『わたしはここにいる、と呟く。』新津きよみ

わたしはここにいる、と呟く。
わたしはここにいる、と呟く。
新津 きよみ 2007/11/30発行 徳間書店 P.245 ¥1,785
★★★★
女は、この十年を顧みた。十年前、女はこれからの自分の人生を思い描いた。十年後、わたしはきっと仕事を辞めている。結婚して子供を産み、平凡に暮らしている。そんな人生設計を立てた。だが、十年後のいま、女の人生は変わらない。仕事も辞めなければ、結婚もせず、子供もいない。結婚するチャンスは何度かあったが、縁がなかったのだろう。正社員だったのが、その後のリストラで契約社員にされた。
女の三十五歳。将来に不安はある。が、どうしようもない。いまの人生を続けるしかない。       〜『あの日あのとき』より〜

五歳の頃、家を出て行ったまま音信不通となっていた母親の居場所を、父親の葬儀後に知らされた「萌子」。理想の住まい、理想の仕事を見つけ、37歳まで一人で生きてきた「萌子」には、幼い頃に捨てられたという記憶を拭いきれないまま、自分からはどうしても母親に会いに行くことができず…。そして離婚後、新しい家庭を持った母親は、今ではもう認知症が進み、娘の名前さえあやふやで…『わたしを探して』

同窓会に出かけて以来、様子のおかしくなった夫を疑うようになった妻の「真紀子」。そんな折、今度は自分が結婚指輪をなくしてしまったことに気づき、どれだけ探しても見つからない指輪に、夫との縁の薄さを重ね合わせてしまい…『時のひずみ』

中学の卒業文集に将来の夢として「夢中になれるものを見つける」と書き、平凡な主婦となった「わたし」と、「いまはまだわからないけど、絶対に探す」と書き、その通り「なりたいもの」を探し続け、輝き続けていたかのように見えた同級生の「奈美」。そして20年後、ニートを続ける「奈美」と偶然再会したことから、「わたし」の家庭に危機が訪れ…『あなたの居場所』

かつての恩師と、老人ホームで再会した「ケアハウス」の相談員「恵子」。小学生の頃に理不尽ないじめに遭ったせいで、その後もずっと不幸の連続だったと考える「恵子」は、いじめを黙認していた恩師に、過去の過ちを認めさせようとして…『忘れはしない』

結婚前の不倫旅行の際、自分たちには撮ることができなかった旅の思い出としての「写真」が欲しくて、他人のフィルムを思わず持ち帰ってしまった「朋子」。それから16年の歳月が流れ、中学生の娘の母親となった「朋子」は、その人たちにとっても大切な旅の思い出であろう写真を、元の持ち主に返すことを思い立ち…『思い出を盗んだ女』

電車内でのつまらない諍いに巻き込まれ、その正義感ゆえに若くして命を落としてしまった兄のため、少しでも事件の真相に近づこうと、10年後も一人でチラシを配り続け、関係者が名乗りでてくれることを待ち続ける妹の「美乃里」。そして事件のきっかけとなった当時のOL、今は主婦となった「紀子」は、幼い一人息子の正義感の強さゆえに、周囲に気を遣い続け、心配な日々を送り…『あの日あのとき』

間もなく時効を迎えようとしている殺人事件の容疑者、かつての同僚であった「秀美」が逃げ続けてくれることを心から願う「涼子」。「秀美」のあまりのクジ運の良さから、側にいるだけでそのおこぼれにたびたびあずかっていた「涼子」には、警察には決して言えない秘密があり…『その日まで』の、7編から成る短編集。

「何度も、何度も、この胸にこみ上げてくる本当の“わたし”をあなたに伝えたかった。―――もっと探して。一生懸命に探して。
自分の奥底で眠っていた感情がうつくしく、しなやかに、呼び覚まされる珠玉の物語。」だ、そうで。


てっきりよく読んでる作者さんだと思ったら、実は初読みだったんだと驚いてしまった…(アンソロジーなんかで読んだ記憶があったのか、名前だけはよくよく知ってたからかな)。

長篇だと思って読み始めたら、いきなりぶつっと終わった感があって、この続きは…?と思うほど、あっけないというか、不完全燃焼で、でも読み返してみたらなるほど、こういう話だったのかと…さらっと読んでると分かりづらいのかも。

そして、先日ここで書いた『イジ女』同様、中盤から、やたらと怖ろしくなってしまった。

前半のお話も、同年代の女性として、心にぐさっとくるような台詞がたくさん出てきて、結構痛かったけど、『あなたの居場所』、『忘れはしない』は、別の意味でものすごく「いたい」お話。

そんな昔のこと…と思えてしまうけど、された側にとっては、そうとは思えないものなんだろうなぁと、結構考えさせられてしまった。
でも、やっぱりコワすぎる…。

『思い出を盗んだ女』と『その日まで』は、ミステリっぽくて、面白くて、でもやっぱりぞっとする話。

『あの日あのとき』は、こういう話、実際にもよく起こってる事件だし、勇気があれば…と思うけど、現実にはやっぱり恐くて、正義感なんて吹っ飛んでしまうというか。なので、お兄さんみたいな人…と、恋人にそれを求めても相手は辛いだろうなというのも分かるし、そこはどこかで折り合いをつけないといけないなと、自分自身も、相手にそういうの求めてることに気がついたかも。

そして、このお話の最後のほうは、ちょっと感動(こうあってほしいという理想だからなんだろうけど)。

タイトルがなんだか意味深で、でも、ものすごくわかるなぁと。
こうしてブログを書いてるのも、本当は誰かに見つけ出してもらいたいからなのかもなと、しみじみ。

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