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    『約束』石田衣良

    約束 (角川文庫 い 60-1)
    約束 (角川文庫 い 60-1)
    石田 衣良 2007/6/25文庫化 角川文庫 ¥500 P.240
    ★★★★
    自分の人生だってしっかり生きられないのに、遥かに豊かなはずのヨウジの分までどうやって生きていけばいいのだろう。人はみな平等だというけれど、ほんとうだろうか。それではあの通り魔とヨウジも平等だったのだろうか。カンタには自分とヨウジが同じとは、どうしても思えなかった。倒れていただけの自分が生き残り、自分を守ってヨウジは死んだ。その結果まで平等で、命に同じ価値があるといえるだろうか。それなら、なおさら自分が死んでヨウジが生きればよかった。……        〜『約束』より〜

    スポーツも勉強も何でも出来るクラスの人気者、幼馴染で親友の「ヨウジ」に憧れ、「ヨウジ」になりたいと本気で願っていた「カンタ」。
    ある日いつものように二人で下校する途中、ナイフを持った通り魔に刺されてしまった「ヨウジ」。
    「僕が変わりに死ねば良かった」と考え、自傷行為を繰り返す「カンタ」が、最後の場所に選んだのは、通り魔事件のあった場所。そこで「カンタ」が出会ったのは…『約束』

    事故で片足を失い、我が儘放題になった息子のために全財産を使い果たし、この先生きていても何も良いことがないと考えるサラリーマンの父親。
    今度は街で見かけたポスターに惹かれ、ダイビングを習いたいと言い出した息子の為に奔走し…『青いエグジット』

    不倫旅行先の事故で夫を失い、女手一つで幼い二人の子供たちを育てる母親。
    突然息子の耳が聞こえなくなり病院に連れて行くと、心療内科を紹介され「心の問題」と診断され…『天国のベル』

    小学生と勝負をしても負けてしまう、モトクロスを始めたばかりの高校生ライダー。
    いつものように河川敷で練習を続けていると、散歩途中の女性から「へたっぴ」と言われてしまい…『冬のライダー』。

    寒い冬の公園のベンチで日がな一日を過ごす、当たり前のように学校生活を送ることに疑問を感じ、不登校になってしまった少年。
    ひょんなことから、毎日側を通る廃品回収のおじさんの仕事を手伝うことになり…『夕日へ続く道』

    地元の人間以外は知られていないような人気のない岩場で、孤独な一本桜「ソメイヨシノ」を撮り続けるカメラマンに声を掛けたのは、夫を病で亡くしてから、前に進めずにいるという女…『ひとり桜』

    人並み以上の幸せな暮らしを実感していた主婦を襲った突然の悲劇。
    サッカーが大好きで、健康そのものだった小学四年生の一人息子が出かけ先で倒れてしまい、救急車で運ばれた病院での検査の結果、脳に腫瘍があると医師から告げられ…『ハートストーン』

    「かけがえのないものを失くしても、いつか人生に帰るときがくる。
    苦しみから立ちあがり、もういちど人生を歩きだす人々の姿を鮮やかに切り取った短編集。たくさん泣いたあとは、あなたの心にも、明日を生きるちいさな勇気が戻っているはず。」ということで。


    「I・W・G・P」シリーズ以外の石田さんのを久々に読んだけど(アンソロジー以外で)、しょっぱなの『約束』から、すっかりやられてしまった…。

    朝の通勤電車で読み始めて、小さな「カンタ」の苦悩ぶりに、涙が溢れて困ってしまったし。
    そしてラストの『ハートストーン』の祖父の「祈り」に、またしても帰りの車中で涙、涙…。

    あまりの人の優しさというのに、かなり弱い私には、この短編集はなかなかツボに嵌ってしまったかも。

    主人公と同い年の私には『ひとり桜』の、その歳まで一人で生きてきた男に訪れた運命というか、そういうのもすごく嬉しくなってしまったし、ラストがとても好き。

    この本を読んで流したのは多分温かい涙で、「あとがき」を読んで、石田さんがこの本を書かれた理由に、また心が温かくなったというか、「物語」に出来る仕事というのは偉大だなぁと改めて感心してしまった。

    人の心を自由自在に動かせることが出来るというか、何というか(ただ単に私が単純すぎるのかもしれないけど)…。

    まあ、だから本が好きで、こうして本ばっかり読んでるのかもしれないけど。
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      『Gボーイズ冬戦争−池袋ウエストゲートパーク7』石田衣良

      Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7
      Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7
      石田 衣良 2007/4/25 文藝春秋 P.245 ¥1,600
      ★★★★★
      忘れてしまった過去のある日、あんたが善人のつもりでしたちょっとしたおせっかいが、あんたの命を縮めることになるかもしれない。どこかで猛毒をもつ人間に出会ってしまったのだ。この世界にはふれてはならない人間がいて、そうしたやつらはなんの理由もなく、あんたを恨み、憎み、滅ぼそうとする。問題なのはいつだってそうしたやつが、その他大勢とまったく見分けがつかないってこと。〜『Gボーイズ冬戦争』より〜

      池袋西口公園にほど近い実家の果物屋で、お気に入りのクラシック音楽をかけながら、母親と交替で店番をする一方、東京の北側半分では一番のトラブルシューターと町で噂の真島誠、通称「マコト」。

      その年の異常だった冬の寒さがようやく和らいできた春先、いつものように店先に商品を並べ、開店準備をしていたマコトがふと、店の奥で付けっ放しになったままのテレビの画面を見て気に留めたのは、振り込め詐欺の被害に遭った隣町に住む一人暮らしの老人が自殺したというニュース。

      それから間もなく、「マコト」の優秀なトラブルシューターとしての噂を聞きつけ、携帯に依頼の電話をかけてきたのは、振り込め詐欺のグループの一人だという「ヨウジ」。
      生身の人間と話すのが苦手なため、振り込め詐欺を「天職」だと考えていた「ヨウジ」は、自殺した老人のニュースを知り、今の仕事を辞めたくなったのだというのだが…『要町テレフォンマン』

      夏の朝、店の前を掃除する「マコト」に声を掛けてきたのは、女には縁のなさそうな冴えない男。
      そんな男からの「彼女の本当の気持ちが知りたい」との意外な依頼に戸惑う、恋愛相談にはとんと自信のない「マコト」。
      街で声を掛けられ、およそ価値の低そうな絵をローンを組んで3枚も買わされた男は、それでもまだ彼女のために、新たな絵を購入しようと考えているらしいのだが…『詐欺師のヴィーナス』

      平日の昼間から池袋の街を所在なさげにふらつく一人の少年に声を掛けた「マコト」は、少年がひと月前に自宅に火をつけた放火犯であることを知り、両親からの頼みもあって店の手伝いをさせることに。
      一方、このところ池袋の街で起こっていた連続放火事件の犯人捜しの依頼を池袋のキング「タカシ」からも受け…『バーン・ダウン・ザ・ハウス』

      池袋の街で、Gボーイズたちが次々と襲撃されるという「幽霊騒動」が起きるなか、「マコト」のもう一つの仕事でもある雑誌の「コラム」に目をつけた男から、映画出演を依頼された「マコト」。
      「幽霊騒動」は、キング「タカシ」の率いるGボーイズたちの思わぬ内部抗争にまで発展し、窮地に陥った「タカシ」のために「マコト」は危険も顧みず「幽霊」の正体に近づくことに…『Gボーイズ冬戦争』

      「池袋、宣戦布告!
      今度はキングを、おれが守る。
      悪質な振り込め詐欺グループ、謎の連続放火事件、池袋の内部抗争……
      刻々と変化するストリートで、生き残りをかけた若者たちの「いま」を描く新世代青春ミステリー
      いつでもとんでもないトラブルが潜むI/W/G/Pシリーズ第七弾」だ、そうで。


      毎度のことながら、実際に起きた事件や犯罪をモチーフにしながら、あくまでも解決は丸く優しく…。

      「格差社会」や「愛国教育」といった、最近よく耳にする言葉が随所に散りばめられていて、それらに対する「マコト」(石田さん自身の?)の考え方にはすごく共感してしまう。
      「つかい捨てにされるフリーターや契約社員たち…」というのも、レッテルを貼られて分類されて…というのも、まさに現代社会が反映されていて、「マコト」の憂いも良く分かるし。

      そして「マコト」とGボーイズの王様「タカシ」との友情物語『Gボーイズ冬戦争』のなかでの、「タカシ」の台詞「おれにはいっしょに火のなかに飛びこんでくれるダチがいるが、あいつはいつもひとりぼっちだ。いいか、マコト、そいつはおまえが考えているより、ずっと大きなことだぞ」というのに、いつもクールな「タカシ」が、「マコト」をどれだけ大切に思っているのか(まあ、常に「マコト」を警護か何だかで見張らせている、というのもすごいけど…)、これまでになく良く分かったような気がして嬉しくなってしまった(これからも、「タカシ」の心からの笑顔は、是非見てみたいなと)。

      老若男女誰にでも優しい「マコト」の、友達のためなら先のことも考えずに突っ走る…という意外な一面も垣間見れたようで(年を追うごとにまるくなり過ぎてた気もしないでもなかったので)、これからもシリーズが続く限りあんまり分別臭くなりすぎずに、「マコト」らしくいてくれればいいなと。
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        『灰色のピーターパン−池袋ウエストゲートパーク〈6〉』石田衣良

        灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉
        灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉
        石田 衣良 2006/6/30 文藝春秋 P.255 ¥1,600
        ★★★★★
        春がめぐってくるように、おれたちの心には自分自身の傷を修復しようという自然の治癒力があるはずなのだ。そうでなければ、心なんて不便なものを、誰が一生もって歩くというのだろうか。                〜『野獣とリユニオン』より〜

        池袋の西一番街の小さな果物屋で、クラシック音楽を聴きながら店番をする傍ら、池袋の街で起こる、警察や探偵には頼めない類のトラブルを次々と解決し一躍有名人となったマコト。

        その結果、母親と交替でマコトが店番をする果物屋の店先には、「ギャングにもつてがあって、悪いやつをこらしめてくれる。すごく強くて、頭が切れ、おまけに低料金の(もしくはタダ?)池袋一のトラブルシューター」というマコトの噂を聞きつけ、困り事を抱えた依頼主が後を絶たず…。

        池袋の情報屋「ゼロワン」に呼び出されたマコトの依頼主は、私立の進学校に通う小学生。
        小学生にして、盗撮ビデオで荒稼ぎする小学生、ミノルからの頼みは、彼のビジネスの上前を撥ねようと企む高校生三人組との交渉。
        ミノルは口止め料として、一度だけなら一人につき15万払ってもいいと言うのだが…『灰色のピーターパン』

        たった三千円のために、兄から夢を奪った未成年の少年への復讐を頼みに来た妹。
        取り敢えず、少年の見張りをすることになったマコトは、たった数ヶ月で少年院から出てきた、いじめられっ子の少年に、ある審判を持ちかけることに…『野獣とリユニオン』

        池袋の王様「タカシ」をも使ってしまえる、今は無認可の保育所を営む先代キングからの依頼は、その保育所で働く見習い保育士の「幼児性愛者」疑惑を晴らして欲しいというもの…『駅前無認可ガーデン』

        池袋の街の浄化政策として東京都の副知事によって決行された「池袋フェニックス計画」により、徹底した外国人の取り締まりや風俗店の摘発が行われ、結果としてマコトの店の客足も途絶えてしまった、その年の夏。

        今回依頼のためにマコトの前に現れたのは、音大に通う清純派の女子大生。
        ホストに入れあげた挙げ句、家を出たまま風俗で働き出した姉を案ずる彼女のために、マコトはあらゆる「後ろ盾」を駆使することに…『池袋フェニックス計画』

        「灰色くらいが、ちょうどいい…
        ちょっとは汚れて生きてみよう!
        トラブル続きの“ネバーランド”を描く機W/G/Pシリーズ第六弾」です。


        マンネリ化してるのは仕方ないのかな。
        登場人物も代わり映えしないし…でも「水戸黄門」もそうだし、これはこれで良しとして。
        今回は、これまでの事件よりちょっと大人しめ?(著しく怖いのがなかったというか、慣れてしまったのかもしれないけど)

        二つ目の『野獣とリユニオン』は、マコトの言うように「甘い」話だし、現実はこう上手くはいかないだろうけど、最後は涙がぽろぽろと溢れてしまうような優しい話。

        「憎しみの場所にいつまでも立っていたくない」と言う、被害者である兄の心の広さにただ、ただ敬服(有り得ないとは思うけど、あったらいいなと思ってしまう)。

        最後の『池袋フェニックス計画』は、まあマコトの人脈がものを言うというか…、でもやっぱり電話一本で…という気がしないでもなくて、所詮お話の中だけでこんなに上手くいって、でも現実には、こんなスーパーヒーローはいないんだろうなぁと…。

        これで女にもてないわけないんだけど、何で「タカシ」ばっかモテモテなのかな?

        「マコト」がもてないことが、このシリーズが続く秘訣なのかな(だとしたら、まるで寅さんのようだなと…)。
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          『反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク5』石田衣良

          反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク 5
          反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク 5
          石田 衣良 2005年 文藝春秋 P.254
          ★★★★★
          「なんでも数にするなよ」
          そうなのだ。すべてを統計に還元するのは、おれたち現代人の悪い癖だ。
          「今夜は確かにふたりだけかもしれない。だけど、あいつらの親や友人の悲しみをなくしたのはあんたたちだし、あのふたりがいつかつくるかもしれない家族のことを考えたら、新しい命を何人も助けてるかもしれない。命ってひとつじゃないだろ」

          夜になると見物客の人だかりができるほど、ヒートアップした野外将棋大会が行われ、ステージに上がる階段では、誰かがギターを抱え、澄んだ声で歌を歌っているという、行き場のない若者たちの吹き溜まり、池袋西口公園、通称池袋ウエストゲートパーク。

          そんな池袋西口公園から歩いて五分の土産物屋のような果物屋で、店番をしながら、ストリート系のファッション誌のコラムを執筆し、頼まれれば、ボランティアで、この街のなんでも屋を引き受ける「マコト」こと、真島誠。

          「街の裏と表に通じていて、どんな人間も探し出せるし、難事件も解決できる、すこしおしゃべりだけど、頭脳明晰で、けっこういい男(?)」と評判の、優秀なトラブルシューター「マコト」を訪ねて来る者は後を絶たず…。

          スカウトのメッカとされる、サンシャイン60階通りの起点となる交差点で、マコトの目に留まった凄腕のスカウトマン「タイチ」。
          フリーのスカウトマン「タイチ」の為に、巷で悪評の高い、たちの悪い大学生達が始めた風俗スカウトサークルの罠に嵌り、風俗で働かされることになった、ウエイトレスの女の子を助け出してほしいと、男友達のいない「タイチ」から、現金を積まれる「マコト」…『スカウトマンズ・ブルース』

          「マコト」の母親も大ファンだったという、往年のロックスターが「マコト」の店に現れた。
          「マコト」の役目は、池袋のGボーイズたちを束ねる池袋のキング「タカシ」とのつなぎ役。
          この街の空き地に「ロック」だけで埋め尽くされたビルを建て、日本の音楽シーンを変えて行きたいと夢を語る「スター」だが…『伝説の星』

          「マコト」がタダで何でも屋を引き受けることを聞きつけ、相談にやってきたのは、中国人の、チャイニーズ・ヘルスのキャッチガール。
          日本の大手玩具会社の大ヒット商品のせいで、姉を殺されたという「小桃」は、正義を求めるために、姉の死を全国の消費者に訴えたいと言うのだが…『死に至る玩具』

          毎週のように「集団自殺」の記事が新聞の片隅に掲載される暑い夏の日、「マコト」を訪ねてやってきたのは、それぞれ親に自殺された経験を持つ「反自殺クラブ」の3人のメンバー達。
          集団自殺を食い止めるため、ネットで自殺を煽り、仲間を集めている、謎の人物を探し出したいと言う3人の依頼を引き受け、「反自殺クラブ」のメンバー入りした「マコト」。
          集団自殺サイトに自ら潜入し、直前まで行動をともにするメンバーの一人の異変に気づかずに…『反自殺クラブ』

          「伝説のドラマ化話題作!IWGPシリーズ第五弾 
          ストリートの今を鮮やかに切り取る新世代青春ミステリー」だ、そうです。


          昨日、やっとドラマの「池袋ウエストゲートパーク」の続きが借りられたので、早速見たけど、本当にあまりの豪華キャスト(私にとっては、だけど)に眩暈がしそうになってしまった。
          もう、読むたびに、登場人物たちが、そのキャスティングでしか想像できなくなってしまったけど…。

          今回も取り扱われているテーマは相変わらず重いし、現代社会で起こり得る様々な問題を、如実に反映しているけど、やっぱり語り口の軽妙さのせいか、さらりと読めてしまう。

          『スカウトマンズ・ブルース』に出てくる大学生の風俗ビジネスは、あの団体がモデルなのか…。昔の写真を見て「もてなかった反動なのか…」と、素直に思ったけど…。

          『伝説の星』の、スターは、スターと言えば、「スターにしきの」しか思い浮かべられないのが自分でもちょっと悲しかったりした…。

          『死に至る玩具』の、中国の工場の話は、昔の、女工哀史『ああ野麦峠』を思い出してしまった。
          今の時代に生まれて良かったなぁと思う反面、おかしな時代だとも思えてしまう。

          『反自殺クラブ』は、一時期本当に毎日のようにどこかで起こっていた、練炭を使った集団自殺の話だけど、ここに出てくる自殺の動機の薄っぺらさが、逆にリアリティがあったかも。

          でも、だんだんと「マコト」が「虎の威を借る狐」化してそうな…(もちろん、「マコト」の人徳というのもあるんだろうけど)。
          電話一本で、カタをつけてしまうところが、何となく…、それも、現代社会というものなのかな。

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            『電子の星 池袋ウエストゲートパーク4』石田衣良

            電子の星 池袋ウエストゲートパークIV
            電子の星 池袋ウエストゲートパークIV
            石田 衣良 2005年 文春文庫 P.303
            ★★★★
            おれたちが生きているのがどんなに悪い時代でも、許す者と許される者では許すほうが圧倒的に強い。おれは腹の底からそうわかった。                                        〜『ワルツ・フォー・ベビー』より〜

            昼間はホームレスの将棋大会やラテン系外国人の集会が開かれているという、池袋西口公園、通称ウエストゲートパークから、歩いて五分の場所にある小さな果物屋兼住居で、店番をしながら、最近部数を急激に伸ばしているという、ストリートファッションの専門誌にコラムを執筆し、少しは名前も知られるようになってきた「マコト」こと、真島誠。

            「マコト」には、もう一つ、警察ややくざにも頼れない類の、池袋の街のトラブルを、無償で引き受け、解決するという大切な仕事があり、近ごろでは、ネットでも「マコト」のトラブルシューターぶりは評判になっているようで…。

            池袋のストリートギャングの王様「タカシ」に呼び出され「マコト」が出向いた先は、「タカシ」の元側近、双子のツインタワー1号2号がストリートギャングを卒業して開いた、ラーメン店「七生」。
            どの店にもずらりと行列が出来るという、ラーメン激戦区で、新参者の「七生」も、出足こそ好調だったものの、ネットで何者かに悪評をばらまかれ、嫌がらせをされ、このままでは客足も遠のきそうだという…。
            そこで営業妨害の犯人探しを依頼された「マコト」は、「七生」でバイトをしながら、噂の出所を探り出すことに…『東口ラーメンライン』

            池袋をうろつくのが好きだという「マコト」は、深夜の散歩の帰り道、芸術劇場裏のテラスに座り込む悲しげな背中の中年男に出会ってしまった。
            男の前には、白い花束と数本のろうそく。
            いまだに未解決の、五年前の殺人事件の手がかりを掴むため、「マコト」は早速アメ横へと出かけ、話を聞こうとするのだが、この街のギャングたちから締め出され…『ワルツ・フォー・ベビー』

            ある日、店先で傷んだフルーツをカットしていた「マコト」に、「捨てるなら……」と、声を掛けてきたのは、発音のおかしな日本語を話す少年。
            フルーツを受け取ると、恭しく両手を胸の前に合わせ、「マコト」に礼をし、嬉しそうに去っていった少年のために、次の日から残り物のフルーツを用意しておく「マコト」。
            数日後、お礼にと、少年の家に招かれた「マコト」は、少年の暮らしと、父親のひどく落ち着かない様子が気に掛かり…『黒いフードの夜』

            ネットで噂を聞きつけたという男から、「マコト」のもとに突然送りつけられてきたおかしなメール。
            山形に住むというその男は、連絡がつかなくなってしまった友人を探してほしいのだという。
            合流した二人が訪れた、消えた友人のアパートで、置き去りにされたパソコンを開くと、そこにはいなくなった友人からのメッセージ、そして部屋に残されていたのは、世にもおぞましい映像…『電子の星』

            「「《今》をシャープに描く、ストリートミステリー第4弾。切れ味、スピード、さらに快調。」だ、そうな。


            ここまで、1冊に収められている4つの作品中、3作は短めで、最後の4作目はちょっと長め、というパターンできてるけど、その4作目が、回を重ねるごとにエグくなってる気がする…。

            あと残り3冊(今出てるシリーズ分、外伝も含めて)、読めるかどうか不安になってきた(本当に少し心臓に悪いかも…今回のは、あまりに気持ち悪かったので、数行読み飛ばしてしまった)。

            アングラの秘密クラブでの人体○○ショーって…。
            実際にやってる人より、見て愉しんでる人がいることの方が怖かったりする。

            「マコト」の同級生で、今はヤクザの「サル」が連れてきた新人は、なかなかユニークで…。

            『東口ラーメンライン』は、軽く楽しく(?)読んでいたのに(ラーメン大好きなので…)、意外にも泣かされてしまった。

            どの作品も、相変わらず、孕んでるものが重いなぁ…という感じ(そこがきっと、このシリーズが続いてる秘訣でもあるんだろうけど)。

            このシリーズは、ストリートの王様「タカシ」の台詞、
            「おまえをその気にさせるには、ガキをとことん泣かせばいいんだな、マコト、相変わらず甘いな」と、
            「おまえはただしいと自分が信じることのためなら、どんなやばい手でも平気で打ってくるな。危ないやつだ。…」に、尽きるかな。
            優しさと、厳しさと。

            一話目を読んで、大好きな「新福菜館」(京都では割と有名なのです)のラーメンが無性に食べたくなったけど、四話目を読んで食欲が完全に失せてしまった。

            ダイエットしようとしてたから、ちょうど良かったと言えば良かったんだけど…。

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              『骨音 池袋ウエストゲートパーク3』石田衣良

              骨音 池袋ウエストゲートパーク3
              骨音 池袋ウエストゲートパーク3
              石田 衣良 2004年 文春文庫 P.359
              ★★★★★
              この世に存在するというのは、ただそれだけで荒れ狂う力だ。規制することも、限定することも、コントロールすることもできない。どこまでもあふれだし、増殖しビートを刻み続ける力。
               生きることは、誰にもとめられない速度だ。

              行き場のない若者達の吹き溜まり、池袋西口公園(通称「ウエストゲートパーク」)から歩いて五分の場所にある、西一番街の小さな果物屋で母親と交替で店番をする傍ら、雑誌のコラムを執筆し、依頼があれば、警察や探偵が解決できない類の事件を一手に引き受ける、池袋の街のトラブルシューター「マコト」こと真島誠。

              ちなみに欠点は、あまりにやさしすぎて涙もろいところ、と自分でも認める人情派。

              池袋のGボーイズ達を束ねる王様「タカシ」に言わせれば、「マコト」はGボーイズの頭脳であり、なぜか「マコト」が関わる事件は、のろのろだけどうまいエンディングに向かう、独特の勘と不思議な運があるという。
              そんな「マコト」の名探偵ぶりは、街のあちこちに知れ渡っているようで…。

              夏の暑さも一段落した公園で、コラムの執筆に疲れた頭を休めていた「マコト」に声を掛けてきたのは、勝新太郎に似た風貌のホームレスの男。
              男の依頼は、この夏池袋周辺で立て続けに起きた、未解決のホームレスの襲撃事件の犯人捜し。
              クスリをかがされ、意識を失ったところで、骨を折られるという、これまでの襲撃事件とは明らかに様子の異なる、ホームレスの襲撃事件。
              そして次に起こった五件目の被害者も、それまでの被害者とは異なる部位の骨を二ヶ所折られており…『骨音』

              人通りの少なくなった、夜のショッピングセンターの噴水前で、いつも地べたに座り込んで本を読んでいる、棒切れのようにガリガリに痩せた小学生の女の子に、思わず声を掛けて、最初は無視された「マコト」。
              お互いの存在を意識しながらも、関心のないふりを続け、本を読んでいた「マコト」の前で、突然女の子が倒れてしまい、行きがかり上、家に連れて帰って母親からの連絡を待つことに。
              そして深夜「マコト」の家に現れた、ゴージャスな母親の顔は、たった今殴られたばかりのように赤く腫れており、何か特別な事情がありそうで…『西一番街テイクアウト』

              西口公園で夕焼けを見上げ、センチメンタルな気分に浸る「マコト」の携帯を鳴らしたのは、オコノギと名乗る、あるNPO団体の若き代表。
              オコノギが代表を務めるNPO団体が発行している、池袋の地域通貨「ぽんど」の偽札作りの犯人探しを依頼され、オコノギの考えに賛同した「マコト」は、早速偽札の流通ルートを探るべく、池袋のあらゆるショップで聞き込みを開始するのだが…『キミドリの神様』

              池袋のストリートの王様(キング)、「タカシ」から、あるイベントに誘われ、仕方なくドラッグマニアの「エディ」を連れ、深夜の幕張まで遠出した「マコト」。
              ドラッグとは切っても切れない関係、徹夜で騒ぐ西洋盆踊り(のようなものだという)「レイヴ」の主催者から受けた依頼は、「レイヴ」に潜入し強力なドラッグ、「スネークバイト」を客に売りつけて回る「ヤクの売人」たちの排除。

              そしてこの夜行われた「レイヴ」でも、「スネークバイト」を買った客達が次々と病院に運ばれ、中には命を落とす若者まで出る騒ぎとなり…。
              やがて「スネークバイト」は池袋の街中でも取引されるようになり、「エディ」にも魔の手が伸び…『西口ミッドサマー狂乱』

              「現代のストリートの青春を生きいきと描き、日本のミステリーシーンに新しい世界を切り開いた、ご存知IWGP第3弾!ますます快調のTV化話題作。」らしいです。


              相変わらず、子供からお年寄りまで…誰にでも優しくて親切な「マコト」。
              今回は、「マコト」の母親が大活躍し、大好きな「サル」の出番もあって、なかなか楽しめたかな。

              でも、ちょっと食傷気味かも。
              あまりに知らなさ過ぎる世界のようで、こんなこと本当に起こってるの?と、思ってしまった。

              「レイヴ」なんて、この話で初めて聞いた言葉なんだけど…(まあ、実際あったとしても参加できる歳でもないか)。
              地域通貨の話も難しすぎて、何だか良く分からなかった。

              表題作の『骨音』は、こっちまで痛くなるぐらい、残酷な描写があって、ちと辛かった。
              でも、他人の痛みを感じられない人間像、は想像できてしまう。
              つくづく恐ろしくて、嫌な世の中だと思う。

              ドラマの方は、レンタルで一巻だけ見れたけど、それから先はずーっと貸し出し中で、残念ながら、続きがなかなか見れない…。
              (でも、一度見てしまったら、「マコト」も「タカシ」も、もうあの人達以外イメージできなくなってしまった。)
              0

                『少年計数機―池袋ウエストゲートパーク供拈佚聴疥

                少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉
                少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉
                石田 衣良 2002年 文春文庫 P.345
                ★★★★
                おれはフリスビーを見ながら考えていた。普通ってなんだろう?普通って、ここでいっしょに座ってる三人や、身障者パーティに通いつめる男たちや、そこで働く女たちのことじゃないんだろうか。ついでにいえば、これを読んでるあんたやおれのことじゃないんだろうか。おれたちはみんな、普通のありふれた世界に生きている。
                 それが実は叫びたくなるくらい異常なことだと知りながらね。

                地元の工業高校を卒業後、池袋西一番街で母親が営む小さな果物屋を手伝うかたわら、ストリートファッション誌で連載コラムを執筆するようになった「マコト」こと真島誠。

                池袋で起こったある事件を解決したことがきっかけとなり、池袋のトラブルシューターとして、「マコト」の元には、警察や、やくざにも頼めないような「やっかい事」が、次々と持ち込まれるように…。

                高校時代からの友人、池袋のGボーイズ達を束ねる「王様」こと「タカシ」の機動力を味方につけた「マコト」の捜査能力は、ときには警察も舌を巻くほどで、顔馴染みの警察官吉岡からも、警察官になれと勧められるほどなのだが…。

                「マコト」の噂を聞きつけ、探していたと言う「ショー」と名乗る元同級生から、自分がスカウトとして働く店の女の子につきまとう、少々熱心なファンを何とかしてほしいと頼まれた「マコト」。
                早速その夜、インターネットの「覗き部屋」のサイトに接続し、ネットの中の彼女の話を聞くことに…『妖精の庭』

                雨の降る寒い冬の日の西口公園で、その姿を見かねた「マコト」が傘を差し出したことから、言葉を交すようになった少年「ヒロキ」。
                この冬から、公園に現れるようになった「ヒロキ」は、自分が誰なのか確かめるために、一日中心臓の鼓動を数え、呼吸数をカウントし、この世界のありとあらゆるものを数え続ける日々を送っているという。
                そんな「ヒロキ」が、ある時から、公園からぷっつりと姿を消してしまう…『少年計数機』

                このところ池袋界隈で頻出している悪質な「ひったくり事件」の犯人探しを依頼してきたのは、2人組の下ネタ好きのお年寄り。
                被害にあった、同じ老人ホームのマドンナのために、是非とも犯人を探し出して欲しいという2人は、見つけ出したその後のことは、自分達に任せてくれと言うのだが…『銀十字』

                原稿用紙8枚のコラムでは物足りなくなってきた「マコト」が、首を突っ込んだのは、3年前に起きた悲惨な事件「千早女子高生監禁事件」。

                同時に、近頃立て続けに起きた裏の事件、非合法に開催される「大人のパーティ」を襲撃する「パーティ潰し」の四人組の強盗団の調査も依頼された「マコト」は、ボディガード兼、見張り役の「肉屋」こと、「ミナガワ」と行動を共にする羽目に。

                「監禁事件」の被害者の少女の弟とコンタクトを取り、「大人のパーティ」の襲撃現場を訪れ…と、大忙しの「マコト」の周辺で、新たな監禁事件が起こり…『水のなかの目』
                の4編から成る連作中・短編集。

                「池袋の街を疾走する若く、鋭く、危険な青春。爽快なリズム感あふれる新世代ストリートミステリー、絶好調第2弾!」だ、そうな。


                平和主義で、人情味溢れる「マコト」のキャラが良くて、すっかり嵌ってしまい『水戸黄門』のような『暴れん坊将軍』のような『遠山の金さん』のような、ある意味安心して見ていられる物語かと思いきや…最後に「がつん」とやられてしまったような…そんな読後感。

                『少年計数機』の「ヒロキ」の「マコトがぼくを好きになるのをやめなきゃ、ぼくはおかしくなるよ」という台詞に、胸が締め付けられた。

                こんな風に考えなきゃいけない子供が、実際、この世にはたくさんいそうで…。

                『銀十字』は、シルバーとシルバーをかけてあるのかな?これは痛快。
                嘘でもいいから、こういう終わり方は好きだなと思えた。
                「マコト」の何気ない思いやりも、二人の年寄りの昔気質の性格も…。

                ここに出てくる事件はどれも、本当に起こり得る事件ばかりで、それだけに、本当に「マコト」みたいな人間が、どこにでもいてくれれば良いのに…と、本当にこんな人ばかりが警察官になってくれないかな、と思ってしまう。

                「おれには四十代からうえの女性の知りあいはいない」「おれには五十すぎの友人はいない」と言いつつも、下は小学生から、上は七十代?まで、誰からも愛される「マコト」は、やっぱり水戸の御老公様のような…。

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                  『池袋ウエストゲートパーク』石田衣良

                  池袋ウエストゲートパーク
                  池袋ウエストゲートパーク
                  石田 衣良 2001年 文春文庫 P.359
                  ★★★★
                  あんたが元気をなくして学校や会社が嫌でたまらなくなったら、池袋にきてみたらどうだ?最初はちょっと勇気がいるかもしれないけれど、ネクタイや制服のえり元をゆるめて道端に座ってみる。そうしたら、今までに見たことのない世界がきっと見えてくると思うよ。
                  ストリートはすごくおもしろい舞台で厳しい学校だ。おれたちはそこでぶつかり、傷つき、学び、ちょっとだけ成長する(たぶんね)。街の物語には終わりがない。

                  夜になるとGボーイズ達のたまり場となる、JR池袋駅西口のすぐ正面にある池袋西口公園、通称「ウエストゲートパーク」。

                  ここは「他にすることが何もない」というGボーイズ達の、恰好の時間つぶしの遊び場。

                  ナンパやケンカ、けれど、たいていの夜は何も起きず、何かが起きるのを待っているうちに夜が明けていく…そこが「ウエストゲートパーク」。

                  そんな西口公園まで歩いてほんの五分、の場所で家業の果物屋のアルバイトでこづかいを稼ぐ、プー太郎の「マコト」は、池袋のGボーイ達を束ねる頭の「タカシ」や、高校時代の同級生、「ドーベルマン殺しの山井」と仲が良いこともあり、周りからは一目置かれる存在。

                  そして「マコト」が、ナンパで知り合った「ヒカル」が巻き込まれた「池袋のストラングラー(首絞め魔)の事件を、Gボーイズ達を総動員して解決したのをきっかけに、「マコト」の元には、警察やヤクザには頼めない種類のトラブルが持ち込まれ、いつしか「トラブルシューター」と呼ばれるように…。

                  表題作『池袋ウエストゲートパーク』の他、
                  「マコト」の中学時代の同級生、今は暴力団の組事務所に出入りする「サル」の「お姫様探し」に付き合うことになった『エキサイタブルボーイ』

                  そしてこれまた謎の同級生、風俗嬢の「千秋」のイラン人の彼氏を、覚醒剤の売人達から匿う役目を仰せつかる『オアシスの恋人』

                  サンシャイン60階通りを境に、水面下で密かに勃発していた「赤」と「青」の抗争事件の取材をするジャーナリスト「加奈」に、この街のガイド役を頼まれてしまった「マコト」。
                  「マコト」が、恋にうつつを抜かしている間にも、血で血を洗う抗争は益々拡大し、やがては幼い兄妹にまで被害が及ぶこととなる『サンシャイン通り内戦』の、4編から成る連作集。

                  爛潺好謄蝓爾痢嶌」を読みたければ、池袋を読め。刺す少年、消える少女、潰しあうギャング団……命がけのストリートを軽やかに疾走する若者たちの現在を、クールに鮮烈に描く大人気シリーズ第一作。瓩澄△修Δ福


                  ドラマでやってたのは知ってたけど(それも、もうかれこれ6年前)、当時は全然興味がなくて、見てなかった。
                  こんなに面白そうなら、見れば良かったと、ものすごく後悔(たぶん、見てたら嵌っただろうなぁと…)。

                  「マコト」は、完璧すぎるかも。
                  皆から慕われて、女にもモテモテで、弱い者にも優しくて、何でも出来て(勉強はできなかったのかもしんないけど)…ある意味、スーパーマンだなぁと思った。

                  私的には、ヤクザの「サル」や、ひきこもりの「和範」にすごく惹かれるけど…。

                  児童虐待、売春、ドラッグなどなど、テーマは一貫して重いし、暗い終わり方したのもあったけど、「マコト」のあっさりとしたキャラクターと、若さ?で、何だか爽やかに仕上がってた。
                  読み出したら止まらない。

                  私の好きな「サル」や「和範」は、この先も活躍するみたいなので、とても楽しみ。

                  に、しても、このドラマ、本当に豪華キャストだなぁと、つくづく感心してしまう。
                  最近、阿部サダヲさんに嵌っている私なので、余計にそう思えてしまった。
                  DVDで一気見しないといけないな…。
                  0

                    『4TEEN』石田衣良

                    4TEEN
                    4TEEN
                    石田 衣良 2005年 新潮文庫
                    ★★★★
                    今から何年かして、自分がだめになりそうになったら、今日のことを思いだすようにしよう。あのときすごくいいやつらが四人いた。自分だって人生の最高のときには、あのメンバーにはいれるくらい絶好調だったって。今の弱さや不安を忘れないようにしよう。そうしたらきっと……

                    勉強が出来て、クールで礼儀正くて大人受けする、外人巨乳マニアのジュン。
                    病気のためにみんなより早く歳を取ってしまう、お金持ちの家の子、コギャル好きのナオト。
                    身長180cm、体重100圓竜雋舛如大食い、微乳好きのダイ。
                    そして、他の3人と違って、特に飛び抜けたところなんかない普通の中学生、清純派好みのテツロー。

                    東京湾に浮かぶ埋立地「もんじゃバブル」の町、でたらめに貧富の差が激しい月島に住む、中学2年生の仲良し4人組。

                    仲間の一人、入院中のナオトのへの、皆からの心のこもったちょっと意外な誕生日プレゼント「びっくりプレゼント」から始まり、
                    登校拒否の同級生の女の子のお話「月の草」
                    受けもしないのに面白くない企画ばかり立てる、何故かカンに触る同級生のお話「飛ぶ少年」
                    中学生と人妻との、ちょっと危険な不倫のお話「十四歳の情事」
                    病院から抜け出したガン患者のおじさんと、ある場所で出会うお話「大華火の夜に」
                    何故か女の子から人気のある、なよなよした同級生がぼくたちのグループと行動を共にしようとするお話「ぼくたちがセックスについて話すこと」
                    ダイが警察に連行されてしまった事件のお話「空色の自転車」
                    春休み、4人は自転車でちょっと大人の街への旅行を計画し、実行する「十五歳への旅」で終わる、8編から成る連作短篇集。


                    一話進むごとに、だんだんと4人の個性がはっきりしてきて、最後には、ものすごく4人が好きになった。
                    一番気に入ったのは、巨漢のダイ。ものすごくいい子だ。微乳好きというのも気に入った。私が若ければ、結婚して欲しいくらい(でも、食費がかかりすぎるから困るか…)。

                    拒食症、飛び降り自殺、人妻との不倫、死、ホモセクシャル、などなど、テーマは結構重いけど、石田さんならではのさらさら感というか、透明感というか、で、とても爽やかな読後感。
                    病気のナオトのことも、気遣いつつ、気を遣いすぎず、きちんと仲間として大切にしているのが良く分かる。
                    不登校になった女の子に対する、4人の態度がすごく嬉しかった。

                    みんな特別悪いことするわけでもなく、何気ない日常のどこにでもあるようなこと、14歳という年齢特有の、ばかばかしさや、面白さ、大人になるちょっと手前の、未知の世界への憧れとか、そういうのすごく伝わる気がした。

                    読んだ後、自分の14歳だった頃のこと、その頃の友達のことや、一緒に行った場所、やったこと、たくさん思い出して懐かしくなった。当時、女の子の友達と二人で変装して、成人向けの映画館の前で、入ろうかやめようか、うろうろしてたことなんか特に…。
                    大人になって、やってはいけないことがなくなるのは、何となくつまらないもんだと思った。

                    どことなく「スタンド・バイ・ミー」の映画を思い出させるような本だった。
                    もちろんダイは、リバー・フェニックス(巨漢じゃないけど、性格的に)。
                    大好きだったのに、若くして死んでしまったこと、思い出した…。
                    0

                      『LAST〔ラスト〕』石田衣良

                      LAST (ラスト)
                      LAST (ラスト)
                      石田 衣良 2005年 講談社文庫
                      ★★★★★
                      「おれを押すな。こっちはもうぎりぎり崖っぷち」
                      大学生のころFENできいたラップから、一冊の本が書かれることがある。今日耳にした音楽の一節や誰かの会話の切れ端、それに空や雲の色、すべてが役に立つのだから小説というのはおもしろいものです。
                      「あとがき」より

                      小さな製本工場を営む男。
                      取引先の一つが倒産し、残る取引先からの発注もほとんど途絶え、サラ金に多額の借金を抱えている。
                      払う金など、もう一銭もない。
                      そんな彼を迎えに来たのは、よそのサラ金会社の債権を買い取ったローン会社の「死神」と呼ばれる男。
                      借金の返済に残された選択肢は、三つ。
                      男に与えられた時間は、二十四時間…『LAST RIDE』

                      夫のリストラ後の再雇用で給与が激減してしまい、多額の住宅ローンの返済に四苦八苦する女。
                      生活のために働き始めたパートの給料は、一月二万五千円。
                      贅沢な暮らしをしているわけでもないのに、月々の赤字をサラ金からの借金で補填してしまったばっかりに、その額は増えていく。
                      夫には決して知られてはならない借金…。
                      ある日女は、意を決し、携帯電話に送られてくる「出会い系」サイトを覗き、そのうちの一人と会ってみることにするのだが、そこに現れたのは、意外な相手だった…『LAST JOB』

                      人生を半分投げ出したサラリーマンの男。
                      外回りの仕事が早くに終わってしまい、時間を持て余し、ふらりと立ち寄ったテレクラで話した相手は、二十歳の「メグミ」と名乗る女性。
                      十五歳でテレクラ遊びを初め、初体験の相手もテレクラで出会った男だったと語るメグミ。
                      彼女の口から語られるのは、彼女の恐怖体験。
                      全て話し終わったとき彼女は…『LAST CALL』

                      四十歳で職を失い、立ち退きを迫られ、住むところさえも失った男。
                      もともと誰ともうまくいかない角のある性格。
                      職も転々とし、女性とも長くは続かない。
                      「気に入らないものリスト」ばかりを増やして生きてきた男…。
                      そんな彼が、初めて見つけた自分の居場所…『LAST HOME』

                      経営していたリフォーム会社を潰してしまい、仕事にあぶれ、借金の返済に追われる男。
                      そんな男の元にかかってきた、ある、まともでない仕事の依頼の電話。
                      報酬は支払われるという。
                      呼び出された先に待っていたのは、中国人の男達。
                      これまで、万引きさえ経験のない小市民の男に依頼された仕事とは…『LAST DRAW』

                      自らの欲望を満たすためにヴェトナムを訪れる、大学病院の心臓外科医。
                      彼に請われて、カメラマンとして同行する男。
                      男は、さっさと仕事を済ませ、金を受け取り、一刻も早く目の前の外科医とおさらばしたいと考えていた。
                      そんな彼に与えられた仕事、それはあまりにも残酷なアジアの裏社会を目の当たりにさせられる仕事だった…『LAST SHOOT』

                      雨の日も、夏の暑い日も、ただひたすらサラ金会社の看板を持って棒のようにたたずむ男。
                      ただ目の前にあるものを眺め、一本の棒となり、ただ時間が過ぎるのを待ち続ける男。
                      そんな男にも、ライバル会社の看板持ち達とのわずかな楽しいひとときがあった。
                      借金のかたに、一日千円で人間スタンドとなった男達。
                      こんな吹き溜まりで出会った、仲間。
                      そんな彼らに突然与えられた使命は、やくざの抗争を鎮めるための命がけのゲーム…『LAST BATTLE』
                      の、7編から成る短編集。


                      とてもリアルだと思う…。
                      一編を除いて、救いはないし…。
                      あとがきに、「日本の社会の今の時代の痛みを書かずに「永遠」や「古典」を夢見て、作家にどんな仕事ができるのだろうか」と、いうようなことが書いてあるように、確かに、そうなんだろうけど…。

                      読んだ後はすごく侘しい…。
                      現実が侘しいから、本にはせめて救いを求めているのかもしれない…。

                      「これでお終い」という、終わりはなく、彼らが生きている限りはずっと続くであろう、物語。

                      そんな救いのない物語のなかでも、結構好きだったのは『LAST JOB』の主人公、この短編集の唯一のヒロインの主婦、かな。
                      あとは、『LAST BATTLE』の結末。

                      『LAST SHOOT』は、読んでて胸がムカムカしてくるような物語。
                      だから、この結末は、これで良かったのか…。

                      同じサラ金を題材にしたものでも、やっぱり私は『ミナミの帝王』のような結末が良い。
                      この本は、現実的すぎて読んでて辛かった。
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