の「私」。
        ある日義姉は兄の世話を「私」におしつけて出て行った…『おしどり』

        愛想はいい。おっとりしていて心優しい。けれどそれは愚鈍ともいえるのではないだろうか。そんな女を、どういう男が抱いているのだろう。
        妻にとって夫は初めての男であり、知り合って10年経った今も、週に一度、決まりきった手順の夜の営みは欠かさない。
        妻の何もかも知り尽くしていると思っていた夫。
        ある夜、妻はその最中に他の男の名前を呼んだ…『貞淑』

        そんなことは露ほども考えたことがないけれど、もしかしたら同じはずの私達の日常が、私と夫とではまったく違う色に見えているのかもしれない。
        真面目で優しい夫。
        妻にとって、ストレスなど感じたこともない平和な結婚生活。
        今の生活に満足しきっていたはずの妻は、友人から、キャバクラで下品に騒ぐ夫を見かけたと聞き…『ますお』

        みんな離婚するんだな。僕はそんなことをぼんやり思った。
        理想の相手を見つけたという男の一目ぼれから付き合いだした、バツイチ同士の二人。
        親なのに、親になれなかった二人は、お互いにそのことが言えずにいた…『バツイチ』

        リビングに行ってテレビを点けると番組がいつもと違っていて、今日は土曜日だと気がついた。そして夫の休日だと思ったとたん、いやだな、と感じてしまった自分に驚いた。
        二世帯住宅で夫の両親と同居を始めて3ヶ月。
        一つ屋根の下で暮らしていると言うのに、あまりにも嫁扱いされなさすぎて、何かがおかしい…。
        義母たちとは、一緒に食事をするどころか、家に上げてもらったことすらなくて…『秋茄子』

        夫は既に私の一部である。他人でないので会っても淋しさは紛れない。淋しさを紛らわしてくれるのは「他人」であることを私は知った。
        十年前、お互いの利害が一致して結婚した二人。
        子供を作る気もなく、部屋も別々にし、仕事が忙しいと何日も顔を合わせないこともある。
        夫の目の前で、恋人と会う約束を平然とする妻に、夫はある提案をした…『紙婚式』

        の8編から成る「結婚のなかで手さぐりあう男女の繊細な心の彩を描いた」珠玉短編集。


        普通の生活を営む、普通の人達の心理が、ホラーばりに恐ろしい…。

        特にぞぞっとしたのは、『子宝』『貞淑』の妻たちと、『ますお』の夫と、『秋茄子』の義母。
        普段優しそうな顔して、実は何考えてるのか分からない人というのは、本当に怖いかも。

        『子宝』の、妻が毛ガニにつけた名前は可愛かった。茹でられてしまったけど。
        『おしどり』に出てくる妹の考え方は、私も全く同感で…、案外みんなこんな意地悪なこと考えてるのかなと思うと嬉しくなったりして。

        どのお話も、まだ続きがありそうな終わり方で、その先は想像するしかなくて、でもきっと、何か満たされない思いを抱きつつ、みんな続けていくんだろうなぁと思う。

        この本に出てくる人達の心の中の思いは、恐ろしいほど、的を得ているというか、結婚生活を営んでいる人達の本音を言い当てているような気がしてしまった。

        『土下座』の夫が「以前の彼女が陸揚げマグロだとしたら、結婚後の彼女は冷凍マグロだった」というのは、何となく夫が憐れに思えて同情してしまいそうな。
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          『群青の夜の羽毛布』山本文緒

          群青の夜の羽毛布
          群青の夜の羽毛布
          山本 文緒 2006年 文春文庫
          ★★★★
          わたしは家族のために、ずっと働いてきました。それが義務だったからです。でもそれだけじゃありません。私は家族を愛していたんです。
          嘘じゃありません。わたしは本当に家族を愛していたんです。でも、わたしは家族に愛されませんでした。
          坂道を上りきった、小高い丘の頂上に建つ一軒家。
          男の子のような名前の「さとる」と「みつる」の二人姉妹、そして厳格な母親の3人が暮らすこの家では、音のない生活を強いられていた。

          理由あって大学を中退し、今は家事手伝いの身の上である姉のさとるには、つい最近付き合い始めたばかりの、鉄男という二歳年下の大学生の彼氏がいる。
          鉄男には、ひっそりと静かだけれど、ときとして情熱的なさとるがとても不思議な女性に思え、知りたいこと、聞きたいことがたくさんある。
          ありきたりの恋愛に飽き飽きしていた鉄男は、謎の多いさとるにどんどん魅かれていった。

          ある日さとるとのデートが門限を過ぎてしまい、家の前までさとるを送り届けると、そこには鬼の形相の母親が待ち受けていた。
          24歳にもなって10時の門限を破ったことのないさとるも、時間を少し過ぎたぐらいで理由も聞かず、いきなり娘を殴りつける母親も、この家は何かがおかしい…と思い始めた鉄男。

          さとるを支配下に置きたい母親は、鉄男を家に招き、品定めしようとする。
          食事中も一言も口を聞かず、テレビもつけず、姿勢を正し、ただもくもくと食物を口にする3人の様子に、居心地の悪さを感じる鉄男。

          母親は鉄男をいたく気に入ってくれたようなのだが…。
          父親の所在を訪ねると、なぜか口を噤む彼女たち。
          そして半ば強引に家に泊まるよう命じる母親。

          彼女達は鉄男に何を求めているのか…。


          冒頭の、カウンセラーらしき人と、患者らしき人との会話文に怖気を感じ、この先にいったい何があるんだろう…とわくわくしながら読んだ。

          母親も怖かったけど、それよりもっと、図書館で静かに本を読む、病弱なイメージのさとるの変貌が、一番怖かったかも。

          母親とさとるの取った行動はいくらなんでも…。
          何とも気の毒な父親。
          「さとる」と「みつる」の名前の由来も、母の性格をよく表してて、怖い。

          母親の台詞はいちいちきつくて、さとるに言い放った「自分で自分のことが養えないなら、誰かに養ってもらうしかないでしょう」も、そりゃあそうなんだろうけど。

          底なし沼にはまり込んで行くような鉄男の身の上だけど、最後の最後は悲惨なのか、救いがあるのか…どうなんだろう。

          すごくお上品そうな母親が、まさかあんなお下品?なお言葉をご存知だとは、思いもしなかったけど…。
          「親子丼」って…あんた…。
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            『プラナリア』山本文緒

            プラナリア
            プラナリア
            山本 文緒 2005年 文春文庫
            ★★★★★
            自分の立っていた固いはずの地面が、こんなにも簡単に割れてしまう薄い氷だとは知らなかった。氷が割れて沈んだ水の底で凍え死ぬのかと思っていたら、意外にもそこは暇という名のぬるま湯で満ちていた。そこに横たわっているのは想像以上に楽で、しかも私にはそこから浮上しようという動機や目的が見つけられなかった。

            乳がんで片方の胸をなくしてしまった春香は、酒の席でも、病気のことをネタにする。そして、八つ当たりする。
            四つ年下の彼氏は、そんな彼女の自虐ネタをいたたまれない気持ちで聞いている。
            決して働けない身体ではないけれど、春香は働く気をなくし、親の稼ぎがいいのを良いことに、ぐだぐだした毎日を送っていた。
            そんな彼女に「アルバイトしない?」と声をかけてくれた相手に「私、社会不適応者ですよ」と答えるものの、彼女の店でアルバイトを始めるのだが…「プラナリア」

            夫と職を一度に失った泉水は、そこからの二年間、いくつかの趣味にはまることで、暇な時間をやりすごしていた。
            そんな彼女を心配してくれる友達との憂鬱なランチの帰り、ふらりと寄った「マンガ喫茶」で、かつて自分の部下だった男とばったり出会う。
            名前も覚えていなかったけれど「昔憧れていたんです」と言うその男を部屋に入れ、何となく嫌ではないので、やってしまう。
            男は「電話して」とメモを置いて帰ったけれど…「ネイキッド」

            近頃外泊が多くなった高校生の娘と、何考えてるのか分からない大学生の息子を持つ母は、晩御飯の片付けを終えた後、激安量販店のパートに出かける。
            週に三日のパートの日は、睡眠時間は三時間だ。
            独り暮らしの母親の面倒も見なければならない。四年近く入院生活を送る、夫の父親への見舞いも欠かさない。
            「悩みといえば子供と夫と親のことで、今欲しいものといえば、お金と睡眠時間だなんて平凡もいいところだ」そう考える母は、娘から突然リストラされてしまう…「どこかではないここ」

            長年付き合っている恋人に「そろそろ結婚してもいいよ」と言われる25歳の美都。
            未だに学生の彼は、いったいどうやって生活するというのだろうか?
            考えても、口には出せない。
            お互いに相手に対して性的欲求を持たない二人。
            美都は、恋人以外の相手なら、それなりに欲情することができる。
            リングを贈られても嬉しいと思わない、寝たいとも思わない。
            そんな相手と結婚していいものかどうか、わからなくなってしまう…「囚われ人のジレンマ」

            居酒屋の店主は、ある日店にふらりとやってきた、やっかいな女と一緒に暮らしている。
            客の手相を見、御礼に飲み代を払ってもらう女。
            店にやってくる常連客たちとちゃらちゃらし、ご馳走してもらったり、服なんかも買ってもらったりしている。
            女が公園で野宿していたから、強姦でもされたら困る、一応客だし、と思って、家に置いていたはずだった。
            けれどある日、彼女が部屋を出て行ってしまい、帰って来なくなる。
            いなくなって初めて、自分の気持ちに気づいてしまったけれど…「あいあるあした」の5編から成る短篇集。


            「何もかもが面倒くさかった。
            生きていること自体が面倒くさかったが、自分で死ぬのも面倒くさかった。」という、帯に惹かれて読んでみた。
            5編とも、すっきりとしない終わり方をする。
            この先どうなるのか、何となく分かるような分からないような。

            この人は本当に「女が嫌〜な気持ちになる女」を書くのが上手なんだな、と思う。
            ここに出てくる女性の誰にも共感できないし、どちらかと言えば嫌い。
            共感はできないけど、言ってることはよく分かる。
            (あれ、それって共感してるってことなのかな?)

            「どうして私はこんなにひねくれているんだろう。人には人の考えが、自分とは別にあるのだと考えられないのだろう。」
            主人公も、ちゃんと分かっている。
            分かっているけど、うだうだしてしまう。
            分かっていながら、うだうだしてしまうというのも、よく分かる。

            「あんなに時間がほしかったはずなのに、今はその貴重な時間をなんと無駄に使っていることだろう。」
            の言葉も、何か身に沁みる。
            忙しいときは、時間があれば、あれがしたい、これがしたいと幾つも思いつくのに、いざ暇になったら、それを何一つ実行しなかったりする…。

            高校生の娘が母に対して思うことは、私も子供の頃思っていたかもしれない。あまりにもしんどそうな生き方が、私にはできないし、だから結婚なんかもしたくないと思ってたぐらいだし。

            奇麗事でない、女の醜い部分がいたるところに細かく書かれていて、だから嫌な気持ちになるのかもしれない。
            普段、隠してるところをさらけ出されるようで。

            私もかなりの面倒くさがりだと思っているけど、ここまでじゃないかも。
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              『恋愛中毒』山本文緒

              恋愛中毒
              恋愛中毒
              山本 文緒 2002年 角川文庫
              ★★★★★
              どうか、どうか、私。
              これから先の人生、他人を愛しすぎないように。
              愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。
              私は好きな人の手を強く握りすぎる。相手が痛がっていることにすら気がつかない。だからもう二度と誰の手も握らないように。
              諦めると決めたことを、ちゃんときれいに諦めるように。二度と会わないと決めた人とは、本当に二度と会わないでいるように。
              私が私を裏切ることがないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。

              女のせいで、前の会社にはいられなくなり、小さな編集プロダクションに転職して間もない男。
              男は、自分の誕生日に怯えていた。
              夜逃げ同然で逃げてきた女から、会社に電話がかかってきやしないか、会社に乗り込んできたりしやしないかと。
              そして彼の会議中に、案の定会社に来た女を追っ払ってくれたのは、年齢不詳の地味なおばさん事務員、水無月さんだった。
              しかも、女に殴られてくれたらしい。

              周りからは、社長の愛人なのではないかと、密かに噂される謎の人物。
              そんな水無月さんと、社長と三人でご飯を食べることになり、社長が帰った後、男は、この地味な事務員さんの、意外な過去の話を聞くことになる…。

              今の社長との関係、そして大学を出てすぐに結婚し離婚したこと、ある著名人の下で、秘書兼愛人として働いていたこと、そして、水無月さんが彼らにしたことの全て…。

              「水無月さんのことは、聞かないほうがいいと思う」と、先輩に忠告された通り、彼女は恐ろしい女だった…。


              これ、大分前に薬師丸ひろ子と鹿賀丈史でテレビドラマ化されてたのを見てた。
              内容は全然覚えてないけど、最初彼女がお弁当屋さんで働いてたとこだけ何となく覚えてる。何となく突飛なシチュエーションだったことと。

              水無月さんは、一言で言えば「何考えてるのか分からない女」。
              他人のことは聞きたがるくせに、自分のことはあまり話そうとしない。
              男の愛人の一人のところに乗りこんで行き、男から遠ざけようとする。
              何もかも、計算ずく…。
              男と一度寝ただけで、その日から一日何回も電話をかけまくる、待ち伏せする。
              そして、別れた旦那への、毎晩のような無言電話…。

              前の男との別れを教訓に、今の男とは、ぎりぎりのところで自分を抑えて付き合うというのは、分かる気がしたけど…。
              想像するだけでも、やっぱり恐い、嫌な女だと思った。

              そして、ラスト近くの一言で、ああ、この人はまだ…という感じ。
              この人の性根は、一生変わらなそう…。

              にしても、ぽんと以前の3倍以上の給料もらえたり、ビジネスクラスで海外旅行に何度も連れて行ってもらったり、高価な車をもらえたり…何とも、羨ましくなるようなお話だったりした。
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                『ブルーもしくはブルー』山本文緒

                ブルーもしくはブルー
                ブルーもしくはブルー
                山本 文緒 1996年 角川文庫
                ★★★★★
                退屈で孤独で平穏な毎日。そこへ戻るにはどうしたらいいのだろう。

                理想の男と結婚したものの、わずか6年で、夫に振り向かれなくなった女。
                夫の無関心をいいことに、自由気ままに年下の男との不倫旅行に堂々と出かける佐々木蒼子。
                彼女は心の中でつぶやく「私には、男性を見る目がないらしい。」
                今回の不倫旅行で、女は年下の男のつまらなさに辟易としていたところだった。

                そんな不倫旅行の、サイパンからの帰りの飛行機が、台風のため途中の福岡に着陸し、偶然、博多に留まることになった蒼子。
                博多には、かつて蒼子が愛し、今の夫とてんびんにかけ、結局捨ててしまった男が住んでいるはずだった…。

                そして、この町で蒼子が出会ったのは、自分とそっくりの女、河見蒼子。
                かつての恋人の、妻となっている、もう一人の蒼子が、そこには存在していた。
                ドッペルゲンガー…。どちらかが、陰なのか…。
                理由はわからないけれど、確かに、蒼子は二人、この世に存在している。

                「正しい選択をした私が、違う土地で幸福に暮らしている。知らなければ知らないで済んだことなのに、私は知ってしまった。もうひとつの人生、それも正しい人生が、別の場所で営まれているのだ。私は選び間違えた。」

                お互いの生活を一ヶ月、取り替えてみないかと先に提案したのは、博多に住む蒼子。
                東京に住む蒼子も、その提案に食いつき、二人はそれぞれになりすまし、今度こそ、本当の幸せを手に入れる、はずだった…。


                一見、正反対の性格に思えた二人が、実は同じように、我が儘で自分勝手で、傲慢な女だった…。
                「愛されていない」と不満を持つ蒼子に、「愛されすぎている」と不満を持つ蒼子。
                どちらが、本当の幸せなのか。
                最後の二人の対決は、ちょっと鬼気迫るものがあって、ただの恋愛小説ではなくて面白かった、かな。
                結局は、自分探しの話…。

                蒼子の台詞の中に「きれいな見かけに騙されて、私は欠陥車を選んでしまったのだ。埃をかぶっていたもう一台の車こそ、人生を快適に走り切る性能のいい車だったのだ。」というのがあるけど、このあとに、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』の「おえい」の台詞を添えたくなってしまう。

                「男なんてものは、いつか毀れちまう車のようなもんです。毀れちゃってから荷物を背負うくらいなら、初めっから自分で背負うほうがましです」

                ここまで思えるようになれれば、もっと楽に生きられる、ような気がする。
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