スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

0
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『思いわずらうことなく愉しく生きよ』江國香織

    思いわずらうことなく愉しく生きよ
    思いわずらうことなく愉しく生きよ
    江國 香織 2004年 光文社 P.396
    ★★★★
    「私たちはたぶんのびやかすぎるのよ」……
    知っていた、と考える。ほんとうはあたしも知っていた。のびやかすぎるものは時としてたぶん迷惑なのだ。でも、だからといってどうしようがあるだろう。

    「人はみないずれ死ぬのだから、そして、それがいつなのかはわからないのだから、思いわずらうことなく愉しく生きよ」という言葉を家訓に掲げる犬山家。
    そんな犬山家の裕福な家庭でのびやかに育ち、現在は思い思いの生活を送る、三姉妹。

    7年前に結婚し、専業主婦となり、家族や友達との交流も疎遠になりつつある長女、麻子。
    アメリカ留学を経て、外資系の一流企業に入社し、男と肩を並べて働く次女、治子。
    そして恋愛に意味を見出せないがために、男にだらしのない奔放な三女、育子。

    子供の頃から、食卓にはワインが欠かせなかったという酒豪の家族は、別々に暮らす今もしばしば連絡を取り合い、今は離婚した両親それぞれの家を訪ねたり、一緒に飲みに行ったりするほど仲が良いのだが、長女の麻子だけは、誘っても断るばかりで…。

    麻子は結婚してから変わってしまった、と寂しく思う治子。

    実は、歳の離れた三女の育子にだけ、麻子が打ち明けていた夫、邦一の暴力。

    そしてある日、育子にかかってきた麻子からの電話に腑に落ちないものを感じ取り、突然麻子の家を訪れることにした育子は、邦一の行為がエスカレートしていることを知り、とうとう治子にも打ち明けることに。

    その足で麻子の家に乗り込んだ二人は、麻子と邦一の二人に追い返されてしまい、どうすれば麻子を救うことができるのか、途方に暮れてしまうのだが…。

    「自分のしたことに後悔なんかしないわ。
    結婚して7年の麻子、結婚はしないけれど同棲中の治子、恋愛なんて信じていない育子。のびやかで凛とした三姉妹の物語。」だ、そう。


    長女、麻子の受けるドメスティック・バイオレンスを軸に、犬山家の姉妹それぞれの日常生活のようなものが描かれていて、姉妹それぞれが同じ頃、置かれる境遇の違いみたいなのが、臨場感溢れてて面白いなと。

    何より、DVに走ってしまった夫の気持ちと、それを受け容れる麻子との共依存の関係の描き方が秀逸だなぁと感心してしまった。

    もちろん夫には嫌悪感しか抱かないけど、その子どもじみた心の狭さというか、「一人ぼっちにしないで」感というのがすごく良く分かるし、麻子にもいらいらさせられっぱなしだけど、自分のちょっとしたミスが夫の機嫌を損ねてしまう、「悪いのは私」感も、すごく良く分かる。

    とんでもなくドロドロした話で、私には未知の世界でも、「こういうことなのか…」と、江國さん独特の文章のおかげで、納得させられてしまうと言うか、すんなりと受け容れさせられる。

    治子と育子、それぞれに共感できる部分はあるけど、三女の育子には、いたく共感してしまった。
    たぶん若い頃の私はこんな感じだったなぁと、しみじみ。

    に、してもここに出てくる男の人はみんな「子ども」過ぎて、情けなくなると言うか、腹立たしくなるけど、実際そういう男の人が増えてるのかなと、思わざるを得ないかも。

    「思いわずらうことなく愉しく」生きられるのは、案外女の方かもしれないなと、つくづく女に生まれて良かったと、感じさせられた一冊だったかな。

    0

      『神様のボート』江國香織

      神様のボート
      神様のボート
      江國 香織 2002年 新潮文庫
      ★★★★★
      一度出会ったら、人は人をうしなわない。
      たとえばあのひとと一緒にいることはできなくても、あのひとがここにいたらと想像することはできる。あのひとがいたら何と言うか、あのひとがいたらどうするか。それだけで私はずいぶんたすけられてきた。それだけで私は勇気がわいて、ひとりでそれをすることができた。

      「かならず戻ってくる。そうして俺はかならず葉子ちゃんを探しだす。どこにいても。」
      九月の暑い午後、「あたし」の「パパ」はそう言い残して「ママ」の前から去っていった。
      「ママ」はそれからずっと、あのひとのいない場所には決して馴染まないように心に決め、「あたし」と二人、知らない町を転々として、あのひとを待ち続けて生きている。
      一つの場所に馴染んでしまったら、もうあのひとには会えなくなりそうな気がしてしまうから。
      「ママ」の居場所は、あのひと以外の場所には決してないのだから。

      「ママ」のこの揺らぐことのない決心のせいで「あたし」は、ずっと転校を繰り返し、仲良くなった友達とも、すぐに別れて、二度と会えない。
      「ママ」は言う「すぎたことはみんな箱のなかに入ってしまうから、絶対になくす心配がないの。すてきでしょう?」と。

      「ママ」は、どの町でも、昼間はピアノを教え、夜は夜のお仕事をしている。
      働き者で、どこにいても大切にされる「ママ」。
      けれど、馴染むことに危険を感じたころ「今度はどこに住みたい?」と「あたし」聞いてくる「ママ」。

      「ママ」にとって、「あたし」の父親は神様のような存在だと言う。
      「ママ」と「あたし」は、神様のボートにのってしまったのだと…。
      だから二人はずっと漂わなければならない。

      だけど「ママ」にそっくりな娘に成長したころ「あたし」はボートから降りようとする。
      まるで夢の中を漂っていたかのように生きてきた母が、突然娘に現実をつきつけられ…。


      物語は「ママ」葉子と、「あたし」草子の二人の視点から交互に、静かに語られる。
      途中までは『間宮兄弟』の母娘版のように、おだやかに淡々と進んでいく。

      けれど、新しい町を転々としている間に、草子は小学生から中学生になり、自分の意思を持ち始める。
      その様子が、手に取るようにわかる気がした。
      誰もいない部屋の扉を開けるとき、幼かった草子はその扉の向こうにいるかもしれない何者かに怯え、少女になった草子は、そこに何もいないことを知る。

      母は、娘のそんな成長には気づかず、いつまでも一緒に「神様のボート」に乗っているものだと信じている。
      母親と娘の関係って、本当にこういうものなのかも知れないと思う。
      いつまでたっても、自分の思い通りになると思う母親と、自分の世界を持ち始め、母から離れようとする娘…。

      「これは狂気の物語です。」と、あとがきに書かれているけれど、私にはごく普通の人の物語に思えた。
      放浪こそしないものの…。
      自分が、ただひとりと決めた相手を待ち続けるのは、普通のことでないのかな?

      必ず、戻るとは思わないけど。
      それでも、ひとりで待ち続け、死ぬまで待ち続けることができれば、むしろ幸せな生き方のような気がしてしまった。
      そこまで思える相手と、生きている間に出会えたとしたら…。

      骨ごと溶けるような恋、は、相手がいなくなったからそう思えるだけで、そのままずっと一緒にいたら…と、ついつい現実的なことを考えてしまう私には、きっとそんな恋はできないんだろうけど。

      0

        『号泣する準備はできていた』江國香織

        号泣する準備はできていた
        号泣する準備はできていた
        江國 香織 2003年 新潮社
        ★★★★★
        かつて輝かしい恋をした。
        でもそれは、それだけのことだ。

        「前進、もしくは前進のように思われるもの」
        「じゃこじゃこのビスケット」
        「熱帯夜」
        「煙草配りガール」
        「溝」
        「洋一も来られればよかったのにね」
        「こまつま」
        「住宅地」
        「どこでもない場所」
        「手」
        「号泣する準備はできていた」
        「そこなう」

        日常の何気ない出来事に、ふと、かつての自分を重ね合わせたり、かつての恋を懐かしんだり、この先の自分を憂いたり、悲しんだり…様々な感情の閃きが12この短い物語の中に、ぎゅっと濃縮して閉じ込められてるような、そんな短編集。


        「わからない」という感情。
        過去の、期待に反したつまらないデート。
        どんなに愛し合っても、先のない行き止まり。
        かつての相手とは別の相手と一緒にいることの不思議さ。
        一度は愛しあったのに、何も感じられなくなってしまうということ。
        愚かで孤独な若い女や、暇で孤独な主婦とは違う、自分にそう言い聞かせる。
        様々な問題を置いておいて、束の間居心地の良い場所にひたる。
        かつて二人が暮らした部屋、その部屋に今は一人…。
        嬉しすぎて、嬉しすぎて、怖くなって、壊してしまったもの。

        本の中に書かれている言葉が綺麗すぎて、どうにもこうにも書きようがなくて困った。
        「あー、こんな感じ、あったなー」
        と思える感情が幾つも出てきてすごく嬉しくなった。

        そして、それらは、きちんと、綺麗にとか、可愛くとか、ラッピングされたプレゼントみたいな、しかも普段着で行けるスーパーではなくて、大丸で買ったチョコレートみたいな…(私の中では、一応大丸が高級百貨店なので…)
        品があるというか、何というか、そういう言葉で包まれているような気がした。

        「私は思うのだけれど、注意深くするのは愚かなことだ。当然だ。誰かを好きになったら注意など怠り、浮かれて、永遠とか運命とか、その他ありとあらゆるこの世にないものを信じて、さっさと同居でも結婚でも妊娠でもしてしまう方がいいのだろう。」
        この言葉に、ものすごく同意する。

        「間宮兄弟」を読んでから、すっかり江國さんのにわかファンになってしまった。
        何で今まで読まず嫌いだったんだろう。
        多分「情熱と冷静のあいだ」のせいなんだと思うけど…。
        0

          『間宮兄弟』江國香織

          間宮兄弟
          間宮兄弟
          江國 香織 2004年 小学館
          ★★★★★
          心根のやさしい間宮兄弟ではあったが、現に彼らを見知っている女たちの意見を総合すれば、恰好わるい、気持ちわるい、おたくっぽい、むさくるしい、だいたい兄弟二人で住んでいるのが変、スーパーで夕方の五十円引きを待ち構えて買いそう、そもそも範疇外、ありえない、いい人かもしれないけれど、恋愛関係には絶対ならない、男たちなのだ。

          夏、
          間宮兄弟、の兄と弟は、近くの商店街の雑貨屋で、風鈴を買う。
          エアコンのきいたリビングに、二枚の茣蓙を敷き、並んでうとうととする。
          そこだけ時間が止まってしまったかのような、二人だけの空間。

          酒造メーカーに勤める兄と、小学校の校務員の弟。
          二人は、ともに30歳をとうに越え、ともに独身で、兄弟二人で住み慣れた街の、居心地のいいマンションに暮らしていた。
          「もう女の尻は追わない」と心に決めてから、安穏な生活に浸りきっていた。

          共通の趣味を持ち、時間を共有する二人だが、心の中で思うことは、まるで別のこと。
          ビールを好む兄と、コーヒー牛乳を好む弟。
          兄が、父の思い出に浸っているその隣で、弟は「ひさしぶりにソープに行きたい」と考えてたりする。

          二人の体型も、性格も正反対だった。
          綺麗好きで、淡白な兄と、大雑把で、情熱的な弟。

          そんな二人の共通の趣味の一つであるビデオ鑑賞。
          兄は、行きつけのレンタルビデオ屋のアルバイトの女の子を、ちょっと気に入っている。
          ある日弟は、ビデオ屋の彼女と、職場の女性を誘って自慢のカレーを振舞う「カレー・パーティー」をしようかと、兄にもちかける。

          計画通りにことは進み、女達はことのほか、喜んでくれたようだ。
          けれど、招かれた女達は、それぞれ恋人との関係に悩んでいた。

          そんなことは露知らず、夏も終わる頃、今度は「花火大会」を催して、またみんなを招くことにする兄弟達。

          さしたる進展もないまま、兄弟達の季節は巡り、やがて冬を迎える。


          面白すぎた…。
          最初、ギャグ小説かと思ったぐらい、とにかく面白かった。
          二人のキャラもさることながら、二人の母親のパワフルさも…。

          二人の共通の趣味の一つ「おもしろ地獄」は、私も一時熱中した。
          二人が住む町の、唯一夜に開いてる「入り口わきに熱帯魚の水槽がある、壁にビールジョッキを持った水着姿の女性の古びたポスターが貼られた、喫茶店兼スナック」というのも、昔はよく見たことあるような…。
          間宮兄弟の懐かしい過去と、自分の持っている過去の記憶は見事なくらいマッチしている。

          そういえば、こんな男の子たち、小学校や中学校の同級生にいた。
          そして、見事なぐらい、もててなかった。

          男の人は、女の人を誘うのに、こんなにも色々苦労してるのかなぁと思ったら、気の毒になった。

          ビデオ屋の女の子と、彼氏のやりとりもすごくよく分かる。
          二人でホテルにいるのに「今度二人でどっか行こうよ」と言う女と「今も二人で一緒にいるのに」と思う男…どちらの言うこともよく分かる。

          間宮兄弟は、至極まっとうで清らかに育った二人だ。
          女にもてなくても、たとえこの先結婚できなくても、二人で仲良く、これまで通り、暮らしてほしいと思ってしまった。
          これほど満ち足りて、幸せそうに暮らしている男の人達を、私はあんまり知らない。

          映画化されたけど、兄弟のイメージは、まあ合っている気がする。
          でも、兄が佐々木蔵之介では、恰好良すぎるなぁと、同僚につぶやいたら「え、ぴったり」と言われてしまった。
          好きなんだけど…。

          0

            『東京タワー』江國香織

            東京タワー
            東京タワー
            江國 香織 2001年 マガジンハウス
            ★★★★★
            耕二に唯一恐れるものがあるとすれば、気をゆるす、という行為がそれだった。年上の女には、自分はつい気をゆるしてしまう。自分のものにならない女にだけ、自分のものにならないからこそ―。

            マンションの部屋から見える東京タワー。
            その景色を見ながら、女からの電話を待ちわびる青年、透。
            電話の相手は、母親の友達…。
            彼女には、似合いのパートナーが、ちゃんといる。
            彼女とは17歳の頃から、19歳の今まで、誘いを待つだけの関係で続いている。
            彼女の好きな音楽を聴きながら、彼女の好きだといった本を読みながら…透はいつも彼女だけを想い、彼女だけを待っている。

            そして、透の親友の耕二。
            彼にも、人妻の相手がいる。
            自分に似合った、彼女もいる。
            「捨てるのはこっちだ、と、決めている。」と常々自分に言い聞かせながら、年上の女との情事にとろけていく。
            本当の心に気づかないまま、いつでも別れられると思いながら…。

            そんな二人の青年の、それぞれの恋のかたち…。

            私は、恋愛小説を殆ど読まない。
            自分では絶対買わない。
            この本も、姪っ子が持っていたのを借りた。
            江國香織も、だから、初めて読んでみた。
            テレビでやる前に、読んでおこうかなと思い。
            (ジャニーズ好きなので…)

            そして、読んでみて、途中から、ただの恋愛小説じゃなくて、二人の男の子のほろ苦い、青春の物語なのだと、気付いてちょっと安心して読めた。

            純粋に、年上の彼女だけを思い続ける透と、「遊び」だと割り切っている耕二。
            一見、対照的に見えるけど、根本的には同じなのかもしれない、と私は思う。
            悪魔のような女、と別れようとしても別れられない。
            それは彼が思っているような、それだけではないと思いたい。

            仕事柄、私も自分の歳の半分ぐらいの子たちと接している。
            彼らはよく「人妻を紹介してくれ」と言う。
            ただ単に「あとくされなく付き合えて、そのうえ上手」だと思っているらしい。
            そして「年上の女は甘えられるから、いい」とも言う「金も遣わなくていいし」とも。

            私は、うんと年下の男の子と付き合うと、どんどん自分がみじめになっていく。
            もう若くないことを、思い知らされたり、若い女の子に嫉妬してしまうのは、辛い。
            なので、この、二人の年上の女の余裕がうらやましかったりする。

            そして、この小説を読んで、どうしてもペタジーニを思い浮かべてしまう私には、この手の小説はつくづく不向きなんだと思い知らされる。
            0

              1

              calendar

              S M T W T F S
                    1
              2345678
              9101112131415
              16171819202122
              23242526272829
              30      
              << April 2017 >>

              読書メーター

              uririnの最近読んだ本 uririnの今読んでる本

              新刊チェック

              selected entries

              categories

              archives

              recent comment

              • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                uririn
              • 『痺れる』沼田まほかる
                uririn
              • 『絶望ノート』歌野晶午
                uririn
              • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
                いちれん
              • 『痺れる』沼田まほかる
                くり
              • 『絶望ノート』歌野晶午
                智広
              • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                uririn
              • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
                苗坊
              • 『永遠の0』百田尚樹
                uririn
              • 『永遠の0』百田尚樹
                苗坊

              recent trackback

              recommend

              recommend

              recommend

              recommend

              recommend

              recommend

              悪人
              悪人 (JUGEMレビュー »)
              吉田 修一
              読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

              recommend

              しずく
              しずく (JUGEMレビュー »)
              西 加奈子
              サイン本買っちゃった。

              recommend

              recommend

              たぶん最後の御挨拶
              たぶん最後の御挨拶 (JUGEMレビュー »)
              東野 圭吾
              猫なんです…。

              recommend

              recommend

              recommend

              ねこの肉球 完全版
              ねこの肉球 完全版 (JUGEMレビュー »)
              荒川 千尋,板東 寛司
              たまらん。

              recommend

              ニャ夢ウェイ
              ニャ夢ウェイ (JUGEMレビュー »)
              松尾 スズキ, 河井 克夫
              たまらん…

              recommend

              recommend

              僕たちの戦争
              僕たちの戦争 (JUGEMレビュー »)
              荻原 浩
              とにかくお薦め。

              recommend

              出口のない海
              出口のない海 (JUGEMレビュー »)
              横山 秀夫
              たくさんの人に読んでほしい…

              links

              profile

              search this site.

              others

              mobile

              qrcode

              powered

              みんなのブログポータル JUGEM

              使用素材のHP

              Night on the Planet フリー素材*ヒバナ *  *

              PR