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    『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

    ゴールデンスランバー
    ゴールデンスランバー
    伊坂 幸太郎 2007/11/30発行 新潮社 P.503 ¥1,680
    ★★★★★
    「思えば俺たちってさ、ぼうっとしている間に、法律を作られて、税金だとか医療の制度を変えられて、そのうちどこかと戦争よ、って流れになっていても反抗ができないようになっているじゃないですか。何か、そういう仕組みなんだよ。俺みたいな奴がぼうっとしている間にさ、勝手にいろいろ進んでるんだ。前に読んだ本に載っていたけど、国家ってさ、国民の生活を守るための機関じゃないんだって。言われてみれば、そうだよね。」

    テレビ中継も行われる地元での凱旋パレードの最中、公衆の面前で暗殺されたのは、「理想を叶えるために政治家になった」若き野党の党首、そして半年前、野党から初めて首相に選ばれたばかりの金田。

    ほどなく、数々寄せられる目撃情報から容疑者として浮かび上がったのは、二年前、ある事件のヒーローとして一躍時の人となった元宅配ドライバーの優男、青柳。

    警察官のいきなりの発砲に身の危険を感じ、身に覚えのないまま「森の声」に従い、ただ逃げ続けるしか生きる道の残されていないことを悟った青柳は、最新の監視システムが整備された仙台の街を駆け抜ける。

    携帯も自由に使えず、友人を頼ることもままならず、逃げ場をなくした青柳は、二日間の逃亡の末、ある場所に姿を現すと公言し……。

    「伊坂的娯楽小説突抜頂点
    首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、巨大な陰謀から逃げ切ることができるのか?
    2年ぶり 1000枚 直球勝負の書き下ろし大作」だ、そうで。


    どこかのブログで『砂漠』と『魔王』を足したような作品と書かれていたけど、なるほどうまいこと言うなぁと…まさにそんな感じ。
    あと、これまでの色んな作品の良いとこどりというか、集大成というか…。

    こんな風に犯人をでっちあげることって、実は意外とあったりするんだろうなぁ…と思えるし、テレビで流される情報の不確かさや、それらの情報のみで人のイメージや印象が簡単に変えられることの怖さも良く分かるかなと。

    国家とか権力を敵に回したら、逃げるしかないというのも…。

    青柳の逃亡劇は、映画『逃亡者』のようでもあり(ある部分で、私は楳図かずおの漫画『漂流教室』で未来の息子の危機の為にメスか何かを埋めたお母さんを思い出してしまった)。

    ただやっぱりそこは伊坂さんらしくて、青柳は飄々としているし、殺されそうな危険な目に遭っているのに、何故かわくわくしてしまうというか。

    学生時代の友人たちや、仕事仲間、そして親子の信頼関係がものすごく良くて、実際私なら、こんな風に信じること出来るのかなと考えさせられるし、信じてもらえるのかなとも…岩崎の「どうせ、おまえじゃないんだろ」も、樋口の「だと思った」も、父親の「ちゃっちゃと逃げろ」も、とにかく人間の関係性がすごくいいなぁと。

    なかでも「痴漢は死ね」は、素晴らしいのひと言に尽きるかな。

    最後の最後まで「たいへん良く出来た」お話で。

    JUGEMテーマ:読書
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      『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎


      フィッシュストーリー
      • 著:伊坂幸太郎
      • 出版社:新潮社
      • 定価:1470円
      livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く
      ★★★★
      「これ、いい曲なのに、誰にも届かないのかよ、嘘だろ。岡崎さん、誰に届くんだよ。俺たち全部やったよ。やりたいことやって、楽しかったけど、ここまでだった。届けよ、誰かに」五郎は言って、そして清々しい笑い声を上げた。「頼むから」
      〜『フィッシュストーリー』より〜

      隠れファンはいたものの、表立っては売れることがなかったロックバンドの、最後のレコーディング曲に込められた願い…。

      それはやがて、この曲を聴く一人の男の正義感を揺り起こすこととなり、めぐり巡って…『フィッシュストーリー』他、
      『動物園のエンジン』、『サクリファイス』、書き下ろし『ポテチ』の4編から成る短編集。

      「売れないロックバンドが最後のレコーディングで叫んだ声が、時空を越えて奇蹟を起こす。
      デビュー第一短篇から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。」だ、そうで。


      いつもながらの会話の洒脱さと、よく出来た話感は健在だけど、何となく物足りないような…と思っていたら、これが、ボディブローのように、後からじわじわと効いてきてしまった。

      これまでの作品で出てきた誰がどこで、というのは、これから読まれる伊坂さんファンのお楽しみのためにとっておくとして…今回もたくさん登場するこの人は、私も大好きなお方で(これが伊坂さんの読むのが初めて、という方でも、このお方のことを記憶のどこかにとどめておいていただいて、伊坂さんにどんどん嵌ってもらえたらと)。

      『動物園のエンジン』の夜の動物園で、オオカミの檻の前に横たわる男、についての推理合戦はなかなか楽しめたし、『サクリファイスト』の、村に昔から伝わる風習で…というのも感心してしまう(九十過ぎてもなお若々しい唄子さんが可愛らしくて)。

      『フィッシュストーリー』は、最初読んだ時は、どう繋がっているのか理解できなくて(ぼーっと読んでたので…)、あとで前のページに戻って、感動してしまった(反応鈍すぎかもだけど)。

      こんな風に、誰かの思いが誰かに届いて、というお話は「本当にそんなことになったらいいのにな…」と、ある意味「夢」のようだったりするので、このスケールの壮大さ(?)がとても良いなと。

      たった一人で何が出来る…と、諦めるよりも、何かが出来ると思って生きたいなと(職業より何より「準備」が大切という父親の教えは、人生の全てにおいて通ずることだなと思えたし)。

      そして最後の書き下ろし作品の『ポテチ』は、会話が絶妙でめちゃくちゃ可笑しいのに泣かせる、ちょっといい話。
      でも、こんな豪快な母親なら、きっと今のままの息子で十分良かったと笑い飛ばしてもらえそうな…。

      コンソメ味も塩味も、私はどっちも甲乙つけがたく好きだし。
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        『砂漠』伊坂幸太郎

        砂漠
        砂漠
        伊坂 幸太郎 2005年 実業之日本社 P.410
        ★★★★★
        「あのですね、人が死んで、仕方がないなんてね、軽々しく言える状況が俺には信じられないですよ」とはじめ、「こんな離れた国の、こんな居酒屋で、学生がビールを飲みながらね、どこかで死んでる誰かのことをね、しょうがねえよなあ、とか言ってること自体が最悪ですよ。俺たちはね、何もできないにしても心を痛めて、戦争が一日でも早く終わるよう願うことすらしてないじゃないですか。せいぜい恥ずかしげに言うべきじゃないですか」と喚いた。「戦争を語る時は、もっと苦しそうな、悶えながらじゃないと駄目なんですよ」

        仙台の街に、通り魔「プレジデントマン」が頻出するようになった頃、大学のクラスメイトととして知り合い、ひょんなことから雀卓を囲むことになった五人の男女。

        モデルや女優並みの風貌で人目をひくものの、言い寄る男子には見向きもしない、東堂。

        いつもにこにこと微笑み、陽だまりを連想させる女の子、誰よりも特殊な能力を持つ南。

        飲み会でいきなり長々とした演説を始め、周囲から顰蹙をかう、見た目も可愛くない西嶋。

        鳥瞰型の学生、どこかさめた目で、クラスメイトたちを眺める主人公の「僕」、北村。

        そして麻雀のメンバーには誘われなかったものの、北村の唯一の友人として、みんなの麻雀用に、豪奢なマンションの一室を提供する、鳥井。

        西嶋によって集められた五人は、この日の麻雀を境に親しくなり、東堂から、意外な相手への恋心を打ち明けられる「僕」。

        スーパーサラリーマンになるのが夢で、学生時代は今しかできないことをやると言い切る鳥井は、その言葉通りにあちこちで女の子達に声を掛けまくり、遊んでいる様子で、周囲からの良くない噂まで聞こえてきて…。

        そんな鳥井に誘われて、「僕」と西嶋が参加した合コンで、見知らぬ二人連れの男から因縁をつけられたことが発端となり、「僕」たちは次々と事件に巻き込まれることに…。

        『「大学の一年間なんてあっという間だ」
        入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン……。
        学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。
        パワーみなぎる、誰も知らない青春小説!』だ、そうで。


        なかなかに過酷なお話で…ただの甘っちょろい大学生たちの物語かと思って読んでいたので、この展開にはちょっとびびってしまった。

        なるほど彼らの春から春というのは、そういうことなのかと…やっぱり構成が上手いなぁと感服してしまう(最後の方まで全く気付かなかった…)。

        伊坂さんの作品に出てくる女の人は、どんなに美人でも、可愛くても、女から反感買わないタイプだなぁと、こちらもつくづく感心してしまう(レベルが超越してるからかな)。

        もちろん登場人物誰もがみんな重要人物だし、魅力的なキャラだけど、なかでも西嶋のキャラは群を抜いているというか…。

        最初はださくて、近くにいたら「何この人、うざい」と声に出して言ってしまいそうと思っていたけど、最後には超男前に見えてくるのがすごいかも(やっぱり男は中身が重要だなと思い知らされたかな)。

        やることなすこと、まっとうで、真っ直ぐで、一生懸命で、ときには暑苦しいというか…でも、こういう人が実際にいてくれたら、本当に砂漠に雪を降らせることも、できるんじゃないかなと思えてしまう。

        「砂漠」と聞けば、前川清の『東京砂漠』を歌いたくなるけど…。
        舞台はやっぱり仙台なのね。
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          『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

          陽気なギャングの日常と襲撃
          陽気なギャングの日常と襲撃
          伊坂 幸太郎 2006年 祥伝社NON NOVEL P.271
          ★★★★
          とにかく僕はこうやって、一般の人を脅かしたり、危害を加えるやり方は好きじゃないんだ。四人くらいでさっと銀行とかを襲って、誰も傷つけずにお金を奪っていくならまだしも、ね

          「ロマン」を求め、銀行強盗を働く四人組、人間ウソ発見器の成瀬、演説の達人の響野、正確無比な「体内時計」を持つ雪子、天才スリの久遠、それぞれの、ある日常のささいな出来事から物語は始まる。

          発端は、成瀬の勤める市役所の地域生活課に持ち込まれた、一人の市民からの苦情。
          そして、成瀬と部下が巻き込まれる強盗事件。

          その頃、響野は喫茶店の常連客から、朝起きたら消えていたという「幻の女」について相談を持ちかけられ(正確には、妻の祥子への相談なんだけど…)、雪子は雪子で、派遣先の女子社員から、入手困難な舞台のチケットの送り主について相談を持ちかけられていた。

          久遠は、公園を歩いていて、たまたま遭遇した暴行事件の被害者となった男のために、犯人探しに動き出し…。

          『巨人に昇れば、巨人より遠くが見える』
          『ガラスの家に住む者は、石を投げてはいけない』
          『卵を割らなければ、オムレツを作ることはできない』
          『毛を刈った羊には、神も風をやわらげる』
          の、それぞれのタイトルがついた短編4つと、

          銀行強盗の現場に偶然居合わせた、成瀬の部下の恋人、とある大手チェーン店の社長令嬢の家出事件に首を突っ込むことになる、襲撃編?から成る物語。

          《絶品のプロット、会話、伏線が織りなす軽快サスペンス!
          伊坂ブームの起爆剤にして、映画化で話題の「陽気なギャング」ここに待望の復活!》だ、そうな。


          最初の4編につけられたタイトル、外国のことわざ?映画の台詞?に、妙に納得。
          『卵を割らなければ…』は、今の自分に言い聞かせたい言葉だなぁと、つくづく思う。

          そして、本当にいつもながらの見事なプロット(もともとただの短編にしようとしていたものを、加筆して、こうなったらしいけど、それが出来るのがすごい…)、に、一見中身のなさそうな会話、登場人物、それらが絡み合ってくるのが絶妙というか…素晴らしい。

          前作のあとがきに、「映画のような、頭をあまり使わずに読めるような作品が書きたくなった」というようなことが書いてあったけど、まさに、2時間ぐらいの、とても愉快な映画を見た後のような読後感(本の方が若干安くてお得だし…)。

          「パエリアがなかったんで、パプリカを食べてみたんだけど」
          のお馬鹿な台詞も、
          「いい人というのは、意外に嫌な人なんだよ」
          という、本質をついた台詞も…やっぱり素晴らしい。

          今回、出番の多かった久遠君が、もし人質になったとしたら、ニュージーランドから羊が押し寄せてくる…は想像しただけでも、わくわくしてしまった。

          南米だかどこだかの、その国、是非送り込みたい人物がいるんだけど…。
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            『終末のフール』伊坂幸太郎

            終末のフール
            終末のフール
            伊坂 幸太郎 2006年 集英社 P.299
            ★★★★
            「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
            「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

            2XXX年、8月15日。
            これより8年後、小惑星の衝突により、地球は壊滅状態に陥るというニュースが世界中を駆け巡った。

            それから5年、あらゆる場所で混乱が起こり、デマが飛び交い、逃げ惑う人々、投げ遣りになった人々による、略奪や、殺人や、放火や、自殺、そういった「何でもあり」の事態が治まり、ひとまず小康状態を保っていた、残された3年を生きる「ヒルズタウン」の住人達…。

            父親と仲違いしたまま離れて暮らしていた娘を、何年ぶりかで家に迎える初老の夫婦。
            相変わらずな父と娘に、母親が見せたかったもの…『終末のフール』

            結婚してから数年、子供が授からなかった夫婦。
            残された時間はあと3年という今になって、赤ちゃんができたという。
            産むべきか、産まざるべきか…『太陽のシール』

            無責任なマスコミの報道によって、大切な妹を失った二人の兄弟。
            当時、報道番組でニュースキャスターを務めていた男の住むマンションに押し入り、世界の終わりより先に殺すことにした、と言うのだが…『籠城のビール』

            父親の遺してくれた蔵書を全て読み終えてしまった女の子。
            次にやるべきことを「恋人を見つけること」と決め、本のアドバイスに従い、三人の意見を聞きに行くことにした…『冬眠のガール』

            いじめっこをやっつけるために小学生の頃に通っていたジムを、5年ぶりに訪れた高校生の男の子。
            驚いたことに、ジムは昔と変わることなく続けられ、中には相変わらず黙々と練習する二人の姿があった…『鋼鉄のウール』

            妻の死に責任を感じる会社社長。
            大学時代の天体オタクの友人からの電話で呼び出され、死ぬ前に会ってみようかと、友人の元を訪れた…『天体のヨール』

            ある外国のベテラン俳優のひと言から、女優を目指していた女性は、近所の一人暮らしのお年寄りの孫娘や、両親を失くした女の子の姉の役割を演じることで、どこか誇らしい気持になっていた…『演劇のオール』

            最後の日を迎える時のために、マンションの屋上に櫓を建てる父親と、その息子のレンタルビデオ屋の若き店長。
            胡散臭い団体の集会に向かう妻のことが気に掛かり…『深海のポール』
            の、8編から成る連作短編集。

            「世界が終わりを告げる前の人間群像。その瞬間をあなたは誰と迎えますか。世界が終わる前の、叫びとため息。8つの物語。」だ、そうな。


            8年後に地球は壊滅状態になります…、と今言われたら「あと8年は生きられるのか…」と、思ってしまいそう。
            8年あったら、まあ、それほど思い残すことなさそうな(もう、若くないからかな)。
            ただ、死に方が、一瞬ならいいけど、痛かったり苦しんだりするのは嫌だなと思う。

            確かに、仕事とか、やってられなくなるかな。
            でも他にすることもないし、やっぱり仕事に行きたいかな…と真剣に考えてしまった。

            随所に出てくる、レンタルビデオ屋の店長の父親が、ものすごく良いなと思った。
            子供の頃、イジメにあって、自殺をほのめかす息子への「自殺なんてしたら、ぶっ殺すからな」という滅茶苦茶な台詞が、すごく気に入ってしまった。

            『演劇のオール』の、何だか少しだけハッピーなとこも、『冬眠のガール』のほのぼのさも、『天体のヨール』の天体オタクの友達も、『終末のフール』の母親の「嘘ですよ」の台詞も…すごく好き。

            「あと3年」を幸せだと言い切れるサッカー仲間も…。

            私は、最期はやっぱり普段通り仕事をして、好きな物食べて、ビールでしこたま酔っ払って、愛猫たちと一緒に迎えたいかな。

            これ読んで思い出した似たような映画でも『ディープ・インパクト』と『アルマゲドン』では、『ディープ・インパクト』のラストの方が感動した。
            馬も強いし。

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              『重力ピエロ』伊坂幸太郎

              重力ピエロ
              重力ピエロ
              伊坂 幸太郎 2003年 新潮社
              ★★★★★
              「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」
              まさに今がそうだった。ピエロは重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に空を飛び、時には不恰好に転ぶ。何かを忘れさせるためにだ。

              二つ違いの兄と弟、泉と春。
              複雑な事情によって生まれてきた弟。
              ストーカーまで出現するほど、女性から好意を持たれることの多い春は、自分の出生の事情から邪悪な「性的なるもの」から頑なに距離を保とうとしていた。
              子供の頃から、兄が側にいれば、何でも上手くいくというジンクスを信じていた春。

              ある日春は「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない。気をつけたほうがいい」と留守電のメッセージを残す。
              訝しがる兄に春は、近頃頻繁に起こっていた、連続放火事件の関連性を解き明かす。
              犯行予告のように放火現場近くに描かれるスプレーの落書き、グラフィティアートを消すことが、春の仕事だった。

              子供のころから「謎解き好き」な兄の性格を良く知る春は、放火事件とグラフィティアートに描かれた文字の謎解きを兄に持ちかける。
              キーワードは、放火と落書きと遺伝子のルール。

              入院中の父親も、二人の会話に加わり、それぞれがそれぞれのやり方で「犯人」に近づいてく…。


              この二人のお父さんは偉大だ。
              このお父さんみたいな考え方は、なかなかできないだろうけど…。
              カッコウと、鶯の話は、良かったな…。

              一度は筆を折った春がまた絵を描きはじめた理由も素晴らしい。
              泉が父に「自分は誰の生まれ変わりなのか」をたずねた時の父親の返答は面白すぎる。

              探偵の最後の台詞も最高に良かった。

              ガンジーの話も、遺伝子の話も、日本神話も…。
              また、感心ばかりしてしまった。

              春の苦悩は計り知れないし、もし自分なら自分を呪うかもしれないけど、でも、この偉大な父親と、弟思いの兄によって、十分救われていると思いたい。
              いい家族だな…。

              それに私も徳川綱吉が好きだし。
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                『死神の精度』伊坂幸太郎

                死神の精度
                死神の精度
                伊坂 幸太郎 2005年 文藝春秋
                ★★★★★
                そう言えば、くだんの床屋の主人は、「死ぬのが怖い」と言ったこともあった。私はそれに対して、「生まれてくる前のことを覚えているのか?」と質問をした。「生まれてくる前、怖かったか?痛かったか?」
                「いや」
                「死ぬというのは、そういうことだろう。生まれる前の状態に戻るだけだ。怖くないし、痛くもない」

                人間の形に姿を変えて、情報部からの指示に従い、選ばれた調査対象に近づく死神。
                あるときは、モデル雑誌に出てきそうな青年だったり、あるときは四十代の中年男性だったり、調査対象に合わせて、年齢も姿かたちもその都度変わる。

                死神の仕事は、調査対象者の死が実行される一週間前から、二、三度彼らと会い、話を聞いて報告書に「可」もしくは「見送り」と書くこと。
                そしてよほどのことがない限り「可」の報告がなされ、調査開始の七日後、選ばれた人間の死は、突然の事故や、事件に巻き込まれることで実行される。
                そうやって、世界のバランスは保たれているのだという。
                実行された死を見届ければ、死神の仕事は終わる。

                「死神の精度」では、偏執的なクレーマーに気に入られた苦情処理係の、自分には何もとりえがないと思い込む若い女性。
                「死神と藤田」では、いまどき流行らない、情に厚いやくざ。
                「吹雪に死神」では、息子に先立たれた母親。
                「恋愛で死神」では、自分の容姿に変にコンプレックスを感じているブティックに勤める青年。
                「旅路を死神」では、母親を刺し、無関係の人間をも刺してきたばかりだという犯罪者。
                「死神対老女」では、周囲の人間に次々に先立たれた美容師の老女。
                が、調査対象者となる、5編から成る連作短編集。


                殴られても、何をされても痛みを感じなくて、殺されても死なない死神。
                ミュージックが何より好物で、暇さえあればCDショップに入り浸るのも、世間に疎くて、調査対象者たちにしばしば変な質問をするのも、面白い。

                自分に自信のない女性が「私醜いんです」と言うと「見にくくはない」とズレたことを言う。
                だけど、この言葉すごく優しいと思った。

                犯罪者との食事の場面でも「死んだ牛はうまいか」と言ってみたり、食事には興味がないものの、相手に合わせて「やばいくらいにうますぎる」と、人参をほめてみたり…。
                とにかく会話が洗練されすぎてて、すごいとしか言いようがない。
                「幻滅」という言葉の説明にしても…。

                そして物語の随所に張られる伏線が、すごく生きてて、やっぱりすごい。
                人を救わない死神が、最後の話の老女の頼みごとをきいてあげるのも、その頼みごとの意味も、物語のラストも、優しくて清々しくて、そして驚いた。
                なるほど…。
                もう唸るしかない。

                死神のイメージと言えば「悪魔の花嫁」のマンガにも出てくる、マントを羽織って、大きな鎌を振り上げる、骸骨みたいなのだけど、こういう普通の死神も、いいなと思った。

                私は何でも信じていたい性質なので、死神も、いればいいなと思ってしまう。
                生まれ変わったら、死神になりたいと思った。
                でも、何千年も生き続けるのは、やっぱり嫌かな。
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                  『魔王』伊坂幸太郎

                  魔王
                  魔王
                  伊坂 幸太郎 2005年 講談社
                  ★★★★
                  でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば世界は変わる

                  「自分に政治を任せてくれれば、五年で景気を回復させ、五年で老後の生活を保障する」
                  そうきっぱりとテレビで言いきった若き指導者。
                  たかが二十人ほどの議席を抱えるだけの小さな党の党首。
                  彼の言葉には、これまで選挙に関心などなかった若者達をもその気にさせる力があった。

                  そして、その党首の統率しようとする社会に、いち早く、危険を感じ、怖れを抱く男がいた。
                  ある日、彼は自分の持つ特殊な能力に突然目覚める。
                  彼は、さまざまなことについて、考えて、考えて、考えぬく。
                  自分だけが「魔王」の存在に気づいているのに、周囲の人間はだれひとり気づかない…。

                  ある日、街頭演説で、彼の住む町に、その党首がやって来た。
                  人ごみをかきわけ、党首に近づいていこうとする男。
                  そして、党首を守ろうとする巨大な力…。


                  アメリカの言いなりになる、現代のこの国。
                  この国に誇りを持たない、若者達。
                  誇りを持てない理由…。
                  すごく考えさせられる物語だった。

                  テーマが大きくて重いのに、さらっと読ませる。
                  一つ一つの会話が、とてもきれいだと思う。
                  文章が、とてもきれいで読みやすい。
                  主人公の心も、きれいだ…。
                  主人公がはっきりと形をもって目の前に現れる気がした。

                  主人公が考えるときに口にする「考えろ、考えろ、考えろ」の台詞は、頭の中にいつまでもこだまする。

                  普段、結構考えるのが面倒くさくて、つい人任せにしたり、流れに身を任せたりしてしまいがちだけど、この台詞を口にすれば、何かが変わるような気がする…。

                  関係ないけど、帯にあった「世の中の流れに立ち向かおうとした、兄弟の物語」というのを見て、昔好きだった「NIGHT HEAD」の兄弟を思い出した…(名前、忘れてしまったけど)。
                  0

                    『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

                    陽気なギャングが地球を回す
                    陽気なギャングが地球を回す
                    伊坂 幸太郎 2003年 祥伝社
                    ★★★★★
                    「銀行強盗は四人いる。」
                    二人よりも、三人よりも、四人。
                    五人だと車に乗るのに窮屈だ。

                    と、いうわけで集まったのは、人間嘘発見器の成瀬、演説名人の響野、天才スリ青年の久遠、正確な体内時計を持つ雪子、の四人。

                    お金に困っているわけではない。
                    ロマンを求めて彼らは銀行から金を頂く。

                    銀行強盗が成功する確率は極めて低い。
                    にもかかわらず彼らは華麗に銀行強盗をやってのける。
                    誰も傷つけず、誰にも迷惑をかけず(?)。

                    なのに間の抜けたことに、首尾よく銀行を襲った帰り道、大金を積んだ車を何者かによって強奪されてしまう。

                    『世の中に、強盗は自分たちだけだと思っていたら大間違い』という教訓を得て、彼らは犯人を捜し始める。

                    そして犯人のうちの一人を捜し当てたとき、唯一の手がかりとなる男は既に殺されていた…。

                    彼らが手にしていたはずの、四千万円はどこへ行ってしまったのか…。

                    こういうの、エンターテイメント小説っていうのかな?
                    演説の天才、響野の銀行強盗先での演説は、すごく勉強になる。
                    成瀬の自閉症の息子に対する久遠君の理解の仕方が、すごくためになる。
                    全てのことに意味があって、なかなか深くて、さらさらとは読めない。

                    私が読んだときには、もう映画化が決まっていて、配役もわかってたので、それぞれにあてはめながらしか読めなかった…のが、少し残念。
                    イメージを膨らませながら読む楽しさが半減してしまった。

                    ぴったりと言えば、ぴったりなんだけど…。
                    0

                      『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

                      ラッシュライフ
                      ラッシュライフ
                      伊坂 幸太郎 2005年 新潮文庫
                      ★★★★★

                      ラッシュライフ=豊潤な人生

                      「馬鹿な失業者はもちろんのこと、自分ではうくまやっていると勘違いしている泥棒や宗教家、とにかく、今、この瞬間に生きている誰よりも私は豊かに生きている」そう豪語する拝金主義の画商の男。

                      もう一人のリストラ対象者を思いやり、自らリストラの道を選び、妻にも子供にも見放された失業中の男。

                      盗品をメモに残して去る心優しい一匹狼のプロの泥棒。

                      迷宮入りしそうな殺人事件の謎を解くことで一躍有名になった教祖。

                      その教祖を崇拝してやまない画家志望の男。

                      そして教祖の「解体」をもちかける男。

                      ある朝突然に、殺そうとしていた夫から電話で離婚を告げられるカウンセラーの女。

                      泥棒に入った部屋で本物の泥棒に遭遇する男。

                      銃をつきつける老夫婦の強盗。

                      駅前をうろつく灰色に色あせた野良犬。

                      それぞれの人生がどのように繋がっていくのか…。


                      本屋さんをうろうろしていて「おすすめ」と書いてあったので、何気に手にしてみた本。
                      今流行の作家さんとは全然知らなかったです…。
                      恥ずかしい…。
                      そして読んでみて、昔、綾辻行人さんの本を初めて読んだときの感動を思い出した。

                      バラバラなパズルのピースが全てあわさったとき、にんまりとしてしまう。
                      ラストがとても好き。
                      読み終わってすぐに『オーデュポンの祈り』買いに走りました…。
                      「かかし」が気になって。
                      0

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