『誰にも見えない』藤谷治

誰にも見えない
誰にも見えない
藤谷 治 2007/3/20 P.207 ¥1,260
★★★★★
 それとね、お母さん。
「しあわせと思わなきゃだめ」って、何?
「なきゃだめ」なもんなの?
 私、しあわせなの?
 お母さんは、自分は今、とってもしあわせと、思ってるけど、私がしあわせだって、思ってるの?
 なんで?
 ………
 お母さん。
 私が見えますか。

銀行に勤める東大卒のエリートの父親と、マニュアル通りに子どもを育てようとする母親のもとで、何不自由なく暮らす「特別じゃない14才」の「私」。

自宅から離れた大学までエスカレーター式の有名私立女子中に通う、長い通学電車の中で、小学校からの「親友のつもり」の「愛子」と話すのは、ドラマの話や宿題の話…
打ち明け話、なんかはしない。

努力しなくても成績の良かった「私」と一緒の中学に行きたいと言い出し、猛勉強の末に合格を果たした「愛子」とは、今でも「親友」だけど、明るくて裏表のない性格の「愛子」には「私」以外にもたくさんの友だちが出来て、その中にいるのは少し苦手な「私」。

「私」が中学生になってからは、昼食代をテーブルに置いておくだけで、朝もろくに起きて来なくなり、自分の趣味に走るようになった母親、そして、親友「愛子」の自分勝手な行動にとことん嫌気が差してしまった「私」は、ある決意をし、荷物を詰めて家を出た……。

「私、わがままに生きてる。
だけど、ひとりぼっち――。
14才女子中学生が出合った
やさしい奇跡
大丈夫。きみは、これからどんどん美しくなる。

ごく普通の私立女子中学に通う14歳の女子中学生の、誰にも見えない美しい心を澄んだ筆致でとらえた書き下ろし小説。」だ、そうで。


「自分は特別じゃない」と思う14才の女子中学生(結構お金持ちで、特別だと思えるけど)が、人には絶対に知られたくない本当の気持ちを書き殴った日記、のようなものという体裁をとってて、実際に中学生の日記なのかも…と思わせるぐらいに「私」になりきってるような。

なので、きっと作者は若い人なんだろうと思ったら、そうではなくて、私よりも上だったのでちょっと驚き(実際に中学生が読んだら、どう感じるのかは解らないけど)。

冒頭の「くやしい」、と「うらむ」の文字の羅列には正直どきっとしてしまったし、友だちへの「死ねばいい」という言葉も、何だかリアルで思わずぞくっとしてしまった…。

友だちのことを考えて、振り回されて、こんなことされたら…14才ならこう思うだろうなぁというか、自分が14才の時のことを思い出してみても、こんな態度取られたら、ちょっと悲しくなってしまってたかも…と(この歳になると、もう全然好きにしてと思えるけど)。

「ぎりぎりまで困ったとき、守ってくれる何か」は、確かに私にもあったと思うし、そういう奇跡は信じたいし。

そして何より「ピオーネ」という種類のぶどう(初めて聞いたような…誰でも知ってたらちょっと恥ずかしいかもだけど)が、ものすごく食べたくなってしまった。

もしかして、病気になった時にしか食べられないメロンより高級だったりするのか…(という、考え自体が貧乏臭くて、ううっ…平民すぎて悲しくなるかも)。

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