スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

0
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『カラスのジョンソン』明川哲也

    カラスのジョンソン
    カラスのジョンソン
    明川 哲也 2007/2/6発行 講談社 P.222
    ★★★★★
     団地の屋上。家々の屋根。街の灯り。
     初めての本当の空だった。
    風に乗る。逆らう。巻かれる。……
    人間は自分を守ろうとした。人間は食べるものを与えてくれた。人間は自分を捕まえようとした。人間は人間をいじめた。
     人間のそばに戻らなければ。
     いや、このまま飛び続けるのだ。人間から逃げるために。
     ジョンソンは空中で何度も方向を変えた。

    カラスが害鳥とされ、カラスの撲滅を望む一つの街で、母親の留守に他の鳥に襲われ、巣ごと落とされてしまい傷ついたカラスの幼鳥を拾い上げたのは、昼間はタイル工場で清掃員として働き、夜はカラオケバーでバイトをしながら、女手一つで小学生の息子を育てる、四十歳の母、里津子。

    里津子が家に持ち帰ったカラスの幼鳥を見て、ことの外喜ぶ息子、学校では何かと問題児扱いされている陽一に「傷が治るまで」と言い含め、「絶対に誰にも内緒で」と釘を刺す母の言いつけを守り、「ジョンソン」と名付け、母がいないひとりぼっちの夜、片時も「ジョンソン」の側を離れようとせずに、必死で看病する陽一。

    母子の住む市営住宅の一室で、母子の愛情に暖かく見守られながら「ジョンソン」の傷も少しずつ癒え、やがて少しの羽ばたきが出来るようになった頃、「ジョンソン」の存在が周囲に知られることとなり……。

    「翔べ、高く! 羽撃(はばた)け、遠くへ!
    千々のきらめきと、葉のこすれる乾いた音の中で、カラスのジョンソンは生まれた。
    さらさらと流れる風。翼に当たる雨。遥かな空から見おろす星……。
    カラスと少年の伝説が、ここに紡がれた。
    “詩人”が謳い上げる、生の交歓。」だ、そうで…。


    冒頭から中盤まではまるで、小学生の時に観て号泣した映画「キタキツネ物語」を彷彿させるような展開で…。

    物語は、カラスの「ジョンソン」の視点と、母子の視点とから描かれるけど「ジョンソン」の視点の章が圧巻過ぎて、この作者(実は「ドリアン助川」さん)は、前世がカラスだったのでは?と思いたくなる。

    詩人さんなだけあって、言葉の一つ一つの持つ凄みが心にストレートにつきささるし。

    この世に生を受け、初めて目にするもの、耳にするもの、感じるもの全てに驚き、戸惑う姿は、覚えてないだけで、人間も、赤ちゃんの頃はきっとこんなだったんだろうなと。

    餌を運んでくれる暖かくて大きな鳥の存在(母という認識はないから)や、隣に並び、餌を横取りするものたちの存在(兄弟という認識も、もちろんない)、そして次々に襲い掛かる自然の脅威や外敵の存在を知り、幼い「ジョンソン」は巣の中にいながらにして「生と死」を同時に知ることとなるけれど…。

    その辺の描かれ方が、自分が「ジョンソン」になったかのように怖くて怯えてしまう…「ただ生き残ること」の大変さを改めて思い知らされたような(何のために生きてるとか、自分探しとか、そんなこと考えること自体、人間は生ぬるいのかもと)。

    叱られるのを覚悟で、学校をさぼってまで「ジョンソン」を必死に守ろうとする陽一と、事の顛末を知った担任の先生との交流も良かったし、何より「ジョンソン」が苦しい生活を強いられる母子を見守る姿に、ただただ感動。

    そして一方で、人間のあまりの自分勝手な酷さに、自分が人間であることが申し訳なくなってしまうし、「ジョンソン」がそうしていたように、何もできないことが、ただただ哀しくなってしまう。

    「ナクナ。
     ナクナ、ナクナ、ナクナ。
     マモッテヤルカラ。」
    陽一に教えてもらった言葉で、必死でそう伝えようとする「ジョンソン」の姿には涙が止まらなかった。

    いつも「つがい」で行動するという「カラス」をちょっぴり尊敬していたし、「カラス」を見つけるとその行動に目が離せなくて、側に寄ってじーっと監察してしまうほどに惹かれるものがあるので、これを読んで余計に好きになってしまったかも(確か宮部さんの時代小説で、カラスを手なづけている人が出てきたときにも、こんな風にカラスと仲良くなりたいと思ったけど…)。

    そして、このタイトルは…やっぱり『カモメのジョナサン』からきてるのかな?(あっちも懐かしくて、読みたくなってしまったんだけど)。

    0

      1

      calendar

      S M T W T F S
            1
      2345678
      9101112131415
      16171819202122
      23242526272829
      3031     
      << July 2017 >>

      読書メーター

      uririnの最近読んだ本 uririnの今読んでる本

      新刊チェック

      selected entries

      categories

      archives

      recent comment

      • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
        uririn
      • 『痺れる』沼田まほかる
        uririn
      • 『絶望ノート』歌野晶午
        uririn
      • 『夏空に、きみと見た夢』飯田雪子
        いちれん
      • 『痺れる』沼田まほかる
        くり
      • 『絶望ノート』歌野晶午
        智広
      • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
        uririn
      • 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月
        苗坊
      • 『永遠の0』百田尚樹
        uririn
      • 『永遠の0』百田尚樹
        苗坊

      recent trackback

      recommend

      recommend

      recommend

      recommend

      recommend

      recommend

      悪人
      悪人 (JUGEMレビュー »)
      吉田 修一
      読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

      recommend

      しずく
      しずく (JUGEMレビュー »)
      西 加奈子
      サイン本買っちゃった。

      recommend

      recommend

      たぶん最後の御挨拶
      たぶん最後の御挨拶 (JUGEMレビュー »)
      東野 圭吾
      猫なんです…。

      recommend

      recommend

      recommend

      ねこの肉球 完全版
      ねこの肉球 完全版 (JUGEMレビュー »)
      荒川 千尋,板東 寛司
      たまらん。

      recommend

      ニャ夢ウェイ
      ニャ夢ウェイ (JUGEMレビュー »)
      松尾 スズキ, 河井 克夫
      たまらん…

      recommend

      recommend

      僕たちの戦争
      僕たちの戦争 (JUGEMレビュー »)
      荻原 浩
      とにかくお薦め。

      recommend

      出口のない海
      出口のない海 (JUGEMレビュー »)
      横山 秀夫
      たくさんの人に読んでほしい…

      links

      profile

      search this site.

      others

      mobile

      qrcode

      powered

      みんなのブログポータル JUGEM

      使用素材のHP

      Night on the Planet フリー素材*ヒバナ *  *

      PR