『もしもし、運命の人ですか。』穂村弘

もしもし、運命の人ですか。
もしもし、運命の人ですか。
穂村 弘 2007/3/5発行 メディアファクトリー P.182 ¥1,365
★★★★★
 街を行き交う沢山のカップルを眺めながら、怖ろしいような気持ちになることがある。
 目の前の全てのカップルが、いつかどこかで出会い、時間の経過とともに微妙な眼差しや言葉や行為を交し合って、少しずつ関係を深めていったのだ。こいつらの全員がそれをやったのだ。
「ふたりのやりとりの複雑さ」×「道のりの遠さ」×「カップルの数」を思って、ふーっと気が遠くなる。
 みんなみんな、愛と性欲の塊だ。
 そもそも人間同士が出会わなければ、カップルにはなりようがない。
 出会ったとしても、そこから現在までのふたりの動きがきちんと噛み合わなければ、今、仲良く手をつないで歩いてはいないわけだ。
 とてつもなく遥かで複雑な道のりではないか。
 そう考えると、限りある命のなかで恋の相手と出会い、その好意を獲得、さらに関係性を進展させるために、自分の側の可能性を常に全開にしていなくては、という思いに駆られる。焦るのだ。            〜『1%のラブレター』より〜

歌人である著者、雨に濡れた子犬系中年男(と、ブログに書いてあった)穂村さんの恋愛に関するあれやこれやの体験談や失敗談、頭の中の妄想などなど、「えっ!男の人って、あんな時やこんな時に、こんなことを考えてるの?」というようなことが、かなり具体的に、面白おかしく書かれているエッセイ集(歌人なだけに、あえて随筆集と呼びたいような…)。

「間違いない。
 とうとう出会うことができた。
 運命の人だ。
 黙々と働く昼も、ひとりで菓子パンをかじる夜も、考えるのは恋のこと。
 あのときああ言っていたら……今度はこうしよう……延々とシュミレートし続けた果てに、〈私の天使〉は現れるのか?
人と、社会と、うまくつながれない。そんな違和感を、笑いと涙を交えたエッセイに書き綴ってきた著者、待望の最新刊。テーマを恋愛に絞った、男性も女性も共感間違いなしの1冊。『ダ・ヴィンチ』好評連載を書籍化。」だ、そうで。


まさに、本屋さんで運命に導かれるように(中身がエッセイとは知らずに)手に取り、ぱらぱらと捲って、そのあまりの面白さに(普段エッセイは殆ど読まないのに)そのままレジへと直行してしまった。

そして、これは…大人の恋愛の「バイブル」とでも呼びたくなるような一冊かも。
書いてあることに一々納得してしまうし、彼氏には聞けないようなことが、ずばり書いてあったりするので、かなり勉強になってしまった。

例えば…恋の始まりは楽しいけど、幸福は永遠には続かない。
その恋の始めの急上昇する気持ちを、下降させることなく、上昇させ続けるためにはどうすれば良いのか、とか(相手のことを、5年や10年の時間をかけて聞いていけば…というのは何となく分かるなぁ。かなりバカバカしいけど)。

人を好きになる瞬間が、風邪のひき始めと同じくらいに、自分自身のことなのに、いったいいつからなのか良くわからない、というのもすごく良く分かるし、恋愛の例えが、いちいち面白かったりする。

そして、男の人が女の人を初めてホテルに誘う時のその心の中の葛藤というのが、かなりリアルで面白いし(男の人って大変なんだなと)、OKのサインをルール化すれば…という発想も、なかなか(でも、みんなが同じ誘い方や、リアクションだと、男の人にとっては恥かかなくて済むし、安全かもしれないけど、恋愛はつまらなくなりそうな)。

みんなでいる時にコンビニに買出しに行こうとすると、そのうちの一人の女性が「じゃあ、私も」と言っただけで、その「じゃあ」の意味について、「あなたが行くなら私も一緒に行きたいわ」と捉えるのか、云々かんぬん…には結構驚いた。
女の人の何気ないたったひと言が、こんなにも男の人を悩ませるのかと…。

「激しい恋愛のなかで、我々は束の間の生の実感を得ることができる。」(ゆえに、「いいひと」との穏やかな恋愛には非日常性がなくて面白みがない…云々かんぬん)という一文に、だから時々無性に恋がしたくなるのかなと(非日常を求めて)なんだか納得。

でも、もうそろそろ日常的な、穏やかな恋愛でもいいかなと思い始めた今日この頃。
「もしもし、運命の人ですか?」と聞けば、「はい、そうですよ」と、答えてくれたら楽ちんでいいのに…。
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